ハリー・ポッターと帝国元帥   作:おゆ

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第四十話  フラメルの秘密

 

 

 ルドルフが大軍団を動かしながらイギリス魔法省を目指す。

 

 その頃、ホグワーツが魔物の急襲に晒された。イギリスにいた魔物が集まり、一足先に攻撃を開始していたのだ。

 もちろん、今となってはホグワーツを陥落させることに戦略的な意味はない。それにホグワーツの生徒がルドルフ側に寝返るとも思われず、得られる魔物や魔法具もないからだ。

 しかしながらルドルフの最終目標は魔法省、その近くであるホグワーツは目障りな拠点であることは確かであり、陥としておけば幸先がいい。

 

 たったそれだけの理由で戦いが始まった。

 戦略的意義のない戦いにはルドルフも興味がなく、一流の指揮官を向かわせることはない。どうでもいい下級魔物を差し向けて襲わせただけだ。そんな使い捨ての戦力ではあったが、それでもホグワーツは陥落寸前まで追い込まれてしまう。

 とにかく魔物の数だけは多いのだ。

 空からは吸血鬼が来た。陸では妖精、小鬼、ドワーフ、そして水中人まで押し寄せてきた。

 人面のような姿の犬や、巨大なムカデやエビのようなわけの分からない魔法生物もいるのだ。それらは思いもよらない素早い動きと毒液を武器に攻撃を仕掛けてくる。

 動物だけではなく歩ける暴れ柳のような植物まで群れをなして向かってきたではないか。

 

 

 もちろんホグワーツ守備のため残っていたファーレンハイトとルッツ、オーベルシュタインが善戦する。

 それに加え、ディー・エーとしてチョウ・チャン、ジニー・ウィーズリー、アーニー・マクミラン、スーザン・ボーンズ、ケイティ・ベル、ルーナ・ラブグッド、ネビル・ロングボトムらもホグワーツを守るため立ち上がる。

 

「もうじきポッターたちが帰ってくるわ! 情けないところを見せられないわよ!」

 

 士気は決して低くない。

 ハリー・ポッターがいずれアメリカから帰ってくるのは確実で、それを思って奮い立つ。決して諦めていない。

 日頃の諍いはどこへやら、次々とやってくる魔物を打ち倒すため積極的に連携しながら攻撃魔法を仕掛ける。

 

「プロデゴ!」「アクアメンティ!」

 

 チョウ・チャンとジニーウィーズリーでさえ魔法を同期させて戦っている。

 

 もちろんホグワーツ教師陣も生徒たちを守るために戦う。

 さすがに教師をやっているだけあって戦いでも一騎当千だ。ミネルバ・マクゴナガルなどは往年の大魔法使いである。鋭い連射は他の追随を許さない。ハグリッドも性格は穏やかだが戦いとなれば有数の戦力になる。このホグワーツ校始まって以来の大事に森のユニコーンたちも駆けつけて応援する。

 

 だがしかし、肝心のホグワーツの一般生徒らはあまり戦力にならなかったのだ。

 

 彼らが最初から戦闘に慣れていないこと、戦闘用の魔法に習熟していないことはもちろんだ。

 しかし、何よりもホグワーツの象徴であり最強の魔法使いでもある校長アルバス・ダンブルドアが不在なことが影響していた。ディー・エー以外の一般生徒にとってはハリー・ポッターではなく校長こそ頼るべき存在だ。いきなりこんな戦いが始まったのに、ダンブルドアがいなければ敵に立ち向かう精神力の支柱がない。そのためちょっとした魔物の攻撃にも這いつくばって逃げ惑うばかりである。

 

 

 ダンブルドアは長期間ホグワーツを留守にしている。

 それは闇の帝王の分霊箱を探し回り、破壊する旅に出ていたためだ。それは是非とも成し遂げなくてはならず、誰かが行わない限り闇の帝王を本当に倒すことはできない。分霊箱のある限りいつまでも戦いは終わらないのだ。

 意外なことにたいていの分霊箱は格別に守られていることもなかった。闇の帝王は自分の強さに自信があるのか。場所さえ判明すればダンブルドアにとって分霊箱の破壊はたやすい作業であった。

 しかし、さすがに幾つかには守衛役の者が就いていた。

 

 秘密の洞窟、それに隠された池の中央にある島に置かれた盃の場合がそうだった。暗い水を湛えた池を渡ろうと船を動かしている最中に襲われた。

 いきなりの閃光がダンブルドアを撃つ。

 だが、奇襲には成功してもその威力はとうていダンブルドアの防御に通じるようなものではない。かえって攻撃が跳ね返されて襲撃者の元に返っていく。ダンブルドアは最初から反射魔法で防御していたのだ。そして反射魔法は完璧な働きをしてみせた。

 

「ぎゃァッッ!!」

 

 慌てて襲撃者が避けようとしても遅い。その者は防御魔法を瞬時に張れるほど習熟していなかった。そして悪いことに襲撃者は洞窟の壁に沿った窪みにいたため、すぐに身動きできない。

 そっくりそのまま反射してきた自分の攻撃魔法に胸を貫かれ、前のめりに亡者の池に落ちる。その罠によりもう命を保つ術はないだろう。だが池に飲まれる寸前、奇妙なことを言った。

 

「俺は同盟軍ロックウェル少将! こんな、こんなところでまた死ぬなんて……」

 

 ダンブルドアは盃の台ごと悪霊の火で焼き払い、秘められた分霊箱を滅した。

 そうしながら、先ほどの不思議な言い残しのことを考えている。

 

 

 分霊箱を探す旅の最後にダンブルドアは魔法省の建物に赴いた。

 正確に言えば魔法省の誰かに会うためではなく、その地下に用があったのだ。

 

 魔法省の一般職員が出入りするような階層よりはるかに深くである。

 予言の玉や奇妙な生物などがいるところより更に深く深く、死者の世界への入り口といわれる不思議なアーチがある階層にまで下がり、そこに長く籠っていたのだ。魔法力でガードしなければ長くは留まれないような神秘なところである。

 もっと深くにも階層が存在するのだが、さすがにそこまでは未だ誰も立ち入れない場所だった。ダンブルドアでさえ全力に近い形で防御魔法を張らなければ意識を持っていかれるだろう、そんな場所だ。そこにつながる階段へ、下からほのかな緑の光が漏れ出ているがその先は見えない。

 

 ダンブルドアがそんな深遠な場所にいるのは目的がある。

 その場所でダンブルドアは今は亡き盟友ニコラス・フラメルの作った賢者の石について詳しく調べようと思い立ったからである。この場所でニコラスが作り上げたことは分かっていた。賢者の石に込められた術式はここにしか存在しない魔法方程式を使っているからである。

 ただしその解析といっても、使われたいにしえの魔法の断片を見出し、比較する根気強い作業である。ダンブルドアといえども難解な魔法方程式を読み取って理解するのは容易ではない。

 だが努力が実り、ようやく概要だけは掴むことができた。

 その内容は驚くべきものだった。

 ダンブルドア自身も知った時叫び声を上げたくらいだ。

 

「ニコラスよ、これほどの物を作ったのか! なるほど、これでハリーがあのようになっているわけが分かった。なんとも不思議なものじゃ。理由があったとはの」

 

 誰が聞いているわけでもない部屋で、それでも興奮して話してしまう。

 

「そして闇の帝王が未だ完全な人間になることができないわけも。ようやく謎が解け、全てがつながってきた。そして驚いたことに、賢者の石の力はまだ完全に出し切れておらん!」

 

 

 それが分かるとホグワーツに引き返した。

 ダンブルドアが着くとホグワーツは既に戦場になっている。一番に愛している学校がもはや半壊状態になっているではないか。

 

「帰るのが遅すぎたか! しかし戦いは続いておる。ホグワーツの建物などどうでもいいのじゃ。生徒さえいれば。生徒たちこそホグワーツじゃ」

 

 もちろん直ちに魔物を退けにかかる。

 

 さすがにアルバス・ダンブルドア、現役最強の呼び名も高い魔法使いだ。

 そして普段は物分かりのいい年寄りではあるが、生徒らを脅かすものには鬼神のように容赦がない。

 どんな魔物も一撃で倒した。

 杖から出る魔法は何物にも妨げられることなく、確実に目的を遂げる。

 あのミネルバ・マクゴナガルでも苦戦する巨大トロールでさえ一瞬で片付ける。魔法耐性などダンブルドアにとっては無きが如しだ。その白銀の一閃するところ確実に道が開けていく。

 

 生徒らは大歓声を上げる。

 

「校長が帰って来た! もう何の心配もない! 俺たちホグワーツの勝ちだ!」

 

 

 その様子を見て取ったファーレンハイトらは苦笑しながらも粛々と掃討を続ける。

 フリットウィックは植物ツタで魔物の足を封じてその助けをする。スネイプは強力な痺れ薬を作製して魔物の陣に拡散させ、その力を一気に半減させていた。一般生徒もそれを手伝い、今やホグワーツの総力戦だ。

 

 最後は魔物を追い詰め、討ち払った。

 

 だがここでも奇妙な言い残しが存在した。魔物には一応人間の指揮官が存在していたのだが、とても優秀とはいえず、特に劣勢になってからは何も有効な手を打てない無能者だった。

 その者が魔物と共にいよいよ追い詰められると、よく分からない叫びを上げたのだ。

 

「尋常に勝負をしろ! 俺は栄光ある銀河帝国の貴族、ヒルデスハイム伯爵だ!」

 

 だがその言葉の続きはなかった。

 ホグワーツの生徒の一人が攻撃魔法であっさりと撃ち倒したからだ。

 ダンブルドアが見ると、それを行った生徒はスリザリンのドラコ・マルフォイだった。相手の奇妙な叫び声にも全く表情を変えず、恐ろしいほどの冷徹さを保ったまま攻撃を掛けたのだ。

 

 ホグワーツの戦いは終わりを告げ、戦える者たちは半壊状態の学校を後にして新たな決戦地へと赴く。

 

 

 

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