いずれ刃が届く日を……   作:ケツアゴ

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ユークリッドって魔王クラスだよね? それが劣化の上に力の使い方を探っている最中とは言え、あの段階のイッセー相手に赤龍帝の鎧使って圧倒出来ないって……

魔王クラスのアバドン家の奴を倒すのにサイラオーグは新技まで使ったんだぜ?

魔王クラスが数倍しただけであの段階なら瞬殺だろうに食らいつけるって……家的に戦争での戦闘経験もあるよね? 設定は凄いのに……


今回は新キャラ回で短いです


第十三話

「ゼファードル、正座、しろ」

 

「……はい」

 

 屋敷の中庭、花が咲き乱れる花壇の直ぐ横で新しい眷属のお披露目が行われた少し後、笑顔でキレているエルゥの姿があった。普段から敬意など他の家の者の前以外では微塵も感じさせない彼だがずっとしてきた様付けさえも忘れ去り、笑顔だが目は笑っていない。旅人を家に上げる時の人喰い山姥の様な目を向けながら鋸状の刃を持つ聖剣を創造する。

 

「これ、傷は付けずに痛みだけ与えるんだ。デイビットさん、貴方の方が拷問に詳しいからお願いできるかな?」

 

「マジで勘弁してくださいっ!!」

 

 もうプライドなど捨て去ったとばかりに見事な土下座を決めるゼファードル。そもそも何故こうなったのか。それは少し時間を遡る。

 

 

「お初にお目に掛かります。この度、ゼファードル様の騎士に就任致しましたスピネア・クリスカと申します」

 

 新人の紹介だと集められた中庭。歓迎会のつもりなのか軽いパーティの準備がされた中庭で待っていたエルゥ達の前にアズリィと共にゼファードルがやって来る。背後には緑がかった銀髪と灰色の瞳を持つクールそうなメイドを引き連れており、ゼファードルが挨拶するように命じると彼女は丁寧な動作と無感情な声色で自己紹介を行った。

 

「ふつうの、きれいな、おねえさん?」

 

「あら、私とどっちが綺麗かしら?」

 

 もっと変わった相手を想像していたのだろう。スピネアがやや人形を思わせる感情の薄さ以外は普通なのに対して意外そうなアステリオスと、その発言に嫉妬(但し、異性に対してと言うよりは可愛がっている弟を取られそうな過保護な姉としての物)したのか、肩に乗ったまま問い掛けるアリエル。何度か二人を見比べた後、スピネアに悪いと思ったのか少々気まずそうにアリエルを指差した。

 

「……はぁ。こんな時は迷わずに選ぶものよ、アステリオス? ほんと、大丈夫かしら……」

 

 口では不満そうだが、顔は嬉しそうなアリエル。一方のスピネアは眉一つ瞼すら動かさず話が進むのを待っており、他の眷属の反応も様々だ。

 

「意地悪そうな人じゃなくって良かったかな……?」

 

「良いねぇ。すっげぇ美人だぜ」

 

 リップと三平は普通に歓迎ムード。デイビットとメルトは特に興味が無さそうで視線すら向けず、シュアンは彼女に視線を向けつつもボケーッとしている。そんな中、エルゥが口を開いた。

 

 

「ねぇ、君の能力について教えてくれるかい?」

 

 当然の質問だ。どんな方向に鍛えたのか、どんな能力を持っていて何が出来るか。敵に漏れるリスクを考えても味方間では情報の共有をしておくべき事項である。実戦で新たに味方の技などを知らされても連携など上手く行くはずが無い。なのでスピネアは迷い無く答えた。

 

「物質の摂食行動による特性の会得、科学的魔術的能力の学習による自己アップデートです。現在もっとも戦闘中に有効な能力は重力制御かと思われます」

 

「……ふぅん」

 

 この時点でエルゥは何かを察して目を細め、ゼファードルは冷や汗を流す。そんな二人を見てアズリィは少し驚いた様子だ。

 

「もう一つ聞きたいんだけど……君の代金は幾らだい?」

 

 代金、まるで人身売買をした様な言い方だがスピネアは全く不快さを感じていない様子で、その意味が理解できた一部を除いて眷属達は首を傾げる。

 

「十五億七千八百万三百二十円です。博士は手数料は要らないそうですので材料費でこの値段となります」

 

「……あ~、君に相談済みって聞いてたのですが違った様ですね。お察しの通り、彼女は私が作った自動人形、科学と魔術を掛け合わせた魔導科学の結晶です」

 

 困ったように後頭部を掻きながらも誇らしげに自らの作品を説明するアズリィ。彼女の作品ならば値段以上の価値があると理解するエルゥ。ただ、これとそれとは別の話だ。ゼファードルの方を見れば逃走を開始しており、一目散に走り出している。そんな彼に腕を向けるエルゥ。彼の腕から先端が槍のようになった鎖が無数に延びてゼファードルへと向かっていった。

 

 全力で走るゼファードルよりも鎖が延びる速度が速く、瞬く間に全身に絡み付く。そのまま引き倒した彼を地面に擦り付ける様にしながら鎖は縮んでいった。

 

 そして冒頭へと続く。鎖から解放されたゼファードルだが、眷属達に取り囲まれて逃げ場を完全に失ってしまっていた。

 

 

 

 

 

 

「君さぁ分かってる? やれ欲望に忠実なものだ、やれ力が最も重要だ、だの言われている悪魔社会で凶児だなんて二つ名が付くって相当だよ? 素行の悪さをどれだけ言っても改めないから僕だって手を出すしかないしさ。それで何? 漸く評価が上がって婿入り先が選り取り見取りになったと思ったら今度は莫大な借金? 確かに娯楽や何やらで儲けているけど、あくまで家の事業だから君に入る額はそれほどだし、婿入り先に事前に話す必要がだね……」

 

 正座させたゼファードルにネチネチと説教を続けるエルゥ。そんな時、スピネアが意見があるのか挙手をし、ゼファードルの顔に希望の光が灯る。助けてくれるのかと、そう期待したのだ。

 

 

 

 

「これがグシャラボラス家の主従の正しいあり方とインプットしても宜しいですね?」

 

「あっ、うん。時と場合によるけど基本これで」

 

「了解致しました」

 

 丁寧な動作でお辞儀をするスピネアを見たゼファードルは悟った。これ、お仕置き係が増えただけだ、と。

 

 

「……あの、主である俺への敬意とかは……?」

 

「他者に尽くす事は本能としてインプットされていますが、敬うという事は未だ学習中ですので」

 

 神は死んだ、慈悲はない。ゼファードルが打ちひしがれた時、慌てた様子で駆け寄ってくる者が居た。

 

 

 

「旦那さーん! ついでにご主人さまー! 大変ですニャー!」

 

 耳と尻尾だけ黒い白猫で、何故か武装している上に言葉も話す。一見ケットシーかと思われるが妖精独特の気配も持っていない。そもそもこの世界の存在ですらなかった。

 

「……おい。お前の使い魔、俺をついで扱いだぞ」

 

「力関係を見抜かれるからね。どうしたんだい、ルチル?」

 

 四足歩行で駆けてきたルチルをエルゥが抱き上げると思わず喉がゴロゴロと鳴り、ハッと我に返る。

 

「いけないいけない、はしたないニャー。ニャーは立派なれでぃーですもんニャー! って、こんな事話してる場合じゃ無いニャー! 次期当主様が……お亡くなりになっちゃったのニャー!!」

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