ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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番外の章 正史クロス⑨

 ドロップアイテムとして大蜘蛛の甲殻とウダイオスの黒剣×4を手に入れた。

 

「どっちの魔石も上等だし、昨日の食費と今日の分も払えそうだな」

「いやぁ『ベル』様なら使い切りそうですがねぇ」

「…………」

 

 リリがからかうように言うと『ベル』の動きがふと止まる。気に障ったのだろうか?

 

「あ、あの…『僕』? リリだって、悪気があった訳じゃ───」

「魔法が待機状態になった」

「それって、例の【ワールド・ジャンプ】ですか?」

「ん。多分此奴を殺すことが、この世界ですべき事だったんだろ」

 

 何せ元々『ベル』の宿敵だ。それをぶち殺したことで、条件が満たされたと考えるのが妥当。しかし───

 

「そいつぁ自動発動じゃなかったのかぁ?」

 

 『ベート』の言うとおりだ。『ベル』の魔法は本人の意思を無視して勝手に発動してここに来たのだから間違いはない。それに待機状態と言っても『ベル』が起動できるわけでもなさそうだ。ふむ、と顎に手を当てる『ベル』。

 確か『その世界でやることが終わると10分後に移動する』という文があったはず。やること?

 

「…………あ。あった、やるべき事」

「やるべき事?」

「まだ金払ってなかった………」

 

 そう、『ベル』は昨晩豊穣の女主人で飯を食い、金を払っていない。金はきっちり払うべきだろう。この【魔法】、なにげに細かいこと気にするらしい。

 

「つまりお金払うまで帰れない、と?」

「わかりやすいねー」

 

 明らかな因縁の敵を倒して、そのまま去るのかと思えば金を払っていけ、と言われたような気分になる【魔法】に関する説明。何とも言えぬ顔の『レフィーヤ』と特に気にしない『ティオナ』。

 『リリ』はまあ変に律儀なところが『ベル』らしいと苦笑する。

 

「時にこの甲殻、もらって良いか?」

「ん? まあ、それ倒したのは『僕』だし………僕は良いけど」

 

 自身の宿敵である『神堕ち』の一部。自分を呪おうとしたクソヤロウを死してなおこき使ってやろうと、ベル達は見なかったがまるで鏡に映っていた日輪のように美しく死神を連想させた女神と意気投合しそうな残虐な笑みを浮かべる『ベル』に若干引きながらも他の皆さんは? と尋ねるベル。【ロキ・ファミリア】の遠征ならファミリアの物になるが、今回は同盟のようなもの。元々ここに来るまでに手にした魔石があるし、階層ぶち破ったモンスターに関する情報とそれを倒したという報告である程度入る。何より『ウダイオスの大剣』。これ一本でかなりの金になるだろう。仲良く【ロキ・ファミリア】×2と【ヘスティア・ファミリア】×2で割ればいい。

 

「んじゃ、取り敢えず帰るか」

 

 

 

 バベル、ダンジョンの出入り口に向かうと各々主神が居た。どうやら『神堕ち』がダンジョンに認識され起きた異変を察知していたらしい。

 事情を説明したいが、疲れたので休んでから、と『ベル』。他の一同も言葉にはしなかったが同じ心境。一度解散して、後日ギルドの会議室を借りることとなった。

 

「『ベル』君をその肉体へと転生させた異界の神、かぁ………信じ難いけど、嘘は言ってないみたいだなぁ」

 

 ヘスティアは『ベル』達の言葉に頭を抱える。なるほど、向こうの『ベル』は育ち方以前に中身がそもそも違ったのか。しかし難儀な生を背負ったものだ。

 元の性格上、『ベル・クラネル』の人生を奪ってしまったと己を責め立て英雄になろうとしていたらしい。その変な責任感と優しさは、なるほどベルそっくりだとヘスティア・ファミリアの一同は改めて彼が神に目をつけられ、『ベル・クラネル』の器に選ばれた理由を知る。

 

「なんというか、神らしい神だなぁ」

「せやなぁ。子供たちに感化されて大人しくなる前の神々は、まさに人の不幸より己の愉悦、やったしなぁ」

 

 ヘスティアとロキがはぁ、とため息を吐く。『ヘスティア』は「君も昔はそちら側だったろう」と言うような視線を向けていた。

 

「そいつが何故この世界に居たのかは不明だ。だが、やるべき事ってのは彼奴のことなんだろう」

「ん?せやったらそいつ倒した時点で帰るんじゃ………」

「まだ昨日のつけを払ってない」

「……………」

 

 魔法とは素質もそうだが、何よりも本人の心の在り方で発現する。ベルの『ファイアボルト』やリリの『シンダー・エラ』、ベート達の『ハティ』にヴェルフの『ウィル・オ・ウィスプ 』なんかはこれに当たる。

 ちなみにアイズ達の『エアリアル』や『ベル』の『エルトール』改め『ブロンテ』などは精霊の力を持つゆえの素質から発現した魔法だ。

 

「ベル君はどこの世界でも良い子だなぁ」

 

 世界を移動する魔法、恐らく素質以前に彼の願いが関わっているのだろう。本人が意識していなかった事は勿論本人がやらねばと思ったことも組み込まれるとは。

 

「まあ、ミアからはよく休んで後日払いに来いと言われたが」

 

 まあまた移動して、その先に戦闘が待ってる、なんてことになれば最悪だ。もとの世界に帰ったとしても、掃除の続きが待っているし。休めるなら確かに休みたい。

 

「うっし! なら今夜は送別会や! そっちは奢るで?」

「俺達の分もか?」

 

 金に困っていないロキ・ファミリアならともかく構成人数2桁未満のヘスティア・ファミリアに金を払わせるのは気が引ける。今回の換金額なら昨日の分を払ってもお釣りは来るだろうが………。

 

「かまへんかまへん。ウチらは最大派閥やで? まあ、昨日の食いっぷりを見る限りは遠慮してくれると助かるけどな」

「ああ、それぐらいの良識はあるつもりだ……」

 

 

 

 そして、豊穣の女主人。

 

「はっはぁ! 流石やなぁアイズたん! 階層主もアイズたんの風の前ならガラス細工当然やな!」

「ううん。あれは、ベルも頑張ったから」

 

 ウダイオスの肋をアイズの『エアリアル』が砕いたと聞き得意げなロキ。それに対してアイズはベルが罅を入れてくれたからだと返す。

 

「すごかったよねぇ、アルゴノゥト君。あたし昔読んだ英雄譚思い出しちゃった」

「ああ、確かに精霊とその契約者みたいだったよねぇ」

「「「……………」」」

 

 ティオナ達の何気ない一言に数人が一瞬だけ固まった。何気に勘が鋭いのだ、この娘。

 

「でも、アイズさんは『付与魔法(エンチャント)』が使えて、羨ましいなぁ」

 

 と、不意に『レフィーヤ』が呟く。少し顔が赤い。酔っている。

 

「? 『レフィーヤ』も『アルゴノゥト』君と合体技してたじゃん。なんか、雷を使って」

「あれは『フィルヴィス』さんの魔法ですもん。残りのスロット2つも炎と光で埋まっちゃってますし、私が直接『ベル』の力になれてる気がしないんですよ」

 

 むー、と膨れる『レフィーヤ』。ここで何か言っても、慰めにならないだろと『ベル』は口を噤む。

 

「あはは。やっぱり『レフィーヤ』、『ベル』の事大好きなんだね!」

「「「ぶふっ!?」」」

「ちょ!?」

 

「…………」

 

 

 

 『ティオナ』の思わぬ発言に一同が吹き出し『レフィーヤ』が顔を真っ赤にして立ち上がり『ベル』は誤魔化すように酒を飲む。耳が赤いのは酒のせいではないだろう。

 

「………え………えぇ!? そっちの私が、『ベル・クラネル』を!?」

「ふええ!?」

「落ち着けベル。そっちのレフィーヤがお前を好きとは限らない」

「いや、そっちの私が貴方を好きなのは否定しないんですか!? 私からも何か───」

「───────」

 

 レフィーヤが『レフィーヤ』を見れば潤んだ瞳で視線を逸らされた。赤くなった顔を隠すように両手は頬に添えられているがエルフ特有の長い耳まで真っ赤になっている。

 

「あ、あの──」

「い、言えません───」

「へ?」

「その、嘘でも………『ベル』の事を好きじゃないなんて、言いたくありません………」

 

 赤くなった顔を隠したいのか両手で顔を隠す『レフィーヤ』。しかしエルフ特有の長い耳は先まで赤く染まりピクピク動いている。

 瞳は潤み、大変愛らしい。

 ロキ達はそんな『レフィーヤ』を見て、ポカンと呆け、『アイズ』はむぅ、とむくれる。 

 

「えっと……もしかして君達つき合ってるのかな?」

「付き合ってない」

 

 と、否定したのは『ベル』でも『レフィーヤ』でもなく『アイズ』だ。不機嫌そうに応えた。

 

「………な、なあ『アイズたん』……もしかして、『アイズたん』も『ベル』の事……」

「うん。好きだよ。大好き。恋人になりたい……でも、今付き合いたいって言っても『ベル』は私のこと、振るでしょ?」

「………ああ」

「ええ!?」

 

 『アイズ』の言葉にベルが叫び『アイズ』を見る。アイズもアイズで何とも言えない表情で『アイズ』を見ていた。

 

「そ、そんな勿体ない……」

「俺は『アイズ』より、『レフィーヤ』の方が好みだからな……」

「そんな、『ベル』ったら……」

「でも付き合ってないんですか?」

「………その、経験はあるが恋情自体は初めてで……」

 

 リリの言葉に顔を逸らす『ベル』。その顔は、此方のベルと良く似ていた。

 

「ま、まあでも! 向こうの『ヴァレン某』は向こうの『ヴァレン某』! 此方のヴァレン某がベル君に惚れるとは限らないから余計な期待はしないことだね!」

 

 と、ヘスティアが焦るように叫ぶ。

 まあ、理由はだいたい察せるが……。此方のベルもたいそうモテるようだ。『ベル』はうんうんと頷く。

 

「え、えっと………『私』は『ベル』が好き、なの?」

「うん。最初はお父さんの背中と重ねてた……」

「お父さんと……あ、覚えがある」

 

 アイズがポツリと呟くと聞こえたのかロキとヘスティア、ベートが勢い良く振り返る。混乱しているベルには聞こえなかったようだが。

 

「でも、そっちの『ベル』は『レフィーヤ』が……」

「? 『ベル』が誰かを好きだと、私が『ベル』を好きになっちゃいけないの?」

「えっ、と……そんなこと、無い……かな?」

「なら、問題ない」

 

 フィンとリヴェリアは目頭を押さえる。

 何というか、人間関係が大きく変わりそうな情報まで聞いてしまった。向こうの世界はあくまで向こうだが、文字通り自分自身達の人間関係、知りすぎれば此方にも影響があるだろう。

 

「……まあ、此方の人間関係で其方の人間関係をかき回すのは本意じゃない。掘り下げはその辺にしてくれるとありがたい」

「そう言ってくれると助かるよ……」

 

 

 

 

 

 翌日、昼となり再び豊穣の女主人。『ベル』は金の入った袋を抱えていた。

 

「世話になったな」

「そんな、いい刺激になったよ」

 

 『ベル』の言葉にベルはいやいやと首を振る。自分と全く同じ姿の人物が、自分より高みに居るのだ。負けてられない、そう思ったのは何もベルだけではないようだ。いい顔つきをしている。

 ベルがミアに金を渡すと足元に魔法陣が浮かび上がる。

 

「お、やっぱりこれか」

「真面目だなぁ、そっちのベル君」

「あと、責任感がちょっと強すぎたりするんだよね」

「そのせいでこちらは振り回されてばっかりです」

「でも、ずっと気を張ってた『ベル』が頼ってきてくれたのは嬉しかったよねぇ」

「それは、まあ………」

「言えてますね」

 

 金を受け渡ししたことにより魔法の条件が満たされる。それを見て呆れるんだか感心するんだかわからぬヘスティアの言葉に、『ヘスティア』が肩をすくめ『ティオナ』や『レフィーヤ』、『リリ』が笑う。

 

「じゃあな」

「うん」

 

 二人の兎が視線を合わし、笑い合う。よく似た二人は、まるで兄弟のようだ。『ベル』が片手を差し出せばベルはその手をパンと叩く。それと同時に魔法陣が強く輝き、光が収まると『ベル』達の姿は消えていた。




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アルテミス様とフィルビスをどうしよう

  • アルテミス様だけ救おう
  • フィルヴィスだけ救おう
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