「……見事に悪魔ばかりか。尻拭いの手伝いと言われそうだな」
目の前に広がる屍山血河を眺め煙草の煙を吹き出しながらデイビットは肩を竦める。旧魔王に恭順を示した悪魔が今回の襲撃者であり、今の政権が政権奪取後に中途半端な始末をつけた為にテロ行為が可能なほどの力を蓄える余裕を持たれてしまった。
魔王の血族に従う自分達の崇高さと神クラス相手への勝利を疑わず、今は全身バラバラになって臓物や血を地面にぶちまけている。異様な臭気が漂うも、デイビットが手の平を向ければ傷痕に血が吸い込まれ鉄臭さは薄まる。死臭は消えないので鼻を覆いたくなる臭さには変わりないのだが。
「まあ、オイラ達は敵を倒すだけさ。そう言った話し合いは政治屋に任そうぜ」
実際、三平は一撃でミンチにした敵の肉片が臭うのか妖術で出現させた水で身体を洗っている。デイビットは遠距離攻撃な為か返り血はないものの砂塵が鬱陶しいのか軽く水で手を洗っていた。
「カビ臭い誇りだけの老害と、それに従うトップにか? ……しかし、彼らは目的を達成した後は自分達のトップをどう対処する予定だったのだろうか」
グレートレッドを倒し時空の狭間を取り戻すのがトップであるオーフィスの目的で、協力を餌に力を借りているのが禍の団だ。表立って大きく動いているのは悪魔であり、トップである魔王の血族もオーフィスの力があって漸く先代魔王を超えられる。グレートレッドを倒せば世界崩壊の危機なだけに最終的にはオーフィスをどうにかする予定なのだろうが、方法が不明だった。
「何か切り札でも有るのか、それとも……」
前者ならば奪えばオーフィス対策になるが、驕り高ぶった故の無策や下策であるのなら厄介だとデイビットは屍の山を眺めながら思うのであった。
「オーフィスの力を借りればオーフィスを倒せると思ってんのか、世界がヤバいって知らないんじゃ?」
「いや、流石に無いだろう……」
世界を掌握した後はオーディンに力を借りよう、や、オーフィスの蛇頼みで襲撃をしている連中だけに完全否定は出来ないデイビットであった……。
「
木場の叫びと共に数体の鎧騎士が出現する。各々手には魔剣を携え、ディオドラが配置した眷属の残りを上回る数で圧倒した。未だ動きには精細さが欠けるがいずれは向上するだろうと言うのが事前に見ていたアザゼルの弁だ。
「凄いな、木場ぁ! 前のゲームの時に使えてたら絶対勝ってたぜ!」
この戦いで初めて彼の禁手を目にした一誠はお世辞ではなく本心から褒め称え、その言葉を向けられた本人は少々照れくさそうだ。リアス達も其れを肯定するように頷く中、一行の視線はディオドラが待ちかまえて居るであろう神殿へと向けられた。
「漸く此処まで来たわね。皆! 絶対にアーシアを、私達の大切な家族を取り戻すわよ!」
「はいっ!」
此処までアーシア救出のために全力で……立ちふさがる敵を倒すことよりも性欲を満たす事や男を取り合っての口論を優先させはしたが……少なくても一切迷い無く戦ってきた疲労は有るが闘志は燃えている一行。ソーナとの戦いで見せた力はあるが絶対に勝つぞと意気込んでいた。
「あっ、皆さん来られたんですね。お一人逃げてしまいましたけど、
「アーシアァアア!!」
燃えさかる闘志に水をかけて消すかのように声が聞こえてくる。その声の主が誰かこの場に分からない者は居ない。声の張りも抑揚も、全て何時ものアーシアだった。一行の目の前に柱の陰からアーシアが現れたのだ。一誠は彼女を視認するなり一気に駆けだし、無意識のうちに抱き締めようとさえした。大きく手を広げ、どこにも行かないようにとアーシアを抱き締めようとする。
「じゃあ、残った敵さん達をどうにかしに行きましょう。他の皆さんも頑張っていますし、私達も負けられません」
「……アーシア?」
「どうかしましたか、一誠さん?」
だが、その両手がアーシアを包み込む前に彼女は横をすり抜けるように前に進み彼の手は空振る。思わず疑問符を浮かべた時、振り返った彼女の笑顔は何時も見ている物であり、同じ様に疑問符を投げ掛けられて我に返った一誠は何をしようとしていたのか気付いて急に照れくさくなる。
……この時、誰も気付かなかった。アーシアがイッセーではなく、一誠と呼んだ事に。僅かなイントネーションの違いであり容易には気付かない物だ。だが、誰一人気付かなかったのはアーシアが呼び方を変える理由など思い当たらなかったからである。
「所でアーシア先輩、どうやって逃げてきたんですか?」
「逃げてきた? 違いますよ、ギャスパー君。私の禁手がディオドラさんを倒してくださったんです。自立思考式で
「そう? なら早速にでも見てみたいわ」
嬉しそうに自慢するように語るアーシアの言葉に興味を示すリアス。元々貴族としての誇りは高いリアス。アーシアを救出した事によって次の敵を現魔王に従わない襲撃犯に定める。安全な場所で終わるのを待つという考えは浮かばず、ディオドラについても倒したというのならと特に気にせずに来た道を引き返して戦場へと向かっていった。
その頃、神殿の奥にはディオドラ……だった物が転がっていた。肉と内蔵が極限まで萎み、既にミイラの域に達して転がっている。この死骸を見ても誰もディオドラだと分からないであろう程に様変わりしていた……。
「おらぁっ!!」
やや品性に欠ける叫びと同時に殴打音が響いて上級悪魔の障壁を貫通し、そのまま肉体に到達する。風に吹かれる木の葉のように飛んでいく仲間の姿に唖然としつつも無数の魔力が降り注ぐが彼は、ゼファードルは魔力を放った者達めがけ前進した。降り注ぐ魔力を僅かに軸をずらして避け、避けきれない物は正面からではなく側面から叩いて弾く。再び殴打音と同時に悪魔が殴り飛ばされた。
「うっしっ! これで全員倒したぜ!」
ガッツポーズと同時に着地した彼の服装は黒の学ランという番長を思わせる物。但し、見た目と違って丈夫であり、少々掠った筈なのに汚れ一つない。
「……あれだけの数を一人で。とんでもない強さですね、お嬢様」
「……あの、ロスヴァイセさん。私も貴女もお父様の、オーディン様の養女ですので畏まられては……困ります」
呆然とゼファードルの戦いを眺めながらもロスヴァイセは隣に立つ同じオーディンの養女……リストに含まれていた今まで聞いたことがなかった女性であるヒルデを警護するように警戒している。
紫の瞳と白い髪で鳥の翼にも見える髪飾りを着けた儚げな彼女の名前はオーディンに逆らって封印された実の娘に似ているが、例え娘であっても主神に逆らった者を再び娘にするはずもない。……少なくても対外的には。
彼女が困ったような顔をした時、空中に魔法陣が出現する。描かれたのは旧アスモデウスの家紋。旧魔王派のトップの一人、クルゼレイ・アスモデウスだ。
「おやおや、未熟な小僧を戦場に出すとは余程人手が不足しているらしい」
「……まあ若手は出さないって筈だったんだがオーディン様が希望してな。後で戦っている映像を見るんだと」
クルゼレイの指摘に反論の余地がないゼファードルは渋々といった様子で話し、クルゼレイの視線は次にエルゥへと向けられた。既にリゼヴィム……特別視されるルシファーの末裔の腕を切り落としたと耳にしていた彼は見下すような視線のまま指を突きつけた。
「小僧、一騎打ちをしてやる。全力で掛かってこい」
此処でエルゥを倒せば派閥内で地位が更に向上、自分が唯一のトップにさえ立てると野心を燃やす彼はオーフィスの蛇を飲み込み魔王クラスへと力を上昇させる。絶対に勝てると確信した顔であった。
「最初からその積もりだよ。……
この時、クルゼレイはエルゥの神器である聖剣創造の禁手、聖剣を持った騎士を創り出す聖剣の騎士団についての事前知識を手にしており、空中からの魔力で掃討可能だと策を練っていた。
「……何だ……それは……」
此処で彼の誤算を一つ。あくまで彼の事前知識は一般的な禁手の物に過ぎなかったという事だ。彼の視線の先には十メートルを越える巨大な鎧騎士達が出現していた。
「これが僕の禁手『
一番近い騎士が巨体に見合った大きさの聖剣を高々と掲げ、クルゼレイは咄嗟に回避行動に出る。だが、彼が避けきるよりも前に振り下ろされた聖剣は彼を頭上から股先にかけて両断し、跡形もなく消滅させた。
感想お待ちしています