ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「………まさか、こんなにも早くこの光景が見れるとはな」
フェルズが眼下に広がる光景を見て感慨深そうに呟く。
モンスターと人が酒を飲み飯を食らい笑いあっている。屋上から見下ろしているフェルズの隣には縁に腰掛け林檎にかぶりつくベル。
「感謝するベル・クラネル」
「お前が
「………ただ、まだ完全とは言えない。
ジャグリと林檎を噛む。
「ダンジョン最下層、ねぇ……まあ必要ってんならするさ」
「助かる。それと、すまないな……」
「何があるか教えないことか?」
「ああ、詳しくは言えない。結ばれた契約、そして決着としかな……」
新しい林檎を取り出すベルは眼下のモンスターと人間達を見下ろす。
「やるよ。俺は、そういう誰かを救う奴になりたいからな」
そこまで言ってベルは振り返る。そこには何もなく、しかしベルが林檎を投げつけると林檎が空中で消え、一秒も立たず林檎を持ったアスフィが現れた。
「なんかようか?」
「売り込みです。私を【ファミリア】に入れてくれませんか?」
「ヘルメスの所を抜けたのか? だが、何故俺の所に?」
「幾つか候補はあったのですが、そこでは現存の
神に会わせればヘルメスの子飼いのままかは解る。だからこそ、嘘は吐かないはずだ。
「何故ヘルメスの所を抜けた?」
「………あの人の方針に付いていけなくなったので」
「成る程。俺の怒りを買う何かをしようとしてたってとこか? さしずめ、彼奴を守るためか」
「………聞けば貴方は異世界の魂だとか。神のように嘘が見抜けるのですか?」
自分が居なければヘルメスの行動は大きく制限される。だからこそ抜けた。ヘルメスが行動できないように。地上での神など一般人程度なのだから。
「………まあ良いさ。お前の力が有用なのは確かだしな」
「………ありがとうございます」
「……ま、そう簡単に見つからないか」
「見つけたら殺す気ですか?」
「いや、お前に免じて見逃す。実行に移してはいなかったしな……ただ見つけたら必ず殴る」
と、そこまで言ったベルは林檎の一つを投げ渡してくる。
「我が儘な餓鬼を持つと母親は苦労するな」
「誰が母親ですか……でも、本当に苦労するんですよ。ルルネとかもお金のために勝手に依頼を受けるし…………甘い!?」
林檎にかぶりついたアスフィは想像以上の甘さに叫ぶ。少し柔らかい、何かに漬けたのだろうか?
「な、なんですかこれ………」
「林檎を砂糖と蜂蜜に漬けて3日、ハニークラウドの果汁にも一週間漬けたやつだ」
「もはや林檎の形をした甘さの塊ですね」
と、林檎を返すアスフィ。ベルはその林檎にかぶりつく。
「あ、ベル! と、アスフィさん?」
そのまま賑わう町並みを歩いているとレフィーヤが現れた。屋台だらけだというのに何も買っていないところを見ると、ベルをずっと探していたのかもしれない。
「……………」
「?」
どこか警戒したような視線にアスフィは首を傾げる。確かにヘルメスの元眷属であることを考えれば、警戒されるだろうが………。
「………あの、ベルはやっぱりアスフィさんみたいな大人っぽい女性が好きなんですか?」
「? ………あ」
──おいおいベル君、こんな状況だ。せめて誰の体が一番好みなのか言ってやるのが男ってもんだぞ?──
──アスフィ──
そういえば以前、自分の体が好みだと言われた。
むぅ、と頬を膨らませながらアスフィを睨むレフィーヤの視線に漸く納得いく。
「あの、では私はヘスティア様を探しに………後は二人でごゆっくり……」
そう言うと離れるアスフィ。彼女も一人の女として色恋に興味あるが、後を付けても絶対見つかるのでそれは諦める。
隣を歩きハニークラウドやら林檎飴やら甘い物を受け取るベルをチラリと見るレフィーヤ。
アスフィ、綺麗な女性だとエルフから見ても思う。気品もあるし……。
「ベル、こんばんハ! 月が綺麗デすね!」
「おおレイ、か。お前の翼や金髪も、月光に反射するとここまで綺麗になるんだな」
「フフ、ありがトウございまス」
「ベルっち! これ食ってみろ、うまいぞ!」
「リドか。もらうもらう………」
「ベルさーん! よってくださーい、新しい店員も大活躍ですよ」
「ハーイベル! ココノゴハンオイシイヨー」
「あ、お父さん!」
ベルは行く先々で声をかけられる。今はウィーネも一緒にいる。
ベルとレフィーヤの二人の手を繋ぎ笑顔を浮かべている。
(………あれ、これってなんか………)
と、そんな自分たちを端から見た想像するレフィーヤ。かぁ、と頬に熱がこもる。
「お父さん次あれ食べたい!」
「わかったわかった」
「あ、ウィーネちゃん口の周り汚れてますよ。ベルも上げるばかりじゃなくて気づいてあげてください」
「………すまん」
「うみゅ……」
レフィーヤが口の周りを拭いてやる。直ぐに綺麗になり元の青白い頬をさらす。
「ありがとうおかあさん!」
「………へ?」
「……あ!」
無意識で言ったのだろう。気づいて、慌てて口を押さえるウィーネ。
「あ、えっと……気にしないで。私も昔先生をお母さんって呼んだりしちゃいましたし……」
「ああ、俺も校長を爺ちゃんって呼んだりしてたっけ……」
と、懐かしむベル。二人が気にしていないことが解ったのか安心して二人の手を繋ぐ。
「……………」
チラリと、レフィーヤはベルを見る。彼のことだ、どうせ気にしてなどいないのだろうが………。
「……………」
耳を赤くして、顔を隠すように口元に手を当てていた。そんな姿を見て、レフィーヤの頬がさらに熱くなり隠すように顔を逸らす。
「………むぅ」
「良いの、アイズ?」
「流石に、あの空気を壊すのはどうかと思う……」
何時話しかけるかと機会をうかがっていたアイズとティオナが呟く。と、その時笛のような音が響き夜空を切り裂く光の線が天に昇る。
「……わぁ……」
ドォン、と夜空に光の花が咲く。何時見ても、やはり綺麗だと思う。
「………おー」
花火を見上げ口を大きく開けるウィーネ。花火を見るのは初めてだろう、他の
「………なぁ、レフィーヤ」
「はい?」
「……ありがとな。お前がいなけりゃ、お前があの時、前を向けない俺の手を引いてくれなけりゃ、きっと今はなかった」
「………別に、貴方がまた下を向いたら何度でも手を引いてあげますよ」
「ありがとう。助かる」
「……………」
「…………」
再び夜空に咲く光の花を見つめるレフィーヤとベル。
花火が昇る度に、咲く度に時間が動いていることをいやでも意識してしまい、少し恨めしい。この時間が止まってしまえばいいのに。そう想いベルを見る。彼も自分と同じ願いを持ってくれないだろうかと願いながら。
「ベル───」
願っているが、口に出すのは恥ずかしい。だから音に隠してその言葉を伝える。隠しておきながら、聞こえてほしいと願いながら。
「──大好きです」
その言葉は、狙い通り音に飲まれ消えていった。
さて、ドラマCDネタや原作世界に行く話とか作るか