元全世界の敵のなんだかんだ奮闘記   作:天然黒酢

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氷雪帝国楽しみ!YouTubeでの先行公開見れてないけど!
明日見ようと思ってたら6/26までじゃねえか!
( TДT)チクショォォォォ!!


ダンスパーティー

 

 ダンスパーティー当日となった日曜日。当日ということで、パーティー会場であるホールへは幹事以外の入場が禁じられ、ラグナはいつも通りに休日を過ごす他なかった。朝方は休日の日課になっている「蒼の魔導書」の出力調整とオーラの操作訓練を行い、その後は昼食を済ませた後、自室に戻って過ごす。いつも通り、とはいうものの、休日の多くは〈RWBY〉や〈JNPR〉の面々と過ごすことがほとんどだったため、一人で過ごす休日が珍しいのは確かだった。以前では想像もつかないであろう自身の生活に、自然と笑みが零れる。

 空が徐々に赤みを帯びてきた頃、ラグナはパーティーに着ていくスーツをクリーニングを頼んだ店に取りに行くため、近頃愛着がわいてきた自身のバイクに跨り、街へ出る。店でスーツを受け取り、寮へと戻った頃には、空は赤から群青へグラデーションがかかっていた。スクロールの時計を見るとパーティーの開始まであと1時間を切っている。ホールが開場する時間にピュラと待ち合わせているため、のんびりしている時間はないと準備を始めた。

 汗を流し、右腕の馴染みのストッキンググローブの上に、皺一つ無いシャツとスーツを身に着け、ネクタイを締める。いつもとは違う革の手袋を装着したところで、ふと鏡に映る見慣れない自身の姿に苦笑した。

 ラグナは過ごしてきた境遇ゆえに、容姿に対する美醜の感覚を磨く機会がなかった。もちろん、関わった人達の中には、見目麗しいと言って差し支えない者も多くいたわけだが、こと自身の容姿に関しては、主にレイチェルに「冴えない」やら「間抜け面」、「悪人面」といった罵詈雑言を浴びせられたこともあり、自己評価は高くはなかったのである。実際には高身長なスタイルと少し強面ではあるものの弟のジンとはまた違うベクトルでの整った顔立ち、加えて復讐と「全世界の敵」としての役目から解放され、本来の穏やかな表情を浮かべることが多くなった彼の容姿は、客観的に見れば評価は高いはずだった。その証拠に、ラグナに自虐的な感覚を植え付けた張本人であるレイチェルを筆頭に、ラグナの事を容姿も含めて好ましく思っていた者も少なくはないわけだが、今となってはラグナには知る由もない。

 

「そろそろ行くか」

 

 待ち合わせの時間に迫る時計を見て呟き、部屋を出る。日が傾くにつれて、ラグナは経験したことのない類の感覚が自分の中にあるのを感じていた。それがなんなのか、ラグナは答えを見出すことはできなかった。待ち合わせに指定した広場中央の大噴水に向かう足が、無意識に速まる。

 噴水前に到着した後も、不思議な感覚は落ち着かず、腕を組み、目を瞑って、感覚の正体を思案した。

 

(なんだ…?

焦りを募らせるような、胸が少しだけ締め付けられるようなこの感覚は…

不思議と、不快ではないような…)

 

「ラグナ、お待たせ」

 

 考えに耽っていたラグナは、かけられた声に閉じていた目を開ける。すると目に映ったのは鮮やかな緋色のドレスを纏った女性だった。

 

「いや、まだ時間じゃねえし待ってねえよ」

 

 アカデミーの時計を確認すると、待ち合わせよりも5分程早い時刻を示していた。最早待ち合わせの決まり文句のような言葉を返し、ピュラを見る。

 彼女のトレードマークでもある髪色に合わせたドレスは、肩と背中を露出させ、腰の下からサイドスリットが入っている。いつもの戦闘衣は動き易さを重視した作りになっているが、ドレスの彼女は優美なオーラを纏っていた。

 

「どうかした?」

「こういう時、気の利いた事1つでも言えりゃ良いんだろうが…

経験がねぇから月並みな感想しか出てこなくて悪い。似合ってると思う」

 

 ラグナの精一杯の褒め言葉に、ピュラはクスクスと笑った。

 

「ありがとう。ラグナのスーツ姿も似合っているわね」

「そりゃどうも。じゃあ、行くか」

「ええ」

 

 そう言うと、ラグナはオズピンから教わった通り、自分の肘をピュラに差し出す。ピュラの手が腕に添えられた事を確認し、ラグナはいつもよりもゆったりとしたペースで歩き始める。少し歩いた後、ピュラが口を開いた。

 

「少し意外だわ。ラグナがこんなにしっかりとエスコートしてくれるなんて」

「ある人にガッツリ仕込まれてな。俺も柄じゃねえのは分かってんだが…」

「意外とは言ったけど、変とは言ってないでしょ?

少し大人びてる貴方に合ってると思う。私達の中でもお兄さんみたいな感じだしね」

「前にもお前にそんな事言われたな」

 

 ピュラの言葉に、ラグナは少し照れ笑いをしながら返す。ラグナが大人びてるのは、シフトした際に身体年齢が逆行したためというのもあるが、元来の兄貴肌な側面も大いに影響していた。

 ラグナは元々、ジンやノエル、その友人達と接してきたため、年下と関わる事自体には忌避感は無い。むしろ、これまで一般的な生活は送って来れなかった事で、新鮮にアカデミーでの生活や、今の友人との関わりを楽しむ事が出来ていた。

 

(ああ、そうか…)

 

 そしてラグナは心の中で腑に落ちたように、自身を襲っていた不思議な感覚の正体を悟った。

 

(俺は…高揚してるんだな…

生まれて初めて、なんの目的意識もなく、ただ日々を過ごしてる。自分自身の為に生きている。初めて経験する事で、自分がどう感じるのか、どんな事が起こるのか、分からない事を楽しみにしてる。

俺は今、生きる事を『楽しんでいる』んだな…)

 

 弟妹を守るため、大切な人の復讐のため、世界を壊す(守る)ため、いつだって他者の為に命懸けで戦ってきたラグナ。それも自分が選んだ人生であったが、「蒼の意志」との対話の中で見透かされた「願い」である、己の、自分の為だけの新しい人生に胸を躍らせていたのだった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「お、来たね」

 

 パーティーの会場であるホールに着くと、幹事であるヤンが2人を出迎えた。傍らにはルビーがおり、ヒールに慣れていないために、ヨタヨタと産まれたての子鹿のような動きを見せていた。その動きに三者三様に笑い声をあげ、ルビーは頬を膨らませた。

 ホール内では既に、多くの人で賑わっており、中央ではダンス、その周囲では食事や会話が大いに盛り上がっているようだった。

 

「すげぇ盛り上がってんな」

「ふふん、そうでしょう!私とワイスが頑張って準備したからね」

「そうだな、お疲れさん」

 

 自慢げに言うヤンに、ラグナは労いの言葉をかける。

 

「ブレイクは来てる?」

 

 ピュラの問いに、ラグナもホールを見渡して、ブレイクの姿を探したが見つからない。

 

「まだ来てねえみたいだな」

「来てくれると良いんだけどな…」

「心配しなくても、ブレイクは来るよ。一緒に踊る約束もしたしね。

あんたらは余計な心配してないで、楽しんで来て。ほらラグナ、あんたがちゃんとエスコートしないと!」

 

 ルビーの不安そうな表情とは裏腹に、ヤンは自信たっぷりに言い、まだ不安そうにするルビーとピュラを尻目にラグナの背中をバンと叩いた。

 

「ああ、分かったよ。ピュラ、行くか」

「ええ」

 

 ヤンの促しに、ラグナはピュラを伴いホールの中央付近に躍り出て、ダンスの姿勢を作る。丁度、曲の節目が近かった事もあり、2人は自然にダンスを行う雑踏の中に入り込んだ。

 ダンス中にヤンやサンと笑顔でダンスを踊るブレイクの姿も見えたため、ピュラと揃って安堵の表情を浮かべる。

 

「良かったわね」

「ああ、ひとまずは安心って感じだな。それはともかく、お前は楽しめてるか?」

「ええ、とっても」

「それなら良いが、なんかあったら言えよ?」

「大丈夫よ。ふふ…今までで1番、楽しいパーティーになったわ」

「そうか」

 

 ピュラの満開の笑顔に、ラグナもつられて微笑む。穏やかな表情を見合わせながら、2人はダンスに興じたのだった。

 

 しばらくの間ダンスを踊った後、休憩の為に椅子に腰掛け、他の人のダンスを眺める。その中には無事、ワイスとダンスを共にするジョーンの姿もあった。ジョーンはダンスが得意だったようで、少しシビアなダンスを行うワイスにしっかりと付いて行き、ワイスが驚きを得る結果となった。ジョーンはピュラからのアドバイス通り、真摯な姿を見せる事で、ワイスから自身に対する認識を、まずは1つ改めさせる事が出来たのだった。

 

「ラグナ、ちょっと良い?」

 

 不意にかけられた自分に対する呼び掛けに振り向くと、ヤンがルビーの手を引いて歩み寄ってきていた。

 

「ああ、どうかしたか?」

「私達とも踊ってくれないかな?

ルビーが一度も踊ってないのに『もうフードに着替える〜』ってベソかいててさ」

「もう、お姉ちゃん!私はいいって言ってるのに!」

「そんな事言わないの、せっかくそんなに可愛くドレスも着たんだから、踊らないと勿体無いよ。何事も経験ってね。

ね、ラグナ、どうかな?」

「俺は構わねえが…」

 

 そう答えながら、パートナーであるピュラに目を向ける。

 

「私なら大丈夫よ。私も久しぶりのヒールで足が疲れちゃったし、ここから観させてもらうわ」

「そうか、じゃあ少し行ってくる」

「ありがとうピュラ、少しだけラグナを借りるわね」

「ええ、ヤンも頑張って準備した分、思い切り楽しんでね」

「うん!

よし、じゃあルビー、先にお姉ちゃんが見本を見せるから、ちゃんと見ててね」

「うぅ…分かったよ…」

 

 項垂れるルビーを横目に、ラグナはヤンに手を引かれて、再びホールの中央に歩み出る。ダンスが始まると、ヤンは少し目を伏せて言った。

 

「本当はね、ルビーの事も建前だったの」

「ん?」

「だってこれだけ頑張って準備して、ドレスまで着込んだのに、ブレイクと踊った後は踊る相手もいなくてさ。もちろん、ブレイクもワイスも楽しそうで嬉しいけど、私だけなんか置いてかれてる気がして…

だから、こうやってあんたと踊れて良かった」

 

 少し暗さを残しながらも、快活な笑顔で話すヤンに、ラグナは少しだけ目を見開き、そしてフッと笑った。

 

「お前はルビーの姉貴だからって、みんなより大人でいようとする節があるみたいだが、お前も周りのみんなと変わらねえ年なんだから、少しぐらい我儘に、誰かに甘えたり、頼ったりしていいと思う」

「え?」

「俺だってこの右腕の事でお前に助けられてる。今回のブレイクの事は、お前が動いてくれたお陰で、いい方向に進んだんだと思うが、誰だって寄り掛かられるには限界があるんだ。頼り頼られ、持ちつ持たれつでいこうぜ」

 

 ラグナの言葉に、ヤンは少しの間ラグナの顔を見つめ、そして吹き出した。

 

「ふふ、はははは!そうね!

じゃあまずは、あんたに寄り掛からせてもらいましょうか!」

「ああ、そうしろ」

 

 ヤンは見透かされた照れ隠しをする様に、ステップを早める。ラグナも負けじとそれについて行き、ヤンは再びパッと笑顔を咲かせる。そこに暗さは無かった。

 

 ダンスが終わり、ヤンは「じゃあルビーをよろしくね」と言い残して、幹事の仕事に戻っていった。

 当のルビーはというとーーー

 

「あはは…やっぱり私は遠慮しておこうかな〜って…」

 

 苦笑いを浮かべながら尻込みを続けていた。それに対して、ピュラが慰めながらも背中を押している。

 

「ルビー、ヤンの言う通り、何事も経験しておくのは良い事よ?

せっかく来たんだから、貴女も楽しんで来て。ね?」

「でもでも、私はオシャレ系じゃないっていうか、ダンスは無理っていうか…

ラグナの足を踏んじゃうかもしれないし…」

「……念の為、足を強化しておくか…」

「ほらぁ!もう私帰るぅ!」

 

 ラグナの言葉にルビーは悲鳴をあげる。今にも泣き出しそうなルビーに、ラグナは手を差し出した。

 

「冗談だ。ほら、俺も素人なりにリードできるようにすっから」

「本当?」

「本当だ、とっとと行くぞ」

「うわあ!?」

 

 痺れを切らしたようにラグナはルビーの手を掴んでそのまま引き寄せ、勢いでダンスの姿勢を取らせた。ルビーが慣れないヒールで足を挫かない様に気を払いながら、戸惑うルビーに少しずつ、ステップを踏むように促す。ルビーの足がステップを刻み出したのを確認し、ダンスエリアへと誘う事で無事、ルビーもダンスを踊る事が出来た。

 

 それと時を同じくして、受付に戻ったヤンの前にまた1組の男女がパーティーに参加するためホールへ到着した。

 

「いらっしゃい、間に合ったね」

「ああ、見逃せないからな」

 




ラグナのスーツ姿のモデルは、ブラッドエッジ・エクスペリエンス発売の時に森Pが書いてTwitterに載せてくれていた姿をイメージしています。あれをしっかりボタン留めて、ネクタイ締めてる感じです。
ネットで「ラグナザブラッドエッジ スーツ」で画像検索すれば見れると思います。

では、恒例の謝辞を
今回もお読み頂きありがとうございました。
また次回。
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