「……ぶっちゃけ敵に助けられているよね」
フォルビウムは基本的に仕事を部下に任せているが、今回のような事態では仕方なく自らも動いていた。他の神話と同盟するにあたってトップの一人である自分がサボっているのは拙いとの判断だが、サーゼクスがアジュカに一誠の駒の改良を頼んだり、相変わらずコスプレを続けるセラフォルーなど身内に問題が多い。だが、問題が多いのは敵も同じ様だった。
「真英雄派を名乗る奴らによる物資強奪や、旧魔王派による襲撃事件。同じ組織な以上は……」
フォルビウムが危惧しているのはエデンの林檎の様に正当な復讐者であると主張される事だ。全く改良も制度による規制もされない悪魔の駒の使用と眷属への不遇な扱い、危険かもしれないと狙われる神器所有者、システム維持のために犠牲になった者達やエデンの林檎の様な者達。基本的に人が好きな神ならば世論で三大勢力との同盟に疑問の声が大きく上がっても不思議ではない。
だが、
「後はご機嫌取りと身内のゴタゴタの解決かな……さっさと終わらせてニート生活に戻りたいよ」
残る問題は帝釈天に指摘された通り、テロリストの多くが自分達の不手際による物であり、教会の強引な布教活動で迷惑を他の神話に掛けていること。天界側の当時の責任者が現役なのも問題は大きい。一部の神はテロリストの支援を行っている、もしくは行っていた疑惑があるも証拠がなければ意味がないので交渉材料にも使えない。結果、フォルビウムは睡眠時間を削って問題に取りかかるしかなかった。
「……マジで老害死ねっ! 制度改革の邪魔する貴族皆消えろ!」
毒づきながら取り出した資料にセラフォルー主演の番組の劇場版撮影に関する資料が混じっていたのに気付く。無言で破り捨てて燃やした後、仮眠をとるべくソファーにダイブするフォルビウムであった。
「情勢と歳を考えてよ……」
穏やかな寝息を立て出すフォルビウム。後30分は安らかな眠りにつくことが出来た……。
「凄いわ! ご本が沢山有るのね!」
アビゲイルを預けるにあたり、バアル家は学校に通わせることを要求してきた。今後利用価値が出た時に最低限の学歴が無くては恥だが、バアル家として貴族の学校に通わせるのも嫌で、だからと言って普通の学校も好ましくない。結果和平が結ばれた駒王学園に入学する事になった。……少しだけ昼夜に分かれて学園を管理するソーナとリアスへの嫌がらせも混じっているのかもしれない。仮にも大王家の血筋、何かあればとプレッシャーを与えられる。
それを知ってか知らずかエルゥと共に初等部の案内を申し出たソーナはアビゲイルを図書室まで連れてきていた。娯楽の品など満足に与えられなかったのか本棚を目を輝かせながら見つめつつもエルゥの手を握った手は離さない。最低限の人数と最低限の関わりしか持っていなかった少女にとって学校に通うのは楽しみであり、不安でもあるのだろう。一応、様々な理由持ちの児童向きに用意された少人数性のクラスに通う手筈にはなっているのだが……。
「此処までで何か質問は有りますか?」
「えっと、学校とは関係ない事でも良いかしら? 少し気になった事があって」
「ええ、構いません。何でも聞いてください」
最初はソーナの厳しそうな印象に怯えて既に気を許しているエルゥの背中に隠れるようにしていたアビゲイルだが、元々の気質が社交的なのか少し打ち解けたらしく怖ず怖ずと手を挙げて質問の意を示す。ソーナが優しく返事をすると少し言いにくそうに口を開いた。
「えっと、リアスさんと仲が良いってお聞きしたのに、先日の試合で大怪我を負わせたエルゥさんに全く怒った様子がないのはどうしてかしら? あっ、言いにくいのなら別に良いわ。変なことを聞いてごめんなさい」
「いえ、構いませんよ。そうですね、どう説明すべきか……」
アビゲイルの年齢や事情を考え説明の言葉を選ぶソーナ。少しだけ思案し、説明を始めた。
「例えばボクサーが頭部への衝撃を継続的に受ける事で生じる脳障害であるパンチドランカー。格闘技でなくてもスポーツの試合や練習によって重傷を負うケースは存在します。消えている途中の相手への過度な攻撃なら兎も角、あの試合は回復能力や爆発的な攻撃力を警戒した結果の正当な内容。……あれで怒れば私は夢を胸を張って語れませんから」
「難しくってよく分からないけど貴女が真剣だとは伝わってきたわ。ゲームも負けたけど高評価だったそうじゃない」
少し受け入れたのか口調が変わったアビゲイルの言葉の通り、ディオドラに負けはしたものの、ソーナへの評価は悪くはなかった。神器を一切使わず数で勝る相手を罠や計略連携で撃破して追い詰めたが、最後の一人になって囲まれ途中まで追い込まれて逃走したディオドラが急激なパワーアップをして逆転して勝ったのだ。
「私は特別な力を持たない人達の可能性を示したかったのです。神滅具など規格外の相手なら兎も角、一般的な上級悪魔相手に特別な力である神器を使うわけにはいきませんでした」
試合後のインタビューで神器を使用しなかった理由について彼女はこう答える。今回、作戦で相手を追いつめたソーナへの評価は上がったが、振り回され最後はワンマンゲームで勝利したディオドラはやや評価が低かったらしい。勝てば良いのだ、と思っているデイビットからすればレーティング・ゲームはそれがおかしい所らしい。
「そう言えばディオドラですがアーシアさんに求婚したとか。連日のように贈り物もしているらしいですよ」
「総当たりだし、戦う前に精神的動揺を狙ったって言われても文句は言えないよ、それ。……スピネアにも気色の悪いファンレターが何度も届いてて。いや、気にするタイプじゃないから問題ないけど、死人ってされている貴族を名乗っているし、本物なら本物で拙いよね……」
下手をすれば今の情勢で政争が激化すると、頭を痛めるエルゥであった。
「……まだ及第点ギリギリか。ルーン魔術は面倒だな」
その頃、アズリィの指導から戻ったゼファードルが屋敷に戻ると大量の贈り物と手紙がスピネアに届いている。内容は大体理解でき、要約すればこうだ。
『私の姉になって下さい』
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