ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
『オオオオオオッ!!』
『エエェェェェッ!?』
『アアアアアッ!!』
ウダイオスが叫ぶと同時に大量の
しかし漆黒の剣山の狙いはどうやらベル達ではないらしい。ホノイカズチノオオカミ達が刺される。打撃はそのぶよぶよした体に殆ど通じなくとも、斬撃、刺突の類は効くようだ。
「攻略法が解った──」
「だなぁ───アイズ、任せるぞ」
「こっちのリリも矢とか頼む」
そう言って異空間から無数の第一級冒険者用の矢を渡す。甲殻を持つ相手なら兎も角見るからに柔らかそうな相手だ。恐らく通じる。後数本の『クロッゾの魔剣』。
「お、大盤振る舞いですね。そちらの『ヴェルフ』様は同じファミリアではなかったのでは?」
「ああ、モンスターの素材と交換した」
『ヴェルフ』が『ベル』だけに安売りしているのか、最上級冒険者である『ベル』が稼ぎまくっているのか………両方だろうな。『クロッゾの魔剣』が如何に凄くとも、そもそも『ヴェルフ』が打てばその時点で一級の魔剣だ。
「解りました。やってみます」
「状況を見て行動しろ。雑魚が出来んのは、頭を使うことだ」
ムッ、と頬を膨らませるリリ。ベルも眉根を寄せ、『ベル』は笑う。
「やる気が出たか? なら行くぞ。ああ、それと縁が緑なのは全部防御用だからな」
「『ベル』ったら『ベート』の悪影響受けてない?」
『ティオナ』が呆れたように肩を竦める。挑発し、奮い立たせるその様はつい最近ツンデレであることが発覚した何処かの
『【死よ来たれ】』
「まずは──」
「あっちだな」
再び詠唱を開始する『神堕ち』。『ベル』はその口内に金属を亜音速で飛ばす。
「『ベル』。時間を稼げ」
「ん?」
「雷も炎も、結局は魔法みてぇなもんだ。だったら、全部食いちぎってやるよ」
獰猛な笑みを浮かべる『ベート』。ここで食い尽くすではなく食いちぎる、が実に彼らしい。『ベル』はヘスティア・ソードと牛若丸を構えると雷を纏い飛び出す。
現状雷神達に攻撃できるのは雷が効かない『ベル』か魔法を取り込む《フロスヴィルト》を装備したベート達。後は魔法の使い手のみだ。
「おい、お前まさか───」
「あぁ?」
「使うのかよ……」
ベートの言葉に『ベート』はその速度で雷神達を翻弄する『ベル』ともう一人の自分に負けぬよう炎雷を放つベルを見る。そして、はん、と鼻を鳴らした。
「くだらねぇ……」
「何だと……?」
「目を逸らそうが否定しようがよぉ、
「──────」
本音を言えば『ベート』とて最近まで目をそらし続けていた。説教など出来るものか。しかし、『ベート』の側には自分と同じぐらい、あるいはそれ以上に過去を引きずり壊れそうな馬鹿を見つけた。不意に『ラウル』達が勝手に広めていた愛称を思い出す。
「無茶ばっかする馬鹿がいると、兄貴は大変なんだよ」
「───兄、貴?」
「てめーにだって覚えはあるだろ」
そう。ベート・ローガは確かに兄だった。既に死した妹がいた。妹のように思っていて、いまは一人の女として見ている少女をみる。モンスターの群に突っ込む無茶ばかりする少女。
「───ああ、いや………
『ベート』はそう言うとベル達を指さす。
「このままだとてめぇ、あの兎どもより
「────っ!」
ビキリとベートの額に青筋が浮かぶ。
ふざけるな! 弱いだと!? 否、自分は強者だ。喚き散らして殺されて、守れず失う『弱者』ではない!
「
──ベート、忘れるなよ。何時だって
ああ、なるほど。此奴はやはり自分のようだ。
「「【戒められし、
故に意図せず同時に、その詠唱は紡がれる。
「「【
魔力を感じたのか、雷神達がベート達に迫る。魔法を使わせない、という知能はあるようだ。『神堕ち』はウダイオスとやりあっていた。神を殺すために送られたウダイオスに取って優先順位は一に『神堕ち』。二に人類のようだ。
「「【癒せぬ傷よ、忘れるな。この怒りとこの憎悪、汝の惰弱と汝の烈火】」」
と、迫り来る雷神達の前に白き光を纏った未熟な英雄と怪物達の英雄が現れる。
「【ファイアボルト】」
「おらぁ!」
炎の矢と純白の閃光が雷神達を焼き、振るわれたナイフがうち一体を切り裂く。切り裂いたのは『若雷神』。これで、雷が無効化されることはなくなった。
「「【
『ぬ!? ちぃ、しぶとい奴らめぇ!』
『オアアアアアッ!!』
『貴様も、邪魔だ!』
雷神達が満身創痍。それに気づき憎々しげな声を上げる『神堕ち』だがウダイオスはそんな事知ったことではない。『神堕ち』は怪物の体を防御に回し人型の口が詠唱を唱える。
『【死よ来たれ】!』
「「【傷を牙に、
『神堕ち』の詠唱が紡がれる。また何かを召喚する気だろうか?
『【炎に焼かれし
「「【解き放たれる
雷神達が焼けただれた身体で向かってくる。しかし焼けた肌から溢れる雷は目に見えて減り、『ティオナ』達が迫る。今はずっと戦闘中。上がり続けた《ステイタス》で、Lv.3の上位にも匹敵する速度を得た『リリ』が真っ先に接近する。『土雷神』が地面を這う雷を流すが上に飛びハルバートを投擲する。投擲槍のように飛んでいったハルバートが深々刺さり悲鳴を上げる五首の蛇は仕返しとばかりに首を絡みつけようとのばす。或いは巨大な手が小さな少女を握りつぶそうとしているようにも見える。
「させませんよ!」
リリが放った魔剣が蛇の首を凍らせ、『ティオナ』達のウルガが『土雷神』を砕いた。
『【死を喰らい死者となれ!代行者の名において命じる与えられし我が名は
「「【その
『【ヨモツクニ】!』
「「「────!?」」」
がくりと、力が抜ける。ウダイオスもその巨大な腕が地面をつく。
名前の通り、まるでこの世に死者の国を呼び寄せたかのような魔法。しかし───
「るおおおおおおおっ!!」
「おおおおおっら!」
二匹の狼は
炎に包まれた
隠れる雲を失い狼狽える『伏雷神』が二本の牙に焼かれた。
「【砕け散れ邪法の理】【アンチ・カース】!」
『おおおお!?』
バキン! と金属が割れるような音が響き【ヨモツクニ】が砕け散る。
同時に精神呪縛系効果があった為制裁が行われる。堅い甲殻がひび割れる。『ベル』は飲んどけと
『オオオオオオオオオッ!!』
と、ウダイオスが叫ぶ。肩、肘、手首の関節が光る。『ベル』は知っている。『アイズ』とアイズも知っている。
「避けろ!」
「皆、離れて!」
狙いは『神堕ち』。攻撃を仕掛けようとしていた『ベル』とアイズが叫び直ぐにウダイオスと『神堕ち』の前から離れる。同時にウダイオスが4本の剣を振り下ろす。
『───────!!』
4つの衝撃波が合わさり巨大な衝撃波となり、残りの雷神達が消し飛び『神堕ち』に当たる。ひび割れた身体が大きく損傷する。
「あれはチャージが必要」
「───威力が、強い?」
「俺が知ってるよりもな……スパルトイが生まれてねぇ───スパルトイ産む分のエネルギーを強化に回したんだろ」
四腕のウダイオス強化種とでも名付けるか。
『おのれ! おのれおのれおのれおのれぇぇぇぇっ! 忌々しい、下位世界の物の怪風情がぁぁ!』
と、ゴォォン、と鐘の音が響く。
「おいベル、やれるか?」
「もちろん!」
ゴォォン、ゴォォンと鐘の音が響く。
『【日輪よ来たれ空に浮かぶ火よ黄泉の穢れを浴びし左目から
『────オオオオオオオオ』
『神堕ち』が詠唱を唱え、ウダイオスが関節に魔力を溜める。
『【宴に誘われ姿を見せよそこに生まれしは美しき神その姿を見るために現れよ】』
その間も鐘の音は響く。『ベル』とベルは腰を低く構え、己の獲物に手を握る手に力を込める。
『【その神こそは汝の鏡像日輪たる汝の姿】』
『────オオオオオオオオオッ!!』
『【ヤタノカガミ】』
全てを破壊せんと迫る衝撃波。『神堕ち』の頭上に現れた巨大な鏡。二人のベルが駆け出したのは同時。
ベルの眼前には地面を砕く衝撃波が迫る。が───
「
アイズがベルに全力の付与を行う。風がベルの身体を覆う。衝撃波を流す。古代、精霊が英雄に与えた
『─────!!』
「ああああああああああああああああああああああああっ!!」
己が身体を槍として放つ一撃。ウダイオスが慌てて剣を構えようとするが、遅い。既に兎の牙は胸に迫る。漆黒の肋がひび割れ、嘗てその化け物を討った少女の風が亀裂を広げ、砕く。剥き出しになった魔石に神のナイフが突き刺さる。
「【ファイアボルトォォォ】」
『オオオオ────ッ!!』
ビキィ! と亀裂が走り、亀裂から炎が噴き出す。一拍おいて、魔石が砕け散った。
一方『ベル』。巨大な鏡に女が映ったのが見えた。美しい女だ。まるで日輪のよう。しかし死神を思わせる何処か残酷な笑みを浮かべる。
「
ああ、何で自分の魔法は光か炎なのか。『レフィーヤ』の頭にそんな考えが過ぎる。力を貸すのは、自分の魔法ではない。借り物の、美しい同胞の魔法。白き雷霆。狙いは『神堕ち』ではなく、『ベル』。
「
白き雷霆は『ベル』の纏う雷に取り込まれ、片手に持つヘスティア・ソードに集まり純白に輝く雷の槍を生み出す。
『消し飛べぇぇぇぇ!』
鏡面が輝き極光が放たれる。
「
同時に『ベル』も、槍を放つ。日輪の神と大神にして雷神である祖父の力を継ぎし槍がぶつかり合う。光が、雷が周囲に拡散に地面を、天井を、壁を焼く。やがて、光の奔流と雷の槍……そのどちらも消え去る。
『────【
短文詠唱。『ベル』の通常攻撃で、自分に大したダメージを与えることはできない。この勝負、自分の───
「死ね──」
『───!?』
【ヤタノカガミ】と撃ち合いはじかれた槍の核たる短剣が宙を舞っていた。『ベル』がその柄頭を蹴りつけ短剣を飛ばす。
『────は、はは──』
しかし刺さるには至らず。笑みをこぼす『神堕ち』。だが、目の前の相手が誰なのか、忘れていたらしい。ゆっくり重力に引かれ落ちようとしていた短剣の柄頭が蹴りつけられる。蹴りつけたのは、『ベル』だ。自身の世界においてベートや美の女神に仕える戦車すら超えオラリオ最速の座を手にした男がその速度を以て蹴りつけた短剣が胸に深々と刺さる。
『───か、あ──ま、まて………俺は、か──』
「じゃあな──」
『あああああああ──────!!』
バチリと紫電が弾けナイフを通して雷が『神堕ち』の体内を焼く。元異界の神とはいえこの世界にモンスターとして送られた存在。支配する法則は此方のもの。体内の魔石が砕ける。
『あ、ああ───いや、だ………死に、たく───な───』
その言葉を最後に、ボロリと崩れ大量の灰だけが残った。神を殺すダンジョンの使者と異界より来た神。奇しくも同じ人物に、同時に魔石を砕かれ灰となり朽ちた。
感想お待ちしております
アルテミス様とフィルビスをどうしよう
-
アルテミス様だけ救おう
-
フィルヴィスだけ救おう
-
どちらも救おう
-
どちらも救ってフラグを立てよう