元全世界の敵のなんだかんだ奮闘記   作:天然黒酢

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先行公開見れなかった悔しさを力に変えて。
\( 'ω')/ウオオオオアアアーーーッッ!!


喧騒の隙間から

 

 ルビーとのダンスを終えたラグナは、立て続けに3人と踊った事で熱を持った身体を冷まそうと、ピュラ、ルビーと共に上階にあるバルコニーで涼みに出ていた。手にはドリンクのグラスを持ち、談笑に華を咲かせている。

 

「どうだ?

ルビー、楽しめたか?」

「すごく楽しかった。オズピン先生にも言われたけど、ダンスってバトルと似てるんだね」

「オズピン学長がそんなことを?

まあ、確かに相手の動きを読んで、合わせて動いたり、似ている部分はあるかもしれないわね」

「ま、楽しめたんなら上々だ」

「うん、ありがとう、ラグナ」

 

 ルビーの晴れやかな表情から発せられたお礼の言葉に、ラグナも笑みを浮かべながら、短く「おう」とだけ返し、グラスを傾けた。

 

「ブレイクも気分転換できたみたいだし、ジョーンもワイスと踊れたみたいで良かったよね」

「頑張ってくれたヤンとワイスには感謝しなくちゃね」

「そうだな」

「でも、ネプチューンが踊れないって聞いたときはびっくりしたよ。あれこそオシャレ系っていうか、こういうの得意そうな雰囲気だったじゃない?」

 

 バルコニーに出てくる前、ワイスと踊るジョーンを羨ましそうに見つめるネプチューンを発見したルビーが、ネプチューンに「踊らないの?」と声をかけたところ、彼は「踊れないんだ」と弱弱しく吐露した。それに対し、ルビーが羨ましそうに見ていたことを指摘すると、「ワイスにダンスに誘われはしたが、踊れないことを気にして断ってしまった。あんなに踊れるジョーンが羨ましい」とぽつぽつと零した。しかし、同じくダンスに対して消極的だったルビーが、滲み出る後悔の念を感じ取り、「ワイスは『踊れない』なんて小さいことを気にして人を見るような子じゃないよ」と諭すと、ネプチューンは覚悟を決めたように、ジョーンとのダンスを終え、幹事の仕事に戻ろうとしていたワイスに声をかけに行ったのだった。

 

「誰にだって苦手なモノやコトの1つや2つあるだろうよ。それを悟らせないようにしてるのはあいつの努力だろ」

「「………」」

 

 バルコニーを通り抜ける風を心地良く感じながら、そう言うラグナの背中に、2人のジーッとした目が突き刺さる。

 

「なんだよ?」

「いや、ラグナの苦手なモノってなんなのかな~って思って」

「そうね…

戦うのは勿論だけど、勉強、料理、今回のダンスとぱっと見、縁がなさそうなものも難なくこなせちゃうから苦手なモノなんて思いつかないわ」

「勉強は元々は得意じゃなかった。難しい事を考えんのは苦手だったし、そういうのを専門にしてるのが周りにいたからな。ダンスもここに来るまで手に付けたこともなかったぜ。それでも人並みにこなせるようになれたのは、教えてくれた人のやり方が上手かったんだろうよ」

「ふーん…?

でも、今でも苦手な物の1つぐらいはあるんじゃない?」

「まあ細かい作業をちまちまやるのは苦手だな。裁縫とか多分出来ねえ」

「そういう事じゃなくてさ〜。ラグナの弱点とかってこと!」

「それを聞いてどうする気だよ?」

「え〜、別にどうもしないよ~?」

「あったとしても絶対(ぜってぇ)言わねえ…」

 

 揶揄うように目を細めるルビーと興味深そうに耳を傾けるピュラから逃れるように、そっぽを向きながらぶっきらぼうに呟く。ラグナ自身は強がって認めていないが、幽霊が苦手という事がバレた日にはどうなるか、想像に難く無かった。

 Boo!とでも言いたげに「教えてよ〜」とごねるルビーを気に留めないようにしながら、話題を変えるべく話を振った。

 

「しかし、ジョーン的にはネプチューンは強力なライバルって事になるのかね?」

「あ、誤魔化した」

「まあまあ、ルビー、言いたくない事を詮索するのは良くないわ。これからも一緒にいれば、今回のネプチューンみたく自然と知れると思うから、それを待ちましょう」

「それもそうだね」

 

 ラグナはルビーとピュラの結託に、薄寒さを覚えながらもひとまず話題を終わらせられた事に安堵した。

 

「うーん、ジョーンとネプチューンか…

ワイスは家柄とか、表面の情報だけで擦り寄ってくる人達にウンザリしてるって言ってたけど、2人ともそんな感じじゃなさそうだけど…

ピュラは、ジョーンのことを応援してるよね?

余計な事しちゃったかな?」

「そんな事ないわ。ジョーンもネプチューンも良い人だと思うし、最終的に選ぶのはワイス自身だもの。ジョーンが上手くいくにせよ、いかないにせよ、ワイスはしっかり相手を見て、選択してくれる人だと思うから」

 

 ピュラの言葉に「そっか」と納得したような声を上げるルビー。そういった色恋については全く経験がないと思っているラグナは、初めて聞く他人の恋バナを、少し場違いな感覚を覚えながら耳に入れた。

 それからまたしばらく話続けていた時、持ってきたドリンクを飲み干してしまったラグナは、2人のグラスも空になっている事に気付く。

 

「そろそろ戻るか?」

「風が気持ちいいし、もう少しだけここにいようよ。ブレイクの事とかで変に気疲れしちゃってたから」

「そうね、少しゆっくりしていきましょうか」

「じゃあ、飲み物取って来るわ。何が良い?」

 

 2人のグラスをひょいと取り上げ、有無を言わせないように問う。2人は各々、礼の言葉と自身の希望を口にした。

 

「じゃあちょっと待ってろ」

「うん、よろしくね。ん?」

 

ラグナが背を向け、階段を降りようとした時、手すりにもたれかかっていたルビーが不思議そうな声をあげる。その声にラグナが振り返ると、額に手を当てかざして、遠くの方を見つめるルビーの姿があった。

 

「どうした?」

「今、屋根伝いに走ってる人がいて…」

「なに?どこだ?」

「あっちの方に向かったみたい」

「こんな時間にそんな人がいるなんて、怪しいわね」

 

 ピュラの言う通り、人目につきにくい夜間に屋根伝いに走る人物は怪しさ満載である。ルビーの指差した方向を、視力を強化して遠視するが、既に人影を認める事は叶わなかった。

 

「ビーコンに来たのか、ここからどこかへ行くのかわからねえが、トーチウィック達のことがある以上、楽観視しない方がいいだろうな。あっちの方には何があったっけか?」

「あ、あっちって以前ワイスと行ったCCTタワーがある方だ」

「そのタワーって通信システムの管制塔みたいな建物よね?

そんなところに向かうってことは誰かと連絡を取り合うのが目的かしら」

 

 ラグナも名前を聞いて、「あそこか」と声を漏らす。何度か近くを通り見たことがあったが、実際に入ったことはなかった。

 CCTタワーとはCross Continental Transmitタワーの略でピュラの言った通り、公共的に使われる電波の管制塔の役割を持つと共に、大陸間通信システムの中継点として、4つの国の通信を司るものだとオズピンから聞いたことがある程度であった。

 

「わからねえが、秘密裏に連絡を取るのにそんな目立つところに行くか?」

「まさかハッキングとか!?

通信をダメにしちゃったり、盗み聞きしたりしようとしてるのかも!?」

「無い話じゃねえな。そんだけの重要施設なら警備してる人もいるだろうが、なんだか嫌な予感がする。とりあえず、俺はそいつの行った方向を追う。お前らは…」

 

 ラグナが言葉を言い終える前に、彼の横を2つの風が通り抜ける。ラグナが風を目で追うと、すでにルビーとピュラが駆け出しているのを捉えた。

 

「もちろん私も一緒に行くよ!」

「私も。ルビー達が追ってる人達に関係してるなら見過ごせないわ」

 

 2人は手すりに手を掛け、バルコニーから飛び降りる。

 

「お、おい!」

「前の港のダスト強盗の時みたく、ラグナにだけ任せるなんて嫌だからね。(あだ)ぁ!!」

 

 慣れないヒールだということを忘れていたらしく、勢いよく飛び降りたルビーは、見事に着地失敗し、これまた綺麗に転び、頭部を強打していた。オーラで防いでいなければ大怪我を負っていたことだろう。

 ラグナは額に手を当て、やれやれと首を振った後、2人に続いて飛び降りた。2人の戦闘能力がアカデミー内でも指折りであることはラグナも知っていたし、ここで2人の説得に時間を使ってしまうよりも、急いで謎の人物を追った方が良いと判断したのである。それに以前の埠頭での戦闘と同じように、人手が必要になる可能性も考えられるため、2人に協力してもらうのも吝かでは無かった。

 着地したラグナは、傍にいる2人を見据えて言った。

 

「仕方ねえ、早いとこそいつを追って、目的を確かめるぞ。ただし無理はしないことだ。特にお前らはいつもより動きにくい格好なんだからな。手に負えないと思ったら、逃げて助けを呼べ。幸い、街中になるだろうし、トーチウィックの一派だとしたら、相手は人目には付きたくないだろうからな。戦闘になるかはわからねえし、時間が惜しいからこのまま行く。戦闘になりそうなら、ロッカー毎飛ばして武器を回収するから準備しておけ」

「わかった」

「了解」

 

 全員でコクリと頷き合い駆け出した。

 




今回少し短めですが、ここで切らないとめちゃくちゃ長くなりそうだったので一旦ここまで。
頑張って書くぞ〜。

では恒例の謝辞を。
今回もお読みいただきありがとうございました。
また次回。
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