ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「ベル、おはよう」
「おはようフィン」
ベルが起きたという報告を聞いて、【ロキ・ファミリア】の面々が集まっていた。
昨日の夜あれだけ食べていたというのにガツガツと物凄い勢いで食材を消費していくベル。下級団員達が慌てて食材を買いに走り回っている。
「ベル君! 起きたって!?」
「ベルさーん!」
「シル、落ち着いてください。ベルさん、目が覚めたようで何よりだ」
そして集まってくる【ロキ・ファミリア】以外の面々。
見知った顔はだいたい集まったようだ。
「あ、やっぱり見間違いとかじゃなくて、本当に色変わってたんだ……」
と、エイナがベルの髪を持ち上げ蒼く染まった瞳を見つめる。
「ああ、そうだな。色々あって聞きそびれていたが、大丈夫なのかベル。視力に影響は?」
「ねーよ。この瞳はあれだ、前世の色が戻ってきた」
「そうか、前世の…………ん?」
もう逃げない。そう決めた。
今の自分を受け入れて、その自分も受け入れて欲しい。だからベルは包み隠さず全て話すことにした。
「俺には前世の記憶があるって言ったら信じるか? それも、この世界とは異なる世界の記憶」
「ああ。予想していた」
「せやね」
「うん」
「「「…………は?」」」
リヴェリア達の言葉にベルだけでなくその場の全員が唖然とした。突拍子もないことをあっさり信じると言われたのだから仕方ないことだとは思うが。
「予想は予想だ。いくらでも立てられる。それが当たっていただけのことだ」
「あ、当たっていただけって………いや、何も言うまい。ただ、それだけじゃない……」
「………………」
「や、あの……リヴェリア様達が聞く雰囲気の中尋ねにくいんすけど、え……マジっすか? その、やっぱり信じられないというか」
「信用は別にいらない。妄言と思ってくれても結構だ」
「あ、いや……すいませんっす」
ベルのまっすぐな瞳に嘘はないと判断しラウルは罰の悪そうな顔する。
「話し続けるぞ。その世界は……そうだな、所謂様々な世界の物語を書物として娯楽の一部に刻まれている。その中で一つの本に出てくる者の名は、ベル・クラネル」
「「「!?」」」
「その書物は『ベル・クラネル』がオラリオに来てから成す冒険について書かれていた。といっても、俺は冒頭の部分しか知らないし大まかな内容としてもミノタウロスをLv.1で倒したぐらいしか知らない。そして、当然だがそいつに前世の記憶があるなんて設定はない……」
「…………なる程、ベル君はその物語の中心人物の一人、あるいは主人公の『ベル・クラネル』の人生を奪った事に責任感を感じていたんだね」
と、ヘスティア。
「だから代わりになろうとした。物語の中心人物なのだから、きっと多くを救ったはずだとお前もまた救おうとした、か……」
と、リヴェリア。
「あの時のお兄さんの話は、こう言うことですか………」
レフィーヤが合点が行ったというように呟く。幾ら何でも、異常すぎる拘りは人一人の人生を丸ごと奪ったことに対するものだったのだろう。
「………一つ聞くぞ」
「ん?」
「その『ベル・クラネル』ってのは俺等と仲良くしてたのか?」
「………解んない」
「つまり俺等と仲良くしてたのはてめぇの意志なんだな」
「ああ」
「なら問題ねーよ」
と、それだけ言い残しベートは去っていった。
「…………皆も、そう思うか?」
「ああ」「はい」「もちろん」
「うむ」「とうぜんっす」「思う」
「せやね」「ええ」
その言葉にベルはそうか、と頬をかくとガシガシ頭をかく。これでは悩んでいたのが馬鹿らしいではないか。
「あー、もっと早くレフィーヤの言葉を素直に受け取っとけば良かった」
「でもある意味、まだ迷っていたからウィーネちゃん達にあえたんですよ?」
と、微笑むレフィーヤ。ベルはそうだな、と微笑み、そして───
「皆、ありがとう」
この世界に生まれてから、初めての満面の笑みを浮かべた。
「な、なんか胸のあたりがくすぐったいような……」
「う、うん……私も」
「…………っ」
「……こ、これが伝説のギャップ萌!?」
「くぅ、夢の中の猫耳メイドアイズたんに匹敵する………!」
胸を押さえる者や鼻を押さえる者達。ベルはそんな彼等を置いて、黄昏の館から出て行く。
「お父さん!」
「ベルっち!」
【ガネーシャ・ファミリア】に行くとウィーネが飛びついてくる。直ぐに他の
「よしよし、良い子にしてたか?」
「うん。エヘヘ~」
スリスリとベルの胸に頬ずりしながら頭を撫でられるウィーネ。【ガネーシャ・ファミリア】の団員達もほほえましそうに見ていた。
「モウ聞イテイルカベル? 我々ハ地上ニ住メルソウダ……」
「聞いたよ」
「オ前ノオカゲダ………本当ニアリカガトウ」
「良いって。お前等が頑張ったおかげでもある………」
グロスの言葉にベルが笑う。グロスもふっと、笑った。
「ベルさん、本当にあリがとう………」
と、レイ達も声をかけてくる。巨体の
「きゅー!」
「ふぉう!」
「バウ!」
「………うん、そうか……」
アルル、ヘルガ、フォーの言っていることは何となく解る。お礼を言っていた。
「……………」
「…………アステリオス」
「………自分と戦い疲弊していたオッタルに負けたようだな」
「お前こそ、疲弊してた俺と違ってピンピンしてたのにオッタルに負けたんだっけ?」
と、お互いが挑発するような言葉に周囲がオロオロしだすと二人同時に噴き出す。
「つまり俺等は敗者どうしって事だな」
「うむ。つまり我らもまだ、強くなれるという事だ」
まだ強さに先がある。それが解れば二人は十分だ。
オラリオの城壁を越えた平野の道を歩く一つの影があった。
朱槍を肩に担ぎ、目指すはメレン。
「どこに行く気だ?」
「ラーニェ!? おま、何でここに!?」
その人物、ディックスは声をかけた人物、否……
「質問に答えろ。ベルが目を覚ましたというのに、顔もあわせずどこに行く?」
「………メレン」
「港町だったか? それで、そこからどこに行く気だ」
「………エルリア。お前等の仲間を取り返しにな」
全部を答えるまで逃がさない気だと判断したディックスは素直に答えるとラーニェはそうか、と嘆息する。
「誰かに言われたとかじゃねーよ。俺が、俺の意志でやりたいと決めたことだ」
「………そうか。なら、私もついて行こう」
「………は?」
「幸い【ガネーシャ・ファミリア】の
そう言って【ガネーシャ・ファミリア】のエンブレムを象った首輪を取り出すラーニェはそれを首に填める。
「いや、何言ってんだ!? 外の世界じゃまだ受け入れてくれるかもわかんねーんだぞ!」
「なら、お前が痛めつけた同胞達をどう説得する気だ?」
「そ、れは……」
言葉に詰まる。そうだ、自分は痛めつけ売り払った。怨まれているはずだ、恐れられているはずだ。その言葉が聞き入られる可能性など限りなく低い。
「説得は私がしてやるさ……お前は案内と、その貴族達をいざという時始末すればいい」
「…………」
「それが、お前を殺さなかった私の責任だと思っている」
「………そうかよ」
と、ディックスは頭をかく。ラーニェの目を見て説得は無意味と悟ったのだろう。
「んじゃまあ、一緒に行こうぜ」
と、片手を差し出すディックス。ラーニェはその手を掴み歩き出す。
嘗て夢を持つモンスターを嫌い、不幸にしようと売った人間と、人間に憧れ、しかし同胞を殺しあるいは攫う人間に絶望していたモンスター。
互いに嫌いあっていたはずの二人が手を取り合い歩き出す。
片方は説得に必要だから、片方は案内させるため。あくまで互いを利用するための言い張るであろう二人だが、そこには確かに
「俺が、ガネーシャだ!」
「ああ、うん。解った解った………」
「ではベルも起きた、始めようではないか『真・