元全世界の敵のなんだかんだ奮闘記   作:天然黒酢

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感想、評価等、ありがとうございます。

改めてRWBYの原作動画見返してみると、説明無いけどあれどうなったんだろう?っていう疑問があったりするので、そういうのを想像とラグナの存在で埋めるように書いています。


タワーの惨状

 

「っ……こいつは…」

 

 CCTタワー前に到着したラグナ達の目に映ったのは、タワー前に倒れ込む警備兵たちの姿だった。見たところ呼吸はしているため、全員命はあるようだが、明らかな異常事態に、ラグナはすぐにスクロールを取り出す。

 

「通報するの?」

「いや、下手に警察沙汰にして騒ぎにすると混乱を広げちまう可能性がある。まずはオズピンに連絡して、指示を仰いだ方が良い。突入するにしても、めんどくせえが、俺達は扱いとしてはハンターじゃなくまだ生徒だ。勝手に動くとアカデミーの責任者のオズピンに迷惑が掛かるかもしれねえしな」

 

 学長を呼び捨てにするラグナに、2人も不思議に思う気持ちはあったが、今は小さな疑問よりも目の前の惨状に対処することを優先すべきだと理解していたため、何も言わずに、スクロールを耳に当てるラグナを見つめた。しかし、少ししてラグナは少し苛立ちを含んだ声で悪態を吐いた。

 

「クソ…繋がらねえか…

あの人が出ないなんて殆ど無いんだが、如何せん今日はタイミングが悪いな。このタイミングを狙われたとも言えるが…」

「私が戻ってオズピン学長に伝えるわ。怪我人の救護には男手があった方が良いでしょうし、今日に限っては、ルビーよりも私の方が早いと思うから」

「う…ごめんね…ピュラ」

 

 申し訳なさそうに謝るルビーの肩をさすり、「いいのよ」と微笑むピュラ。ピュラの状況判断能力の高さから導き出された提案に、通信がつながらない以上、直接伝える他ないとラグナも結論付ける。幸い、パーティー会場からCCTタワーまではそこまでは離れてはいない。急げば10分もかからずにオズピンの耳に届くだろう。

 

「頼む。あと、見たところ兵士達は気絶してるだけみてえだが、もし命が危ない奴がいた場合、騒ぎになることも承知で救急隊を呼ぶ。その事も伝えてくれ」

「ええ、任せて」

「ルビー、俺達はオズピンからの連絡が来るまで怪我人の救護と手当てだ。あと念のため、ロッカーを呼んで武装しておけ」

 

 ピュラはくるりと身を翻し、来た道を戻るために走り出す。ラグナとルビーはスクロールでアカデミー内にある、自身のロッカーを呼び出す。すぐにまるでロケットのように飛翔したロッカーが、ラグナ達の前に突き刺さり到着した。ラグナがアラマサを、ルビーがクレセント・ローズをそれぞれ背負い、負傷した兵士の元へ急いだ。

 的確に意識を刈り取っている侵入者の技量に舌を巻きながら、タワーの出入り口、そしてエントランスに倒れている兵士一人一人の呼吸、心拍を確かめる。幸い、命まで取られている者はいないようで、ホッと胸を撫で下ろした。

 

「侵入者はやっぱメインシステムにアクセスできる上の階に向かったみたいだな。ルビー、逃げるそいつと鉢合わせる可能性があるから注意しろよ?」

「うん、わかってる。……あ!」

 

 ルビーは何かを見つけたと言わんばかりに駆け寄った先には、先ほどまでと同じく兵士が倒れていた。ルビーが膝を付き、兵士を仰向けの体勢に直すと、ラグナへ声を発した。

 

「ラグナ!この人、意識があるみたい!」

「っ!本当か!?」

 

 その声に、ラグナもすぐさまその兵士に駆け寄る。ルビーの言う通り、その兵士は意識を失ってはおらず、「ぅぅ…」と呻き声を漏らしながらも微かに目を開いた。

 

「……き…みたち……は…?」

「今はそんなことはいいだろう。なにがあった?」

「…かめ…んのおん…なが……」

「仮面の女?

ホワイト・ファングか?」

 

 仮面と聞き、一番可能性の高い候補を問いかけるが男は首を横に動かした。

 

「奴らじゃ…ない…黒い…小さな…仮面…上に…向かった…」

 

 最後の力を振り絞ったのだろう。情報を伝えようと単語で区切るように言葉を紡いだ兵士は、その言葉を最後に意識を失った。兵士は呼吸が弱弱しく不規則で、ラグナは兵士の頸動脈に手を脈拍を確認するが、拍動も弱い。命の危険があると判断したラグナは、救急に連絡する為、スクロールを取り出す。

 その時、タワー内にある画面という画面全てが起動した。

 

「今度はなに!?」

 

 ルビーの悲鳴とともに起動した画面を見渡す。それらは一様に共通した画像を映していた。

 

「これは…クイーンの駒…?」

「みたいだな。なんにせよ、その仮面の女が上で何かをやったのは間違いないだろうな」

「止めないと!」

「おい、待て!ルビー!」

 

 ルビーが一階で待機状態にあったエレベーターに乗り込む。スクロールで救急に連絡を始めていたラグナが気付き、制止しようと声を発した時には既に、エレベーターのドアは閉まり、ランプがエレベーターの上昇を示し始めていた。

 舌を打ちながら、救急に繋がったスクロールに救急車と人員の派遣を短く依頼したラグナだったが、連絡を終えても、命の危機にある兵士を放っておく訳にはいかない。兵士の口がパクパクと動き、途切れ途切れにスーッという吸気を行う。それを見たラグナはすぐに兵士の胸骨圧迫を開始した。今、兵士が行っていた呼吸は「死戦期呼吸」と呼ばれるもので、兵士の心肺が停止している事を表しているからである。

 

「こういう時、セリカみてぇに回復出来る何かが使えたらって考えちまうな…!」

 

 ラグナは恩人であり、仲間でもあるシスター(セリカ)の姿を思い出しながら蘇生を続ける。胸骨圧迫と人工呼吸を繰り返しながら、必死に兵士の心臓を動かし続けた。

 

「もう誰も、失いたくねぇってんだよ…」

 

 ラグナは命が奪われる事に関して、並々ならぬ忌避感があった。もしそれが、それまで自身と関わりのない人物だったとしてもである。

 それは、ラグナ本来の優しさと多くの人を不幸にしてしまった罪の意識に起因していた。自身が災いを振り撒いたという事実は消えない。「神の観る夢(セントラル・フィクション)」として、(ジ・オリジン)が描いた世界だったとしても、(ジ・オリジン)を救う事が出来た時に、妹と共にその罪も背負っていくと決めたのだ。だからこそ、自身の手が届く限り多くの人を救う事が、せめてもの罪滅ぼしだと考えていた。

 いつかイカルガでシシガミ=バングが言った「何のために戦うのか」という問いに対し、「失わない為、そして守る為」という答えがラグナの力の根幹である。それは世界を跨いだ今も変わらない。

 

「っ…なんだ…?」

 

 もう何度目かもわからない胸骨圧迫を続けていた時、ラグナが纏っていたオーラが、自身の掌から兵士へと移っていくのが見えた。兵士へと移ったオーラは、淡く瞬きながら兵士を包む。普段から自身の武器などにオーラを這わせる事はあったが、他の人間に対してオーラを使うという発想は無かった。しかし、今は細かい事を考察する時間は無いと、ラグナは蘇生処置を続行した。

 

「なんだこれは!?」

 

 タワーの入口から驚愕の声が聞こえた。ラグナが首のみを回して入口を見ると、男が1人目を見開いて立っていた。

 

「アイアンウッド将軍?」

「君、一体何があったんだ!?」

 

 ジェームズ・アイアンウッドは胸骨圧迫を続けるラグナを見つけて駆け寄ってくる。ラグナはアイアンウッドと直接の面識は無いが、オズピンから、彼はアトラスの学長であり、女神や遺物(レリック)について知る人物であると聞かされていたため、早口で捲し立てた。

 

「生徒の1人が上の階で犯人と鉢合わせてる可能性がある!すぐに向かってくれ!」

 

 ラグナの切羽詰まった言い方に、流石は軍人と言うべきか、行動は早かった。すぐにエレベーターのボタンを押し、エレベーターが到着するまでの間に短く問う。

 

「君は?」

「ラグナだ」

「ラグナ、犯人は?」

「俺は実際には見てない。この兵士の話だと黒い仮面の女らしい」

「今の状況は?」

「オズピン学長に使いを出して、命の危険がある奴がいたから救急は呼んだ。そろそろ着く頃だと思う」

「わかった」

 

 エレベーターが到着し、アイアンウッドが乗り込もうとした時、再び顔を顰めると兵士を2人、エレベーターから降ろした。

 

「この兵士達も頼む。呼吸は大丈夫だ」

 

 ラグナがコクリと頷くと、エレベーターのドアが閉まる。徐々に近付いてくるサイレンの音を耳に入れながら、あと一息と踏ん張りを入れるのだった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 あの危険な状態にあった重体の兵士を含めた重傷者数名が救急搬送され、タワーの周りではその他の負傷した兵士が医療班の手当てを受けている。一先ず、救急隊が到着した時に、兵士は脈拍が40回/分程に回復していたと言われ、まだ予断を許さない状態ではあるが、一先ずホッと肩の力が抜けた。

 混乱を最小限にするため、警察を含む各所へ根回しをしてくれていたというオズピンと、それに協力していたグリンダ、ピュラと合流したラグナは、ルビーと共に状況の共有を行なっている。

 ルビーは最上階で、仮面の女と戦闘になったが、アイアンウッドの到着時、振り返ったルビーの目を盗んで逃げられてしまったという。その話を聞いて、危険な単独行動をしたルビーに対し、合流するや否やデコピンをお見舞いしたラグナだった。しかし、これ以上仮面の女を放置していた場合、どんな事になっていたか想像が付かないため、それ以上咎める気もしなかったのも事実であった。

 アイアンウッドは警察とアトラス軍で連携して、逃げた女の足取りを追う為、一足先に警察へと赴いている。

 

「ラグナ、大丈夫かい?」

「ああ、少し草臥(くたび)れたが問題ねぇよ。とりあえず、犠牲になった人がいなくて良かったぜ」

「本当にありがとう。君が動いていなかったら少なくとも彼は助からなかった。今日はもう遅い。また明日、改めて今日の状況を教えて欲しい。我々はCCTタワーに何を仕組んだのか確かめなければならないからね」

「わかった。帰るぞ、ルビー、ピュラ」

 

 トントン拍子に話が進み、踵を返すラグナに少し戸惑いがちにしつつ、ルビーとピュラがオズピン、グリンダに一礼してからラグナに追従する。しばらく歩いた後にピュラが口を開いた。

 

「ねぇ、ラグナ」

「ん?」

「ラグナってオズピン学長と知り合いなの?

妙にくだけてるというか、ラグナも学長に対して、呼び捨てでタメ口だし…」

「そう!私もそれが聞きたかったの!」

「あー…あんまりこういう事言いふらすべきじゃねえとは思うんだが…お前らになら良いか…

俺もルビーと同じようにオズピンにスカウトされてビーコンに入学したんだが、それが入学の半年以上前でな。その後、孤児だった俺の後見人になってくれたどころか、俺を自分の家に居候させてくれてな。その間、俺に色んな事を教えてくれた恩人だ。お前らが言ってた勉強やダンスを教えてくれたのもあの人なんだよ」

 

 想像だにしなかった回答に2人は唖然とする。

 

「お前ら以外には誰にも言うなよ?

アカデミーの学長が特定の生徒に入れ込んでるとか言われかね無いんだからな。ただでさえ苦労が絶えないみてえだし、これ以上面倒な事を増やしたくねえ。

特にジョーンやノーラはうっかり口を滑らせそうだから、釘を刺しとけ?」

 

 冗談めかしてそう言うラグナは、前を歩きながら2人から顔が見えないように目付きを鋭くする。敵が本格的に行動を開始した事が示され、心地良い夜から一転、胸騒ぎを強める事になってしまった。

 今日という日を狙う敵の忌々しさに、ラグナは怒りを胸に秘めた。

 

(絶対に…思い通りにはさせねえからな…)

 




今年の夏アニメ、RWBYを筆頭に結構気になるの多いんですよね。

では恒例の謝辞を
今回もお読みいただきありがとうございました。
また次回。
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