いずれ刃が届く日を……   作:ケツアゴ

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出掛けるので返信は午後から!


第四十三話

「……は? 今、何って言ったのかしら?」

 

 極々限られた者しか知らないグシャラボラス領の監獄塔の中、閉じこめられていた黒歌は自分を処刑もせずに尋ねてきたフォルビウムの提案に怪訝そうな声を出す。処刑になると思いきや捕らえられたままで、このまま極秘に生かされ性奴隷にでもされるのかと思っていたのだが、なるように言われたのは全くの別物だから仕方がないだろうが……。

 

「聞こえなかった~? 僕はこう提案したんだ。英雄になるつもりはないかってさ。眠ってる君の記憶をアズリィさんに覗いて貰った上での提案だよ」

 

 意味が理解できずに少し固まった黒歌であったが、一つの答えに行き当たった。どうやら目の前の男は予想以上に腹黒だったらしい。

 

 

「あの屑の家には話ついてるの? 後から喧しいのは勘弁よ、私」

 

「ほらほら~。大切な主の家族でしょ? 忠臣の君が言って良い台詞じゃないよ~? 合わせる顔が無いから他家に仕えるとは言っても心は預けてなきゃ」

 

 彼女の予想が正しければ非常に屈辱だが今後の安心は保証される。妹とも堂々と会える。どちらにせよ、黒歌に拒否権は存在しなかった。

 

 

 

「……こんの腹黒魔王」

 

「何の事やらさっぱりだね~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 突然ではあるが情報を一つ、ゼファードルは童貞ではない。次期当主就任前の頃、行き過ぎたらど突くとエルゥに言われ、実際にど突かれながらもそういった店に通っていたのだ。

 

「……どうする、どうするよ、俺」

 

 だが、今の状況に彼は動揺している。ロスヴァイセと庭の散策中に座って談笑していたまでは覚えているのだが、途中で眠ってしまったのか記憶が途切れており、目を覚ますと仰向けで膝枕をされていた。普通の恋愛経験などない彼からすれば幼い頃に母やメイドに耳掃除される時以来であり、しかも彼女の方も眠ってしまったのか前後にコクリコクリと揺れ動き、今にも大きな胸が顔面にのし掛かって来そうだ。

 

「……よし! 眠ったままでいよう」

 

 流石は欲望に忠実な悪魔。このまま寝ているのを良いことに触りたい衝動こそ抑えるも、今か今かとその時を細目を開けて待ちかまえるが何度も寸前で止まって歯痒いばかり。段々自分は何をしているのだろうと虚しくなって二度寝を決行しようとした時、緊急用の着信音が鳴り響く。

 

 

「っ! 一体何が……あっ」

 

「ひゃんっ!?」

 

 慌てて起きあがろうとしたゼファードルの顔面はロスヴァイセの胸の谷間にダイブし、硬直した瞬間に目を覚ましたロスヴァイセも状況に気付く。

 

 

 

 

「え、えっと、悪い、事故だ……」

 

「そ、そうですよね。そ、それに婚約者ですし、気にしなくても……って、この音は北欧がらみの厄介事の時のじゃないですかっ!?」

 

 ラッキースケベからのトラブルは回避され、恥ずかしそうに胸を庇うように抱いたことで余計に圧迫によって大きさが強調されるも目で堪能する余裕は今のゼファードルには無い。

 

「……デートの続きは終わってからだな」

 

 渋々といった様子で立ち上がり送られてきたメッセージを確認するゼファードルは顔には出さないが苛立ち、誰が原因かと怒りを抱く。

 

 

 

「……あのボケ、何やってんだ」

 

 犯人は直ぐに判明する。リアス達がオーディンの怒りを買ったから宥めるのに手を貸して欲しいとの救援要請が内容であった……。

 

 

 

 

 

 

 

「さて、この前会ったばかりじゃな、レヴィアタン殿」

 

「うん……いえ、はい、そうですね、オーディン様」

 

 セラフォルーは外交担当であり、相手が勢力のトップであるなら出向くのは当然だ。だが、適正があるのかというと疑問符が浮かぶ。今まで大きな問題が起きていなかったので敏腕の可能性もあるが、公の行事で私心を優先させる事がある所や公人としての席でもキャピキャピという効果音が付きそうな態度を取る所を見ると、大きな問題にならなかったのは天使や堕天使が同様に弱っていたり、神話の神が人を巻き込むのを嫌がって武力に出なかった可能性も高い。

 

「おや、何時もの口調はどうかしたのかな?」

 

「い、今は仕事中ですし改めようと……」

 

 この日、オーディンから抗議したいことがあると申し出があって当初は服装こそマトモながら不真面目な態度で臨もうとしたのだが、その態度でも好々爺とした態度を崩さなかった上にスケベ爺を思わせてきたオーディンは北欧の主神に相応しい厳格な態度を取っていた。空気に飲まれ言葉遣いを強制せざるをえないセラフォルー。この会談、既に勝敗が決まろうとしていた。

 

 

「いやいや、ビックリしたぞ。観光中に出会したグレモリーの姫の兵士だが、養女とはいえ同盟相手のトップの娘に出会って直ぐにいかがわしい視線を送りよってな。鼻息荒く鼻の下を伸ばし……いや、それは今は関係ないか」

 

 どう見ても関係ないという表情ではないが、そう言われてしまえば何も言えない。この程度の事を外交問題にする気はないと言いつつも遠回しに牽制しようとしている程度はセラフォルーでも理解できている。ニコニコとしながらも冷や汗が流れる中、オーディンは追い打ちを掛けるかのように魔法陣が描かれた紙を取りだした。

 

「実は興味深い物が送られて来ての。幾ら何でも分断のための偽装かと思ったが、本人に見せたら本当だった様なのじゃ」

 

 飄々としながら魔法陣を起動して映像を空中に映し出すとディオドラ眷属とリアス達の戦いの様子が流れる。敵を脱がすことを優先する一誠や男を取り合っての喧嘩を敵を無視して繰り広げるリアスと朱乃。終わった後、オーディンは笑みをセラフォルーに向けた。

 

「確かこの時間は他の神話の神も要請を受けて戦っている最中じゃったな。儂も露払いを請け負ってやったし、同盟賛成派の者共も不快そうじゃったよ。自分たちに協力させておいて他事に夢中など悪魔はふざけて居るのか、とな。のぅ、ヒルダ?」

 

「……はい、お父様。中には悪魔とは同盟を破棄しろと言い出す方まで……」

 

 オーディンの問い掛けに静かに返事をするヒルダの答えを受けてオーディンは笑みを向ける。さて、どうする気だ? 、と問いかけているようだった。もうセラフォルーにはいっさいの余裕が無い。どうにか切り抜けようと頭を働かせるも良い案は浮かばず、完全にオーディンのペースだ。

 

 

 

 

「まあ、これが送ってきた者の計略であろうし、破棄はせんが……先日の協力の謝礼でも受けんと騒ぐ者達を抑えられそうになくて儂も辛いんじゃよ?」

 

「……す、直ぐに魔王を集めて検討させて頂きます」

 

 了承する他ないと沈んだ声を出すセラフォルー。バレバレの困った演技を止めたオーディンは静かに笑い、ヒルダは困り顔を浮かべていた。

 

 

 

 

 

「では、儂は義理の息子とお茶の約束があるから行くぞ。どうも懐かしい顔とも会えるらしいしの」

 

 オーディンが去っていった後、セラフォルーは慌ててサーゼクス達を召集する。北欧に謝礼を払う以上は他の神話にも払う必要が生まれ、それによる経済的打撃に頭を痛めながら……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「もー! リアスちゃん達は何を考えているのよー!」

 

「ごめん、ごめん。私の方から注意するし、イッセー君をキチンと叱るように言っておくよ。それよりも財源だけど……」

 

 魔王揃っての話し合いはセラフォルーが何時もの態度で怒りながら始まり、サーゼクスの苦笑混じりの謝罪で進もうとする。だが、ここで横合いから声が割り込んだ。

 

 

 

 

「ねぇ、叱るって具体的にどんな罰を与えるの~?」

 

 まさかのフォルビウムからの突っ込んだ質問に予想外だったサーゼクスが返答に困る中、相変わらずの眠そうな声で問い掛けは続けられる。甘やかされた礼儀知らずを追い詰める問い掛けが。

 

 

 

 

「まさかと思うけど、正座してお説教とか、お尻を叩くとか、学生レベルの折檻じゃないよね~? だって魔王の避難指示を断って行動した結果、国家間レベルの問題を起こしたんだし、魔王として貴族とその眷属に相応しい罰を与えなきゃさ~。……じゃないと問題が大きくなるよ?」

 

 最後は間延びした声ではなく脅すような声。厳格に重罰を与えろと、そう語っていた……。

 

 

 

 

 

 

 その頃、朱乃は父であるバラキエルからの言葉が理解できずに固まっていた。

 

「……聞こえなかったか? 今後はお前の望み通り父としては接さない。組織を、同胞を守るためにも堕天使の副総督として接しよう。お前も今後は立場に合わせた態度を取るように」




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