ハリー・ポッターと帝国元帥   作:おゆ

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第四十五話 武人

 

 

 ラインハルトらはボルテックを倒し、魔法省の建物からルドルフ配下の魔物を追い払った。そして再び外に出る。

 

 すると、遠目に敵の軍勢が整然と並んでいた。数も多いが、違うのは雰囲気である。今までような統率も取れていない雑兵ではなく、しっかりと軍の体裁を持っていたのだ。それはまるで帝国艦隊の艦列のような形をなしている。

 

 

 

 ルドルフを大本営とし、リヒテンラーデが直下に控えていた。

 

 麾下の死喰い人、吸血鬼、ゴブリン、狼人間、ドラゴン、巨人などがきれいに区分けされている。死喰い人ならまだしも自分勝手な行動を取りがちな魔物が整然としているだけで、恐怖なのか報酬なのか、何の手段を使っているのか分からないがともかくルドルフの統率力が尋常でないのが分かる。

 

 そんな軍団を従え、ルドルフは余裕の表情だ。

 

「リヒテンラーデよ、建物内に橋頭保を築くのは失敗したな。まあ、そう焦らずともよかったのだが」

「大帝陛下、面目もござりませぬ。なれどそれで相手勢力のあらましが判明しております。やはりあのラインハルトと申す者を中心にした勢力が最大戦力の様子。きゃっつはさすがに銀河帝国を倒しただけのことはあるような。しかしながら付け入る隙がございます。つまり他の闇払いや魔法省などと連携している節が見当たらず、組織化は未だ途上なのかと」

「なるほど、それを成される前に倒すべきということだな。組織化されると厄介だ。どのみちこちらとしても急戦を選択する基本方針に変わりはない。では用意が整い次第総攻撃を行なう」

 

 ラインハルトらも思いがけずルドルフが軍隊らしい様を構築していることに戸惑っている。足並みを揃えた大隊、それらを機能的に統合した師団、そういったものが伺える。

 もう戦いは別次元に移行しているのだ。

 

「しまった、キルヒアイス! 俺はやはりこの世界に来て、ここのルールに知らず知らずのうちに合わせてしまったようだ。こちらはまだ軍の体裁を成していない。まずいな。このまま戦えば艦列、いや隊列を整えた相手に抗し得ないだろう」

「そのようです。しかしラインハルト様は一生徒としてこの世界に来られたのですから、自ずと限界があったでしょう。その中で精一杯やってこられたのです」

「そう言ってくれるのは嬉しいが早急に戦術を組み立てねばならん」

 

 ラインハルトはこれからの戦いが容易なものではないことに気を引き締める。

 

 

 

 

 それと同じ時刻、ようやく魔法省大臣ファッジことヨブ・トリューニヒトは魔法省から脱出していた。

 有能な副大臣と協力して一般職員を戦火の及ばないところへ送り届けた。

 その後、ほっとしてつい独り言を漏らした。

 

「軍部のクーデター時にはハイネセンから一人で逃げた。だが、今回のようにあの時も皆と逃げれば良かったのだろうか…… それなら、同盟の混乱と弱体化は最小限に抑えられたかもしれない。今さら何を言っても過去を取り消せないが」

 

 だが、その独り言を聞いていた者がいた。すぐ近くに立っていた。

 

「議長、確かに過去を取り消すことはできません。しかし、為政者は失敗することが問題なのではなく、反省を続け、歩みを止めない方が重要なのではありませんか。私も自分が引き継いで為政者の立場に立ってはじめて、ようやく議長の背負われてきた重みが分かりました。為政者の責任と決断、それは本当に重いものです。結局のところ私も失敗したのでとうてい偉そうなことは言えないのですが」

 

 その返答を聞いてトリューニヒトは驚く。

 この人物の顔は副大臣ルーファス・スクリムジョールではあるが、その言葉は明らかに前の世界を知っている者の言うことだ。しかも、同盟の政務を引き継いだと言っているではないか。よく観察すると自分に負けず劣らず自嘲気味の憂いのある表情だ。やはり何かを思い出して、後悔することがあるのだろう。

 素早く頭を巡らせ、その者が誰かを類推する。

 

「む、君はルーファス・スクリムジョール、ではないな? ならば向こうの世界の者なのか…… そして今言っていた内容は同盟の政治、するとまさか、ジョアン・レベロ君なのか!」

「そうです、トリューニヒト議長。私も同じく過去を反省しています。私はあくまで正しいものの味方に付き、その権利を守るべきでした。それが自由惑星同盟の精神なのですから。しかし、目先の解決策に縋りつき、いっときその大事なことを忘れていたのです。残念ながら、それが分かったのは若手軍部将校から撃たれて死ぬ直前で意味がなかったのですが」

 

 

 

 一方、ラインハルトとルドルフの戦いは即座に始まるかと思いきや、少しの間が空いた。

 どちらにとっても編成をもう一度考える事態になったのだ。

 

 ラインハルトの側にやっと追加戦力、アルバス・ダンブルドアとホグワーツのディー・エー、そして不死鳥の騎士団の面々が参入してきた。

 ホグワーツでの戦いの後、ダンブルドアは校長としてホグワーツの生徒の様子を各保護者に説明する義務を果たしている。戦いでは甚大な被害を被り、事後処理もまた大変なのだ。怪我をした生徒たちはマダム・ポンフリーが手当てするも彼女の手に余る重傷者は病院に送らねばならない。学校は生徒たちのことが何より優先だ。

 それに時間を取られたため、ようやくこのタイミングで到着した。

 

 今からの戦い、最強の魔法使いアルバス・ダンブルドアの存在は大きい。

 

 そしてもう一つ大きな戦力が到着する。

 ボーバトン、ダームストラング、イルヴァモーニーの生徒らをまとめて引き連れ、ヤン・ウェンリーとその一党が姿を現した。

 ラインハルトとヤン・ウェンリー、特に何も語ることは無い。

 常勝の提督、不敗の魔術師、お互いに力量は知っている。素早くそれぞれが考えて隊列をとっていく。

 隊列は遠距離攻撃などの機能別ではなく、お互いが別個に指揮をとる散兵陣だ。その方が柔軟で素早い対応ができると踏んだ。

 

 一方、ルドルフの側にもブラウンシュバイクとリッテンハイムが到着した。もちろんアフリカ、ヨーロッパの魔物たちの大軍勢を引き連れている。

 二人は、人類史上最大のゴールデンバウム王朝の確立に大いなる貢献をした練達の将である。その実力は戦力が大きければ大きいほど発揮される。

 頭に描いていた軍団編成をすぐさま築き上げていく。

 

 これで全ての戦力がこの場所に集ったことになる。

 どちらの陣営も、この戦いが最終戦になることを理解している。

 

 

 

 宣戦布告もなく、大会戦の戦端が開かれた。

 

「ファイエル!!」

 

 リッテンハイムの号令と掲げられた杖が戦いの合図となる。

 ルドルフの陣から斜め上に向けて長距離魔法が打ち上げられていく。見事なまでに整然とした一斉射撃である。壮大な景色はさながら宇宙の艦隊戦で飛ぶレールガンの雨のようだ。

 

「む、これは先手を取られたな。ただし狙いは甘く、これで被害は出ないだろう。おそらく敵の狙いは突入の支援だ」

 

 ラインハルトの言う通り、長距離魔法はただの弾幕であり落ち着いて回避すればそれで済む。

 しかも生徒の密集地帯にはアルバス・ダンブルドアが強力な防護魔法をかける。

 

「インフィニット・プロデゴ!」

 

 チリチリと輝く白銀の幕が降りてしまえば攻撃魔法の雨を難なく弾く。

 

 

 ルドルフの陣形が変化し、突入部隊が弾丸のように進撃を始めた。ラインハルトの予期した通りだ。遠目にはゆっくりとした変化に見えたが、近付くにつれ猛然とした速さだと分かる。

 その隊列は巨人たちだった。のっけから重厚な打撃力を使ってきた。

 しかも巨人たちは何と槍と盾を所持している。

 ただでさえ人間が抗し得ない巨大な破壊力を持つ巨人が、更に武器の力を得ているではないか。

 高鳴る地響きが次第に高鳴り、やがては音だけではなくなる。足元の地面を揺らし、その威圧感と恐怖に圧倒されそうになる。

 

 そして先頭に立つ巨人は並の巨人よりはるか上を行く異様だった。

 

 先ず身長が他の巨人に比べ規格外に高い。他の巨人たちはせいぜいその胸までしか届かず、小さく見えるほどだ。むろんそれに見合う筋肉も充分だ。

 何より違うのは両手に戦斧を持っている。ぎらつき、重く、見るだけで威圧される。

 巨人部隊は接触直前、進撃のスピードを落とし、大音量で名乗りを上げてきた。

 

「そこにいるのだろう、ラインハルト・フォン・ローエングラム! このオフレッサーが相手をしてやる。皇帝陛下に引き立てられたくせに恩を忘れ、銀河帝国に盾突いた金髪の孺子! こそこそ隠れていないで出てこい! レンテンベルクで卑怯なマネをしたのが恥ずかしくて出てこれないか」

 

 それを聞くとラインハルトを始めとして誰もが驚く。

 

「レンテンベルク!? む、まさか、あの巨人はオフレッサーだったか! 自らの馬鹿さ加減を晒した挙句、味方したブラウンシュバイク公に殺された愚か者のくせにこの世界に来ていたとはな」

「ラインハルト様、そうはいっても油断はなりません。ここは艦隊戦の出る幕ではなく、オフレッサー上級大将のような者が活躍できるのです」

 

「確かにそうだ。ここは魔法力か筋肉で戦う世界、まさに石器時代のようなものだな。とするといつか奴のことを石器時代の勇者だと言った覚えがあるが、まさに奴にはうってつけの舞台といえる。しかも巨人とはうってつけだ」

「はい、この場合彼は恐るべき脅威になるでしょう。巨人の力と装甲擲弾兵の動きを併せ持つ戦士なのですから」

「だとすればオフレッサーは前の世界にいた方が間違いで、最初からこの世界に生まれていればよかったのだ」

 

 

 

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