「HAHAHA! 急に呼んだからどんなのが来るかと思ってたけど、すげぇ美人揃いじゃねぇか!」
「いやーん。帝釈天様のエッチー」
「逞しいお体最高ですわ」
部屋に漂うのは酒の香りと強烈な色香。酒の味に響かぬようににおいの強い香水は付けず、代わりに微力ながら媚薬の効果がある物を付けたのは豊満な身体つきの美女や小柄な少女達。肌の色も年頃もバラバラだが,共通するのは扇情的な服装と妖艶な色気。そして、一晩で庶民の月給など吹き飛んでしまう程の料金が必要な高級娼婦である事だ。
彼女達の腰や肩に手を回して上機嫌の帝釈天はガブガブと酒を飲み料理を食べ進める。時折口移しを行いながら彼女達は超VIP相手の営業手腕を発揮して煽て機嫌を取り媚びを売っていた。
「……料金は外交を利用して利益を出したって言われないように請求しないけど、手柄は貰えますか?」
「勿論。必要経費程度は僕が出すよ。……次回からは天使や堕天使にも割り前を請求しないとだけどね」
先ほど上機嫌の帝釈天がサインしたのは同盟を承諾する書類のサイン。見せ札として持参しただけの特別な印も押され、サインや手形もしっかりある。それを大切にしまいながらエルゥは今回の経費について頭を悩ませた。
「……まあ、暴動の多発で常連が自粛してるから彼女達も暇な時間が出来たし、この時間の本来の利益云々は悩まなくて良いけどさ……」
彼女達が所属する店はグシャラボラス家の経営する店舗の一つであり、彼女達への今回分の給金や酒などの飲食費だけで負担は済むがそれなりの価格にはなる。これで得られる利益が大きいとはいえ、直ぐに金銭的な利益を生む訳ではないので少々気が重かった。
「ご子息の分も合わせてのVIP会員証と、それの使用によって生まれる損失。営業も楽じゃないよ」
「君、本当に色々やってるよね。商売以外にも手を出してるしさ。だから早期の出世が出来たんだろうけど。……実際、戦闘だけで出世したとしても、訓練や戦いって体に負担が掛かるから何時かは致命的な故障をするよね。その時、力以外の武器がないと大変って分かってるのかな、皆さ」
流石に上級悪魔となれば契約の功績や戦略も昇進に必須となるが貴族としての能力に関わりはしない。力が昇進において最重要とされるのは貴族が有事の際の戦闘員なので仕方がないが、ちゃんとその辺を学ぶ機関も必要だと思うファルビウムであった。
(……まあ、お爺ちゃん達は不要だって反対するだろうけどさ。実際、貴族生まれの悪魔は実家や貴族の学校で幼少期から教えを受けるからね)
元々転生悪魔が貴族になるのさえ面白くないであろう連中が、更に力を高める為の機関に力を注ぐはずがないと即座に判断する。自分達に有益な者は自分達で囲い込んで洗脳に近い教育を施すだけだろうと、囲い込みの候補筆頭になっているであろうエルゥに視線を送るのであった。
「少しやり過ぎたけど批判は大丈夫か、だと? ああ、安心しろ。開始前からエルゥが手を打ってある」
ゲーム終了後、流石に手加減が足りなかったのではないかと心配するアステリオスにデイビットは何でも無いように答える。彼に言わせれば実践を模してあるのなら手加減は不要であり、それで怪我が残っても相手が弱いほうが悪い、そんな所だ。一方で初戦は貴族の遊びでもあると理解しており、大丈夫なのか確認も怠ってはいなかった。
「ほら、大丈夫よアステリオス。既にネットに書き込みがあるけど、仕込んであるから批判的な様でこっちを擁護する様なコメントや、称賛するコメントが多いわ。意見の多い方に流されるのは悪魔も人も変わらないし、仕込み以外のコメントもこっち側に流れてるもの。……バアル家初代が手を回したのかトップランカーの多くが好意的なコメントをしてるのも影響が大きいわね」
安心させるようにスマホでゲームの映像を配信させたサイトを見せるアリエルだが、さっそく出てきたトップランカーのコメントのバックにいる人物への警戒も声に出してしまう。それに不安を浮かばせるアステリオスに気付いたのか流れるような動きでテレビを付ける。早速ゼファードルへのインタビューが行われていた。
「今回のゲームに対してやり過ぎとの意見も出ていますが?」
「相手側の底力を警戒したまでです。貴重な回復能力者に十秒ごとに力を倍加させる兵士や堕天使幹部の娘である女王、バアル家の特性である滅びの魔力を扱う王。大怪我をさせないようにと手を抜く訳にはいきませんでした」
「今後の公爵家との関係の悪化の心配はありますか?」
「これは魔王様の主催するゲームであり、貴族の誇りを懸けた戦いです。どの様な結果でも遺恨を残さず、終了後はノーサイドの精神で互いを称えあうのが当然であり、リアスもそうであってくれると信じています。第一、それを許してしまえば家柄で勝敗を決めるべきだと言うようなものでしょう?」
「では、今回相手側の負傷に対し非は無いと思うのですか?」
「試合後も残る怪我を負わせた事は悔やまれますが、互いに全力で戦った結果。謝罪は相手への侮辱だと考えますし、此方は彼方側以上の治癒能力の使い手が居ます。向こうが望むのならば治療は行いますよ」
今回の試合開始前から幾つかのパターンに分けられて作成されていたインタビューの原稿。最初から味方としている記者が質問の方向性を違和感が無いように時折批判的な質問を混ぜながらもコントロールし台本通りに進めていた。
「早速依頼が来て助かったぜ。大怪我したままじゃ夢見が悪いからな」
ギャスパー・両目の喪失
木場・片手片足の欠損
イリナ・片手片足の欠損
小猫・呼吸器系半壊。胸骨の骨折
朱乃・粉砕した骨が圧縮された腕に食い込んで要切断。全身打撲に骨折複数個所
アーシア・複数骨折及び打撲、腸の一部を損傷大により摘出
一誠・全身打撲及び複数箇所骨折。腸の一部を損傷大により摘出
リアス・魔力による怪我複数。既に治療済み
これが彼らの試合後の結果であり、シュアンとエルゥを連れて病室に入って来たゼファードルに敵意が、特に一誠から放たれた。だが、彼はどこ吹く風といった様子で受け流して気にした様子もない。
「そうやって睨むなよ。大体、貴族と眷属なんだから有事の際には戦場に出るんだぜ? そうでなくてもリアスはタイトルの獲得を目指してるんだ。何時か大怪我するなんて分かってただろ? 分かってた……よな?」
「……戦い」
ゼファードルの言葉に恐怖を思い出したのかアーシアが自分を抱きしめるようにして身を震わせる。元々はシスターであり、今までも後方で守られていた彼女にとって今回の試合は強烈に過ぎた。恐怖が心の底まで根付いてしまったのだ。
「……治療なら早く済ませて出て行って貰えるかしら」
「つれないな。こっちは厚意で治療に来たのよ。でもまぁ、別に良いか。シュアン、全部食っていいぞ」
リアスの棘のある言葉に肩を竦ませたゼファードルが言うや否やシュアンの舌が伸びて一誠達の体を舐める。舌が離れた時、最初から怪我等していなかったかのように完治していた。
『……この力、やはり俺と白いのとの戦場に乱入していた
(……シュアン、そんな事してたのか。どうせ色々壊れるから食べ物が沢山とか思ってたんだろうけどよ)
突如響いたドライグの声に少し驚きながらも用は済んだとばかりに背中を見せるゼファードル。出ていく際、彼はリアス達を振り向いて見た。
「言っておくけど今回の治療は貸しだからな? ルール内な以上、対戦相手の負傷への責任義務はねぇんだ。……だから今にも飛び掛かりそうな其処の馬鹿をしっかり押さえてろよ?」
今にも殴り掛かりそうな剣幕な一誠に視線を向けてゼファードルは病室から去っていった。閉めたドアの向こうから叫び声が聞こえるも気にせずに進むのであった。
これで踏み台に取り掛かれる
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