元全世界の敵のなんだかんだ奮闘記   作:天然黒酢

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お久しぶりです。
コロナ絶対許さないマンと化した天然黒酢です。1年程前、更新再開頑張ろうと意気込んだ矢先。コロナのせいで職場が逼迫し、慌しく時は過ぎ去り、気がつけば1年経過。許さぬ。
そんな時、不意にマイページを覗いたら、心配して下さったり、続きを待って下さってたり、応援のメッセージが多数…
感想に書いてくれてる人もいて…
これは…書かねば…


情報と違和感

「おし、有力そうな情報も手に入った。あとは話に出てきた緑髪の女を見つける事だな。月曜日はグリンダの武術修練の授業もあるし、その時にルビーに聞くか」

 

 ルビーが会ったという人物とタクソンを襲った人物が同一人物である場合、それは紛れもなく黒だといえる。残念ながら同一人物だと断ずる事は難しいが、警戒を強めるには十分すぎる情報だった。明日の行動を考えながら、バイクに手を掛ける。すっかり夜も更けて、暗くなっていたため、調査を切り上げて、ビーコン・アカデミーに戻ろうとヘルメットを手に取った時ーー

 

「………」

 

 全身がヒリッとするような緊張と確かに自身に注がれている視線を感じた。その気配はラグナから視線を外し、ゆっくりとその場を離れていく。

 

(なんだ…?)

 

 ラグナは手に持ったヘルメットを置き、見失う事がないよう、足早に気配を追った。

 

(このタイミングで考えられるのは、奴らの仲間っつう線だが…)

 

 ラグナがそれを断定する事が出来なかったのは、その視線がラグナを見定めるような感覚はあったものの、敵意や殺気などの負の感情が薄いように感じたからである。

 気配を追い、夜の街を少し進むと気配は道を逸れ、ある場所に入っていく。覚えのある場所にラグナも足を止めた。

 

「ここは…

なるほどな…」

 

 そこは地下へと続く階段となっており、その先は貨物列車の積荷置き場となっている。前回は仮面と無言で情報を隠したが、露骨に誘い込まれた事から、自分の事がバレていると半ば確信したラグナは、場と状況から、その先にいるであろう人物を思い浮かべながら歩を進める。

 

「来たか…」

 

 階段を降り、積荷置き場に着いたラグナに向け、言葉がかけられる。

 

「あれだけ露骨に気配を垂れ流されちゃな。一応聞いておくが…()るか?」

 

 それに対し、ラグナも言葉を返した。アラマサに手をかけるも、あくまで闘気は乗せないその態度に、対面する男は以前闘った時と同じ仮面のまま、肩を竦めて首を横に振った。

 

「今回ばかりは闘り合う気はない。」

「…そんなら、なんだって俺を誘き出した?

そっちに闘り合う気が無くたって、お前がローマンやその一味と協力関係にあるのは確かみてぇだし、俺にはお前を捕える理由があるんだぜ」

「そうは言いつつも剣を抜かないのは、お互いに解っているからだろう」

「……ふん…」

 

 仮面の男の言葉に鼻を鳴らし、アラマサから手を放す。確かに、お互いに目の前の男の実力を掴み切れておらず、ラグナからすると地下とはいえ、街中に位置するこの場所では、仮面の男を捕らえるために全力を出せるかと問われれば否と唱える他ない。対する仮面の男も、街中で騒ぎを起こし、他のハンターやオズピンを筆頭とするアカデミー関係者に捕捉されるリスクを鑑みて、戦闘の意思は見せなかった。

 

「…今回の奴等の行動は目に余る」

「………あ?」

 

 ぽつり…と呟いた一言と共に、仮面の奥の瞳が哀愁を帯びたように見えた。ラグナからすれば、予想だにしなかった言葉に、反応が数秒遅れる。

 

「どういうこった?

本屋の店主を襲ったのはテメェの仲間だろうが」

「タクソンは俺達、ホワイトファングの一員ではあったが、『活動が過激すぎる』として、脱退したメンバーの1人だ。脱退の際、『ホワイトファングについて一切口外しない』という誓いを立て、俺達もそれを認めた。今のホワイトファング(俺達)とは無関係だが、その誓いを知らん奴等の仕業だろう」

「………」

 

 ラグナは男の話をじっと押し黙って聞いていた。相手の抑揚、一挙手一投足まで逃さず観察し、情報の信憑性を判断する為に。

 

(話を聞く限りだと、タクソンはホワイトファングの情報を知ってて、ヴェイルで何かをおっ始める事を予感していた。そんで、高飛びの準備を進めてたが、情報の漏洩を恐れたローマンに狙われた…か…。

こいつの言葉を丸々信じるならっつう話だが…)

 

「なんの目的があって、そんな事を俺に伝える?

仲間を売るようなマネをして良いのか?」

「仲間ではない。不本意ながら協力関係にあるのは確かだが、ただでさえ、同胞が好き勝手使われているのに加えて、今回の勝手には俺も少々、頭にきている。タクソンが誓いを反故にしたならまだしも、俺は無為に同胞を傷付ける事はしない」

 

 あまり抑揚を感じなかった男の語り口調に隠しきれない感情を見たラグナは、少なくとも目の前の男が怒りを覚えている事は事実なのだろうと結論付ける。ファウナスはその歴史から同胞に対する仲間意識が非常に強い。故に、敵として立ちはだかった訳でもなく、何か害を及ぼした訳でもない同胞が傷付けられた事に、怒りを覚えるのは十分に考えられる事だった。

 

「本来はタクソンの様子を確認するだけのつもりだったが、覚えのある気配のハンターを見かけたものでな。奴等の勝手な行動に対する意趣晴らしをするのも良いかと考えついた。奴等の協力が無くとも、俺達は目的を必ず完遂する」

 

 前回の短い対峙の中で感じた気配だけで、ラグナだと断定している事で、仮面の男の技量の高さをラグナも再認識する。それと同時に敵サイドに不和が生じている事で、一枚岩で無いことも察する事が出来た。

 

「…そんで?

その意趣晴らしってのは?」

「奴はまだ、秋の力を掌握しきれていない」

「秋の力…女神の力のことか…」

「やはり女神についても知っていたか…

そうだ。奴は秋の女神を襲撃し、その力を奪おうと試みたが完全に奪う事は出来なかった。奪えたのはおそらく半分にも満たないらしい。と、ここまでにしておこう」

「あ?そんだけかよ…」

「俺はお前に対しても肩入れする理由がない。これは俺自身の個人的な意趣晴らし。この情報をどう処理するかはお前次第、精々足掻く事だな」

「なるほどな…

俺を試す目的も含まれてるって訳かよ…」

 

 ラグナの言葉に仮面の男はもう話す事はないと言う様にラグナの横を通り過ぎ、出口の階段を登っていった。男の姿が見えなくなったことを確認し、ラグナも階段を登りながら、男の話の内容を整理する。

 

(あいつの話が本当だと仮定して、ホワイト・ファングとローマンの一味の最終的な目的は違うって事になる。

話を鵜呑みにするのは危険だが…

少なくとも全部が全部、出まかせって訳でも無さそうだ)

 

 階段を上り切り、改めてバイクのある場所へと戻るために歩く。するとーー

 

「みんな平気だよな?」

「…多分な」

「お前ら、ここで何やってんだ?」

 

 傍らに武器を立てかけながらもラーメンを啜る、水色と金の髪をした少年達を見つけたのだった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 週も明けた月曜日。グリンダ教授の武術修練授業では、交換留学生を含む、学生ほぼ全員が参加していた。ヴァイタル・フェスティバルのトーナメントに向けた組み手のため、ラグナにとっては、授業に出たところで、他人の試合を見るだけの時間になる。しかし、交換留学生の中に敵がいる事を疑うラグナは、交換留学生の学生を確認する目的で出席していた。

 それが功を奏したか、チームRWBYとラグナの後ろには緑色の髪をした少女が座っていた。

 

「ルビー、お前がこの前寮で会ったってのはこの子か?」

「え?

うん、そうだよ。迷っちゃってたらしくて」

「あの時はありがとう。助かったよ。私はエメラルド、よろしくね」

「ああ、ラグナだ」

 

 緑髪の少女、エメラルドは快活な笑顔を浮かべ、応えた。

 

「ヴェイルの街には慣れたか?」

「いやぁ、全然。やっぱり国が違うと街も違うね。この前も本屋を見つけるのに街をぐるぐるしちゃったよ。結局、行った本屋は閉まってたんだけどね」

「…そうか」

「じゃあ今度、私達が街を案内しようか?」

「大丈夫、それには及ばないよ。この街に詳しい知人がいて、その人が色々教えてくれるって言うから」

「そっか、何か困った事があったら言ってね。力になれるかもしれないし」

「ええ、ありがとう」

 

 エメラルドは人当たりの良さそうな笑みを浮かべながら、礼を述べる。

 『本屋に行ったが閉まっていた』という言葉に、ダスト屋の主人が言っていた少女と同一人物の可能性はあったが、年齢もヤンやワイス、ブレイクと変わらないエメラルドを、その事と髪色だけで疑うのは無理があった。当初の目的であった人物への接触は成功したラグナだったが、手掛かりとしては薄い結果に終わったのだった。

 

(完全に白と決まったわけじゃねえが、ほぼ振り出しだな。やっぱりお面野郎2号が言ってた方面から調べた方が得策か?)

 

 ホワイト・ファングの男が言っていた、秋の力を奪おうとした者がタクソンを襲った奴と仲間であると言う事を考えると、秋の力についてもっと詳しく知る必要がある。その為にも、今日の授業の後、オズピンを訪ねる旨を連絡した。

 

『わかった。放課後、学長室で待っているよ』

 

 オズピンの返信を確認し、ラグナは先程始まった試合に視線を戻した。修練場の中央ではピュラがたった1人で、チームCRDLを相手に大立ち回りを見せている。ヴァイタル・フェスティバルのトーナメントが内定したピュラのためにグリンダが設定したハンデマッチだが、相手に選ばれたCRDLのリーダー、カーディン・ウィンチェスターは不満を隠さずにいた。その苛立ちによる冷静さを欠いた動きは、CRDLのチームとしての動きを乱し、連携が崩れてしまっている。あれでは、如何に数の利があろうとピュラに勝つ事は難しいだろうと、ラグナは試合の行く末を見つめた。カーディン以外のCRDLメンバーが倒れ(その内の1人はカーディンによるフレンドリーファイアによるKOであった)、そのカーディンもピュラの動きに対応する事が出来ず、地面に叩きつけられた。叩きつけた後、追い討ちと言わんばかりに再度カーディンを蹴り上げ、宙を舞わせたピュラ。普段は穏やかな彼女だが、戦闘においては容赦がない。

 

「そこまで」

 

 修練場中央のスクリーンに映し出された、互いのオーラ残量を示すボードが、戦闘続行不能のブザーを鳴らすと同時に、グリンダが試合終了を告げる。

 

「勝負アリね」

「…マグレ当たりだ…」

 

 カーディンも弱々しい強がりを最後に意識を失った。

 

「良く出来ました。ミス・ニコス。これならトーナメントでも十分に闘えるわね」

「ありがとうございます」

 

 気絶したカーディンが医務室へ運ばれていくのを確認しながらも、素直にピュラへ賛辞を向けるグリンダ。

 

「さてと、この後闘うのは気が引けるでしょうが、もう1組行きましょう。やりたい人は?」

 

 グリンダは修練場の観客席をぐるりと見回すが、呼び掛けに応える者はいない。そんな中、1人の生徒に白羽の矢が立った。

 

「ミス・ベラドンナ?

最近の授業では随分と大人しいですね」

 

 ブレイクは最近のホワイト・ファングの件が尾を引いて、授業に身が入っていなかった。先日、ラグナがタクソン襲撃事件について調べていた日も、盗んだ大型ロボットを操るローマンとやり合ったという。ロボットを破壊し、追い詰めたと思ったところに、あのニオという少女がローマンを助けに入り、捕らえることは叶わなかったらしい。

 そんな事は思いがけないグリンダはブレイクを指名したのである。グリンダの指摘にブレイクはバツが悪そうに目を背ける。

 

「勝負をーー」

「はい、俺やります」

 

 グリンダは、ブレイクを指名しようとしているのは明らかだったが、しかし、それに待ったをかけるように手を挙げたのは、後ろのエメラルドの隣にいた、灰色の髪の少年だった。

 

「マーキュリー・ブラック…

良いでしょう。対戦相手を選びます」

「ってゆうか、俺指名しても良いですか?

その子」

 

 そう言って、マーキュリーが指を差したのは今の今まで戦っていたピュラだった。

 

「わたし?」

「ミス・ニコスは戦ったばかりです。別の相手を選んだ方が良いわね」

 

 当然、連戦となるピュラを案じて、グリンダは指名を撥ね除けようとするが

 

「いえ、大丈夫です。喜んでお相手します」

 

ピュラ本人が指名を承諾した事で、グリンダはそれ以上何も言わず、2人の試合を容認した。マーキュリーが修練場に降り、ピュラVSマーキュリーの試合が始まった。

 

「はああぁぁ!!」

 

 マーキュリーの後ろ回し蹴りを、ピュラは盾で受け止め、剣で軸足を払う。マーキュリーは倒れるが、受け身を取ってすぐに起き上がり、距離を取った。

 数拍の間の後、今度はピュラが仕掛ける。ピュラの剣を蹴りで弾き、カウンターとして放った蹴りはピュラの盾で防がれる。その後は、回転率の良いマーキュリーの体術をピュラが盾と剣で弾く。初撃以降、マーキュリーの攻勢に見えたが、ピュラが蹴りを弾いた隙を突いて、シールドバッシュでマーキュリーを突き飛ばす。それに対しても、マーキュリーは盾が当たる瞬間、後ろに飛び、衝撃を和らげていた。

 再び両者の距離が開く。

 

「ねえ、友達すごく良いじゃん!」

「ああ」

 

 目の前の一進一退の攻防に興奮を隠せないルビーは、エメラルドに笑顔で賛辞を送る。ラグナも目の前の戦いには目を惹かれるものがあり、素直にルビーに同意した。

 次の攻防でも、ピュラは手数では分が悪い事を察して、防御からのカウンターを主体にマーキュリーの攻撃を受け止める。しかし剣がマーキュリーの脚によって、ピュラの手から弾き飛ばされてしまう。マーキュリーは今が好機ととり、渾身の蹴りを放つ。が、それは空振りに終わってしまう。

 (はた)から見れば、攻め急いだマーキュリーがただ単に攻撃を外したように見えるが、ピュラを良く知っている者には、ピュラのセンブランス、「極性」によって蹴りが逸らされたのだとわかった。

 空振りによって大きく体勢が崩れたマーキュリーにピュラは盾による突進で攻撃。マーキュリーは盾を踏み、後ろに跳躍。跳躍の瞬間、破裂音と衝撃が生まれたところを見ると、ブーツに銃の様な機構が組み込まれているとラグナは予想した。

 剣を回収したピュラがマーキュリーに迫るがーー

 

「負けました」

 

 突然、マーキュリーが降参の意を示した。

 

「え?

あなた、もう諦めるの?」

「意味ない。君は超メジャーな戦士だし、俺とは格が違う」

 

 攻勢気味だったマーキュリーの方から、突然のサレンダー。渾身の一撃を外した事でやる気が萎えてしまった、極性のセンブランスを見抜き勝ち目がないと悟った、など可能性としては考えられる。しかしーー

 

「では、今回の勝負もピュラ・ニコスの勝ちです。良いですね」

「………」

 

 指名された相手に、これまた一方的に試合を終わらせられた事に、流石のピュラも不満げな様子だった。

 

「次は良く考えてから対戦相手を選んで下さい」

「そうしますよ」

 

 元々、ピュラを高く評価しているグリンダはマーキュリーの敗北を疑わなかったのか、厳しい口調で今回の行動を咎める。そのグリンダの言葉に対しても、飄々としたマーキュリーの態度に、ラグナはほんの少し違和感を感じた。

 

「今日はここまで。

週末はダンスパーティーがありますが、月曜日からは初の任務が始まります。ハメを外しすぎてはいけませんよ」

 

 グリンダの号令に、生徒達はぞろぞろと修練場を後にする。ラグナも修練場の出口を通る時、先ほどまで戦っていたマーキュリーの姿が見えた。

 

「勉強ってスッゲェ楽しいな」

 

 笑顔でエメラルドに語りかけるマーキュリー。

 

(…まるで、今まで勉強なんてしてこなかったかのような言い草だな…)

 

「あんた、クソ真面目に机に座ってるの苦手じゃない。こういうのが好きなだけでしょ」

「うるせ、これも勉強だろ?」

 

(………考え過ぎか…)

 

 楽しげに話すマーキュリーとエメラルドの様子を横目に見ながら、ラグナも修練場を後にした。

 




久しぶりの執筆で皆様に楽しんでもらえる文章になっているか心配です。
ですが、待ってくれてる人がいる限り、間を見つけては頑張って書き続けられるようにしていきたいと思います。
読者の皆様には気長にお待ち頂けると幸いです。

では、恒例の謝辞を
今回もお読み頂き、ありがとうございます。

追記:8月17日23時頃、文章不足部分追加しました。
また次回。
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