元全世界の敵のなんだかんだ奮闘記   作:天然黒酢

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昨日投稿したとき、後書きに記載したURLではコミュニティに参加が出来なかったようで、投稿後すぐに読んでくれて、参加しようとしてくれた方には大変申し訳ありませんでした。

後書きの方に、参加出来る様に招待リンクを添付致しますので、是非参加頂ければと思います。

では、本編をどうぞ


ハンターとして

 

「ウーブレック博士、1つ聞いても良いですか?」

 

 外壁からの様子を確認した後、キャンプを張っている廃ビルへと戻る道中、ルビーがふと、ウーブレックに尋ねると。ウーブレックは足を止め、振り返った。

 

「君のチームメイトを質問攻めにする理由かね?」

「いや、まあ、それもなんですけど…

なんで先生は、ハンターになろうと思ったんですか?」

 

 これまでウーブレックが問うてきたものと同じ質問を、ルビーは彼へと投げると、ウーブレックはその疑問に対し、ルビーとラグナを交互に見てから語りかける。

 

「君達はこの光景を、どう思う?」

 

 ウーブレックに促され、閑散とした廃墟を眺める。砂埃を被った街並みは色彩を失い、モノクロの写真のようだが、街の間を吹き抜ける風だけが、今も流れる時の経過を証明していた。

 

「壊れた建物がいっぱい…人気のない道路…

なんか寂しい感じです」

 

 ルビーが虚ろな雰囲気を漂わせる街の現状を言い連ね、物寂しさを表した。ラグナも同意するように頷き、続いた。

 

「ああ、以前のこの街を見たことがなくても、少しだけ残った店の外観とか、並んでるビルとかで、ここに住んでた人達を想像しちまうな」

「そう、これは救えなかった『命の痕跡』だ」

 

 2人の言葉に、ウーブレックは頷き、この街を踏み締める様に再び足を動かし始めた。

 

「人々を守るのがハンターの責務であり、私はその責務に従って武器を振るい、人々の危機を退けてきたが、知力を武器にすればより大きな打撃を与えられるはずだと考えた。

私は博士号を取り、私自身の知力という武器で大きな打撃を与えられるのだと確信した。だからこそ教鞭を取り、この『知識』というなにより大きな武器を、授業に出席した全員の手に委ねたい。

この廃墟に、私は救えなかった命を見る。しかし、可能性も感じている。ここを調査する事で、ここを襲った悲劇を知り、学び取る機会があり、強くなるチャンスがある。

私の持っている『知識』が全てではないし、私の言う事の全てが真実というわけではないかも知れない。まだまだ解明されていない事も多いこの世界で、生徒達には自分達の手でこの武器を活かしていってもらいたい。それが、より多くの人々を守る事に繋がる。

私はハンターだ。他に望む道は一つもない、何一つな」

「………」

 

 ウーブレックの言葉に、ラグナは言葉を飲んだ。それはウーブレックが自分達生徒に望む「知力を活かして欲しい」という理想が、オズピンと出会った頃に、自身に足りなかった「考える力」を求めた自分そのものであったからだ。

 

「ああ、そうだ。では、私からも聞かせてくれ。

先程君達の会話を聞いていたのだが、ラグナ、君はハンターになる理由として、『学長にスカウトされたから』と答えていたな?」

「あ、ああ…」

 

 ウーブレックの言葉にラグナはたじろぐ。ウーブレックのハンターとしての清高な想いを聞いた後だと、自身の答えがひどく浅はかだと捉えられてもおかしくない。ウーブレックの想いに感銘を受けたラグナとしても、その対象に疎まれるのは嬉しい事では無かった。

 

「私にはどうも、それだけとは思えないんだ。目的も目標もない者も稀にいるが、君はそうじゃない。私は教師として、君の成績を知っているし、君が『エメラルド・フォレスト』であのネヴァーモアを屠った映像も見せてもらった。目的や目標を持たない者が、あそこまで勉学に努力を費やし、あそこまでの力を得るまでになる鍛錬に耐え()るとは、とても思えない」

 

 ウーブレックの丸眼鏡越しの瞳が、ラグナを見据える。ここでハンターを目指す理由として当たり障りのないものを並べたとしても、目の前の聡い男にはあっさり見抜かれてしまうだろう。それが分かっているラグナは「参ったな…」と頭を掻いた。

 その後、ラグナは出来るだけ真摯に応えようと、ウーブレックと視線を合わせる。

 

「博士には悪いが、俺は他の奴等みたいにハンターとしての明確な目標がある訳でも無けりゃ、憧れている人がいる訳でも無い。ハンターになろうとしたキッカケも、オズピン学長に誘われたからって言った事に嘘は無いな」

「では本当にそれだけの理由で、命の危険に満ちたこの仕事に就こうとしていると言うのかね?」

「俺にとって、『ハンターになる』ってのはこの世界を生きていく為の手段の一つに過ぎねえ。

ガキの頃に大切なものを奪われて、戦うことを選んだ。そのことに関してはケリがついたんだが、長いことそうやって過ごしてきたもんだから、戦う以外の生き方ってもんを知らねえってのがホントのところだ。そんな俺にとって、戦って生きていくのが仕事になるハンターは都合が良かった。まあ、ハンターになろうがなるまいが、俺がこれからの生き方に大きく変わりはないだろうな」

「ふむ…では、質問を変えよう。今、過去の因縁にはケリがついたと言ったな?

ならば君は今、『何のために戦っている』んだ?」

 

 いつかと同じ質問が、ラグナの鼓膜を揺らす。先日のCCTタワーの一件で再認識したばかりだと、ラグナはその問いに心の中でフッと笑い、ずっと変わらない一つの答えを紡いだ。

 

「『失わない』ため、そして『守る』ためだ」

 

 その言葉を放ったラグナに、ウーブレックは目を見開く。短く、シンプルな答えだったが、その言葉の中にどれだけの思いや覚悟が込められているか、ウーブレックにも測り切れないものを見たからである。ウーブレックはしばらく、ラグナの瞳を見据えると満足そうに笑みを浮かべた。

 

「その想いがあるなら、私からは何も言うことはないな。では、戻ろうか」

 

 ウーブレックが夜営を指示した廃ビルへと先行する。ラグナはその後ろ姿を見つめながら、ウーブレックがヤン達へ質問していた真意をなんとなく理解した。

 

(ハンターとして…か…)

 

 ラグナがウーブレックに続こうとすると、横からひょこっとルビーが顔を出した。

 

「えへへ、ラグナも『人を助ける』っていう目標は同じなんだね。なんか嬉しいな」

 

 にへらと嬉しそうに笑顔を向けるルビーに、気恥ずかしさを覚えたラグナは、ルビーの頭をわしゃわしゃと少し乱雑に乱す。

 

「うわぁ!?」

「俺達も早く戻るぞ」

「もう…ま〜たすぐそうやって照れ隠しするんだから」

「うるせ」

 

 軽く口を叩き合いながら、2人は並んでウーブレックの後を追った。

 

 廃ビルまで戻ると、夜営の準備を終えた3人が起こした火を囲っていた。ウーブレックの言葉が胸に引っ掛かっているのか、表情は優れない。

 

「素晴らしい!理想的なキャンプファイアーだ!」

「あ〜、すっごくあったかい…」

「もう秋になってだいぶ経つし、結構肌寒くなってきたからな」

「今月末のヴァイタル・フェスティバルが終わったらもう冬だもんね」

「よろしい、食事をして眠ろう。明日はもっと行動範囲を広げる。夜の間、交代で見張りをやってもらう。最初の見張りは誰だ?」

 

 ウーブレックの声にルビーが手を上げ、立候補する。その後、ウーブレックは持ってきたレーションを全員に配り終えると、上の階に上がって行った。所々に開いた吹き抜けのようになっている穴から、上の階に行ったウーブレックがレーションを口にしている姿が見える。

 火で暖を取ったルビーが見張りをする為立ち上がり、外が見渡せる場所は向かおうとした時、ヤンがルビーに声をかけた。

 

「ルビー、博士に『なんでハンターになりたいか』聞かれた?

あんたは…なんて答えたの?」

「その質問流行ってるの?

博士には聞かれてないけど、ラグナには聞かれたよ。それにお姉ちゃんには、私がハンターを目指す理由なんて何回も話した事あると思うけど…」

「そっか…じゃあラグナは?

なんでなりたいか聞かれた?」

 

 ヤンの縋るような目がラグナに向く。

 

「聞かれたが、俺はオズピンにスカウトされたってだけ。強いて言えば、手に職付けたいからだな」

「え?ラグナその後ーー」

 

 ウーブレックとラグナの会話を間近で聞いていたルビーは、ラグナの答えに疑問を抱き声を上げる。

 

「さぁ、ルビー、しっかり見張っててくれ。

2時間ぐらい経ったら交代するか」

「あ、う、うん…」

 

 しかし、ラグナはそれを遮るようにルビーの背中を押してビルの(きわ)へと誘導する。

 ラグナがウーブレックの求めている答えをなんとなく分かっているからといって、それをラグナの口から教えてしまうのは、ウーブレックの望むところでは無いだろうと考えたからである。

 

「まぁ、理由は人それぞれあるだろうけどな」

 

 ルビーを見張りが出来る位置に置いてきたラグナはそう言うと、自身も3人から少し離れた壁に背中を預け、配られたレーションを食べ始めた。

 ヤン達のどこか暗い表情は晴れないまま、各自レーションを腹に入れ、寝る為のマットを敷き、横たわる。

 

 全員が横になってしばらく経った頃、ヤンが沈黙の中に音を発した。

 

「ブレイク、起きてる?」

「うん」

「なんであんな事を聞かれたんだろう?

博士は…何が言いたかったの?」

「知りたかっただけ…」

「ホントに…?」

「………ううん」

「ワイス、起きてる?」

「貴女達のおしゃべりで目が覚めましてよ」

 

 眠っているであろうラグナに配慮したのか、抑えた声音でワイスも応え、3人の会話が続く。

 

「私は一族の名誉を守ると言いました。本心ですわ。ただ…誤解しないで下さい。私も馬鹿ではありません。シュニー・ダスト・カンパニーの実態はよく分かってますわ。

父がトップに立った途端、会社の経営が変わったんです。倫理的に…グレーなスタンスに…」

「グレーどころじゃない…」

 

 ブレイクの呟きに、ワイスは少しだけ声を荒げながら続ける。

 

「だからこそ!私はここに来たんです。

アトラスで仕事を探せば、どうしても我が一族と関わりのある職に落ち着いてしまう。それでは何も変える事は出来ませんし、伝統あるシュニー家を父の代で終わらせない為にも、父の反対を押し切ってアカデミーへの進学を決めました。アカデミーを卒業し、ハンターライセンスを得られれば、『平和を守る』という理念の元でなら、ある程度の権限と自由が与えられます。

私の姉のように軍に所属する方や、警察関係に進む方がいらっしゃるように、私はそれを持って、外側から物事を正したいと思ったんです」

 

 ワイスの言葉が終わると、今度はブレイクがポツリポツリと語り出す。

 

「私はこれまで『大義』の為に戦ってきた。

『アダム』っていう相棒がいたの…というか、指導者ね…

『自分達の行いで世界は良くなる』って言ってくれた。でも私達の行いで変わった世界がどうしても、私達が思い描いていた筈の未来とかけ離れてるように感じたの。

これまで自分がやってきた事が間違っていたかもと思うと怖くて、次は絶対に正しい道を行くんだってビーコンに入った。ハンターはこの世で最も高潔な戦士だから…

『善』という大義の為に戦うハンターになって、私の『理想』へ続く正しい道を見つけたい。

でもこの頃は…ふと不安になるの…

そんな道は本当にあるのかなって、どうしたら長年の憎しみから解放されるのかって…」

「きっとその道は見つかるよ。あんたは決して諦めない子だしね」

「そんな事ない!いっつも諦めちゃう…

自分がファウナスだってバレた時も怖くなって逃げた。1番古い仲間が変わってしまった時だって逃げた。

それに、センブランスだって…私は影を操る能力を持って生まれたの…そして、自分の分身を盾に戦いからも逃げている…」

 

 悲鳴にも似たブレイクの声がパチパチと弾ける火の音に滲んだ。

 

「それでも、あんた達はちゃんと理由を持って、それを掴み取ろうと行動してる。あんたらはすごいよ。

私はいつも、流されてきただけ…それが私だし、別に構わないんだけど、いつまでそうしてられる?

私はハンターになりたい。ヒーローに憧れてるんじゃなくて、冒険が好きだから。明日は何が起こるんだろうみたいな人生って、私は良いなって思う。その点ハンターはピッタリだった。

私とは違って、ルビーは昔からヒーローになる為にハンターになるんだって言ってた。戦い方も知らない小さい頃から、本に出てくるヒーローに憧れて、ハンターになるのを心に決めてた」

「でも、あの子はまだ子どもです」

「2つしか違わない。私達も子どもよ」

「ううん、もう子どもじゃない。だって、みんなバリバリに武装して、戦場に来ちゃってる」

「これは仕事です。私達、ハンターについて夢や理想を語ってきましたけど、ハンターとはつまり『人命を守る仕事』です。個人の夢や理想は二の次、博士がきっと、何が第一か、という事を言いたかったんだと思いますわ」

 

 3人の会話を、ラグナは沈黙を貫いたまま聞き届けるのだった。

 




ウーブレック博士好きなんですよね。ハンターとしての信念が強く、生徒想いの優しい先生だと思います。
次回で書きたい事があるので、ワイス達3人の会話をあえて省かないで書きました。

RWBY雑談コミュニティ招待リンク
https://discord.gg/E23QJ2376t
参加の際、念の為、最初にコミュニティの概要をご覧頂きますよう、よろしくお願いします。

では、恒例の謝辞を。
今回もお読みいただきありがとうございました。
また次回。
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