元全世界の敵のなんだかんだ奮闘記   作:天然黒酢

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なんか結構スラスラかけたんで投稿します。


不和

 

 

「『グリムを喰らうグリム』か…」

「ああ、それが何のためなのかは確証ねえが…」

 

 一連の騒動の後、やっとの思いで地下から脱出し、ビーコン・アカデミーへと帰還したラグナは、予想外の遠回りに草臥(くたび)れた姿になりながらも、ロッカーを出たその足でオズピンの元を訪れた。一連の流れと、そこで遭遇した未知の脅威について、報告しなければならなかったからである。

 学長室にはオズピンの他に、グリンダ、ウーブレックはもちろん、市街戦へ応援に駆けつけてくれたポート、更にアトラスの機械兵達を指揮したアイアンウッドという5人の教師陣が集まっている。

 事件の詳細に関しては、先にビーコンに帰還していたチーム〈RWBY〉によって明かされていた為、ラグナの報告は、地下鉄線内での戦闘と赤黒い棘を持つアーサについての話が主な議題になった。

 オズピンの目の前のテーブルには、ラグナが持ち帰った赤黒い棘の残骸が数本置かれている。

 

「私も長年グリムの研究に携わってきた自負があるが、赤黒い棘を持つ個体など、あのエメラルド・フォレストに現れたネヴァーモアが初めてだった。一種の突然変異である可能性が高いと考えていたが、こうも度重なる出現を見るに、グリムの中で新たな進化が遂げられたと見るべきか…」

 

 ポートが唸るようにしながら、食い入るように棘を見つめる。研究者としての性なのか、目の前にある未知を研究したくて仕方がないといった様子であった。

 

「ともかくラグナ、君が無事で良かった」

「ああ。博士も…悪かった…じゃなくて、申し訳ありませんでした」

「全くだ。引率者である私の指示に背いて勝手な行動をするなど言語道断!

…と言いたい所だが、君がグリムの勢いを削いでくれた事が「死者が出る」という最悪の事態を免れた一助となったのも事実だろう。君の行動は決して褒められたものではないが、引率として事態をフォローしきれなかった我々が、それを批難出来る筋合いはない。それはそれとして、指示違反の罰は受けてもらうがな?」

「退学にされないだけマシだ。恩に着る」

「なに、教師としてでなくハンターとして語るなら、礼を言わなければいけないのはこちらだ。ありがとう、ラグナ。よく戻ってくれた」

 

 ウーブレックの賞賛に、ラグナはむず痒く感じつつも頷いた。場が和んだ事にオズピンが微笑んだ後、真剣な眼差しに戻る。

 

「さて、ラグナ。我々は新たな脅威について1つでも多くの事を知る必要がある」

「そうだな」

「そこで、これまで赤黒い棘を持つ個体と戦ってきた経験のある君に、頼みたい事があるんだ」

「おいオズ、まさか…!?」

 

 オズピンの言わんとする事を察したのか、アイアンウッドが驚愕の表情を浮かべる。

 

「先程、ある場所で赤黒い棘を持つグリムの目撃情報があってね。アトラス軍の協力の元、そのグリムを捕らえる作戦を検討中だったんだ」

「…なるほどな…」

 

 ラグナはオズピンの口から語られた情報に驚きながら、どこか納得したような心地であった。その要因はポートの「度重なる」という発言。エメラルド・フォレストと今回、少し時間を空けた2度の出現だけでは、そのような表現は適切ではない。しかし、ラグナの遭遇した個体とは別に、もう1体の目撃情報があったとなれば、ポートの言葉も腑に落ちる。

 

「捕らえるって言っても、グリムは捕獲したら消えちまうんじゃねえのか?」

「そうだな。しかし、捕らえてから消えてしまうまで少しの猶予があることが分かっている」

「以前、私の授業でワイスとボーバタスクが戦ったのを覚えているかね?

あれは前日に捕らえた個体だったが、あの授業の時まで消えることなく暴れていた。あのように、グリムが捕獲されてもすぐに消えるわけではなく、状況によった違いや個体差があるらしいのだ」

「なるほど。じゃあ、捕らえた後はすぐに色々調べる必要があるってことか」

「そうだ。だからこそ、アトラスの軍に協力をしてもらい、捕らえた後は速やかにアトラスの研究機関に運ぶ」

 

 オズピンとポートから、捕獲後のグリムについて話を聞いているラグナだったが、そこへアイアンウッドが声を挟む。

 

「オズピン、正気なのか!?

ただでさえ情報が少なく、危険が伴う作戦に生徒を巻き込むなど!?」

「オズピン教授、私も反対です。いくらなんでも危険すぎます」

「ラグナには現場での情報伝達と案内役に回ってもらい、目標の確保はあくまでアトラス軍主体で行ってもらう。ハンターを含めた中でも、おそらくラグナより特殊個体に詳しい人物はいない。それに、今回の現場に関してもベストな人選だと思われる」

「し、しかし…」

「ん?現場?」

 

 アイアンウッドの言葉に、グリンダも同意するが、オズピンは穏やかな口調を崩さずに告げた。そんな中で、ラグナはオズピンの言葉に疑問の声を上げる。頭上に?を浮かべるラグナにオズピンが答えを示した。

 

「ああ、その目撃情報の場所が、きみが良く知る村の近郊なんだ」

「…!…そいつは……」

 

 ラグナがこの世界において良く知る村など、ただ1つを除いて他に無かった。

 

「目撃情報は、アーガルムとその周辺の村の近郊で相次いで確認されている」

 

 ラグナにとっても思い入れのあるアーガルムからの情報であると聞き、自身の大切な場所の一つである村を守るべく、二つ返事で了承するのだった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 オズピンから、アトラス軍への協力をもって、指示違反の罰及び、実習の補習とするとされ、オズピンとウーブレックに感謝しながらラグナは学長室を出た。

 アトラス軍との合流の関係で、明日(みょうにち)の昼頃の出発となったため、部屋へと戻ろうとしたラグナだったが、ルビー達から連絡を受け、合流する為にルビー達の部屋へと向かった。

 部屋をノックすると、中から返事と共にドアが開かれる。

 

「ラグナ!

おかえりなさい、遅いから心配してたんだよ?」

「悪い。といっても、遅くなったのはあのトンネルが長い間封鎖されてたせいで出口が無くて、すげえ遠回りする羽目になったからだけどな」

「仕方ないよ。早いとこ再封鎖しないと、いつまたグリムが街に入り込むか、分かったもんじゃないし」

「周辺に住んでる人達も気が気じゃないだろうしね〜」

 

 部屋にはチーム〈RWBY〉の面々は勿論、〈JNPR〉やサン、ネプチューンの姿もある。

 トーチウィックによる大きな企みを阻止した事で、表情は晴れやかだ。

 

「お前らにも助けられたな。あんがとよ」

「水臭いですよ。僕達にとっても他人事じゃ無いんですし」

「そうね。皆に何事もなくて本当に良かったわ」

 

 ラグナが礼を告げると皆、照れ臭そうにしながらも笑顔で返し、ラグナも微笑んだ。

 

「警察の見習い実習始めて早々、呼ばれて行ったらグリムの大群でたまげたけどな」

「いや、それよりもアトラス軍の飛行艇とロボ軍団の方が衝撃だったぞ」

「ああ、うん…あれは凄かったな…」

 

 うんうんと頷き合うサン、ネプチューン、ジョーンの3人は、宙を見上げるようにしながら、感心と憧憬(しょうけい)の入り混じった感情を滲ませていた。

 

「そんな凄かったのか?」

「さぁ…?」

(わたくし)は前にもアトラスの軍を見た事がありますが、特に変わった所は感じませんでしたわ」

「何言ってるんだよ、ワイス!

巨大飛行艇とロボット軍団だよ!?

カッコいいじゃないか!」

「ホント、男ってああいうの好きだよね〜」

 

 ピュラとワイスは首を傾げたが、熱く語るジョーン。部屋内はそれに同意を示すサン、ネプチューンという男性陣とは対照的に、ヤンを始めとした女性陣が冷めたような眼で3人を見るという二極化された様相を呈していた。

 

「レン!

君は分かってくれるよな!?

男たる者、メカとロボに憧れるこの気持ちを!」

「すみません。僕自身、辺境の村の出身なのでそういう物に疎くて…

確かにあれほどの軍隊を人の手を介さずに動かせるのは凄いとは思いますけどね。ロボットであれば過酷な環境での戦闘や救助など、役立つ場面も多そうです」

 

 仲間を増やそうとレンに話を振るも、レンはその手の話に疎かったのか、顎に手を当てて、実際の運用方法について思案していた。

 やいのやいのとはしゃぐ3人にテイガー、ましてやいつかココノエがふざけて作ったらしきゴールデンテイガーなんてものを見せたら、どんな反応をするのかと可笑しく思った。

 

「ルビーはロボはあんまりなんだっけ?」

「うーん、まぁ嫌いでは無いけど、やっぱり使い手と一心同体の相棒でもある武器と、勝手に動くロボットだとちょっと違うかも。

あ、でもぺ……ううん、なんでもない!

それより、そろそろご飯食べに行かない?」

「賛成!今日は悪党をとっ捕まえたからいつもより更にお腹すいちゃったよ!」

「食堂の食事を食べ尽くさないで下さいよ、ノーラ」

 

 何かを言いかけたルビーだったが、特に深刻な様子もなかったため、誰も言及はせず、食事の誘いに乗った仲間達はわいわいと賑やかに、食堂へと向かった。

 

(危ない、危ない…

いくらみんな友達だからって本人がいない所で秘密を明かすなんてダメだよね…)

 

 場所を変え、食事を摂りながらも仲間達の会話は続く。

 

「〈JNPR〉は当初の予定だと、今日からヴェイル近郊の村の保安官に付くって話じゃなかったっけ?

そっちは大丈夫なの?」

「ええ。オズピン教授が便宜を図ってくれて、明日から改めて行けるようにしてくれたの」

「そうなんだ!

良かったね。ノーラ、レン」

「うん!

この調子で明日からもバンバン、悪い奴を捕まえちゃうんだから!」

「精一杯やってみます。平和に終わってくれるなら、それに越した事は無いですが」

「俺とネプチューンは引き続き警察見習いだが、今日以上の事なんて早々起きねぇだろ」

「フラグ?」

「ブレイクさん?不吉な事言わないで?」

 

 ブレイクとサンの冗談混じりのやり取りに、ドッと笑いが起こる。ブレイクにとっても〈ホワイトファング〉を動かしていたトーチウィックを捕らえられた事で、少し肩の荷が降りたのか、表情は柔らかかった。

 

「ワイス達は明日からはどうするの?」

(わたくし)達は任務の詳細をレポートにして提出するように言われましたわ」

「そうだったぁ…

色んな事がありすぎて書ける気がしないよぉ…」

 

 ルビーはレポートという課題に項垂れる。

 

「でも、やるしかない。教授達もトーチウィックと〈ホワイトファング〉の動きを詳しく知りたいみたいだから」

「…………」

「ヤン?

どうかした?」

「…え?

ううん、何でもないよ。そうだね、みんなも明日からまた頑張るんだし、私達も頑張ろう」

「…うん」

 

 ブレイクとヤンの言葉に、ルビーもか細くも確かに返事を返した。

 

「じゃあ、ラグナも明日からはレポート?」

「いや、俺は指示違反のペナルティでオズピンとウーブレックから出された実習に補習として行ってくる」

「ええ…厳しくない?

ラグナはトンネルでグリムを止めてくれてたんでしょ?」

「そうでもねえさ。ハンターの指示に背いたのは事実だからな。これを許してたら、他の生徒にも指示に背く奴が出て、最悪取り返しのつかない事になる可能性もある。謹慎や落第にならないよう、教授達も気を遣ってくれたからこそ、補習で済んだんだろうよ」

 

 ラグナの言葉に面々も「なるほど」と納得の声を上げたのだった。

 

(まぁ、補習っつうよりオズピンからの頼まれ事に近いけどな)

 

 その後も何気ない会話を楽しみながら、それぞれが明日以降に備え、英気を養うのだった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 皆、気づかないうちに疲労が溜まっていたようで、ウトウトとしだした〈RWBY〉の様子から、「そろそろ休みましょうか」というピュラの一言で、その場は解散となった。ラグナは自室に戻った後、ベッドに横たわりながら改めて今回の事件を思い返していた。

 

(今回の件でトーチウィックを捕まえることができたとはいえ、秋の女神を襲った犯人はまだわからねえままだ。トーチウィックも素直に吐くとは思えねえし、警戒は続けねえとな。

しかし、目をつけていたエメラルドとマーキュリーが事件の収拾に協力したって聞いたが……当てが外れたか?

いや…今日トーチウィックが動いたのは潜伏先がバレたから咄嗟にって感じだった。ならトカゲの尻尾にされた可能性もなくはない。まだ、ルビーの言っていたもう一人の女には接触出来てねえし、目を光らせておくに越したことはねえか…

あの変なグリムに関しても、敵と無関係とは限らねえし…

明日からの作戦で、何かしら分かるといいんだが…)

 

 それまでの思考が不意の欠伸によって中断される。いくらタフだからとはいえ、ラグナ自身にも疲労は確実に溜まっていたようで睡魔が眠りへと誘う。

 

(そういや、なんか少しヤンの様子が変だったな。思い詰めてるって感じでは無かったが、何か考え込んでるみてえな…

帰ったら話を聞いてみるか…)

 

 最後に食事中、何処か上の空だったヤンの様子を案じながらも睡魔に身を任せ、瞼を閉じたラグナはものの数分で、深い眠りについた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 寮の明かりがほとんど消えた夜更けに、アイアンウッドはビーコンアカデミーを見上げるようにして、ヴェイルの街を歩いていた。

 

「ジェームズ、こんなところでどうしたの?」

「おそらく君と同じだろう、グリンダ」

 

 後ろから知った声色が聞こえ、アイアンウッドが振り向くと共に返事を返す。グリンダは彼の言葉に「なるほどね」と小さく呟き、アイアンウッドの横へ並んだ。

 

「それで、なにか見つかった?」

「いいや、何も。あんなことがあったが、街はいつもと変わらない。死者が出なかったことで、住民の恐怖も抑えられたんだろう。

君の方は?」

「こっちも同じね。特に怪しい様子も感じなかった。

トーチウィックの様子も変わらずかしら?」

「ああ、『首謀者は自分だ』と一点張りだ。あの様子では、奴からさらに情報が得られることはないだろう」

 

 アイアンウッドとグリンダは、事件の混乱の余波や、トーチウィックが捕まったことによって怪しい動きが無いか確かめるために、街を調べていた。しかしながら、お互いにこれといった成果はなく、二人は揃って息を吐く。

 

「グリンダ…私はわからなくなってしまった…

オズピンは何を考えている…彼は…一体何を隠しているんだ…?」

「ジェームズ、貴方は常に皆の為を思って行動してきた。本当に敬服と感謝をしているわ。でも、今は私達が団結して事に当たらなければいけない。

オズピンは私達よりも様々な経験をしてきた。彼を信じましょう?」

「だが、以前の彼は自分の生徒を要らぬ危険に晒すような事はしなかった!

明日からの作戦も、情報さえ聞き出せば現地に連れていく必要は無いはず。それなのに何故…」

 

 困惑の色に顔を顰めるアイアンウッドに対して、グリンダは少し目を伏せる。

 

「あの子…ラグナ=ザ=ブラッドエッジには、私にも分からない不思議な力がある」

「不思議な力だと?」

「ええ。彼は攻撃する時、稀に赤黒い波動を纏っているの。詳細は全く分からないけれど、オズピンはあの力について、何か知っているのかもしれない」

「それが今回の件に関わっていると言うのか?」

「分からない…けれど、今は彼を信じるしかないわ。私達は私達に出来ることを、精一杯やるしかない。この世界の為に…」

「……ああ、そうだな…」

 

 2人の晴れない心を示すかのように、街の灯りが一つ、また一つと消えていき、夜の暗闇が支配を広げていくのだった。

 




 これにて原作vol.2編は終了になります。
 vol.3編を期待してくれてる人達には申し訳ありませんが、次回から初の完全オリジナル長編【特異個体捕獲作戦編】に入ります。特異個体について掘り下げながら書いていく予定です。
 設定とプロットはすでに固まっていて、皆さんに良い意味で驚いてもらえるような展開が書けるように頑張ります。よろしければ応援お願いします。
 RWBY vol.9と合わせて、皆さんのささやかな楽しみになれば幸いです。

RWBYの雑談コミュニティにも是非、ご参加下さい。
RWBY雑談コミュニティ招待リンク
https://discord.gg/E23QJ2376t

コミュニティの方も自分は忙しかった事もあり、あまり浮上出来ていませんが、参加して頂いた方々の交流の場になっていれば幸いです。

では恒例の謝辞を。
今回もお読みいただきありがとうございました。
また次回。
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