ご了承を。
「ったく…
制服ぐらい1人で取りに行ったってのに…」
「ははは、まぁ良いじゃないか。手塩にかけている子の晴れ姿を観たいと思うのが、大人というものだよ」
「子なんて呼ばれるほど、柔な人生過ごして来てねえよ」
「だからこそさ。君は過去の出来事故に、子供らしい経験をして来ることが出来なかった。だからこそ、これからは普通の子供が当たり前にする経験をたくさんして貰いたい。君はもう私にとって他人じゃないんだ、これぐらいはさせてくれ」
ラグナがオズピンの元で生活を始めてから、約1ヶ月が経ち、現在、ラグナはオズピンと共に店を出て、ヴェイル市街を歩いていた。ヴェイルの街は国名の由来にもなっている国の首都で、ビーコン・アカデミーは街の東側に位置している。今までいたのは、話の通り服の仕立屋。戸籍が出来、正式にビーコン・アカデミーに入学する事が決まったラグナの制服を受け取ったところであった。
「さて、じゃあ私はアカデミーに戻るとしようかな。制服は私が家まで持って行こう。通り道だしね」
「おう、じゃあ頼むわ。俺は少しそこら辺ブラついてから帰る」
「わかった。昨日出した課題も終わらせておくんだよ?」
「もう昨日の夜に終わらせてある」
「そうか、流石だね。君は私から見ても頭は悪くない。これまで学習の機会が無かった事が本当に勿体無いと思うよ」
「これまでの事言っても仕方ねえだろ。ほら行った行った、夕食の買い出しもあんだからよ」
「……わかった。それじゃあ、行ってくる」
まだ話し足りないという風なオズピンだったが、褒められるのがこそばゆかったラグナはシッシッとジェスチャーで促し、オズピンはアカデミーの方へ渋々歩いて行った。
オズピンと別れたラグナは、市街を散策する。これは、ラグナがこの世界の情報を得る為に日課として行っている事で自分に見覚えのある人物や物がないか、探しているのである。
『次のニュースです。
またもや、シュニー・ダスト・カンパニーの輸送列車が襲撃されました。今回の襲撃による損害は甚大で、輸送していた社員、運転手達も重軽傷を負い、医療機関へと搬送されたとの事です。その後、意識を取り戻した人々の証言や手口から、近頃頻発している「ホワイト・ファング」による事件として捜査が進められています』
「またかよ…
グリムだけじゃなく、過激派の連中も妙に殺気だってやがるな。何も起きなきゃいいが…」
その後、ラグナは近くのスーパーで買い物を済ませたあと、オズピンの家へ戻り、夕食の準備を始めたのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「センブランス?」
ラグナは夕食後、オズピンからの講義を受けていた。始まった当初は得るべき情報量の多さに悲鳴を上げていたが、ひとまず人並みに知識を得てひと段落した事と慣れによって、ある程度余裕が出来ていた。
「そう。昨日話の最後に出て来たオーラについて詳しく説明するとね、人類や動物といったレムナントに住むあらゆる生命が持つ魂の力とされていて、ハンター達はまずこれを扱えるように訓練する。使い方は自分の身を守るバリアを貼ったり、ダストの力を発振するのに使ったり、傷を癒したり多岐に渡る」
「簡単に言うと『気』みたいなもんか」
「ふむ、的確な表現だ。
それでね、オーラにはその他にセンブランスという、所謂特性のような物が付与されていて、ハンターによっては自身のセンブランスに応じて戦闘手段を選ぶ事もある。一部の血統を除いて、センブランスに遺伝的要素は関係なく、オーラが発現するまで分からない」
「なるほど。
……で?そのオーラってのはどうやったら扱えるようになるんだ?」
「昔から言われているのは、『人間の誰しもが持っている光と闇を理解する事』だ」
「なんだそりゃ?」
「私の指導方法では、その人が持つ『希望』、『願い』、『夢』などを光、『不安』、『恐怖』、『怒り』、『劣等感』などの負の感情を闇としてイメージさせるようにしている」
「…………」
自分の中の光と闇…
ラグナの強さの根源は『守る』強さである。自分の大切な人々を守り、それを害する存在に対抗する力。それに加えて、この世界では『自分自身の為に生きる』という『願い』が自分の光であるだろうと考えた。
では闇は?
前の世界では、『復讐心』が闇であったであろう。しかし、この世界では復讐の対象は存在しない。ラグナはどんどんと思考の海へと落ちていく。
「難しく考える必要はない。闇は光の相対するモノだよ」
それを引き上げたのはラグナを見守っていたオズピンだった。ラグナの光の逆は、自分の無力によってまた『守り切れない』事である。『守りたいモノ』が手の届かない所へ行ってしまう事に起因する絶望や後悔、それがラグナの闇であった。
それを自覚した途端、ラグナは自分の身体が軽くなるのを感じた。身体が光に覆われるように包まれており、オズピンはそれを見て、満足そうに微笑んだ。
「上手くいったようだね。それが『オーラ』、君の闇を打ち払い、光を助けるモノだ。
さて、じゃあ君のセンブランスを確かめるとしようか。ラグナ君、何か変わった所はないかい?」
そう問われ、ラグナは身体の不思議な感覚を説明した。
「身体が軽くなった…か…
となると、外因的か内因的かはまだわからないね。
じゃあ今回の講義はここまでだ。明日、私はこの家に戻れない。私が帰る明後日までに自分のセンブランスについて予測をたてておきなさい」
「わかった。ありがとよ」
そう言って、ラグナは自身の部屋へと戻っていった。それを確認し、1人になったオズピンはーー
「まさかとは思っていたが、今までオーラを使わずにグリムを狩っていたのか…
全く末恐ろしいね」
そう呟き、微笑みながらカップに口を付けた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
翌日、ラグナはオズピン邸の敷地内にある林の中の直径2メートルはあろうかという大きな岩の前で、昨日言い渡された課題に早速取り組んでいた。
朝見送ったオズピンによると、ラグナの「身体が軽くなった感覚」から、ラグナ自身かラグナの周囲に何らかの影響を及ぼしている可能性が高いとの事だったので、実際に身体を動かし、色々試してみる事にした。
「蒼の魔導書」の出力をゼロにし、昨日と同じようにオーラを纏う。オーラが切れるまでは痛みや衝撃は感じるものの、外傷を負う事は無いと言われたので、思い切り岩を殴り付けた。ラグナは過去の経験故に、修行の日々を送り、肉体も鍛えていた。しかし、この世界では魔素が「蒼の魔導書」から発せられる微量しか存在しない為に十全に扱えない「術式」はもちろん、「蒼の魔導書」すら使わずに生身でこの巨大な岩を破壊する事は出来ないのは当然。そんな事が出来るのはあの「狂犬」だけであろう。
ーーーと、思っていた。
ドゴォ!ガラガラガラガラ…
ラグナによって殴りつけられた岩は、大きな音をたてて粉々に砕け散った。
「……………はぁ!?」
暫しの茫然の後、驚愕の声をあげ、自身の拳を見つめるラグナ。試しに握ったり開いたりを繰り返すが、拳の方は問題ない。あまりにも衝撃的な出来事に、ラグナがこれがセンブランスによる力であると納得するまでは時間を要した。
「…驚いたが…これがオーラか…
単純に考えると肉体の強化って事になるが…
もっと色々試してみるか」
走る。跳ぶ。蹴る。武器を振る。林の中を縦横無尽に駆け巡る。全ての行動が以前のラグナとは一線を画すレベルで異なっていた。
「…すげぇ…
術式が使いにくくなっても、『蒼の魔導書』が使いやすくなってたからプラマイゼロだと思ってたが、こんなんがあるなら完全にプラスだ。
っとと…でもまだ扱いきれてねえな。上手く調節しねえと」
その後、オーラとソウルイーターを併用し、アラマサを振るう。その最中、なんとも言えない違和感を覚えた。
「なんだ?この違和感…
確かに身体は軽くなって、攻撃の威力も前より強くなってる。だが…」
しかし、いくら考えてもセンブランスに対して知識が乏しいラグナでは、その違和感の正体をはっきりさせることは出来なかった。
「仕方ねぇ。とりあえずそれはオズピンが戻ってきてから考えるとして、今は出来る事をやるしかねえな」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ーーーってなわけで、おそらくだが俺のセンブランスは『身体機能の強化』だと思うんだが…
どうにも違和感があんだよな…」
「なるほど…
しかし、身体機能の強化と言っても、その詳細は多岐に渡る。ただ単に筋力を増強させるものであったり、オーラの治癒能力が高めたりね。他には何か出来そうかい?」
そう言われ、ラグナはこの世界に来てから、五感、特に聴覚が鋭敏になったように感じていた。それをオズピンに伝える。
「もしかすると、ラグナ君は五感の強化も可能かもしれないね。少し窓の外に意識を向けて、目を凝らし、耳を澄ましてみなさい」
「おう」
オズピンの促しに応じ、窓から顔を出すラグナ。すると、眼は辺りが暗くなってきた夜だと言うのに数百メートル先の街中にいる人々の顔が街灯に照らされはっきりと見え、街の喧騒がはっきりと聞こえた。
「ああ、確かに眼と耳に関しては強化出来るみてえだ」
「そうか。そうなると、ラグナ君のセンブランスは強化系の中でも意味が広いものということになるね。ならば、まだ全貌は分からなくてもいい。これからゆっくりと、自分で調べていきなさい」
「わかった。
………ん?」
ふと、ラグナが何かに気づいたように声を漏らした。
「どうしたんだい?」
「いや…少し気になる奴が街にいてよ」
「気になる奴?一目惚れかい?」
「ちげぇよ。野郎が2人、なにやら話してるみてえだ。1人は黒いコートにフードを被った男。もう1人は白いコートにハットを被った男だ。2人とも顔は隠れて見えねえが、身のこなしが明らかに只者じゃねえ」
「なに?」
ラグナの言葉を聞くうちに徐々にオズピンの表情が変わっていった。ラグナも2人の男を監視しながらも、オズピンの纏う雰囲気が緊迫したものへと変わっていくのを感じていた。
「あんたが動揺するなんて珍しいな。なんかあんのか?」
「…近頃、ヴェイル各地でダストを強奪する事件が頻発してるのは知っているかい?」
「ああ、ファウナスの過激派『ホワイト・ファング』が関わってるって事件だろ?」
「その事件の首謀者の1人に、現在指名手配中の『ローマン・トーチウィック』という男がいる。直近の目撃情報だと、白いコートにハットを纏っていたらしい」
「なるほどな。
ちっ、2人が別れやがった。どうにもキナ臭いぜ、どうする?オズピン。
因みに、ハットの方の男の髪の色は…赤だ」
その情報により、ハットの男がローマンである可能性が高いと考えたオズピンは、すぐさまビーコン・アカデミーの教授を務めるグリンダに連絡を取った。
「グリンダ、ヴェイル市内でローマンと思しき人物の目撃情報が入った。至急、ローマンの確保に向かってくれ」
「オズピン教授、恐れながら申し上げますが、その情報は信用にたる筋からの情報なのですか?少なくとも、私の所にはそのような情報は来ておりませんが…」
「ああ、大丈夫だ。勘違いである可能性はあっても、嘘である事はない」
「オズピン、ハットの男の方は黒いスーツの男達を引き連れて店に入ったぞ。『FROM DUST TILL DAWN』、ダスト屋だ」
ローマンと思われる人物が、ダスト販売店に入ったと聞き、ハットの男への疑いは更に強くなった。
「グリンダ!『FROM DUST TILL DAWN』というダスト販売店に今すぐ向かってくれ!杞憂であれば良いが、可能性は高い!」
オズピンの緊迫した声にグリンダもそれ以上はなにも言わず、返事を返した。電話の後、オズピン自身も現場へと向かう為、急いで支度を進める。
「ラグナ君、ありがとう。後は私達に任せてくれ」
「いや、居場所を伝えたローマンは任せても問題ねぇだろうが、奴らが二手に別れた以上、人手が足りねえだろ?
俺はまだ移動を続けてる、もう1人を追う」
オズピンは危険だとラグナを止めようとしたが、これからもう1人の方に人材を派遣出来るとは限らない。更に、今その人物を捕捉しているのはラグナであり、ラグナの戦闘能力を知っているオズピンは止める事をやめた。
「…わかった、僕もすぐに君のところに向かう。くれぐれも無理はしないように。
それから、学生の身で敵にもアカデミー関係者にも、顔が割れるのはあまり良いとは言えないね。生徒に戦ってもらうなんて、教師の立つ瀬がないから普通はあり得ないんだが、今は君の力を頼る他ない。
せめて、相手と同じように顔が隠せるよう、君もこのマスクを被って行きなさい」
「……わかったよ。ま、実戦でセンブランスを試したかったところだ。ちょうど良い」
オズピンに渡された仮面をつけたラグナは、窓から飛び降り、男の影を追った。
オズピンもラグナの向かった先を確認すると、グリンダと合流してすべく、家を出発した。
さて、ポンポンと投稿してきた書き溜めは以上です。
今結構モチベが保ててますので、この調子で頑張って書きます。
多分日本のアニメなどに比べ、RWBY自体を知っている人がどうしても少なくなると思われますので、感想など頂けるとモチベ維持になります。どうぞよろしくお願い致します。