厳しい日々が続きますが、皆様の生活の楽しみが1つ増えるよう頑張ります。
ピュラはジョーンが勉強に疲れ、ボードゲームを行なっているRWBYの方へ寄って行った事で、手持ち無沙汰になったため、飲み物を取りに図書館を出た。そこで、何か悩んだ様子のラグナを見かけ、声をかけたのだが、そこでいきなり肩を掴まれ、「協力してくれ」と言われれば戸惑うのは当然だろう。
「ええと…協力するのはもちろん良いけれど…
具体的には何をすれば良いのかしら?」
その上で、急な頼み事に内容も聞かずに快諾するのは、ピュラの人の良さを表している。「将来、悪い奴に騙されたりしないだろうか」と一抹の不安を覚えるラグナだったが、ひとまず、ラグナの作戦をピュラに伝える事を優先し、不安を頭の隅に追いやった。
「ピュラは確か、ミストラルのサンクトゥム・アカデミーの出身だよな?」
「ええ、そうよ」
「今回の留学生の中に、知り合いっていたりするか?」
「そうね…何人かはいると思うけど」
「で、今年のヴァイタル・フェスティバルのトーナメントにも参加がほぼ内定してるな?」
「まあ、ちゃんとビーコンの代表として選ばれればだけどね」
そこまで聞いたラグナは、自分の作戦の決行を即断した。
(よし、ならピュラが知り合いに挨拶がてらに、ヘイヴンのトーナメント参加者について聞いて回ってもなんら不自然はないな。
後は俺がどういう口実でピュラに着いていくかだが…)
「ラグナ、ヘイヴンの生徒に興味があるの?」
「ああ、少し探したい奴がいてな。ヘイヴンの生徒だと思うんだが、ヴァイタル・フェスティバルも近いし、ちょっと調べたくてよ。だが俺1人だと不審に思われるだろうし、出来れば協力して欲しいんだが…」
自分の初対面では決して親しみやすいとは言えない顔と言葉遣いを自覚しながら、申し訳無さそうに告げるラグナに、ピュラは柔らかく笑って返す。
「ふふ、わかったわ。私で良ければ協力させてもらうわね。でも、私は他校の偵察って事で通るかもしれないけど、ラグナはトーナメントには出ないのよね?」
「ああ、まずチームメンバーがいねえしな。1回戦のチーム戦と2回戦のタッグ戦に参加出来ねえから出場資格が無い」
「そうね…
ラグナはヴェイルから出た事はないみたいだし、後学のために、他国の人達との交流の機会を持ちたいって感じで紹介すれば良いかしら?」
「良いな、それで行こう」
ピュラからの提案はラグナの境遇を考慮した案であり、しかしながらラグナ1人ではラグナが自身で話したとおり不自然に思われかねない。ピュラと2人で行く事で成り立つ絶妙な案だった。
「わかった、じゃあ行きましょう。私も出るからには勝ち上がりたいもの。偵察出来るならするに越した事はないわ」
「うし、そうと決まれば早速校内で敵情視察と行くか」
「ええ」
ピュラはスクロールでチームメンバーへとメッセージを送り、ラグナと共に歩き出した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ありがとう。お互い頑張りましょうね」
話していたヘイヴンの生徒に可憐な笑顔で別れを告げるピュラを待ち、連れ立って再びアカデミー内を歩く。ピュラという協力者を得たお陰で、ラグナの調査は驚くほどスムーズに進んでいる。ラグナの若干無愛想な様子も、ピュラの卓越したコミュニケーション能力と実績による信頼によって、不自然に思われる事もなかった。ミストラルのトーナメントにも4年連続チャンピオンとして君臨していたのだから、周囲の反応は当然とも言える。
「結構回ったけれど、探してる子は見つかった?」
「いや、今のところはまだだな」
「わかった、じゃあ次にいきましょう」
「わりいな、こんな時間まで付き合わせて」
図書館を出た時はまだ昼過ぎだったが、窓の外は赤と紺が入り混じる、黄昏の空へ変わっていた。
ラグナとしては、疑わしい人物は何人かいたが、ピュラという有名人との会話で緊張している事や、いつもと違う慣れない環境に置かれているためであるなど、他の理由も考えられ、敵だと断ずるのは難しいというのが本音であった。
「気にしないで、私の偵察でもあるわけだし」
「いや、そうは言ってもな…」
長い間、ピュラの時間を割いてもらっているだけに、ラグナも申し訳なさそうに頭を掻く。何かピュラに礼が出来ないものかと思考を巡らせているが、情けなくも人が喜びそうな事を考えるのは、あまり経験のない事であったため、ラグナには良い案が思い当たらなかった。
「そうね。じゃあ、今度バイクのツーリングに連れて行って」
そのラグナのなんだかんだ律儀なところはピュラも知るところであったため、悩んだ様子の彼にピュラが提案する。
「そんなんで良いのか?」
「ええ、バイクに乗るっていうのも興味があるし」
「わかった。ピュラがそう言うなら、お安い御用だ」
「そうと決まれば早く次に行きましょう。あともう少ししたら夕飯の時間だから、みんなで食堂に行くだろうし、その前に部屋に戻って合流しなきゃね」
「そうだな」
その後、ラグナとピュラの2人は校内を粗方周り、ヘイヴンの生徒からの情報収集を続けた。その中で、疑わしい人物達を何人か確認する事が出来たが、その反面、敵の厄介さにつくづく舌を巻く結果となってしまった。
敵がヘイヴンに潜入したのであれば、正規の入学以外に編入という手段がある。近頃ヘイヴンに途中編入した生徒がいれば、その生徒達を要注意人物としてリストアップする事が可能だった訳だが、残念ながら編入生が来たという話はない。となると、本当に交換留学生として潜入しているのであれば、正規の入学ルートで潜入しているか、最悪の場合、途中編入した事実を揉み消せるほど、既にヘイヴン・アカデミーの中枢に入り込んでいるという可能性がある。
ヴァイタル・フェスティバルに参加する4つのアカデミーは、国を代表する高等教育機関なだけあって、生徒数も膨大である。生徒全員の顔と名前を、同じ生徒達が覚え切る理由もなければ、意味もない。編入自体が揉み消された場合、「あんな子も居たんだ」程度にしか思われず、ほぼ自然に生徒達の中に溶け込む事が出来るだろう。
「ラグナ、どうしたの?
そんなに険しい顔して」
「ん、いや、なんでもねえ」
ピュラに顔を覗き込まれ、はっと思考に囚われていた脳が引き戻された。自分が少なからず焦りを募らせている事を自覚する。
(…最悪の想定ばかりして焦っててもしょうがねえか…
まだ、交換留学生に紛れてるって決まったわけでもねぇし…)
気持ちを落ち着かせるように1つ呼吸を入れる。
「そろそろ夕食の時間だし、戻りましょうか。みんな待ってると思うわ」
「そうだな。今日は助かった、改めて礼を言うぜ、ピュラ」
「どういたしまして。ツーリング、楽しみにしてるわ」
「おう、わかったぜ」
そう言い、自分達の寮へと向かって歩き出す。元々、1日で敵の尻尾を掴もうなどと、虫が良すぎるのはラグナもわかっていた。敵の情報が限りなく少ない以上、どうしても後手に回るのは必然となる。その上焦りまで抱いてしまっては敵に良いように乱されてしまう。それを避けるために、ラグナに今出来るのは可能な限り、こちらの動きを悟らせず、敵の情報を仕入れる事。以前の埠頭の攻防において、情報戦で遅れを取ってしまったラグナは、同じ
寮に到着し、一緒に夕食へ向かうために、チームRWBY、JNPRの部屋へと向かう。
「あ!ビーコンへようこそ!」
「ん?」
自分達の部屋のある通りに出ると、何やらルビーが向こう側へ手を振っている。誰かと話していたようだが、その相手は既に角を曲がっているのか、姿は見えなかった。
「ルビー、誰かと話してたの?」
「あ、ピュラ、ラグナもおかえり。ヘイヴンの生徒が道を間違えてこっちに来ちゃってたみたいだから道を教えたの」
「ヘイヴンの生徒が初日に用がないであろうビーコンの寮に来ていた」という情報にラグナの胸は騒ついた。道を間違えたにしても、寮同士は少し離れた位置にあるため、若干の不自然さを覚える。
「へぇ、どんな奴等だったんだ?」
ラグナはその生徒の特徴を聞こうと、ルビーへ問いかける。
「えっと、綺麗な緑色の髪をした女の子と灰色の髪の男の子、あとは黒髪の女の人だったよ」
「3人組か…ん?」
ルビーの奇妙な言い回しにラグナ違和感を覚えた。
「黒髪の奴を『女の子』じゃなくて『女の人』っつったのはなんでだ?」
「え?うーん…
わかんない。すっごく大人っぽかったし、なんとなくそんな雰囲気がしたのかも」
「そうか」
(それほど大人びた女か…
気になるな…
本当に道を間違えただけなら、良いんだが…)
後を追い、その姿を確認しようとも考えたが、用もなく後を追えば当然不審がられるし、それが本当にオズピンの言うセイラムの仲間だった場合、敵にラグナの顔を晒す事にもなる。警戒されればそれだけ、情報を得る事やラグナが悟られないように動く事も難しくなるため、今は深追いせず、ルビーから聞いた特徴を覚えておくに留めたのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その後、RWBY、JNPRの面々と夕食を摂ったあと、部屋に戻ったラグナは情報の整理と今後の方針を考えていた。
(ピュラのおかげで大方の偵察は出来た。1番気になるのはルビーが会ったっつう3人組だが、明日以降の授業で一緒になる事もあんだろう。どいつかそれとなくルビーに確認しておくか。
それに明日から、ヴァイタル・フェスティバルに向けて、組み手式の武術修練の授業も多くなる。交換留学生としてきたならトーナメントに参加する事は確定事項だし、俺は参加資格がないから武術修練は大方見学が増える。観察するには好都合だ。
あとは、潜入してる奴ら以外の敵として、ローマン、ニオと呼ばれた女、お面野郎2号、ホワイトファングの連中ってところか…
しかし、アカデミーの
奴等は何をしようとしてやがんだ…?
戦争でもおっ
いくつもの情報と足りない情報が頭の中をぐるぐるとかき乱す。そんな中、「そういえば…」と夕食の時、チームRWBYのメンバーが意味ありげに笑い合っていた事を思い出す。ブレイクの表情も昼に見た時よりも柔らかくなっていた事から、チームの今後の方針が全員一致して決まったという事だろう。
(あいつらが大人しく待つタイプとは思えねえし、何かしら行動するつもりなんだろうな。無茶なことしねえといいが…)
「あー!考える事が多すぎるな。少し風に当たって頭を冷やすか」
そう1人呟き、バイクのヘルメットを持って寮を出る。
「そういや、ピュラをツーリングに連れて行く約束もしたんだったな。こんな考え事ばかりなら、悪くねえんだが」
不安を煽る考え事の中にたった一つ、誰かを喜ばせる為の考え事がある。それだけで、重く沈みそうだった気持ちが少し軽くなった気がした。
いかがでしたでしょうか?
感想、誤差報告、お気に入り登録、高評価ありがとうございます。この場を借りてお礼を申し上げます。
まだの方は是非登録と高評価、何卒よろしくお願いします。言った方がいいってYouTuberが言ってた(^ω^)
では恒例の謝辞を
今回もお読みいただきありがとうございました。
また次回。