いずれ刃が届く日を……   作:ケツアゴ

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第二十一話

「……や。今日はよく集まったね……」

 

 次期当主を集めた顔合わせの会場には上層部と呼ぶべき有力貴族の老人やセラフォルー、そして予定では出席する筈だったサーゼクスの代理としてフォルビウムが出席している。最初はアジュカに話が回って来たのだが、研究が大詰めらしく、面倒な仕事を幾つか引き受ける事を条件に彼が出席しているらしい。

 

 今にも寝入りそうな彼を背後に立つ女王が起こし何とか起きたまま仕事を続けさせている。仕事をサボる為に集められた優秀な人材の一人だけに手慣れたもので、フォルビウムは渋々ながら仕事を続けていた。

 

「……最近は物騒だけど、こうして未来を担う君達の顔を見れて……良かった……」

 

 話の途中でコクリコクリと舟を漕ぐフォルビウム。有能さゆえに使えると判断され魔王に選出されながら、上層部の意向に反してマイペースな彼に、痛そうに頭に手を当てている。優秀な魔王をトップに据える事で貴族の権威を示し、それを支えるという口実で実質的に社会を支配する自分達の力の増強に繋げる予定だったのだから。

 

「……セラフォルー様、続きをお願い出来ますかな?」

 

 流石にこれでは不味いと感じたのか一人がセラフォルーに任せ、それを聞いた途端にフォルビウムは完全に寝入ってしまう。背後の女王が揺すっても肩を叩いても耳元で呼びかけても起きる様子を見せなかった。

 

「うん! えっとね、テロリストとの戦いは君達には任せない予定だから将来に備えての準備を優先してね」

 

 彼女は彼女で最強の女性悪魔としてレヴィアタンになったが公の場で口調を改めないなど権威に響く問題児だが、やはり若さゆえか政治的手腕が未熟で上層部の手を借りざるを得ない。そんな彼女は安心してとばかりに妹であるソーナにウインクをする。

 

 実際、貴族がテロリストに破れるなど権威に関わるし純血悪魔は貴重である。その上、今の悪魔は軍を持たない少数精鋭式。故に広範囲に及ぶ戦闘では人手不足に陥りがちだ。ならば率先して危険を被る事になるのは誰かというと、上級悪魔まで上り詰められる者は貴重ではあるが代替えが存在する眷属悪魔である。死んでも純血悪魔の名に傷は付かず、活躍すれば抜擢した者の手柄にもなる。

 

「……あー、俺の所の女王は九月から上級悪魔ですけど、戦線に投入されるんですか?」

 

 成り上がった眷属悪魔は使い捨ての駒としての役割を持つことを理解しているゼファードルは手を挙げて発言の許可を取る。これが珍しい力を持つだけならば家の権威に頼って未熟やら何やらの口実で拒否できなくもないが、元は父親の眷属であったエルゥは短期間で昇級するほどの実績がある。万が一の覚悟をしながらの問いかけに対して上層部達も難しそうな顔付きだ。

 

「君の女王に対しては保留となっている」

 

「実績はあるが現在の地位は君の女王であり、それを投入することは前例を作ることとなる。それを口実に君達若者を投入すべきと言い出す者も出てくるだろうからね」

 

 内心でホッとしたのはエルゥだ。天界に直接手を出そうとしないのは悪魔社会に自分と仲間達の居場所があるからであり、ならば戦線に出るのはやむ無しと考えてはいる。だが、眷属候補であるレオナルドは力の強大さとは裏腹に幼い子供である。今すぐにでも力を利用したいという者達を牽制する口実として眷属にすると言っている以上は眷属にするしかなく、幼さを口実に不参加は無理だろうと考えていた。

 

「……そうですか。ならば話がどう転がっても良いように準備しています」

 

 お手数をお掛けしました、と、ゼファードルが頭を下げて話は終わる。最後にそれぞれの目標を語る事となった。

 

 

 

 

 

「俺は最近まで婿養子に行くと考えていましたし、直ぐに目標を決められるほど次期当主の地位は軽い物ではありません。だけど、偶々当主になれただけ、と思われるのではなく、俺が当主になって良かった、そう評価されたいとは思っています」

 

「私の目標はレーティング・ゲームのタイトルを取得する事です」

 

「俺の夢は魔王になることです」

 

 それぞれが夢を語り、上層部や魔王達が反応を示す。リアスの夢は次期当主としての質問への回答としては些かずれている様にも思えるが、貴族の権威を民衆に示す為の場である事や貴族としての地位に大きく関わるのでそうでもないだろう。確かに眷属悪魔のアピールの場であるが、本質は主である貴族達の物である。

 

 

 

 

「私の夢はレーティング・ゲームの学校を作ることです。既存の上級悪魔の学校ではなく、下級悪魔や眷属悪魔が通える学校を作りたいと思います」

 

 だからだろう、ソーナが夢を語った途端に嘲笑が響いたのは。確かに眷属悪魔に対しての教育ならば育成のノウハウを持っていない主が眷属の育成のために通わせるという意味を持つが、基本的にゲームは貴族の権威を示すための物。公にはなっていないが八百長も横行し、そもそも自分の眷属がどれほど優秀か示したいという顕示欲から始まったとされている。

 

 ソーナの夢を意味有る物にする為には社会制度や意識の改革が必要だ。転生悪魔の増加によって多彩な価値観が生まれてきている悪魔社会だが、権力の中枢にいるのは貴族主義の純血悪魔達。理想しか見ていないとされるのは当然の帰結であった。ソーナも本気だと主張するも否定的な意見は止まず、それ以上の反論をしない。

 

「待ってください! 夢を語れと言ったのは貴方達じゃないっすか! なのにどうして笑うんっすか!」

 

 だが、それを良しとしなかった匙は抗議の声を上げる。不条理に対して若者が声を上げる、確かに青臭い青春の一幕ではあるのだろう。だが、この場においては悪手だ。此処は日本の討論会会場で相手は著名な大学教授等ではなく、貴族としての公の場であり、彼は下級悪魔で相手は有力な貴族。ましてや身分の低い者の育成の場の設立を語ったソーナの眷属が彼らに抗議の声をあげるなど、逆に夢を妨げる行為でしかなかった。

 

「黙りたまえ、若者よ。君に発言権はない」

 

「下僕の躾がなっていないのではないですかな?」

 

 これは日本で育った故の弊害だろう。実質的はどうかは兎も角、身分差のない平等な社会で育った為に、上の者の前では下の者は権利など持たない、そんな身分社会では当然とされる考えが理解できず、持った倫理観で行動してしまう。当然、しわ寄せはソーナに向かう。

 

「申し訳有りません。私の監督不届きです」

 

「会長っ!? 何で謝るんっすか!?」

 

 匙には理解できない。夢を語れと言われ語ったら否定され笑われた。それに抗議して何が悪いのか、なぜ謝らなければならないのか、と。此処は学校ではなく、学生として来ている訳でもないのに様付けでなく生徒会での役職でソーナに問い掛けるも叱責される。

 

(……彼は覚悟が足りないみたいだね。というか時代劇を観たことも無いのかな? 上級悪魔を藩主とするなら下級の眷属なんて足軽程度って分かるだろうに)

 

 そんな遣り取りをエルゥは冷めた目で見つめていた。郷に入れば郷に従え、新しい社会で生きようと言うのならばその場所の風習やルールを守るという事は大切なのだ。少なくても悪魔としての地位や成功を望むのなら人間だった頃の考えのまま突き進んではならなかった。

 

 

 

 

「もう! 皆してソーナちゃんを苛めちゃって! それ以上続けるなら私が皆を虐めちゃうんだから!」

 

 泣き顔のセラフォルーの抗議の声が響き渡り、ソーナへの叱責が止む。この瞬間、ソーナ達の将来のゲームの成績はある程度保証されたと見て良いだろう。姉ではなく魔王として来ているはずのセラフォルーがソーナへの扱いを抗議し力を振りかざして脅すという行為に出たのだから。ソーナを倒せば、ソーナに不利な判定をすれば、そんな事をすればセラフォルーの恨みを買う。そう思われて当然の行為であった。

 

 

「……落ち着きなよ、セラ。ほらほら、皆もね」

 

 そんな空気を壊すようにフォルビウムの眠そうな声が響く。先程まで寝ていたはずの彼は状況を理解しているかのように場を静めると有る提案をした。

 

 

 

 

「実は若手同士のレーティング・ゲームを企画しててさ……うん。じゃあ、ゼファードル、リアスちゃんと戦ってみないかい?」

 

 突然の提案に対し、リアスは乗り気だ。特にエルゥを意識しているように見えるが、彼が若手眷属最強と称されるのに対抗しているのだろう。きっと一誠を当てて勝利させたいと、そう考えているのだ。自分の眷属ならば魔王クラスの龍王を従えて見せろ、そう告げるほどに彼の力を過信しているのだから。

 

「望むところね。ゼファードル、悪いけど勝たせて貰うわ」

 

「随分とやる気だな。まあ、別に良いけど……」

 

 リアスの宣戦布告にゼファードルは軽く応え、何を思ったかエルゥとリップとメルトを指差した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「此奴ら三人は親父から引き継いだ眷属だ。……だからゲームでは使わねぇ。俺が眷属にした奴らだけで叩きのめしてやる」




サーゼクスがイッセーに次代を担うって期待するのって貴族的考えを持たず力が強いから、ですよね。一歩間違えれば社会に適応できない危険人物……

サーゼクスが居なかった理由は……

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