10月の頭にコロナにかかりまして、穴を空けた仕事の埋め合わせをしてたら…なんと今年が終わるではありませんか!
前述の通り、生存報告がてら更新します。
アイギスの鶴の一声により、緊張感を取り戻した一行は速やかに森の中へと入り、木々の間のほっそりとした道を縫うように進む。ラグナは案内のために、前の方に配置され、小隊を導くように促されたが、元々良く通っていた道のりだけあって、特に迷うこともなく、すいすいと歩を進めていた。アーガルムまであと1時間程度で到着するかというところで、ラグナの後ろから声がかかる。
「このペースだと、あと半刻程というところですね」
澄んだ凛々しい声の主は、シュニー中将と呼ばれている人物だった。するりとラグナの横に並ぶように歩を揃えており、森を進む最中の滑らかな身のこなしから、アカデミーの卒業生の中でも上澄みであろうことは容易に想像できる。
「そうっすね。えーと…シュニー中将さん?」
「…まあ、先ほど軍内の楽観視を指摘した提言に免じて、拙い言葉遣いには目をつぶりましょうか。
まだ名乗っていませんでしたね、私はウィンター・シュニー。アトラス軍特殊部隊所属、階級は中将です」
「どうも。シュニーっていうとやっぱり〈シュニー・ダスト・カンパニー〉関係の?」
「シュニー家は実家ではありますが、私は既に会社には関わらないと公言しており、相続権も放棄しています。なので会社とは一切関係ありません」
「なるほど。やっぱりワイスの姉ちゃんか」
ぼそりとした呟きであったが、ウィンターは妹の名前が目の前の男から馴れ馴れしく発せられたことで、訝しげにラグナを見るが、少ししてから納得したように「ああ…」と声を漏らした。
「思えば手紙の中に、白髪にオッドアイの学友についても書かれていましたね。貴方があのラグナでしたか」
「ワイスがどんなふうに書いてたか知らんが、ワイスのいるチームとは一緒にいることが多いな。…っすね」
つい普段通りに話してしまっていた事に気付いたラグナが慌てて敬語を取り繕おうとする。結果、ウィンターの「拙い」という指摘を受けた通りになってしまった事で、ラグナは頭に手を当てた。
「すんませんね。敬語に慣れてないもんで…」
ラグナは口惜しく謝罪すると、ウィンターは、ラグナのその様子をしみじみと見つめた。クールな表情を崩さないウィンターと済まなそうに苦い顔を浮かべるラグナの間に、沈黙が流れる。居心地も悪くなってきてしまったラグナだったが、自身に否があるのは明らかであったため、ウィンターが再度口を開くのを待つ他無かった。
「先ほどはなんと不躾な学生かと思いましたが…なるほど…
悪意がないのは本当のようですね」
沈黙の後にウィンターの発した言葉は、ラグナの予想の外であったが、それによってラグナは張った肩肘を緩めることができた。ウィンターは気持ち柔らかくなった口調で、ラグナへ問いかける。
「アイアンウッド将軍から、貴方は特異個体との戦闘経験が数回あると聞いていますが、事実ですか?」
「数回といっても2回だけっすよ」
「十分です。先程『通常種とは比較にならないほど驚異的なパワーとスピード、さらに特殊な攻撃パターンもある』と言っていましたね?
具体的に聞かせてください」
「え?」
ウィンターからの予想外の要望に、ラグナは面を食らい、間の抜けた声を上げた。ウィンターは意に介さずに続ける。
「今回の捕獲任務はアイアンウッド将軍からの直々の指令です。将軍が小隊に加えて、特殊部隊への要請を発した以上、相応の危険性と重要性が高いと考えるべきです。ならば私は、考え得る対策は全て講じておきたい。
そんな中で実際に戦闘経験のある者からの情報は貴重です。それが誰の談であろうと変わりはない。
それに私は…貴方をただの一学生だとは思っていません。将軍から頂いた資料の中にあった
ウィンターの淡々とした言葉は、その中に確信を滲ませた力のあるものだった。ラグナは軍に合流してからというもの、周囲から軽んじられていることをひしひしと感じていたが、それは元々予想できていたし、それで自分のやることは変わらないと割り切っていた。だからこそ、面と向かって、ある種ラグナの実力を評価した言葉をかけてくれる人がいるとは思っても見なかったのである。それが、少なからず疑念を帯びたものであったとしても。
ラグナはウィンターの言葉をやや複雑に感じながらも胸中で感謝し、それに応えるべく口を開いた。
「俺が戦ったのはネヴァーモアとアーサに似てました。共通してるのは赤黒い棘や変わった仮面があるってのと、普通のグリムとはおそらく行動原理が違うみたいって事っすかね」
「行動原理が違う?」
「ネヴァーモアタイプは遠くの戦闘を傍観して、戦闘が終わってから襲い掛かってたし、アーサタイプはゴライアスを襲って喰らったりしてたんすよ。知能が高いからってのもあるとは思うが、わざわざ待ったり、共喰いをするのって『負の感情に引き寄せられ、人を襲う』っていう普通のグリムの生態からは外れてる。
あくまで俺とオズピン教授の推察に過ぎないっすけど…状況から考えると赤黒い棘を持つ奴らの行動原理は『喰らう事』、それも『より強者を狙って喰らう事』なんじゃないかと思ってるんす。『何のためにそんな行動をするのか』ってところまでは、まだ繋がってないっすけど…」
「なるほど。戦闘を傍観してたのも、獲物を見定めるためだと考えれば、辻褄は合いますね。目撃証言の中にも『グリム同士で戦っている』というものがありましたし、あとはその目的が解れば…」
納得した様子のウィンターの言葉に、ラグナもコクリと頷いて返す。そんな中、ウィンターとは逆側から、ぬっとラグナに並び立つ者が現れた。
「ならば、今回の目的は、『行動原理の確認』と『捕食の目的の解明』となるな。研究所の方にも共有しておくとしよう」
「アイギス中将。聞いていらしたんですね」
「うむ。ラグナと言ったな。初対面やブリーフィングで見せた胆力とその洞察力には目を見張るものがあるな。小生意気な小僧かと思えば、中々どうして、既に戦士の風格を持ち合わせている」
「どうも。俺も作戦に参加する以上、自分の目的があるもんで」
「ほう、その意気や良し!
そして、すまぬな。私の小隊の者が失礼な態度をとった。若くして優秀な者が多くいるのだが、いかんせん自尊心が必要以上に高い者も多くてな」
「いや、気にしてないんで」
アイギスはラグナの応答に笑みを浮かべ、一拍をおいて告げる。
「……実を言うとな、いくら将軍と長らく交流のあるオズピン学長からの推薦だとしても、今回の作戦に学生を加えるのは反対だったのだ。まだ多くが謎に包まれているグリム、その特異個体ともなればどんな危険が伴うかわからんからな。将軍も同じお考えだったらしいのだが、オズピン学長に半ば強引に押し切られてしまったと言っていたよ。ゆえに、私は君の安全を留意しておくように仰せつかっていたのだ。
しかし、蓋を開けてみれば、中々見応えのある若者ときた。オズピン学長には感謝せねばならんかもな。期待しているぞ。
なんなら、さっき君を笑った奴らのプライドをへし折ってくれても良いからな!」
「………うっす」
アイギスはハッハッハと豪快に笑いながら、冗談を交え、ラグナの背中をバシバシと叩く。ラグナは重い衝撃に苦い笑みを浮かべながら、作戦の責任者である2人から最低限、作戦への参加を認められたことに、ひとまず安堵した。
その後、アイギス、ウィンターに以前に遭遇した赤黒い棘のグリムの攻撃などについて話しながら、山道を進むのだった。
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「見えてきた。アーガルムの村だ」
その後も順調に森を進み、ラグナ達は予定よりも早く村の入り口に到着した。村の門番は村に近づく一団に警戒心を露わにするが、その先頭を歩くラグナの姿を認めると、大手を振ってラグナへ走り寄ってきた。
「おーい!ラグナじゃねえか!久しぶりだなあ!
こんな大所帯引き連れてどうしたんだ?」
「おう、ダン、久しぶりだな。
最近、この辺りで変わったグリムが出たっつうから、その調査をアトラス軍がしてくれるって話なんだ。俺はその案内役」
門番の男の名は「ダン」、自警団に所属しているラグナが鍛えた村の若者の1人である。
「この度、調査を任されました責任者のアイギスと、こちらがシュニ―中将です。件のグリムの目撃情報や、現在の状況、そして調査中の滞在許可を頂きたいのですが…」
「あ、ご丁寧にどうも。そいつはありがたいお話です。最近は結構近くでも見かけるようになってて、みんな不安がってたんで…
今は酒場の親父さんと教会の神父様がこの町のまとめ役をしてくれてるんだ。ラグナも一緒なら猶更断る理由も無いと思う。俺は神父様に声を掛けてくるから、酒場で待っててくれるか?
グリムについて聞きたいんだったら、自警団の奴らも何人か連れていくよ」
「頼む」
「では、私もそちらに同行しましょう。実際に我々の口から説明した方が話が通しやすいでしょうし、必要な情報を持っている方々に来てもらった方が良いでしょうからな。ラグナはシュニー中将を連れて、酒場の方へ向かってくれ」
「了解だ」
「わかりました。協会は向こうなんで、着いてきてください」
村の門が開けられ、ラグナ達はアーガルムの村へと足を踏み入れた。アイギスはダンに連れられて、教会へと向かい、ラグナとウィンターは酒場へ向かう。他の第一小隊のメンバーは、滞在許可が下りるまでの間、村の入り口にて、拠点設営の準備をして待機するように命じられた。
アーガルムは森の中の村にしては栄えており、人口もそれなりに多い。商店街や教会、孤児院などもあり、門の中は村というよりも町に近いのだが、これは、ラグナが依頼と人を集めたこと、そして、自警団を鍛え、治安の改善と安全性の向上したことが要因である。本人にはその自覚がなかったが。
「あー!!ラグナだー!!」
「ほんと!?」
「ほんとだ!ラグナー!!」
酒場への道を歩いていると、無邪気な声を挙げながら、数人の子供たちが、ラグナに向けて駆け寄って来る。子供たちはスピードを落とさずにそのまま、ラグナへと突進する勢いで抱き着いた。ラグナがしっかりと子供たちを受け止めると、子供たちは目を輝かせてラグナを見上げた。
「帰ってきたのー!?」
「ああ、ちっとばかし用があってな」
「あのね、オレたち、剣のとっくんも始めたんだぜ!ラグナにも見てほしいんだ!」
「お、そうなのか。あー、わりいな…
見てやりてえのは山々なんだが、今回は俺も仕事があるから、難しいと思う」
ラグナが申し訳なさそうに詫びると、子供たちは残念そうに顔を伏せた。ラグナが一人ずつ頭をポンポンと撫でて宥めるが、子供たちの顔は曇ったままである。そこへ、ウィンターが口を挟んだ。
「今回の任務は数日間かかる見通しです。その間、あなたの時間が空くこともあるでしょう。作戦行動に支障をきたさない範囲でなら、少し自由に行動しても構いません。この村は防壁の整備や町の警備もあるそうですし、何かあればすぐに気付ける。本部を置いた後は、四六時中全員が纏まって行動する必要もないでしょう」
ウィンターからの許可が下り、ラグナは少しばかり驚きを隠せずにいた。厳格そうなウィンターが、重要な任務の最中に、子供たちの我儘を許容するとは思わなかったのだ。しかし、子供たちと接するウィンターの姿と表情を見たラグナは、ウィンターという人間への認識を改めえることとなった。
「ほんと!?ありがとう!お姉ちゃん!」
「どういたしまして、では少しの間、お兄さんをお借りしますね」
元気を取り戻した子供たちの礼を受け取るウィンターは、微かにだが確かに口元に弧を描き、その瞳には暖かい色が宿っていた。
「はーい!じゃあ、またあとでねー!」
嬉しそうにはしゃぎながら去っていく子供たちを見送ったラグナは、酒場への歩を進めながら、自身の少し後ろを歩くウィンターを肩越しに見つめた。
「意外ですか?」
「え゛っ!?い、いや~、ははは…」
ギクゥッ!という音が聞こえてきそうなほど、図星を突かれたラグナは背筋を伸ばし、奇妙な声を発した。苦い作り笑いで誤魔化すわかりやすいラグナの反応に、ウィンターはジトッとした目でラグナを捉える。ラグナは冷や汗が噴き出るのを自覚したが、ウィンターは今度はフッと自嘲気味に小さく笑みを作った。
「別に構いません、そういう反応は慣れてますので。自分でも子どもの前だと普段とは態度が違う自覚はあります」
「子ども、好きなんすか?」
「嫌いではありませんね。それに、あの子たちを見ていると、妹を思い出します」
「ワイスを?」
「シュニー家は世界でも稀有な一族に継承されるセンブランスを持ちます。そのため、幼いころのワイスも、あの子たちと同じように『センブランスの扱いを教えて欲しい』と私に付いて回っていました」
「なるほど」
(いい姉ちゃんじゃねぇか…)
ワイスのことを語るウィンターの表情に、再び暖かな慈愛を見たラグナは、自身も大切に思う弟妹達を思い返し、同じような想いを抱くウィンターに親近感を覚えるのだった。
理由の明確な違和感がラグナ君を襲うぅ!!
敬語…きつい…キャラ崩壊が…
でも、初手威圧してきたアイギスは別として、初対面の年上には敬語が必要なことが分かるぐらいには常識人だし…
授業とか普段のラグナを知ってくれてる先生たち相手には、ちょっと言葉遣いはルーズに書いてますがね…
RWBYの雑談コミュニティにも是非、ご参加下さい。
RWBY雑談コミュニティ招待リンク
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私自身のキャラ理解向上の為、コミュニティにて皆さんのRWBYの推しキャラと推しポイントを書いて頂けると嬉しいです。同時に、皆さんの交流の一部になれば幸いです。
来年は自分にとっても大きな転機となる年になりそうなので、気長に待って頂けたら幸いです。
来年が皆様にとってもより良い一年となりますように、ささやかながら祈っております。
では恒例の謝辞を。
今回もお読みいただきありがとうございました。
また来年〜(^^)ノシ