RWBY氷雪帝国、もうすぐ始まるやんけ!という事で、なんとか時間を見つけて書き上げました。
このサイトの小説が最も増えて、閲覧されるタイミングっていつだ!?
アニメ化直後だ!(メタ発言)
今のうちに書いとけ書いとけ
では、本編をどうぞ
「あー、久々だったな、あの感じ」
思わぬ
「どうすっかな…」
シャワー室から出て、バスタオルを手に取りながら思案する。オズピンからは「こういうのは男性から誘うのがマナーだよ」と念を押され、誘い待ちを封じられてしまった。元々、ヤンから「楽しみにしてて」と言われた手前、当日はパーティーには出席する気ではいたが、ダンスには参加せず目立たないようにしている気でいた。しかしながら、親身に教えてくれているオズピンから言われてしまっては、応えないのも不義理というものだろう。とはいえ、ラグナ自身、誘える女性となると限られてくるのが現状だ。
いつも行動を共にするメンバーを考える。チーム〈RWBY〉の面々は、ヤンとワイスは幹事である為、幹事の仕事があるであろうことから、一緒に行くといっても、慌ただしくさせてしまう可能性が高い。体裁的にはそれでも問題はないであろうが、幹事役に加えて、ダンスの相手役という余計なタスクを強いるのはラグナとしても本意ではなかった。ルビーについても、同じチームと言う事で幹事の仕事の手伝いがあるし、何よりブレイクの現状に懸念を抱いているため、それを差し置いて誘うというのは憚られた。ノーラについては、幼馴染みのレンという相手役がチーム内にいるため、わざわざラグナが誘うのは無粋というものだろう。
そうとなれば、現状、誘える者として思い浮かべるのは1人だ。オズピンとの会話の中でも名前が挙がった、これから重苦しい決断を迫られる女の子。ラグナにとっても、この場所に来て初めての友人と呼べる子だ。
ピコン
自身のスクロールから電子音が響く。噂をすれば影とでもいうべきか、画面をみるとそこにはその少女の名前が表示されていた。
『これから屋上で始めるけど、来れそう?』
簡潔で短い文章。近頃日課になっている、ジョーンの特訓についての連絡だった。着替えに袖を通しながら、『今から向かう。先に始めててくれ』とだけ返信し、ラグナも部屋を出る。
オズピンから聞かされた、女神の力の移植に関してはオズピン自身も言っていたように、彼女の意思を尊重する他ない。そもそも魂やオーラの事自体、ほとんど未解明なものだ。オズピンとの話した移植後の影響や内容すら、仮定のものに過ぎない。
(考えてもわからねえものをうだうだ考えるのも時間の無駄だな…)
先の見えない思考を巡らせると、どうしても悪い方向へ想像が傾いてしまう。そうなる前に頭をリセットするため、首を振った。
屋上への階段を上がりながら、改めてダンスの相手役を頼む事へ思考を戻す。ピュラのアカデミー内での人気はラグナも知るところであるため、もうピュラに既に相手がいる可能性もある。
(その時は背に腹は代えられねえし、ルビーやヤンに頼むとするか。ジョーンやサンがワイスとブレイクを誘ってたしな)
そう結論付けると、微かな金属音が耳に入った。今行われているジョーンの特訓の為の剣戟の音だ。屋上へ出るドアの前に着いたラグナはジョーンの集中の邪魔をしないようにと、ドアの小窓から屋上を覗き込む。
ピュラがジョーンの攻撃を受ける形で打ち合いを行なっていた。ジョーンの攻めの合間にピュラが反撃を仕掛けるが、ジョーンはしっかりと自身の剣で受け止めガードしている。
ジョーンの特訓を始めて少し経つが、彼の成長速度にはラグナも感心していた。JNPRもヴァイタル・フェスティバルのトーナメントに参加する事で、授業での模擬戦の回数も増えているが、その中でもジョーンの成長は目に見えて現れている。彼の「ヒーローになりたい」という想いの強さが、弛まぬ努力に繋がり、短期間での成長を実現していた。
数回の打ち込みの末、上に振り払おうとしたピュラの剣がジョーンによって止められた。ジョーンが少しばかりの体格のアドバンテージを活かして、上から抑え込むように力を込める。ジョーンは自身の優位を自覚しているのか、険しい顔の中に薄らと笑みを浮かべていた。それを見たピュラは悪戯っぽく笑みを返すと、ジョーンの抑え込みに逆らわないように自身の身体を屈ませて逆方向に回転。急に抵抗が無くなったジョーンは、体勢を崩して前によろめき、その隙をピュラが見逃す筈はなく、剣を上に弾く事でジョーンの上体を浮かせ、足を払って転倒させた。
「ふふっ、よく出来ました。剣の扱いも随分と様になってきた」
「ありがとう。君やラグナのお陰だよ」
剣を納め、ピュラが微笑みながら転んでしまったジョーンに手を差し出し、起き上がらせる。区切りが着いた事で、ラグナもドアを開けて屋上へ出ていく。
「惜しかったな、ジョーン」
「あ、ラグナ、今日も来てくれたんだ。でもいつからそこに?」
「私達が打ち合ってる途中からよ」
「全然気付かなかった…」
「そんじゃあ、あとは相手の動きの察知と周囲への警戒だな。ピュラが俺に気付いてたみたいに目の前の相手だけじゃなく、周りにも意識を向ける。トーナメントの1回戦と2回戦はチームとペア戦だから不意打ち上等だろうし、そもそもグリムと戦う時は、1人対複数になることも多いからな」
「む…難しいけど…やってみるよ…」
「ああ、いきなり出来るようになれなんて言わねえから、意識からだけでも少しずつな」
「うん、ありがとう」
ジョーンの礼を耳に入れながら、相変わらずの
「じゃあ、オーラの訓練に入りましょうか」
ピュラがそう提案するとジョーンは顔を引き攣らせた。
「あの、今日はオーラの訓練は無しじゃダメかな…ジョギングにしないか?」
ジョーンのオーラは先のカーディンとの一件以降、バリアとして纏う事は出来る様になったが、未だセンブランスは不明のままだ。ラグナの強化系など実感しやすいセンブランスであれば、自覚する事も容易であるが、センブランスはその多様性から、詳しい能力を解明するには時間がかかる。斯く言うラグナのセンブランスも、強化系のセンブランスである事が判明して以降、色々と試す中で身体強化や五感の強化、更には触れている物にオーラを纏わせる事でその物質を強化出来るという事が判明したが、全容を把握する事は出来ていない。以前オズピンが言っていた通り、自身のセンブランスで出来る事を少しずつ解き明かして、生かしていくしかないのだろう。そのためには地道に自身のセンブランスを知る努力を続けなければならない。
「ジョーン、頑張って。もどかしいのは分かるけど、訓練は続けなきゃね。もうすぐ貴方のセンブランスが見つかる筈」
「いや、そうじゃなくて…俺って…ダメダメで…」
「なんかあったのか?」
「…………」
ジョーンは沈黙してしまうが、その表情は暗く、落ち込み様が見てとれた。中々成果の見えないオーラの訓練に嫌気が刺したというだけでは無さそうだと、ラグナは結論付ける。ジョーンは目を伏せながら、ポツリと呟いた。
「…えと…ワイスが…」
「彼女がどうかしたの?」
「ワイスをダンスに誘ったんだけど…振られちゃって…
はは…びっくりだろ…?」
ジョーンの自虐的な笑いにラグナとピュラは顔を見合わせる。彼がワイスに心惹かれており、それをワイスが辛辣に突っぱねる様子は最早お決まりとなっているが、ワイスもジョーンを心底嫌っているという様子ではない。チームがあるとはいえ、心底嫌いな人間と一緒に遊びに出たり、食事を取ったりする事はしないだろう。どちらかと言うと、軟派で軽薄そうな行動にうんざりして、真剣に取り合ってくれないというのが側から見た印象だった。
「今度はどんな風に誘ったの?」
「前に買ったギターで弾き語りしながら、情熱的にだよ」
「「………」」
ピュラの問いかけの答えに、言外に「なんでそんな事を…」という表情を浮かべる2人。1つため息を吐き、ラグナは漠然と抱えてきた疑問を投げ掛けた。
「そもそも、なんでワイスにそこまで入れ込んでんだ?
まだ出会って数ヶ月だろ?」
「なんでって…
頭良いし、気品があるし、才能に恵まれてる、歌も上手いしさ。入学式の日に初めて見た時に目を奪われて、知っていくうちにどんどん好きになっちゃったんだ。この気持ちには正確な理由なんてないんだよ。好きだから好きなんだ」
「……そうか…」
色恋をまともに経験したことのないラグナでも、ジョーンの答えは芯の通った想いだと感じた。隣にいるピュラにもその真剣さは伝わったようで、柔らかな笑みを浮かべている。
「でも、ワイスには全然相手にしてもらえなくて、どうしたら本気だって伝わるかな…」
「なら、伝えるしか無いわ」
「え…?」
「今言った言葉をそのまま本人に伝えるべきよ。変な小細工なんかいらない、歯の浮くようなセリフも歌もいらない。必死に真剣に自分に向けてくれる相手の言葉の方が、女の子は嬉しいものよ」
「で、でも…それでも伝わらなかったら…?」
「ジョーン、貴方が本気で伝えたいと願うなら、必ず伝わるわ。相手の真剣さがわからない程、ワイスは人の機微に疎くは無いもの」
「そっか…そうだよね。ありがとう。俺、やってみるよ」
ジョーンは顔を上げ、気合を入れるように拳を握りしめた。
「そういえば、2人はパーティーはどうするの?
特にピュラは誘ってくる奴なんて引く手
ジョーンが何気なく言った疑問に、今度はピュラが顔を曇らせた。寂しげな表情を浮かべながらポツリと呟く。
「あはは…1人もいない…」
「またそんなこと言ってさ。俺に気を使わなくいいのに。本当だったら俺、ドレス着たっていいよ」
ピュラの答えにジョーンは笑いながら、冗談だと断ずる。確かに、アカデミー内での人気を考えれば、ピュラが誘われないというのは冗談にしか聞こえないだろう。
「今日の訓練、切り上げても良いかな?
早くもう1度、ワイスと話したいんだ」
「ええ、そうね。また明日から気兼ねなく訓練した方が身に入るでしょうし」
「ありがとう!じゃあ、また明日」
ピュラの言葉に足早に屋上から去るジョーン。ドアが閉まり、屋上にはラグナとピュラが残された。
「私達も戻りましょうか」
「…あ、ああ…」
「どうかしたの?」
歯切れの悪いラグナの返しに違和感を覚えたのか、ピュラが問いかける。ラグナは先ほど見たピュラの表情を思い返していた。
「パーティーに行く相手がいねえってのは、本当なのか?」
「え?
ええ…本当よ…」
ラグナの問いかけにピュラはさっきと同じように目を伏せた。
「ジョーンじゃねえが、お前が誘われないなんて冗談にしか聞こえねえな。入学式の日に一緒にいた奴らとかが誘ってきそうなもんだが…」
「……私は…恵まれてきたんだと思うわ…」
ピュラは屋上の手すりに手を掛け、月を見上げるとポツリポツリと語り出す。
「嬉しくなるほど才能とチャンスを貰ってきたの。ひたすら愛情を注がれて、賞賛を浴び続けて…
でもそうやって、長い間讃えられていると、最初は愛し称賛してくれた人達との間に溝が出来る。自分には勿体無いなんて思い始めるの。まるで私が、高嶺の花か何かみたいに…
そんなんじゃ、誰かと大切な関係を築き上げるなんて到底無理…
私だって、みんなと同じなのに…」
「………」
ラグナは声を挟まず、ピュラの言葉をじっと聞くに徹した。彼女はラグナと初めて会った入学式の日、ラグナを「初めての友達」と言った。周りの期待と自身の優しさの板挟みになりながら、ある種の「孤独」を抱え、彼女は心の奥底では対等で尊重し合う関係に憧れていたのだろう。
ラグナの脳裏に、再びこの少女がこれから迫られる選択がよぎる。彼女にとって、自分の存在すら脅かすかもしれない選択だ。このまま孤独に苛まれながら、この女の子は世界の為に、自分を犠牲にするのかもしれない。
(そんな事…許せる訳がねぇだろうが…)
「ごめんなさい、湿っぽい話をして…
戻りましょう」
「…ちょっと待ってくれ」
「え?」
寮へ戻るため、足を踏み出そうとしたピュラを呼び止める。ピュラが振り向いた、その目を真っ直ぐに見つめて、ラグナは告げた。
「ピュラ、俺と行かねえか?
パーティーに」
「………え!?」
ラグナの申し出が余程予想外だったのか、告げられた後、少しの間、キョトンと呆けた後、内容を理解したのか顔を赤くして驚きの声を上げた。ラグナ自身も、自身の顔が少し熱くなるのを感じていた。いざ誘うとなるとこんなにも気恥ずかしいものかと、自分の異性経験の無さを呪った。
「…いいの?」
「良いも何も、こっちから誘ってるんだが…」
「いえ、ラグナってこういうパーティーとか苦手そうというか、チームメンバーもいないし、参加しないと思ってたから…」
「まあ、慣れてねぇのは確かだけどな。幹事のヤンから『楽しみにしてて』って言われてな。苦労して準備してるみたいだから、無碍にすんのも悪いし、元々顔を出すつもりではいた。そしたら、どういう訳かダンスの方も練習する事になっちまって…
俺も相手役を探してたんだ」
「そうなの?」
「それに…」
ラグナは1度言葉を区切り、オズピンから教わった女性を誘う作法に倣って自らの手をピュラへ差し出した。
「ジョーンにドレスを着せる訳にいかねえからな」
「……く、あはははは!!
ふふ、そうね、じゃあ、私で良ければ喜んで」
ラグナの冗談めかした誘い文句に吹き出したピュラは、ラグナから差し出された手を取り、誘いを受けた。
その後、慣れないキザな事をして、顔を赤くしたラグナを揶揄いながら、ピュラはラグナの隣を歩く。
帰り道にジョーンから、とりあえずなんとかワイスと当日踊る約束が出来たというメッセージを受け、2人は揃って笑顔を浮かべた。
その笑顔を眺めながら、彼女がどんな選択をしようと、支えになれるように、悔いが残らないように、かけがえの無い思い出を少しでも、この少女が魂に刻めるようにとラグナは心から願うのだった。
ジョーン、すまんな、shineイベントは無しだ。代わりにワイスと踊れるから許せ。
氷雪帝国楽しみですね。製作陣豪華すぎんか?
アニメ化に便乗して、時間を見つけて書けるようにします。応援頂けると幸いです。
もう一つ、今回の話後のピュラ視点の心情を短く書いてみたのですが、蛇足かなと思って入れませんでした。それに関して皆さんのご意見をお聞きしたく、アンケートを作成します。ご協力をお願いします。
では恒例の謝辞を。
今回も見ていただきありがとうございました。また次回。
女の子達の一人称心情描写はいる?
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いる。書いて欲しい。
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いらない。読者の想像に任せるべき。
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節目の時に日記形式で幕間としてまとめる。