ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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白髪赤目の少年

 白髪赤目の少年はナイフを振るう。

 鮮血が舞う。また振るう。ゴギャリと首の骨に当たりナイフが止まる。その隙をつき後ろから敵が迫ってきたがナイフから手を離すと人差し指と親指でソイツの目を潰す。

 

「─────!!?」

 

 痛みから反射的に目を押さえ武器を手放す。その武器を空中で掴み男の首を切る。勢いそのまま左から迫ってきた敵の腕を切り落とし落ちてきた短刀の柄を膝で蹴り上げ顎下に打ち込む。男の額から先端が飛び出した。

 

「に、逃げろ……!」

「逃がすか」

 

 少年は懐から数本の短刀を取り出し投げつける。首の後ろから頸椎に見事に刺さり命を奪う。

 

 

「……………」

 

 ダンジョン都市オラリオに訪れた一つの影。白い髪をざんばらに伸ばし赤い瞳で周囲を見渡す。顔には幾つもの傷があった。鋭い刀傷、猛獣の爪に抉られたような傷など様々だ。

 黒いボロボロの布に身を包み幽鬼のような存在感を放っていた。

 ここはダンジョン都市。数多の者が富と栄光を求めて訪れる。

 モンスターの溢れるダンジョンという地下空間。そこでモンスターを倒し名を上げるのだ。また、モンスターの落とす魔石を手に入れれば金になる。

 ある者は種族復興のための道標になるために、ある者は弱く何も出来なかった自分を否定するために、ある者はひたすら力を求めて。様々な夢を胸にダンジョンに挑む者達を、人は冒険者と呼んだ。

 しかし冒険者と言えど死なれると大変なのでダンジョンに入るには神の恩恵(ファルナ)を刻み込まなくてはならない。

 故に少年は自分に恩恵を与えてくれる神を探すことにした。差し当たり、ファミリアを見て回ろう。と、歩き出そうとした時……

 

「へい!そこの君!」

「…………」

 

 不意に声をかけられ振り向くと黒髪の少女が居た。その胸だけはデカいが、身長的に子供だろう。

 

「何だ?」

「僕と一緒にオラリオ一のファミリアを目指さないかい!」

「解った。よろしく頼む…」

「まあそうだよね。いきなりこんなこと言われても解るわけ………解ったぁ!?」

 

 面白いぐらい驚愕するロリ巨乳。少年は気にせず頷く。

 

「ファミリアの勧誘だろ?解った………神の恩恵を、英雄になる足掛かりを得られるならどうでも良い」

「英雄?英雄かぁ……うん!きっとなれるよ!」

 

 ニコリと笑うロリ巨乳。馬鹿にするでもなく、純粋な応援。素直に受け取っておこうと決める少年。

 

「それじゃあ早速『神の恩恵』(ファルナ)を刻むよ!ささ、おいでおいで!あ、と………自己紹介がまだだったね。僕はヘスティア。【ヘスティア・ファミリア】の主神さ!」

「ベル・クラネル………英雄になる義務のある凡夫だ」

 

 

 

 

「…………ありゃ?」

「どうした神」

「僕のことは親しみを込めてヘスティア、もしくは神様と呼びなさい。んーん、何でもないよ。『神の恩恵』(ファルナ)刻むの初めてだからさ」

「そうか」

 

 ベルはそれだけ言うとダンジョンに潜るためギルドに向かった。

 

 

 

 

「……………」

 

 ダンジョンの中で壁に背を預け眠っている者がいる。この光景を見たら、誰もが自殺志願者だと思うことだろう。何せダンジョンは常に中の人間を殺そうとする怪物の腹の中なのだから。今も、ピシリと音を立て壁から蟻が生まれる。その蟻は眠っている愚か者を食いちぎろうと顎を開き、その中央にナイフが突き刺さる。

 

「──────!?」

 

 ジタバタ暴れる蟻の名はキラーアント。死にかけると仲間を呼ぶフェロモンを放つ。今まさに放って居るであろうキラーアントの頭を鉄板仕込みの靴で踏みつけナイフを押し込み殺すとやってくる気配に目を細める。

 

「……【呪われろ呪われろ偽りの英雄。救えもしない無力な力で試練に抗い煉獄へ堕ちろ】」

 

 魔法の詠唱。

 キラーアントの群の攻撃を避けながら少年、ベルは呪文を唱える。するとベルの身体に不気味な文様が現れる。それはまるで戒めの鎖のように絡み付く。

 

「────!」

 

 次の瞬間、ベルの姿がかき消える。そしてキラーアント達が突然何かに潰され、抉られ、切られ、殴られ絶命していく。フェロモンを流す暇もない。やがて辺りには死体だけが散らばる。その中央に再びベルが現れた。身体中体液でベトベトだ。

 ベルはモンスターの死骸を解体していき魔石を取り出す。そして全て取り終えると地上に向かって歩き出した。

 

 

 

「あ、ベ……ベル君!?」

 

 ベルを出迎えたのは眼鏡のハーフエルフ。その顔はまるで幽霊でも見ているかのようだ。

 

「生きてたの?」

「ああ」

「じゃ、じゃあ一週間何してたの?もう、出る時もキチンと報告してほしいなぁ」

「だから来たろ?」

「へ?いや、今回じゃなくて」

「一週間ずっとダンジョンに潜っていた。これ、魔石。換金を頼む」

 

 そう言うとベルは何処からともなく大量の魔石をゴトゴト机に乗せる。ハーフエルフ、エイナはしばしポカンとして、そして絶叫してから説教してきた。

 

 

 

 

「たりない。もっとだ、もっと強く、もっと………もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと」

 

 ファミリアに戻ったベルはベッドの中で何度もつぶやく。

 思い浮かべる自身の姿は、まさに英雄。数多の悲しみを払い、類を見ぬ速度でレベルを上げる、そんな主人公の姿。ベルはその姿を夢見ながら目を閉じる。一週間ぶりの深い眠りに落ちた。




ベル・クラネル。
 Lv.1
 力:H102
 耐久:G207
 器用:H152
 敏捷:F362
 魔力:F305
対異常:F
精神安定:D
技能修得:C
鍛冶:E
《魔法》
【虚像の英雄】(ベル・クラネル)
階位昇華(レベル・ブースト)
・発動対象は術者限定
・発動後、半日の要間隔(インターバル)
・詠唱式【呪われろ呪われろ偽りの英雄。救えもしない無力な力で試練に抗い煉獄へ堕ちろ】
【エルトール】
付与魔法(エンチャント)
・雷属性
・速攻魔法
《スキル》
【羨望一途】(リアリス・フレーゼ)
・早熟する。
・羨望の続く限り効果持続
・無力感を感じるほど効果向上
【英雄義務】(アルゴノゥト)
・敵対時に置けるチャージ実行権
【嫉妬の龍】(レヴィアタン)
・敵対時に置ける相手のステイタス一時簒奪
【操作画面】(メニュー)
・自己ステイタスの閲覧可能
・討伐モンスター図鑑自動作成
・マップ表示
・索敵
・アイテム収納空間作成

主人公
親友から大まかに内容を聞かされ読もうとしたその日に死んだ男が憑依したベル・クラネル。
主人公がレベル1では倒せないとされているミノタウロスを倒したという事や、いろんな人間を救っていると聞かされており、そうなろうとしている。
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