元全世界の敵のなんだかんだ奮闘記   作:天然黒酢

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久々に日刊ランキングに載せて貰えるほどの驚異の伸び方…
アニメ化効果ってしゅごい…(小並感)

また、評価者の人数が100名を突破致しました。多くの人に気に入って貰えている事を実感します。いつも応援していただいている皆様に感謝しつつ、これからも楽しんでいただけるよう頑張ります。

それでは、本編をどうぞ。


初任務へ

 

「鞄は置いて行きなさい。今回の任務の目的は偵察。よって、我々は任務の遂行に当たり、特定の基地などは持たない。危険地帯を何kmか進んだ後、防御の可能な望ましい場所が見つかり次第キャンプを張ることとする。心配せずとも必要な物資の積み込みは済んでいる。航路と飛行船の確保もOKだ」

 

 一行のあんぐりとした表情を他所に、ウーブレックは右往左往しながら矢継ぎ早に捲し立てる。授業と何も変わらない歴史科教師に一行の顔が苦笑いへと変わっていく。

 

「それから、ウーブレック『博士』だ。道楽で博士号を取ったわけではない。わかったかね?

では、出発しよう。既に予定より3分の遅れが出ている。急いでくれたまえ」

 

 いつか仲間たちとのお出かけの際にも話題が上がったおなじみの指摘も飛び出し、こちらから何かを聞く暇もなく、飛行場の奥に待機している飛行船へと走り去っていった。

 

「よーし、それじゃあ行こうか!ウーブレック博士と一緒に世界を救お〜う……

って声に出すと余計虚しくなってきた…」

「世界を救うだって!?

私たちをおいて世界を救う任務に行っちゃうってこと!?

すごいショック!悲しい!お腹すいた!」

「すげー楽しそうじゃん。どこ行くの?」

 

 ルビーが自身の発言にちぐはぐさを覚えたのか肩を落としていると、背後から〈JNPR〉の面々から声がかけられた。

 

「王国の南東部の郊外だよ」

 

 ルビーが行き先を告げた途端、ピュラの顔が微かに沈む。先ほど「南東部に敵の隠れ家がある」という話を聞いている彼女は、危険へ飛び込もうとしている友人達を案じたのだった。

 

「そうなんだ、ワイスも気を付けてね」

「ええ、優雅で軽やかな任務遂行をお約束しますわ。貴方も気を付けるのね、ジョーン」

「ああ。とは言っても、俺達は明日からだから今日はまだ実感湧いてないけど…」

「じゃあ今夜は俺達と決起集会しようぜ!」

 

 隣町の保安官に付くという〈JNPR〉に、ヴェイルの警察に付くというサン、ネプチューンも加わり、互いの研修先について話し合う。

 そんな和気藹々とした中で、ラグナの横にスッと身を寄せる者がいた、ピュラである。

 

「なんとなくそんな気はしてたけど、やっぱり南東部に行くのね」

「ああ。すまねえな、お前にだけ秘密を抱えさせて」

「それは良いわ。秘密を隠されるより、共有できる方が嬉しいもの。

……貴方に限って大丈夫だと思うけど、気を付けて。あと、あの子達の事もお願いね」

「言われるまでもねぇ、任しときな。お前も気を付けてな」

 

 ピュラは学長室での会話から、ルビー達が南東部へ向かう事はなんとなく予想がついていた。〈RWBY〉だけでなく、ラグナも共に向かうというのは頼もしくもあり、心配が膨らんだとも言える。ラグナの頼もしい言葉に少しだけ安心したのか、ピュラも表情を和ませた。しかしーー

 

「5分遅れだ!諸君!」

 

 飛行船からの聞きなじみある声に、全員が今回ルビー達に引率する人物を察し、顔を強張らせた。

 

「じゃあ……wish us luck(幸運を祈っててよ)

 

 その言葉と共に、1年生たちの初任務が幕を開けたのだった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 飛行船に乗り込んでからしばらくすると、都会の街並みから外れ、緑が辺りを占め始めた。もう少しで王国の国境に差し掛かるというところで、ヤンが言葉を発した。

 

「先生は戦うタイプじゃないと思っていました」

「まあ知性派をアピールしたいのは事実だ。しかし、私も1人のハンターとして、ありったけの戦闘経験は積んできている。そして私は歴史の専門家であると同時に考古学の知識もある。そこで学長は今回の任務に相応しいと考えたのだろう」

「関係ありますの?」

「なんと軽薄な質問だ、愚かな。歴史とは社会の(かなめ)だ。骨であり、肝臓である、腎臓だといっても過言ではない!」

 

 ウーブレックの更に勢いづいた言葉の数々に、ワイスは身を竦める。ウーブレックは歴史が社会を構成する()であり、学びを吸収し活かすための代謝器官(肝臓)であり、失敗や不必要なものを排除するための濾過器官(腎臓)であるということを言いたいのだろうが、一行にはあまりピンと来ていないようだった。

 

「ヴェイルの国境より南東部は原生林と深い洞窟の宝庫だ。そして、わが王国最大の失敗も象徴している」

「あ、マウンテン・グレン!」

「だよね!ヴェイル郊外にあった…

だけど…グリムに侵略されて王国から切り離された…」

「正解!今や負の遺産として、打ち捨てられた」

 

 マウンテン・グレンとは、ヴェイルが領土拡大政策の一貫で開発を試みた都市の名称である。独自の防衛機構と移動手段が配置され、国民の居住区域として開発されていたが、ヤンの言う通り、防衛機構の完成より先にグリムの侵攻に(さら)されてしまった過去を持つ。現在もグリムに支配され、開発当初のまま放棄されている。

 

「悪党のアジトにピッタリかも…」

「大正解」

 

 ブレイクの推理に、ウーブレックは自身の丸眼鏡を直しながら肯定する。考察を終える頃には丁度、マウンテン・グレンの街並みが姿を見せ始め、ラグナ達はウーブレックの指示に従い、降下準備を始めた。

 

 街の真ん中に降下したラグナ達を出迎えたのは、砂埃に塗れた色彩のない灰都の街並みだった。マウンテン・グレンの街はグリムが侵入し(にく)いように、まず高台を建設し、その上に街が形成されているが、それもグリムに侵略された今では虚しさを感じさせる。

 

「諸君、君らは生徒の身ではあるが、たった今ハンターとして初めての任務が始まった。ではこれより、私の指示は絶対だ。わかったかね?」

 

 そう語りかけるウーブレックがルビーに対して、指摘をぶつける。

 

「ルビー、鞄は置いて来いと言った筈だぞ?」

「でも、その時はまだ『指示は絶対』とは仰っていなかったので、持ってきました」

「ふむ…確かにな…

では、ここに鞄を置いて行きなさい。無用な荷物は邪魔になるし、我々の任務にそぐわない。任務が終わり次第、回収することとしよう」

「あ、実は…その~…」

 

 背負うリュックを置いて行けと指示するウーブレックに、ルビーは言葉を濁す。武器以外にここまで執着するルビーを見たことがなかった他のメンバーは、どんなものが入っているのかと疑問を抱いた。ウーブレックは指示に従わないルビーを不思議に思いながらも、徐々に苛立ちを募らせ叱責する。

 

「お嬢さん!何故そんなに置いて行かない!?

その鞄がそんなに大事かね!?」

 

 その時、ルビーのリュックから()()が顔を出した。クリっとした眼差しに柔らかそうな毛並み、開けた口からは白い犬歯を覗かせている。

 

「…犬?」

 

 ラグナがその正体を呟くと、ルビーを除く〈RWBY〉は皆「あちゃ~」とでも言うように頭を抱える。自身が背負う犬に向かって、「早くカバンの中に戻って!」などと既に手遅れな事を指示するルビー。ウーブレックの様子がさらに緊迫したものへと変わっていく。

 

「これは任務だ。死の臭いと敵に満ち、廃墟となった鉄とコンクリートのジャングルに、連れてきたのか?

犬を?」

 

 誰もが大声で怒鳴り叱られるルビーの姿を想像した。しかしーー

 

「天才!!!」

「「「「……え…?」」」」

 

 ウーブレックは先ほどまでと打って変わって、大手を振って称賛を口にした。ルビーのリュックから勢いよく犬を取り上げると、ルビーはその反動でクルクルと回りながら倒れ込んでしまう。ウーブレックはそれを気にも留めないまま、興奮の冷めやらぬといった様子で犬を天高く掲げた。

 

「イヌ科の動物は鋭敏な嗅覚と聴覚がある!我々ハンターの共にはピッタリだ!」

 

 手放しに犬を褒め称えるウーブレックに、ルビーは「私って天才!」と誇らしげに胸を張る以外はたじたじになる一行だったが、その中でラグナがヤンに問いかける。

 

「で、あの犬は何なんだ?」

「うちの実家で飼ってるツヴァイっていう子なんだけど、パパが『数日間留守にするから面倒を頼む』って送ってきたの。タイミング悪く私たちも任務だったから、一応寮の管理人さんにお世話を頼んでおいて、留守番させるつもりだったんだけど、置いてくるのが心配で連れてきちゃったみたいね」

「突然犬を送ってくるぶっ飛んだ非常識さとか、ハンターでアカデミーの卒業生なら生徒も任務で何日もアカデミーを離れることもザラにあるの分かるだろとか、そもそもペットホテル使えよとか、色々お前の親父さんには突っ込みたいことが山ほどあるんだが、そういうことなら、ルビーの気持ちも分からなくはねえな」

「よし、本題に入るか、気に入った」

 

 思わぬ調査のオトモの登場に機嫌を良くしたウーブレックは、ツヴァイを下ろし、現在の南東部の情勢について説明を始める。

 

「諸君も知っての通り、この南東部ではグリムの異様な密集と活発化が報告されている。グリムの活発化の要因はいくつか考えられるが、その一つがーー

グリムだ」

「えーと…はい?」

 

 脈絡の繋がらない話に思わず聞き返すルビー達。そんな中で、ラグナは背後の気配を察知して合点がいった。

 

「グリム、今現在も我々から100m圏内にいる」

「「「「ええ!?」」」」

 

 ラグナ以外の4人は、まだ気配察知の技術には疎いのか、驚愕しながら振り返る。そして、ビルの隙間から出てきたベオウルフの姿を捉えると、素早く武器を構えるがウーブレックによって止められた。

 

「止めろ!」

「え?」

 

 今にもグリムへ突貫しそうになっていた足を止め、戸惑いの声を上げる〈RWBY〉にウーブレックは続ける。

 

「ある一帯の地域にグリムが集まる理由は様々だが、彼らはマイナスの感情に引き寄せられる。悲しみ、嫉妬、孤独、憎悪に…

我々が追う敵にはそれらの感情が渦巻いている」

「それじゃあ、どうするんです?」

「あのグリムを追跡する。あのグリムが群れに戻れば、その群れの近くには集まるだけの理由があるということだ。その場所こそ、我々が調査すべき敵の隠れ家である可能性が高い」

「どれぐらい待ちます?」

「分からない…

数時間か、数日、数週間…

グリムは何ヶ月も群れから離れて暮らす事があるとも言われるがーー」

「残念ながら、そんなに待つ事もなく、そのプランはおじゃんのようだけどな」

「んん?」

 

 ラグナによって計画を否定されたことで、今度はウーブレックの口から戸惑いの声が漏れる。ラグナは賞金首として追われてきた過去と戦闘経験の多さから、敵意や気配に敏感であるため、今の現状を把握していた。

 

「どうやら、『ここ』に群れているみたいだからな」

「え?」

「しかも、俺達に気付いているらしい」

「「「えええ!?」」」

「なるほど、ならば計画変更だ。ここに群れがいるということは、この近くに敵の痕跡がある可能性が高い。グリムを殲滅しつつ、この区域一帯を調査する。さあ、少年少女達よ、実力を披露してくれ」

 

 ウーブレックの号令で全員が再び武器を抜き、向かって来る人狼型のグリムに対して応戦を開始した。

 




氷雪帝国の第一話拝見しました。色々な意見があると思うのですが、自分としては戦闘描写の綺麗さは流石だなと感じました。
このサイト内で可能なら氷雪帝国について色々話せる場所を作ろうかなとも考えてますので、少しお待ちを。規約とか、どこで作れば良いかとか調べます。

追記
雑談場所について、次話投稿の際にアナウンスしますので、少々お待ち下さい。投稿後すぐに読んで頂いた方には、方針が二転三転して申し訳ありません。
m(_ _)m

では恒例の謝辞を
今回もお読みいただきありがとうございました。
また次回。
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