ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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番外の章 正史クロス⑦

 『神堕ち』。嘗ては神として崇められ、しかしその在り方を反転させ何時しか信仰を忘れ去られ、それでも暇つぶしに無念のまま果てる英雄を求めて英雄が生まれる世界と、その世界に住む英雄の素質を持つ者と自分が干渉を行える此方の世界でいて、その素質を持つ者と魂の質が似通っている者を探し、『ベル』()をこの世界に送り試練と称し己の操り人形にしようとした神。

 大神の加護。そして、元向こう側の魂である『ベル』の魂により開いた穴から雷撃を受けた神がなぜ此方にいるのか、それは解らない。一つ解ることは、この世界に向こうが干渉しているのだから、此方からも干渉できると言うこと。

 

【目覚めよ】(テンペスト)

 

 『アイズ』の詠唱と共に大気が揺らぐ。風を纏った剣を振るえば、神風が斬撃となり『神堕ち』に当たる。

 

『おおあああっ!!』

「───硬い」

 

 鎧殻に傷は入れた。しかし両断するには至らず───。

 

『【死者よ来たれ】──』

「!? 詠唱……、モンスターが!?」

 

 『神堕ち』が紡いだ言葉にベルが目を見開く。

 

『【(しん)()(しん)()(しん)()の兵なる者よ集え。代行者の名において命じる与えられし我が名は死の神(イザナミ)冥府()の化身死者()女王(お う)】』

「させるかよぉ!」

「さっさと死ね!」

 

 『ベート』とベートが体を駆け上り人型に向かって蹴りを放つ。ドォォンッ! と爆音が響くも、それぞれの蹴りを片手で止めていた。鎧殻並みの防御力を持っているらしい。

 

『【ヨモツシコメ】』

 

 魔法名が紡がれる。同時にダンジョンの壁がひび割れ、そこから不気味なモンスターが現れる。

 体調4メートル程の、ぼろ布を纏った女型の巨人。その皮膚は黒に近い灰色で所々に穴が開き黄色い液体がボトボトと糸を引き落ちる。

 顔は空洞の眼孔、削ぎ落とされた鼻に唇。目の奥からは蛆虫がこぼれる。

 

「モンスターの召喚!? 魔法だけでなく? なんなのですかあれは!」

「この耐久値に魔法──本当に『精霊の分身』(デミ・スピリット)みたい」

「だけど、負けないよ」

「うん」

 

 『リリ』が驚く中、アイズ達は同時に風を纏った剣を振るう。と、『神堕ち』を守ろうと現れたモンスター──ヨモツシコメが立ちはだかる。風に切り裂かれ肉片が飛び散る。胸が大きく抉れ肋や内臓が剥き出しになるも耐え、襲ってくる。

 予想外のタフネスに目を見開く中さらに2体迫ってくる。

 

「『リリ』ちゃん! あたし!」

「おっけー!」

「解ってます!」

 

 『ティオナ』の言葉にティオナと『リリ』が駆け出し三匹のヨモツシコメの顎を各々の獲物でたたく。大きく仰け反り首筋の穴からブシュブシュ半透明の黄色い液体を零れさせるヨモツシコメ。体にかかり不快そうな表情を浮かべる三人は、しかし直ぐに驚愕の表情を浮かべる。

 

「───っ! これは──!」

能力低下(ステイタスダウン)!?」

 

 武器が重くなる。脚が、思うように動かない。力と俊敏が明らかに下がる。にちゃぁと不気味な笑みを浮かべたヨモツシコメの腕が振るわれ、固い地面を何度も跳ねるティオナ。

 

「いったぁー!?」

「───ッ!!」

「とと、大丈夫あたし!? わわっ!」

 

 『リリ』は戦闘中に力も俊敏も上がり続ける《スキル》を持ち、『ティオナ』はティオナより能力値(アビリティ)が高めだ。ギリギリで回避しもう一人の自分を心配する『ティオナ』にヨモツシコメが追撃する。腕の穴からもビチャビチャと零れる黄色い液体。触れたくない。直ぐに距離をとる。

 

「いつつ………気をつけて『あたし』! そいつ等、耐久も下げるよ」

『エエェェェェェェッ!!』

『エエエエエエエ………』

 

 ティオナの忠告とともにヨモツシコメ達は一斉に向かってくる。弱体化能力を持ち、本体も頑丈、厄介極まりない相手だ。距離をとり、『アイズ』達魔法の使い手に目を向ける。

 

【轟け】(ブロンテ)

「「【目覚めよ】(テンペスト)」」

「解放!【ヒュゼレイド・ファラーリカ】!」

「【ファイアボルト】ッ!!」

 

 詠唱要らずの雷が一体の落ち穴から溢れる液体を伝い内部を焼く。超短文詠唱の【エアリアル】が二つ揃って暴風の刃となり一体の両腕を切り裂き、炎の雨が降り注ぎ数体が悲鳴を上げ、『神堕ち』に向かい炎雷が飛ぶ。

 しかし一級冒険者の蹴りを防ぐだけあり、効いた様子はない。堕ちたとはいえ上位世界の神。強い。

 

『【崩壊よ、来たれ──】』

 

 また、新たなる詠唱。阻止しようとした『ベル』に炎に包まれた腕が伸ばされる。見た目すでに死んでいるだけあり、これ以上死なないのではないかと舌打ちしたくなるほどしつこい。が、遅い。パリ、っと『ベル』の身体を雷光が走り、次と瞬間には『神堕ち』の口を蹴りつける。

 

『────ぎひ』

「────っ!」

 

 その蹴りを、咥えられる。鉄板仕込みの靴をかみ砕こうとする『神堕ち』の喉を蹴りつけ脚を抜く。

 

『【雷よ来たれ、炎よ来たれ。我が頭から轟雷我が胸から炎我が腹から黒雲我が性器は裂け我が左手は静寂し我が右手は地に落ち我が左足は悲鳴を上げ我が右足は暗雲に潜む】』

「攻撃を止めんな! こいつぁ59階層のより脆い!」

 

 ベートが叫び『ベル』はヨモツシコメ達を避けながら雷を放つ。が、耐え詠唱を紡ぐ『神堕ち』。

 

『【代行者の名において命じる与えられし我が名は死の神(イザナミ)冥府()の化身死者()女王(お う)】【ホノイカズチノオオカミ】』

 

 再びダンジョン各所に罅が入る。また召喚系の魔法かと舌打ちする『ベル』。現れたのは八体。

 腐った頭に燃える肉の塊と黒雲を纏った内臓を寄り合わせたかのような不気味な蛇。黒雲の中に何かが潜み頭と放電する縦に裂けた口を持つ獣と五つの首を持つ蛇が二匹に蛞蝓のような肉の塊。

 そのどれもが雷を放ち『ベル』が忌々しげな顔をする。これでは雷速移動が出来ない。レールがかき乱される。だが───

 

【従え】(ブロンテ)

 

 その雷の支配権を奪い取る。空間に満ちる雷が収縮し、ヘスティア・ソードを核に巨大な槍の形を取り、しかし直ぐに剣の形となる。

 

「アダマント!」

 

 雷の大剣が振るわれる。ヨモツシコメ達が盾となり、消し飛ばされる。しかし同じ雷属性。ホノイカズチノオオカミ達は耐えきり、『ベル』に通じないと理解したのか他の面々に向けて雷を放ち『ベル』には燃える肉塊が迫る。

 

「ちぃ!」

 

 『ベル』が【ブロンテ】を放つ。と、纏っている炎が激しく燃え上がり『ベル』に襲いかかる。

 

「────ッ!?」

『エエエエエエェェェッ!!』

 

 肉の塊。よく見れば大きな二つの袋のようなものと一回り小さい袋の固まりだ。一つの袋がドクンと脈打つと二つの袋が膨らみ、雷が放たれる。即座に操ろうとするも『ベル』の雷が相手の雷に振れた瞬間、激しく燃え上がる。

 

『ひははは! 馬鹿が! ああ、馬鹿だなぁ! そのまま燃え尽きろ!』

 

 肉の塊の名は『火雷神』。イザナミの胸から生まれた雷が落ちた後に生じる炎の神。着弾すると炎を放つ雷と、雷を受けると炎を強くする特性がある。

 

『ボオオオオオオッ!!』

 

 腸や胃が合わさった蛇のようなモンスターが吠えると黒雲が広がる。その中を高速で動き回る雷光が『ベル』に向かい───

 

「おらぁ!」

 

 『ベート』が蹴りつける。追撃しようとするも素早く、逃げられる。

 蛇の名は『黒雷神』。黒雲に潜むのは『伏雷神』。暗闇を生み出す神と黒雲に潜み雷光を迸らせる神だ。

 

「『レフィーヤ』! 凍らせろ!」

「は、はい!」

「え、えっと──【ウィーシェの名の下に願う】!」

 

 『ベル』の言葉に『レフィーヤ』とレフィーヤどちらも反応する。レフィーヤは詠唱を唱えようとするも『レフィーヤ』は保管していた魔法を放とうとする。Lv.5の『レフィーヤ』の最大魔法保管数は45。弾数は、まだある。何よりエルフの女王の魔法は常にストックしている。

 

「【ウィン・フィンブルヴェルト】!」

「───え?」

 

 詠唱無しで魔法を発動した? それも、こんな強力な魔法を?

 レフィーヤが驚く中突き進む吹雪は雲を氷の結晶へと変えていく。視界が晴れ黒雲の中から『伏雷神』が姿を現し狼狽える。すぐさま『ベート』が駆けた。が──

 

『エェエェェッ!!』

『オオオオオオッ!!』

 

 と、顔だけのモンスターと蛞蝓のようなモンスターが叫ぶ。顔だけの個体が『ベル』の【ブロンテ】にも見劣りしない雷を放ち蛞蝓が爆音を響かせる。『大雷神』と『鳴雷神』。雷の破壊力と爆音の化身。五首の蛇は『若雷神』と『土雷神』。雷が落ちた後の清々しさと雷が地面に戻る様の化身。

 

『シャアアア!』

 

 地面を這う雷が後衛を狙う。『ベル』が防ぐも、今度は雷が消え去る。『若雷神』の力だろう。

 

『【崩壊よ来たれ】──』

 

 再び詠唱が紡がれる。

 

「ッ! 【ウィーシェの名の下に願う。森の先人よ、誇り高き同胞よ。我が声に応じ草原へと来たれ】!」

 

 レフィーヤが慌てて詠唱を開始し『レフィーヤ』も保管していた魔法の解放準備を行う。

 

『【崩れる山燃える森沈む海割れる大地飲まれる川砕ける村八姫を喰らい酒に溺れる蛇を討ちし剣よその命を散らし新たなる剣をこの世に産め我が偉大なる力を示すために】』

「【繋ぐ絆、楽園の契り。円環を廻し舞い踊れ。至れ、妖精の輪。どうか──力を貸し与えて欲しい】」

 

 長文詠唱に加え、高速詠唱。此方の法則に縛られてはいるようだが、だからこそ長文詠唱はまずい!

 

『【炎のより英雄(かれ)を守れ草を払い風を司れ代行者の名において命じる与えられし我が名は嵐の神(スサノオ)崩壊(はかい)の化身天罰(はかい)(おう)───】』

「ッ! エ、【エルフ・リング】!」

 

 『神堕ち』の詠唱が完成し、ニィと人型の口が残虐に嗤う。

 

『【クサナギノツルギ】ッ!!』

 

 八首八尾の蛇の幻影が生まれ、その中央の尾の先端は剣のような形をしていた。破壊の剣が振るわれる。神さえも正攻法で倒すことを諦めた大蛇の体より生まれた剣が───。

 衝撃波が全てを破壊せんと迫る。

 

四重奏(カルテット)! 【ヴィア・シルヘイム】!!」

 

 エルフの女王の最強の防護魔法。それが四重。対するは日本神話において最強たる剣の一撃。一枚目がひび割れ、砕ける。

 

「レフィーヤ! 詠唱を続けろ!」

「ッ! 【舞い踊れ大気の精よ、光の主よ───】」

 

 レフィーヤの足下の魔法円(マジックサークル)は顕在。消える前に、詠唱を続けさせる。直ぐに行動に移すレフィーヤ。

 

「【森の守り手と契りを結び、大地の歌をもって我等を包め。我等を囲え】」

 

 二枚目が、砕ける。

 

「【大いなる森光(しんこう)の障壁となって我等を守れ──】────ッ!?」

『エエエエエエェェェッ!!』

 

 地面から黒雷神が飛び出してくる。狙いはレフィーヤ。しかし直ぐにベートと『ベート』が蹴りつけ『ベル』が首に切り込みを入れる。

 

「【ファイアボルト】!」

『イエエェェェェッ!?』

 

 傷口から進入したベルの魔法が弾ける。ゴバァ! と雲ではない黒い煙を口から吐き出す黒雷神に『リリ』のハルバートと『ティオナ』とティオナのウルガが挟むように叩きつけられ、傷口がブチブチ音を立て千切れる。結界の三枚目が砕けた。

 

「レフィーヤさん! 詠唱を!」

「ッ! 【我が名はアールヴ】!」

 

 詠唱の完成。四枚目は、すでにひび割れている。

 

「【ヴィア・シルヘイム】!!」

 

 四枚が砕けると同時に五枚目が展開する。罅が入るが、耐えきる。しかし魔力が持って行かれた。発動に魔力は消費しないとはいえ人類最硬度であろう結界を四枚同時に維持し続けた『レフィーヤ』と詠唱二つ分の魔力を消費したレフィーヤ。それを狙う雷神達の耳に、鐘の音が響く。

 ゴォン、ゴォンという二重の鐘。その音が聞こえたなら、『レフィーヤ』は恐れない。レフィーヤは奮い立つ。

 

「うおあぁっ!」

「らぁ!」

 

 純白の光を纏った英雄達の一撃がレフィーヤ達に迫った雷神達を殴り飛ばす。

 

「レフィーヤさん! 大丈夫ですか!?」

「『レフィーヤ』! 無事か!」

 

 二人のベルの言葉に、二人のレフィーヤは突いていた膝を地面から離す。

 

「当然です! あなたに言われなくても、やってやります!」

「『ベル』! 私は平気です! 今は、敵を────?」

 

 ふと、ダンジョンが揺れた。今の攻撃の余波? いや、違う。これは───

 『レフィーヤ』は知っている。レフィーヤは知らないが、ダンジョンが揺れる現象には覚えがある。それは漆黒のゴライアスが現れた時。ダンジョンが()()神の気配を感じたのだ。殺すために兵を送る。

 深層から離れ、地上に近い。故にそこまで強いモンスターを産めない。だが、破壊された規模からして雑魚では無意味だ。暫くモンスターが産めなくなるが辺りのエネルギー全てを使う。

 

「────コイツは」

 

 地面を砕き現れるのは漆黒の、巨大な骸。二本の角を生やした巨人の骨。37階層に現れる『迷宮の孤王』(モンスターレックス)ウダイオス。

 

『オオオオオオオオオオオオォォォォォッ!!』

 

 しかしその姿は【ロキ・ファミリア】が知っている姿と違う。『ベル』は知っている。

 

四腕(しわん)?」

 

 四本腕のウダイオス。赤い光が侵入者()を睨んだ。

アルテミス様とフィルビスをどうしよう

  • アルテミス様だけ救おう
  • フィルヴィスだけ救おう
  • どちらも救おう
  • どちらも救ってフラグを立てよう
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