元全世界の敵のなんだかんだ奮闘記   作:天然黒酢

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いそ…がし…くて…
いつの間に年明けて、年度変わって、梅雨あけてんですけど…
こわ…

お久しぶりです。
早速本編をどうぞ。


疑念の目

 時は少し遡るーー

 ラグナによって、孤児院へと避難した子供達は、孤児院に駆け込むなりヘナヘナとへたり込んでしまった。初めてグリムを間近で見た事、そして、そのグリムが放つ威圧感に当てられてしまったのである。加えて、そのグリムが、通常のグリムとは一線を画す特殊個体であったのだから、こうなるのも無理もないと言える。

 しかし、そんな中で自分を奮い立たせて立ち上がったのはアレンだった。最年長者として、ラグナから託された役目をなんとか果たそうと、アレンは震える足に喝を入れながら、ラグナから渡されたスクロールを握り締め、リビングへと駆け込んだ。

 

「院長先生!」

 

 アレンはリビングの扉を開け放ちながら叫ぶ。リビングではアイリが本を読んでおり、突然の事に驚き、ビクッと体を跳ねさせる。しかし、それを気にする余裕もないアレンは首を回して院長である神父の姿を探した。

 アレンの叫び声を聞いたのであろうグレイが、キッチンの方から顔を見せた。

 

「アレン、そんなに大きな声を出してどうしたのです?

今日の訓練は終わりですか?」

「先生!

ラグナが、ラグナが!」

「…落ち着いて。一度大きく息をして、落ち着いて何が起こったのか聞かせて下さい」

 

 アレンの切羽詰まった様子にグレイも、只事でないことを察した。朗らかな雰囲気から真剣な面持ちに変わり、アレンに深呼吸を促し言葉を待った。

 アレンはグレイの言葉に従い一つ息をする。切らした息は(おさま)ったわけではなかったが、精一杯平静でいられるよう努めながら、事のあらましを話した。

 村の外から塀を飛び越えて、グリムが入ってきた事。ラグナが自分たちを逃がすためにそのグリムと戦っている事。助けを呼ぶように頼まれた事。グレイはアレンの話を聞くに連れて徐々に厳しい表情に変わっていく。

 

「先生、ラグナはこれでウィンターとアイギスって人にかけろって!」

 

 アレンはグレイへラグナから託されたスクロールを渡す。

 

「わかりました。アレン、よく頑張りましたね」

 

 グレイはアレンからスクロールを受け取ると、アレンの頭を撫で、彼の勇気と奮闘を称えた。そして、ラグナのスクロールの連絡先から、ウィンターの名前を見つけた。

 

Prrrrr…Prrrーーピッ

 

「はい、シュニーです。ラグナ、どうかしましたか?」

 

 2回目のコールが鳴り止む前に、ウィンターは電話に出た。スクロールに表示された名前から、誰からの着信か把握したのだろう。ラグナへ問いかける言葉が投げかけられる。

 グレイはウィンターへ向けできる限り簡潔に述べた。

 

「孤児院の院長をやっている、神父のグレイです。

この村にグリムの襲撃があったらしく、ラグナが応戦しています」

「っ!?」

 

 予想だにしなかった報告に、電話越しにでもウィンターの戸惑いが滲み出ているのが伝わった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 電話がかかってきた時、ウィンターは自分に割り当てられた簡易拠点の一室に居た。軍服のコートと自身の武器である剣は壁に掛けてあり、自身で淹れたコーヒーを飲みながら、一度遭遇して以降、ここ数日パタリと姿を表さなくなった特殊個体のベオウルフについて考えを巡らせていた。

 軍としての方針をどうすべきか思案していたところに、スクロールから着信を示すダイヤル音が鳴る。発信元として記されていたのは、「ラグナ」。今回、任務に同行しているビーコン・アカデミーの生徒だった。しかし、電話に出てみると、先ほどまで任務で共に行動していたラグナとは違う、温和ながらも低い男性の声が聞こえてきた。

 そして、その事を不思議に思う間も無く、その電話の主は声に似合わない焦った様子で続けた。

 

「孤児院の院長をやっている、神父のグレイです。

この村にグリムの襲撃があったらしく、ラグナが応戦しています」

「っ!?」

 

 ウィンターは電話の相手、グレイの言葉を聞くや否や、自身の剣と軍服のコートに手を掛けていた。

 

「グリム避けの仕掛けが施された村の塀を易々と飛び越えて侵入したそうなので、貴女方が探していた、特殊なグリムではないかとーー」

「わかりました。すぐに向かいます」

 

 ウィンターはグレイと通話しながらも素早くコートに腕を通し、剣を腰に佩く。

 

「場所は孤児院の裏手にある丘の上です。どうか、ラグナを助けてください」

「必ず」

 

 

 そう告げ、通話を切り外に出ると、ウィンターが武装して部屋から出てきた事にアイギス隊の兵士が反応を示す。

 

「シュニー中将?

どうされました?」

「村の中にグリムが侵入したと連絡がありました。

アイギス中将に報告し、戦闘準備を整え次第、孤児院の裏手にある丘の上に来なさい」

 

 そう短く指示を出し、孤児院の方角へ向けて走り出す。後ろから、兵士がウィンターを引き留める声が聞こえるが、学生があの特殊個体を交戦している以上、事態は一刻を争う。

 全速力で村を駆けていると、スクロールが着信を示す音を発した。画面にはアイギスと表示があり、足を止めずにスクロールを耳に当てる。

 

「はい」

「私の方にもグレイ殿から連絡が来た。兵士は私が率いる。

君はラグナを頼む」

「了解」

 

 アイギスは兵士達からウィンターが拠点から出た事、そしてグレイから特殊個体のグリムの来襲を知らされていた。簡潔な言葉で告げ、ウィンターの背を押したのだった。

 

(流石はアイギス殿です)

 

 ウィンターはアトラス軍の第1小隊を率いる老練な将であるアイギスに、改めて感嘆(かんたん)する。自身の立場ゆえに、軍の動きについて憂いがあったウィンターは、これで心置きなく動けると、さらに足を早めた。

 そして、目印となる孤児院を目に捉え、そのまま裏手にある丘へと向かう。丘の上にはラグナが赤黒い棘を生やしたベオウルフと接敵しているのが見え、ラグナはあろうことか木刀で交戦している。

 

(…なんて無謀なことを……)

 

 あのグリム相手に木刀では幾許(いくばく)も保たないと、そう思ったのも束の間、ラグナの持つ木刀が砕ける。しかし、その砕けた後の木刀から、なんとも言いようの無い恐怖をウィンターは感じ取った。

 折れた木刀はがボロボロと崩れながら、やがてサラサラと灰の様に変質していく。その様は、グリムが倒された後、消滅する様子によく似ていたからである。

 ウィンターがほんの一瞬戸惑いを隠せずにいると、ラグナは折れた木刀をまるで意に介さず、好機とみて飛びかかったベオウルフを素早く後ろに下がることで回避。飛びかかった体勢で前によろけるベオウルフへ、左腕によるアッパーを見舞う。拳はベオウルフの顎を的確に捉え、ベオウルフの体が打ち上がった。ラグナは続け様に腕を大きく振り翳して掌底、そして勢いそのままに回転し、左足での蹴り上げと連撃を繰り出し、ベオウルフを蹴り上げた。

 その光景にウィンターの胸中にはさらなる驚愕と困惑、そして疑念が渦巻く。学生であるはずの彼の類稀なる戦闘力に、ではない。彼の纏う赤黒い波動が、()()を目の当たりにした時の()も言われぬ感覚が、今彼と相対しているはずのベオウルフが、先の戦闘で見せたモノによく似ていたからであった。

 元々、今回の任務にあたって、ラグナと得意個体のネヴァーモアの戦闘映像は見ていたが、その時はラグナの波動に関して、「センブランスの一種であろう」と気には留めていなかった。しかし、実際に目にした時、威圧感と恐怖に、魂が慄くかのような波動は、ウィンターの思考と体を硬直させる。

 

 蹴り上げられたベオウルフはクルクルと回転しながら、地面へと着地し、ラグナを睨みつけている。

 

 ウィンターはハッとして、まだ混乱が治まらないながらも、ほぼ無意識下で「グリフ」の召喚陣を展開する。召喚陣からは青白いベオウルフを呼び出し、それを特殊個体へ向けて仕向けた。

 不意を突いた召喚獣は敵の肩に牙を立てる。急な乱入者に目を見開くラグナに、ウィンターは努めて冷静さを取り繕いながら、声を掛けた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「無事ですか?

ラグナ」

 

 声が聞こえる方へ振り向くと、サーベルをベオウルフの方へ構えながら自分へ駆け寄るウィンターの姿があった。凛とした佇まいは崩していないが、呼吸の度に僅かに上がる肩が、ウィンターの焦燥感を表している。

 

「ああ。そうか…あれはあんたの召喚獣か…」

 

 初接敵の時にネヴァーモアを召喚していたことを思い出し、ラグナは納得したように声を上げる。

 

「何はともあれ助かった。ありがとよ」

「礼には及びません。貴方の身を守る事も任務の内ですので」

 

 短く会話を交わしている間に、棘のベオウルフに覆い被さっていた白いベオウルフの体に、爪が穿たれ、白いベオウルフは霧散した。不意な攻撃を受けた特殊個体だったが、一撃で乱入者を排除し、ムクリと立ち上がる。

 

「貴方は下がりなさい。多々ありますが、ともかくまずはこの場を(おさ)めてからです」

「ああ、わかった」

 

 ウィンターは赤黒い波動を纏うラグナを一瞥するが、すぐにベオウルフに視線を戻しながら言った。ラグナも自身の武器がない以上、素直に頷き、ベオウルフに警戒を続けながら後退した。

 ウィンターは再び自身のセンブランスから小型のネヴァーモアを多数呼び出す。自身のサーベルをベオウルフの方へ向けると、それを号令として、ネヴァーモア達が一斉に突撃を開始する。それ同時にベオウルフもウィンターの方へ駆け出した。ネヴァーモア達の突貫による弾幕を、ベオウルフはものともせずに直進し続ける。だがその中で、一際鋭い閃光がベオウルフの眼前で瞬いた。ネヴァーモアの弾幕を縫うようにして、ウィンターのサーベルによる斬撃がベオウルフを襲ったのである。

 ベオウルフは本能からか、咄嗟に頭を傾けながら、回避を試みるが、狙いすまされたその一撃を避けきれない。

 

ギィィイン!!

 

 甲高い音が丘に響き渡り、ベオウルフは強靭な脚力でサーベルの振りに逆らわない方向へ向け、地面を蹴る。咄嗟の行動に、ベオウルフは地面に倒れ込みながら、10メートル弱程離れた位置で停止した。ベオウルフは上体を起こしながらウィンターを睨む。ベオウルフの仮面には、しかと斬撃の痕が刻まれていた。

 

「シュニー中将ー!!ご無事ですか!?」

 

 そこへ丘の下からウィンターを呼ぶ声が聞こえ、アイギスと共に、何人かのアイギス隊の兵士が丘の上へ登ってくるのが見えた。

 ベオウルフも兵士の方へ振り向いたため、ウィンターは兵士達へ向け声を張りあげる。

 

「各員、直ちに臨戦体制を取れ!!

現在目標と接敵中である!」

 

 ウィンターの言葉に兵士達もすぐさま自身の武器を構えた。続々と丘へと集まりつつある兵士達。

 ベオウルフはウィンターとラグナの2人を交互に怒りに満ちたような眼で見据えた後、村の塀の方へ(きびす)を返した。兵士達が口々に「待て!」と言い放つが、ベオウルフは先ほどと同じように軽々と塀を飛び越えると、森の方へと消えていった。

 

「シュニー中将、アイギス隊長、いかがしますか?」

 

 兵士の1人がウィンターとアイギスに問いかけるが、2人は首を横に振った。

 

「やはり闇夜の森では危険が大きい。まずは村の安全確認が優先事項です。村の塀の増築も検討しなければなりません」

「ああ、私もシュニー中将と同意見だ」

「わかりました」

 

 そう返事をすると、兵士達は村の状況を確認するために散開した。ラグナは右腕の「蒼の魔導書」の解放を停止させると、ラグナから滲み出ていたソウルイーターの波動が消える。夜の闇に紛れたのか、散らばっていく兵士達は気にした様子はなかったが、唯一ウィンターだけは、ラグナのその行動をじっと見つめていた。

 そして、ウィンターと同じように兵士達に指示を出していたアイギスがラグナに近寄り、声がかけられる。

 

「ラグナ、子供達を逃がすために、あのベオウルフと交戦したらしいな。大事ないか?」

「ああ、問題ねえ。ウィンターがすぐに来てくれたおかげで助かった」

「それは何よりだ。しかし、数日前の時もそうだったが、まるで不利を悟ったかのように撤退したな」

「ええ、まるで理性があるかのようですね。少なくとも、高い知能を持っている事は間違いなさそうです」

「何故、今になって村を襲ったのだろうな?

村の者の話では、出くわしても襲われなかったと言っていたのに…」

「それも、何かしらの狙いがあると考えるべきですね。

しかし、また襲撃が来ないとも限りません。アイギス中将、機械兵を増員して配置を練り直しをお願いします」

「あいわかった」

 

 アイギスは連れてきた機械兵の配置を練り直すために本部へと戻っていった。

 

「俺も一旦、孤児院へ戻っていいか?

あいつらにも怖い思いさせちまったからな」

「待ちなさい」

 

 ラグナもそう言い、孤児院の方へ向かおうとするが、ウィンターにより待ったがかけられる。引き留められると思っていなかったラグナは、不思議そうにウィンターの方へ振り向いた。

 ウィンターは鋭い目つきでラグナを射るように見据えていた。厳格なだけではない、明らかな意思を含んだ眼光が、ラグナにも緊張を与える。

 

「貴方のあの赤黒いセンブランスについて吐きなさい」

「赤黒い…センブランス…?」

(とぼ)けるな」

 

 ラグナはウィンターの言葉の意味を汲み取るのに時間がかかり、思わず聞き返してしまう。ウィンターはラグナの反応に、目尻をキッと上げた。

 

「貴方があのグリムと戦っている時に発していた、赤黒い波動のセンブランスの事です。あのグリムも同じような波動を発していましたし、その時の貴方の反応や、オズピン学長がこの作戦への貴方の参加を半ば強行したのも、貴方と何か関係があると考えれば、腑に落ちます」

「あー…えっとだな…」

 

 ウィンターはラグナの「蒼の魔導書(ブレイブルー)」ないし、ソウルイーターの事を、センブランスによるものだと勘違いしているようだった。

 

(確かに、(はた)から見ればセンブランスに見えるよな…

魔導書や術式なんて知るわけもねえんだし…

どうしたもんか…)

 

「答えられないのなら…」

 

 ラグナは頭を掻きながら、口篭っていると、ウィンターは自身のサーベルに手を掛けーーー

 

「貴方を拘束する事になります」

 

 氷のように冷たく、そう言い放ったのだった。

 




時間を作って頑張って書きます。

RWBYの雑談コミュニティにも是非、ご参加下さい。
RWBY雑談コミュニティ招待リンク
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私自身のキャラ理解向上の為、コミュニティにて皆さんのRWBYの推しキャラと推しポイントを書いて頂けると嬉しいです。同時に、皆さんの交流の一場所になれば幸いです。

では、恒例の謝辞を。
今回もお読みいただきありがとうございました。
また次回。
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