オリジナルストーリー書くの楽しいかもしれない。
トーチウィックの起こしたグリムの津波の事件から一夜明け、ラグナは再び、学長室を訪れていた。昼頃の出発に間に合うようにと準備を行っていたラグナの下に、オズピンからの呼び出しが入ったからである。
「どうしたんだ?
何か追加で面倒事か?」
ラグナは最早お馴染みとなったココアで喉を鳴らし、オズピンへと問いかける。
「なに、昨日は大勢に囲まれて、私も言葉を選ばざるを得なかったからね。
君が出発する前にもう一度話しておきたいと思ったんだ」
「そうは言うが、昨日も割と強引に話を進めてたじゃねえか。グリンダと将軍さんはあんたに不信感を抱いても不思議じゃねえぞ?」
「そうだな。急な話だったとはいえ、私にも少し焦りがあったのは確かだ」
オズピンはカップをコースターの上に置き、組んだ手に顎を乗せた。いつも達観したようなオズピンから「焦り」という言葉が出たことに、ラグナは眉を顰める。
「焦り?
あんたが?」
「私だって焦ることぐらいあるさ。しかし、我ながら昨日のは悪手だった。
グリンダはともかく、ジェームズは近頃、私と執るべき対応の見解が異なり、意見が対立することが多い。
君の言う通り、今回のことで彼の私に対する不信感は膨らんでしまっただろう」
「だが、そうまでしてでも通したかった理由があるってことか?」
ラグナの言葉に、オズピンは首を縦に振った。
「ここ数ヶ月という短い期間の中で、従来のグリムとは違う特異的な個体の出現…
これがこのタイミングで現れたことが、偶然だとはとても思えない」
「…その根拠は?」
「仮に自然発生したものだとして、突然変異の要因は様々考えられるが、一番に考えられるのは環境への適応のためと考えられる。しかし、それにしてはあまりにも変異の方向性が戦闘能力に特化しすぎている。これまで話してきた『より強者を狙うのではないか』という点と、昨日判明した『グリムを喰らう』という点を合わせて考えると、あの特異なグリムの目的は『より強者を喰らうこと』であると仮定できる。環境に適応するのにそんな習性は必要ない。
なにより、出現箇所がバラバラなはずなのに、変異の方向性が赤黒い棘の出現や仮面の変化等、ほぼ共通なのもおかしい。これらの点から環境適応に伴う変異の可能性は低いと見ていいだろう。
突然変異したにしては短期間での目撃証言が相次ぐほどに多いことも鑑みても、自然発生したものではないと考えたほうが辻褄が合う」
「まあ、確かにな…」
オズピンの推論は、ラグナも考えていたものと遠からずのものであり、同意を示すように頷く。
「あのグリムたちがもし、彼女が人為的に作り出したモノだとすれば、私が想像している以上に力を増しつつあるということになる…」
「あんたが前に話してた、『セイラム』とかいう奴のことか。グリムの主のような存在とか言ってたな」
「そうだ。もし、この推測が当たっているとしたら、早く手を打たないとまずいことになる」
「前にも同じようなことが?」
「いや、私の知る限りはなかったはずだ。元々、グリム達の主として、グリムを生み出す力は有していたが…
エメラルド・フォレストでの映像や君の話を元にして考え、より強力な個体を生み出すことが出来るようになっているとしたら…
いずれ、あの強大な力を宿したグリムの軍勢が世界を蹂躙し始めるだろう」
合わせた両の手を口元に寄せながら、オズピンは最悪の未来図を想起する。
「気持ちはわかるが、ここで焦っても仕方がねえさ。
安心しな。行くからには手ぶらで帰ってくるような真似はしねえからよ」
オズピンの懸念も尊重したうえで、ラグナは自身の胸を叩く。オズピンは少しだけ目をパチパチとしばたたいてラグナを見つめた後に、柔らかな笑みを浮かべた。
「人に慰められるなんていつぶりだろうね。ありがとう、ラグナ」
「そんな大層なことはしてねえよ。じゃあ、行ってくる」
「ああ、気を付けて行っておいで」
オズピンの礼に、ラグナも柔和な笑みを返す。オズピンに背を向け、手をヒラヒラと振りながら学長室の出口へと向かった。
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いつも通りの赤いコートにアラマサを背負い、ラグナはアトラス軍の小隊と合流するために飛空艇の発着場に赴いた。少しして、アトラスの飛空艇が到着すると、軍服を纏った1人の男が降りてくる。
「君が、今回、現地の案内の為に同行する生徒かね?」
白髪をオールバックに固め、整った髭を蓄えた壮年の男は、軍人らしく背筋を伸ばし、ラグナに問いかけた。身長はラグナとそう変わらないが、毅然とした立ち居振る舞いに、軍服越しでもわかる良く鍛えられているであろう肉体によって大きく見える。それに加え、その重みのある声は僅かに怒気を含んでいるかのように思えた。
「ああ、そうだ。よろしく頼む」
しかし、
軍の作戦に学生が同行することに少なからず不満を抱いていることは容易に想像できる。しかし、ラグナもオズピンのために引けない身である。必要以上に軽んじられる訳にはいかないと思ってのことだ。軍服の男は、ラグナの様子に少しだけ目を見開くが、変わらぬ声色で続ける。
「私はアトラス軍第一小隊隊長のアイギスだ。では、お前には我々の小隊の指揮下に入ってもらう。くれぐれも、勝手な行動はするな。
命令違反を起こした場合は即刻、ここに叩き返してやるから、そのつもりでいるが良い」
「肝に銘じておく」
「今回は未知のグリムの捕獲任務ということで、特殊部隊の隊員も参加して下さる」
「特殊部隊?」
「アトラス・アカデミー卒業生のハンター達で構成された、アイアンウッド将軍直属の部隊だ。将軍直々に声をかけられた優秀な人材のみで構成されているため、重要な任務には力を借りている。今回参加していただく方は若くして、アイアンウッド将軍の副官も務める御仁でもある。失礼のないようにすることだ」
アイギス中将からの話に「なるほど」と頷く。それと同時に、言外に敬語でないことを窘められた事で、これから敬語で話さなければいけない事に、心の中で辟易した。
「一足先に現地へ向かっているその方を待たせるわけにいかないのでな。すぐに出発する。
詳細は全員が揃ってから伝えよう」
そう言って踵を返したアイギスに続いて、ラグナも飛空艇に乗り込む。船内にはアイギスと同じく軍服を身に着けた数人が、ラグナに対し、疎ましいという視線を向ける。ラグナはその視線を気に留めることなく、外の流れゆく景色を見つめた。
この世界に来て初めて腰を落ち着けた村に、およそ1年ぶりに訪れることになった。ある種、望郷のような思いに胸を膨らませるラグナ。しかしながら、訪れる理由が、特異なグリムという危険な因子が元であることだけが残念でならなかった。
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乗り込んでからしばらくして、ヴェイルから南西に位置する町に到着した。その町のすぐ近くには森林地帯が広がっていて、アーガルムとその周辺の村は、この森林地帯の中にある。ラグナも何度も森林の外まで護衛依頼をこなしていたので、この町には覚えがあった。
そして、飛空艇がゆっくりと降下し始める。窓の外を見ると、白を基調とした軍服の兵士数名と、アトラス特有のロボット兵が隊列を成していた。発着場がないため、地面へと着陸した飛空艇から降りると、第一小隊の兵士達と目の前に並んだ兵士、そしてロボット兵達が、ピシャリと敬礼を揃えた。
「第一小隊、アイギスとその他16名、現着しました。お待たせして申し訳ありません、シュニー中将」
「我々が予定よりも早く到着しただけです。急な作戦にも関わらず、定刻通りの到着。お疲れさまです、アイギス中将」
アイギスと相対した、絹のように白い髪を後ろに丸く編み込んで纏めた女性の軍人が敬礼を解きながら、互いの労をねぎらい合う。女性は身長はそこまで高くないものの、キリリと鋭い眼光と凛とした立ち居振る舞いによって、アイギスと並んでも遜色のない存在感を放っていた。
(シュニーってこたぁ、もしかして…)
「今回、ビーコンアカデミーの学生の1人が、このあたりの出身ということで、案内人として同行します。おい、こっちに来て挨拶しろ」
その姿と名前から学友の姿を重ねたラグナだったが、アイギスの乱雑な手招きによって、ラグナもその女性の前に歩を運ぶ。
「今回同行することになった、ラグナ…です」
「……。では、森へと入る前にブリーフィングを行います。こちらへ」
「はい」
ラグナの拙い敬語に2人はピクリと眉を上げる。そして、名乗り返すこともせずに、そのまま町の一角に貼られている天幕へと入っていってしまった。ラグナは頭をガシガシと掻いてため息を1つ吐き、後へと続く。天幕の入り口を警備する軍用ロボットにまで目を黄色く光らせて、ラグナを睨み付けられ、ラグナは更に肩を竦めるのだった。
天幕内部には、正面に大きなモニターが設置されており、その周りに半円を描くようにして、兵士たちが集まっている。アイギスとシュニーが用意されている席に着いたのを確認し、ブリーフィングが開始された。
「今回の任務は近頃、相次いで出現している特異なグリムの調査、及び捕獲。そして、捕獲後は速やかにアトラスの研究機関に収容し、生態の解明に努める。というものです。
そして、今回そのグリムと思しき個体の目撃情報入ったのは、アーガルムの村とその近辺の村、半径5km圏内で合計4件。
そのうち2件は赤黒い破片が地面や木の幹に突き刺さっていたとの証言。そして、1件が異様な姿のグリムを遠目に見たという証言。最後の1件が、グリム同士が戦っているという証言です。いずれも村を経由した商人や旅人による証言のため、村の住民達なら、もう少し詳しい目撃情報があるかもしれません。
今はまだ負傷者などの直接的な被害は出ていないようですが、アイアンウッド将軍からの情報によると『その特異なグリムは通常のグリムよりも遥かに強大な力を有している可能性が高いため、人的被害が出る前に、可及的速やかに確保を求む。また、生態解明のため、捕獲後は直ちに研究機関に拘送せよ』とのことです」
兵士の1人が、情報を羅列していき、正面のモニター上では目撃証言の位置を地図上に当て嵌め、目標の行動範囲を絞っていく。全員が情報に一通り目を通している中、シュニーが手を挙げた。
「目標と思しきグリムの特徴について、何か情報は入ってきていますか?」
「あ、はい。目撃証言の中に四足で移動していたという話や狼のようだったというものがありました。特徴を鑑みると、恐らくベオウルフの特異個体なのではないかと思われます。ベオウルフであれば、脅威度はそれほど高くないかと…」
兵士の発言に、ラグナは一抹の不安を抱いた。一兵士が言っているだけならまだしも、目標がベオウルフに似た個体だと聞いた途端、その場にいる兵士達のほとんどが、ホッとしたような雰囲気を醸し出したからである。
確かに普通のベオウルフであれば、マウンテングレンでも、まだ生徒であるチーム《RWBY》の面々が複数体を相手取っても、討伐は可能だったため、正規の軍であるアトラスの兵士達からしたら、恐るるに足らないと考えても仕方がない。しかし、地下線路でアーサと似た個体と戦ったラグナからすれば、その油断は命取りに成りうると思わざるを得なかった。
「油断しない方が良いと思ぅ…います。俺が実際に戦った奴らは、通常種とは比較にならないほど驚異的なパワーとスピードだった。他にも棘を撃ち出してきたり特殊な攻撃パターンもあるから…」
「一介の学生に対処できたのであれば、ますます問題なさそうですね。我々の相手ではないでしょう。
勢いあまって殺してしまわないように気をつけましょうか。今回の任務は『捕獲』ですからね」
ラグナは自身の経験則から警戒を促すが、その言葉は途中で兵士達によって遮られた。ラグナは自身の発言の浅慮さを後悔したが、時すでに遅く、その兵士の横やりによって、天幕の中はドッと笑いに包まれる。ラグナの舌は打ったが、それは笑い声にかき消され、ラグナの心に更に不穏な予感を植え付けた。
「学生は意見せずに、グリムの対処は我々に任せて、与えられた役割を全うすると良い。我々の邪魔さえしなければ、悪いようにはしない。問題なく、単位も取得できるだろうさ」
別の兵士から放たれた嘲笑混じりの言葉に、もう一度笑いが起こる。ラグナはもどかしい思いからギリリと歯を軋ませた。しかしーーー
「任務中に浅はかに笑い声を上げる者は、我が軍に相応しいとは言えんぞ」
ブリーフィング中、一切表情を動かすことがなかったアイギスの低く重厚な声が笑い声をかき消した。
「未曾有の事例だからこそ、アイアンウッド将軍は我々第一小隊に加え、シュニー中将までこの任務に当たるよう指示なさったのだ。慢心できる様なことは何一つない。もし、まだそんな甘い考えの者がいるなら、即刻軍から退くが良い」
アイギスの言い放った言葉に、天幕内はシンと静まり返る。笑い声を上げていたものはきまりが悪そうに、顔を伏せた。
「では、これから予定通りアーガルムの村へと移動する。ラグナ、さっそく案内を」
ラグナは、浮ついた空気を一声で引き締めてくれたアイギスに心の中で深く感謝し、コクリと頷いた。
というわけで、今回のオリジナルストーリーではアトラス軍の方達にもスポットが当たります。この人達も魅力的に書けるように努力して行きますので、応援よろしくお願いします。
それから、今回からオリジナル要素が多く出てくるため、少しだけ補足を後書きに記載します。
・アーガルム
首都ヴェイルより南西部に位置する森林に囲まれた田舎の村。ラグナがシフト後、1年ほど拠点にしており、様々な依頼を解決した。RWBY世界における、ラグナの故郷のような場所。
・ブラス・アイギス
本作のオリキャラ。アトラス軍の第一小隊隊長で階級は中将。白髪オールバックに髭を蓄えた壮年の男性で、厳格な性格だが快活で面倒見の良さも持ち合わせている。軍務経験が長く、軍内でも信頼が厚い。武器は巨大な斧と盾。名前の表す色は黄銅、真鍮を表す「Brass」。
・アトラス軍第一小隊
アイギスが隊長を務めるアトラス軍の小隊。アイギスに師事するため若いエリートが多い。それゆえにメンバーはプライドが高め。人数はアイギスとフォーマンセル×4の計17名。
・アトラスの軍用機械兵
目の色で警戒レベルが分かる。青→異常無し、黄→不審、警戒、赤→敵対、排除対象。
RWBYの雑談コミュニティにも是非、ご参加下さい。
RWBY雑談コミュニティ招待リンク
https://discord.gg/E23QJ2376t
私自身のキャラ理解向上の為、コミュニティにて皆さんのRWBYの推しキャラと推しポイントを書いて頂けると嬉しいです。同時に、皆さんの交流の一部になれば幸いです。
では恒例の謝辞を。
今回もお読みいただきありがとうございました。
また次回。