ハリー・ポッターと帝国元帥   作:おゆ

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第一章 大帝復活
第一話 組み分け


 

 

 

「むふう…… どうしたらいい………… この者の中身はなぜこうなっている? この儂がどうにも分からんとは」

 

 しきりに困っている者、いや物がいる。

 頭をひねるが、それはただの比喩表現にしかならないのはその物に頭も首もないからだ。

 

「この者の中身はどうにもこうにも複雑…… いやそれを考えている場合ではない。とにかく組み分けをするのが儂の役目。だが皆目見当がつかん」

 

 その物、つまり組み分け帽子の焦りようを感じ、それをすっぽりと被っている側の少年が声を添える。

 

「組み分け帽子とやら、困ってばかりで動けないでは、これが戦場なら斃されているぞ。あのアスターテやアムリッツァにおける無能な敵将を思い出す」

 

「これ、焦らすようなことを言うでない! 組み分けは早ければ一瞬だが、一時間かける場合だってあるのじゃから。寮の組み分けというものはの、その者の一生を左右する、それほどまで大事なことなのじゃ! そんな重い責任を任されているからにはしっかり決めねばならぬ」

 

 そう言われても帽子を被る側に興味はない。

 正直、どの寮に行こうがどうでもいい。

 自分が自分である限り環境は問題ではない。はっきりとそう言い切れる強さと実績、そして大いなる矜持を持っている。

 

 なぜなら、自分こそが新銀河帝国四百億人を統べる覇者、戦いの天才と呼ばれた者だからだ。

 

「まあよかろう。組み分けが余の仕事ではなくそちらの仕事というのであれば、口を差し挟むなと言う権利だってあるだろうな。しかし一応聞いておくが、どういうわけで悩む? いったい学校の寮などどこでもいいではないか。何が違うというのか」

「大違いじゃ! そんなことを言われるとは思わなんだ。普通は自分で行きたい寮を決め、そこでないと駄目と悲壮な顔をしているものじゃ。お主のような者こそ珍しい。分かっておるのかおらんのか、一応説明するが、ここホグワーツ魔法学校では寮によって居心地が変わる。いや、学校よりも寮によって育てられ、その後の行く道が決まると言って構わんくらいじゃ」

「だからといってどうとも思わないが、言いたいことは分かった。それで、寮を決めるには何をもって成す? 何かの基準くらいあるのだろう」

 

 あまり少年らしくもない堂々とした物言いで組み分け帽子と会話をする。

 

「普通は長所を伸ばすように寮を選ぶのじゃ。勇気のある者にはグリフィンドール、知恵を持つ者はレイブンクロー、誠実な者はハッフルパフ、野心があればスリザリンへ分ける。だがお主はいずれも抜きんでている。何を選ぶといっても難しいのじゃ」

「それは褒め言葉と受け取ってよいのだろうか。ところで聞くが、組み分け帽子とやら、この世界での階級は何に当たる者か」

 

「そんな質問を受けたのは初めてのこと! むう、組み分け帽子に限らずここに階級などないが、思考に合わせて無理やり答えてやるとすればホグワーツの准将、いや少将といった位置になるじゃろうな。首も手足もないからといって馬鹿にしてはいかんぞ。ここホグワーツの始めからいる古い古い組み分け帽子じゃ!」

「なるほど古いことを誇りにしているのか。まあそれはどうでもいいが、呼び方を考えただけだ。将であるならば卿と呼ぼう」

「 …… 」

「卿は寮を選ぶ基準をたった一つしか持っていないのか。選択肢の少なさはすなわち戦術の硬直化を生み、付け入られる隙となる」

 

 

 話の流れが少しばかり違う方向へ行きかけたが、逆に組み分け帽子にとっては考えるヒントになる。

 

「何か説教された気分じゃが、確かに言うことは正しい…… うむ、選ぶ基準を変えるとすると、例えば長所を伸ばすのではなく、短所を補うというのも一つかもしれぬ。お主には勇気、知恵、野心は余るほどある。特に野心はあり過ぎて先き行きが心配なくらいじゃ。しかし、足りぬものがある」

「何、卿は余に足りないものがあると言うか。それはいったい何だ」

 

「たった一つ、それは忠義じゃ! 自分でも心当たりはあろう」

「何、忠義が足りないだと!? ……なるほど、卿の言うことも道理。余がゴールデンバウム王朝を倒す前、臣下として膝を屈する頃もあったが心の中は違うことで一杯だった。忠義とは向けられるものであって向けたことはなく、姉上以外には考えたこともなかったな」

「ではそれで決まりじゃ」

 

 

 組み分け帽子はようやく寮を決めたことで安堵し、周囲に宣言する。

 

「ハッフルパフ!!」

 

 

 

 組み分け帽子が叫んだ瞬間、ハッフルパフのテーブルから一斉に足踏みの音と、拍手喝采が鳴り響いた!

 

「ポッターを取った! ポッターを取った!!」

 

 他の三つの寮からは声も出ない。

 ハリー・ポッターこそ今年の新入生で注目度ナンバーワンであり、どこの寮でも欲しい人材だ。固唾を呑んで組み分けを待ち、思いの外長時間かかったのだが、ようやくどこに決まったのか知った。

 しかしそれがまた驚きだ!

 

 何とここホグワーツの四つの寮で一番目立たず、しかも成績争いで万年下位のハッフルパフがハリー・ポッターを取ったのだ。「名前を呼んではいけないあの人」に会い、そして生き残った唯一の男の子、ハリー・ポッターを。

 そのポッターはしっかりとした足取りでテーブルに向かうとたちまち握手攻めに遭う。

 

「よろしくなポッター!」「歓迎するわ、ようこそハッフルパフに!」「何かやってくれそうだな、期待してるぞ!」

 

 ハッフルパフはどの寮生の顔も歓喜している。

 

「ああ、よろしく」

 

 ハリー・ポッターは一言だけ答えてテーブルに着いた。

 

 

 組み分け帽子は、もし人間的な表現が許されるなら、冷や汗をたっぷり流したところだ。ほっとして次の一年生を組み分けにかかる。

 

 ホグワーツに入学する新入生たちの組み分けが終わるとお待ちかねの歓迎のための宴会が始まる。テーブルに溢れるほど並べられた食事を皆は勢いよく食べていく。もちろんポッターも同じだ。

 

「不味くはないが、姉上が作られた物には及ばないな。だがカイザーリンの作る物よりは確実に美味い。カイザーリンは才能が料理以外にしか存在しなかったからな。そういえば料理にいつも何かの草を入れていた。チシャではないかと心配したものだが、そもそも野菜の葉だったのだろうか。嫌いだと言っておいてもカイザーリンは栄養がある草ならば何でも入れてくる。そして文句を言うと理路整然と倍も返してきたものだ」

 

 懐かしむようにそこまで言って微笑んでしまう。

 ラインハルト・フォン・ローエングラム、新銀河帝国皇帝であればどんな美食も可能だったろう。しかしその実態は、食事に頓着しないラインハルトでなければとうに離縁してもおかしくない食生活だった。

 一部の心ある臣は「オーベルシュタイン元帥の犬の方がよほどグルメではないか」と呟いたものだ。

 いや、頓着しないというより、若い日、姉上とキルヒアイスと三人で食べたものより美味いものなど存在しないと分かっている。記憶の中のものはいつでも美しい。

 

 

 

 それよりも現実的な思考に沈みこむ。

(どうしてこうなった…… 余は確か高熱にうなされ、カイザーリンに額を拭いてもらった。そこから先の意識が無い)

 

 特発性膠原病とやらで自分は死の床についていた。

 治る見込みもなく、高熱で衰弱し、遺言まで言って意識を失った。つまり死んでいたはずだ。

 

 ふと目覚めたら、何と自分は背の低い少年の姿だった!

 しかもヤン・ウェンリーのような黒髪で、その上メガネまで必要とは。

 

 皇帝の寝室とはまるで違う狭い階段裏の部屋だった。もちろん新銀河帝国首都フェザーンなどではない。

 この時点で現実なのかどうか分からなくなった。

 だが起きたら考える間も与えられず追い立てられてしまう。この日が何かの出発の日だというのだ。

 駅というものに着き、驚くべきことに壁をすり抜けてから乗り物に乗った。更にその乗り物というのは馬車でもなく、地上車でもない。オーディンでもフェザーンでも見たことがない珍妙なものだ。大きな車輪を回して動いている。しかも煙臭く、振動も激しい。

 

(なるほどそうか、余は既にヴァルハラに来たということか。高熱が続いたのだ。いつそうなってもおかしくない状況だった。まあよかろう。余には心残りなど無い)

 

 

 

 ラインハルトは他の誰もができなかったことを成し遂げ、望みを果たした。

 腐ったゴールデンバウム王朝を倒し、帝国の悪しき門閥貴族を一掃した。そこから更に自治領だったフェザーンも民主共和制の同盟も飲み込み、新銀河帝国を打ち立てて人類社会に新しい秩序を作ったのだ。その結果としてフェザーンを首都とした新しい若い国家ができた。これにより人類社会はより一層の発展が見込める。

 

 自分の死後、誰よりも聡明なカイザーリン・ヒルダが帝国を引き継いで地固めしていくだろう。次期皇帝アレクが無能者であったとしても、最善の対処をするに違いない。

 

 もちろん宇宙は統一を果たしたばかり、殺伐とした気風が残っていて、特に併呑された旧同盟領はいつ反乱をおこしてもおかしくない。征服者に対する反抗心と、大義にとなる民主主義というイデオロギーと、そして隠された武器がまだまだある。おまけに好敵手だったヤン・ウェンリーの名が反逆の拠りどころにもなっている。

 

 しかし、それに対してはカイザーリンの麾下に信頼できる将たちがいるのだ。

 

 ミッターマイヤー、ミュラーなどの元帥がいれば新帝国は少なくとも軍事的に転覆される恐れはない。ラインハルトの指揮ぶりを直に見ている将たちがいる限り、何の心配もない。それらの将たちがいなくなった頃実戦を知らない指揮官ばかりになれば不安なこともあろうが、そこまでは責任の範囲外だ。

 

(それにヴァルハラでも何でもいい。自分が自分であることだけで充分だ)

 

 ここはあまりに奇妙な世界だ。実際はヴァルハラなのかどうかさえ分からないが、もしこれを作ったのが大神オーディンだったとしたら酔狂が過ぎている。

 だがどんな状況でもいい。

 自分をラインハルト・フォン・ローエングラムとしっかり認識できて、思考力があることが何よりも重要ではないか。

 

 とはいえ、周りの状況を知るために情報を得ることが必要だと認識する。ここは想像もできない世界だが、現実的に転べば痛いし腹も減る。とりあえず皆の言ってくるハリー・ポッターという名前で受け答えし、話を合わせる。

 

 それともう一つ、つい口から帝国語が出そうになるが、周りはどういうわけか全員旧同盟領の言葉を使っているようなのだ。それに合わせて同盟語を使って会話しかない。まあ、語学についても決して不得手でなかったので苦になるほどではない。

 

 これからどうなっていくのか、どうすればいいのか。それはまだ分からない。

 とにかく今はホグワーツという何かの学校に連れてこられ、新入生として入学したばかり。ひとまず慎重に行動しよう。

 

 

 

 そんなラインハルトを遠くから見ている目があった。

 

 同じ一年生の一人が訝し気に見ている。

 それは長身で赤毛の少年だ。これまた組み分け帽子が結構な時間をかけて悩みに悩み、ついにグリフィンドールに組分している。そこのテーブルから見ているのだ。

 

 もう一人いる。

 

 スリザリンのテーブルからも視線を固定している者がいる。痩せて顔色が悪く、銀髪を中央で分けていた。

 

 

 

 




 
 



内容的に銀河英雄伝説が8割になってます。それを知らない読者様には厳しいかもしれません。

ハリーポッター、昔読んだだけですので、口調も筋も怪しいですがこのまま突っ走ります。
ただし最後はハリー・ポッター側の人物も全て救済し、圧倒的なハッピーエンドを目指します!
それだけは確実です。
原作ではシリウス、スネイプ、そしてダンブルドア(その妹アリアナも)、あまりに痛みが多く
、寂しいですので。
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