元全世界の敵のなんだかんだ奮闘記   作:天然黒酢

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生存報告も兼ねて投稿します。
去年も色々ありまして、来年から環境をガラリと変えようと動いています。お待たせする事もあるかもしれませんが、気長に気ままに応援して頂けると幸いです。



朱殷の凶棘

 

 ()()はゴライアスの体に頭を突っ込み、もぞもぞと蠢く。下敷きになったゴライアスは、重く長い断末魔の後に動かなくなってしまった。ラグナは、張り詰めた空気に汗が滲む手でアラマサを握り締め、赤黒い棘を背負った獣の姿をまじまじと確認すると、その体躯のシルエットは大群の中でもよく見たアーサと同じものであった。

 ラグナの接近に、獣はピクリと身体を震わせ、顔を上げて振り向く。

 

「っ!?

な…にやってんだ…」

 

 振り向いたその顔はやはりアーサに酷似していたが、頭部の仮面は棘と同じく赤黒い色に変色し、兜のように顔を覆っていた。それは色こそ違うものの、以前戦ったネヴァーモアと似ているようにも見える。しかし、ラグナが驚愕していた原因は別にあった。その口元である。鋭い牙を食い込ませられた「何か」は、煙霧のような黒い塵にサラサラと変化している。視線をそこから下へ移動させると、一部分が抉られたように凹んだゴライアスの体から同じように塵が立ち昇っていた。

 獣はラグナを一瞥し、ニタリと獰猛な笑みを浮かべて、再びゴライアスに齧り付く。

 

「まさか…()()()()のか…!?」

 

 ゴライアス達がグリムの津波の最後の軍団だったのか、進撃の音が止んだトンネル内には咀嚼音のみが響く。そのアーサは動物が餌を喉奥へと流し込むように口を上に向け、ゴクリと喉を鳴らすと三度(みたび)、ゴライアスへと牙を立てようとしたその時、ゴライアスの体は完全に塵となって霧散した。赤黒いアーサは、霧散し消えたゴライアスの死体があった場所を数瞬見つめた後、のそりと身体を起こし、そして、ラグナの方へ赤い眼光を向けた。

 

「は…?」

 

 次の瞬間、アーサはその体躯からは信じられない程のスピードでラグナとの距離を詰め、鋭い爪を立てた前脚でラグナを殴り付けた。

 ラグナはかろうじて剣脊でガードを試みるが、アラマサごと吹き飛ばされ、衝突音と共にラグナの背に衝撃が走る。

 

「がっ……」

 

 苦悶の声が漏れ、ラグナは自身が壁に叩きつけられた事を認識した。オーラによるガードで外傷は無いが、壁に激突した衝撃で腹の内容物が吐き出されそうな感覚を覚える。そこに追い討ちと言わんばかりに、アーサが口と前脚を広げてラグナに迫る。ラグナは両足を強化し跳躍、アーサの頭上を飛び越え、背後に着地した。完全に死角に入り、無防備に見えたアーサの背の棘の隙間部分にアラマサを叩き込もうと振りかぶる。

 しかし、そんなラグナの動きを嘲笑うかのように、背に生えていた棘が突如として、ラグナの方へと射出された。不意を突いたと思われた攻撃で逆に反撃を受けたラグナに、棘の嵐に身を晒され、足と横腹に棘が直撃する。ラグナは堪らず後退し、再びアーサとの距離を取った。

 

「そんな攻撃、普通のアーサはしねえだろ…」

 

 恨み言を放ちながら、棘が直撃した横腹に触れるとジンと痛みを感じる。更に頬に熱さを感じて拭うと、手袋に血が滲んだ。外傷が出来たという事は、防御用に張っていたオーラを敵の攻撃が貫通したという事を示している。

 痛みに顔を歪めるラグナに対し、赤黒いアーサは口に歪な三日月を浮かべ、不気味に呻いた。アーサの背中には、新たに赤黒い棘が形成されており、その速度は生え変わりというよりも、再生といった方が正しいように思える。

 

(こいつはやべえな…

どう考えても普通じゃねえ。不意を突かれたとはいえ、反応が遅れちまう程にこれまで戦ったどのグリムよりも速えし、膂力もゴライアスと同等かそれ以上。赤黒い棘を見ると、前のネヴァーモアと同種だろうが、威圧感もあいつとは桁違いだな。こんなのが街に入り込みでもしたら、どれだけ被害が出るか…

それにさっきのは…間違いなくゴライアスを喰っていた…

幸い、ゴライアスと同じように街よりも俺に向かって来てる。此処で倒しておかねえと…)

 

 敵のことが分からない以上、大剣ではこのグリムのスピードや棘の飛来などの未知の攻撃に対応しきれないと考えたラグナは、アラマサを双刀に変形させる。再び鋭利な爪がラグナに向けられるが、アラマサでアーサの前脚を弾きながら、攻撃を捌き、アーサの動きを観察する。

 根本的な姿形がやはりアーサのものである為か、スピードとパワーが桁違いではあるものの、基本的な動きのパターンはラグナも数多く経験した、アーサのそれであると結論付ける。背中の棘の射出など特殊な攻撃もあるとはいえ、攻撃の隙は確実に生じていた。

 その隙を狙ってラグナも攻撃に転じる。がしかし、防御面の硬さも通常のグリムとは桁外れであったため、ラグナの攻撃はアーサの体に浅い切り傷を作るのみで、痛手を負わせるには至らない。アーサはそんな小さな傷の事など意にも介さず、爪での乱撃を続ける。

 

「ちっ、うぜえ!」

 

 絶え間ない猛攻に苛立ちを覚えたラグナは、爪を弾いた流れを利用して、後ろ回し蹴りを見舞う。腹部を襲った衝撃に僅かにバランスを崩すアーサ。それと同時にラグナは一旦距離をとり、アラマサを大鎌に変形させると、攻勢へと転じた。

 

「おらよ!」

 

 アーサへ肉薄し、大鎌を振り抜く。それに対して、アーサは大鎌の一撃を頭突きで迎え撃った。禍々しく変化した仮面と大鎌の激突により、重い金属音にも似た音がトンネルに響く。拮抗した衝突の末、わずかにラグナの一撃が上回り、アーサの体が弾き飛ばされる。アーサは四つ脚で地面に爪を立て、数メートル先で停止した。そして、アーサの赤黒い仮面に亀裂が走る。

 

「ちっ、やっぱ物理的な硬さが尋常じゃねえな」

 

(力でゴリ押しするにも厄介そうだな…

となると、ソウルイーターで一気に削り切るしかねえか?)

 

 思考を巡らすラグナの前では、この闘いで初めて純粋な力負けによる後退を余儀なくされ、決して軽くはない傷を負ったアーサの顔が、先程までの不気味な笑みから怒りを孕んだ表情へと変わった。

 

「グオォォォォオオ!!」

 

 ラグナに対する認識を獲物から敵へと変えたのか、怒号をあげながら、アーサはラグナへと牙を向け威嚇する。四つ這いのままラグナに向けて迫るアーサだが、アーサのスピードに慣れ、動きを掴み始めていたラグナは、大鎌に纏わせるソウルイーターの波動を増幅させると闘牛の如くアーサの突進を避け、すれ違い様にソウルイーターの刃がアーサの首を捉えた。刃はアーサの首に裂傷を作るのみであったが、それと同時に刈り取られた生命力がラグナへ吸収される。傷に見合わない急激な生命力の減少に(さら)されたアーサがふらりとよろけたのを視認し、ラグナはすぐさま追撃をかけた。

 よろけたアーサに向け、双刀状態に変えたアラマサの一方、セラミックの刃を首の傷口に向けて投擲する。隙を突かれたアーサだったが、飛来する刀をすんでのところで爪で弾き、逆に目の前の敵が武器の片方を失った好機と取ったのか、地面を蹴った。アーサが前脚を振りかぶり、鋭い爪がラグナへと向けられるが、アーサの眼に笑みを浮かべたラグナの顔が映る。その瞬間、アーサの背後でドスッという、耳馴染みの無い音がトンネル内に流れる。その音はアーサに弾かれたはずの刀が、アーサの背中に突き刺さった事によるものだった。

 ラグナは双刀の引力を発生させると同時に、右手に握るもう一方の刀で軌道をコントロールし、弾かれた刀が背後から奇襲をかけるように誘導したのである。意識の外にあったであろう一撃に、アーサの牙の隙間から、悲鳴が混じったようなくぐもった声が漏れ、背中に突き刺さった刀を引き抜こうと身体を(よじ)る。そんな隙をラグナが見逃すはずはなく、本命であるソウルイーターの刃を用い、目にも留まらぬ速さでアーサの身体を乱雑に斬りつけた。懐に入り込み、自身へ怒涛の連撃を叩き込むラグナを振り払おうと、アーサは前脚を無闇に振り回すが、先手を打って回り込むようにアーサの背後に回ったラグナは最後の一撃を叩き込むと同時に、突き刺さった刀でも傷口を広げるように切り裂き、そこまででアーサから距離をとる。

 ソウルイーターの刃を無数に受けたアーサから奪い取った生命力が流れ込んでくるのが感じられる。対してかなりの生命力を失った筈のアーサだが、未だその眼光はラグナの命を奪おうとギラついていた。

 

「しぶてえ野郎だな」

 

 ラグナが双刀を構えると、アーサも四本の脚に力を込め、次の一撃に備える。数秒の静寂の後、先に動き出したのはアーサの方であった。

 

「ガァァア!!!」

 

 アーサは雄叫びを放ちながら、ラグナに飛び掛かる。アーサの今持てる膂力をすべて込めたであろうその攻撃に対抗すべく、ラグナは襲い来る両の前脚を、二刀でしかと受け止めた。満身創痍の中で繰り出したはずの一撃は、ラグナの腕に重い衝撃を与える。度重なる生命力の強奪の上で、まだここまでの力を発揮するのかと、目の前の獣に背筋を冷たくしながら、ラグナは引導を渡すべく動いた。

 

(借りるぞ、師匠!)

 

 前脚を受け止めたまま身体を捻り、交差させた双刀を背に背負う形をとる。

 

黒豹(くろひょう)

 

 双刀使いの模倣として、師であり、友でもある獣兵衛の動きを参考にしてきたラグナは、センブランスによる身体能力の強化を利用して、技の再現を試みていた。数ある獣兵衛の技の中で、再現に成功した数少ない技の一つが、この〈肆之型 黒豹〉である。

 地面を蹴り、前宙返りのように1回転しながら、背負う形になったアーサを斬り上げる。最後の力を振り絞った捨て身の一撃を受け止められたアーサには、ラグナのカウンターに対応出来る筈も無かった。アーサは打ち上げられ、クルクルと宙を舞い、トンネルの天井に激突する。

 ラグナはアラマサを剣に戻して背に背負い、右腕に力を込める。ソウルイーターの波動が右腕を覆い、獣の前脚のような異形を形成した。パラパラと崩れ落ちる破片と共に、アーサの身体がゆっくりと天井から剥がれ落ちる。

 

「闇に喰われろ!」

 

 落下するアーサを異形の右腕が襲う。捉えられたアーサはソウルイーターの猛襲を受け、一切の生命力を喰らい尽くされ、異形の腕がアーサを握り潰した時には、アーサの身体は既に黒い霧となって霧散していた。

 ラグナは辺りにグリムの気配が無いか確認した後、右腕を振り払って《蒼の魔導書(ブレイブルー)》を停止させ、肩の力を抜いた。

 

「ふぅ…なんとかなったが、オーラの防御も貫通されてたし危なかったな…

やっぱり、双刀の扱いはもう少し練る必要があるか。一応、師匠の技を訓練しておいて良かったぜ。

しっかし…」

 

 ラグナはアーサを握り潰した右腕に、怪訝な顔で視線を落とした。

 

「……いや、俺も街へ急ぐか。あいつらが上手くやってくれてると良いが…」

 

 顔を上げ、ラグナは街へと急ぐ。

 それからしばらく線路上を走っていたラグナのスクロールからコール音が鳴り響いた。画面にはルビーの名前が表示されている。

 

「もしもし、ルビーか?」

「ラグナ!繋がってよかったぁ…

何回かけても繋がらないから心配してたんだ」

「そうか、悪い。まだトンネルから出れてねぇから、電波が届かなかったんだな。

そっちは大丈夫か?」

「うん。〈JNPR〉や〈CFVY〉、サン達にエメラルド達、それからアトラスの軍も協力してくれたから。少し街は破壊されちゃったし、怪我人も出たけど、命に関わるような被害は出てないよ。

ローマンも捕まえたし、最小限の被害で済んだってウーブレック博士が言ってた」

「そうか、良くやったな」

「ラグナは大丈夫なの?」

「ああ、なんとかな。とりあえず、あと少しで俺も街に着く。俺は大丈夫だから先にアカデミーに戻ってろよ」

「うん、わかった。あ、でも………ま…リンダ……せ……ーーーーー」

「ん?」

 

 それまで鮮明だったルビーの声が急に聞き取れなくなり、そして通話が途切れた。ラグナがスクロールの画面を見ると、マウンテン・グレンの地下の時と同じく「LOW SIGNAL」の文字が現れている。ラグナは急に電波が悪くなった事に首を傾げるが、ひとまず街の方も無事だと分かった為、深く考えずに街へと帰還する足を緩めた。

 

 この急な切断は、列車の突撃でトンネルの先に開いた穴がグリンダに塞がれてしまった為だったのだが、ラグナがそれに気付くのは、無情にラグナの行く手を阻む壁を目の当たりにした時だった。

 その後、ラグナが1人トンネル内に閉じ込められてしまった事は、笑い話として仲間達の間で語られる事になる。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「やってくれたな、あの野郎…」

「悪のカリスマさんのせいで、せっかくシンダーが考えた計画が1つパーになっちゃったよ、クソ!」

「そうねぇ、ローマンの独断行動は予想外だったわ…

でもまぁ、メインの計画への支障はそこまで無いし、ローマンが捕らえられた事で、表立った警戒は解かれるはず。悪い事ばかりではないと考えましょう」

 

 ヴェイルの街を見渡せるビルの上で、マーキュリー、エメラルド、そしてシンダーの3人は少なからず破壊された街並みを見下ろしていた。

 既にローマンが護送され、アカデミー生を含めたハンター達もビーコンへと帰還した後の街に人影は無い。

 

「でもよ、〈ホワイトファング〉のファウナス達も大勢やられたし、残ってる奴らは俺達の言う事を聞くのか?」

「無駄だろうな」

 

 マーキュリーがそう言うと、3人の背後の声が応じた。以前ラグナと遭遇した、仮面の男である。

 

「だが、俺の指示なら聞く」

「そう、なら安心ね」

「だが、お前達の独断のせいで多くの同胞を失った。先日のタクソンの一件に加えて、今回のこの有様には〈ホワイトファング(俺達)〉の中でもお前達に不信感を露わにする者達が出てきている。俺を含めてな」

 

 仮面の男は怒りを込めながら、マーキュリー、エメラルドを睨みつける。

 

「ごめんなさいね、アダム。今回の件は私達にも予想外だったから兎も角、あの書店の一件に関しては本当に言葉も無いわ」

 

 謝罪の言葉を述べながらも、シンダーは余裕のある笑みを崩さないままだ。アダムと呼ばれた男はこれ以上の言葉は意味がないと察する。

 

「次は無い」

「ええ、ありがとう。

今回の件は計画が潰されたとはいえ、現在のビーコン・アカデミーの戦力を大体知れたのは僥倖だわ。でも、貴方が話していた赤いコートのハンター、今回は姿を見せなかったわね。マークしておきたかったのだけれど」

 

 シンダーはアダムと互角に戦ったというハンターに警戒心を抱いていた。その当の本人はというと、未だに地下に閉じ込められていただけであったのだが、彼女達にそんな事は知る由もないのだった。

 

 

 





新型感染症もそうですが、ここ数年でいろんな事が変わりましたね。
個人的には、森Pがアークを退職した事で、BLAZBLUEのコンテンツ存続が絶望的になってしまったのが、残念な気持ちもあります。しかし、フレアという新たな場で、楽しいコンテンツを生み出してくれる事を信じて、自分はこれからもRWBY、BLAZBLUE両作品を推していこうと思います。
RWBYのVol.9も楽しみですね。


RWBYの雑談コミュニティにも是非、ご参加下さい。
RWBY雑談コミュニティ招待リンク
https://discord.gg/E23QJ2376t

コミュニティの方も自分は忙しかった事もあり、あまり浮上出来ていませんが、参加して頂いた方々の交流の場になっていれば幸いです。

では恒例の謝辞を。
今回もお読みいただきありがとうございました。
また次回。
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