ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「
バチリと稲妻が弾ける。
モンスター達は稲妻を纏った冒険者を殺そうと殺到し、見失う。探そうと首を動かせばズルリとその首が落ちた。
「んー………少し見える、かな?」
残像すら見えない高速移動。新たに得た発展アビリティ思考加速の恩恵か、色は何とか見えた。
呆然としていたモンスターの残りに突っ込む。慌てて振り返るモンスター。今度は超高速移動を行わず全て避ける。
「………よし、もう良い」
再びモンスター達の首が落ちる。それは並の冒険者なら反応できない速度ではあったが、今回は何の魔法もスキルも使っていない。
「じゃ、続けるかリリ」
「マジですか」
リリはうぐ、と呻いて起きあがる。
救ってもらった人。恋慕を抱いた人。そんな相手につきっきりで修行をつけて貰えると喜んでいた一時間前の自分を殴りたい。
考えてみればベルは8歳の頃から傭兵をしていたんだ。その戦闘技術は祖父から学んだとしても、戦闘経験は主に実戦なのだ。
リリは短剣を構える。重量系の武器に頼ればこの先戦えないからと言うベルの判断だ。
次の瞬間、ギリギリ視認できる速度で逆刃のナイフが迫る。
「くぅ!」
ナイフが弾かれクルクルと宙を舞う───事なくドサリと地面に落ちる。【ロキ・ファミリア】の武器庫に埃を被っていた逸品で、見た目の数倍は重い。
「ねえベル様、もっとこう……でっかい武器とか使わないんですか?」
「つってもそれだとお前頼りきりになるからな。オーク一匹相手ならそれでも良いけど、フィンが提示したのは中層でも生きれる技術だ。というわけでまず色んな武器を試す。まあスキルを活かしたいし基本的に重量系………次はこれだ」
「何でベル様と戦うんですか?」
「これでも結構な数と戦ってきたんだ。武器持って相対すりゃどの程度か解る。一番使いこなせるモノを選ぶ」
次はこれだと新しい武器を取り出すベル。
「はぁ~」
リリは浴槽の端に手をかけ体を浮かせながら伸ばす。容赦を知らないのかあの人は。いや、知らなかったら目で追うことも出来ずにやられるのだろうが。
「重量系を振り回すのではなく、使いこなす……最低ラインがそれですか」
因みにあのやけに重い短刀は無しになった。あの大きさで重いと重心が狂うとか………ベルは普通に使いこなしてたけど。
『技能習得と恩恵だな。ここにくる前、槍も剣も大剣もその場にある物で使えるもの全て使ってたから』
その経験が恩恵によって発展アビリティへと昇華した。故にあらゆる武器を一流に使いこなせるらしい。ただ、一番得意なスタイルは速さによる連続攻撃。
「あ、リリちゃん!」
「ティオナさん………」
「ベルと修行してるんだってね、どんな感じ?」
「基本的に実戦訓練ですよ。ベル様はモンスターが現れたらそっちを片づけて、その後またリリと特訓です」
勘を知ると言ってモンスターを倒す速度は段々と速くなっている気がする。まあリリには全く見えないのだが。特に雷となって移動した瞬間なんて気が付けばモンスターが細切れになっている。
「ね、ねえ………Lv.2になったベルってさ、やっぱり強い?」
「気になるなら見に行けば良いじゃないですか」
「うー……でも、今はリリちゃんとの修行だしさー」
いいなー、とふてくされるティオナ。代わってやろうか? いや、駄目だろうけど。
「でもリリ、あまり強くなれてる気しません。あ、別にベル様が教えるの下手というわけでは………」
「リリちゃんはさ、何で強くなりたいの?」
「え?」
「強くなりたい理由を、目標を見つけてみなよ。そうすれば強くなれるから」
強くなりたい理由?
そもそも修行を付けられているのだって【ソーマ・ファミリア】から脱退するための条件だ。理由、などと言われても……。
「………………」
前を行きモンスター達を切り裂くベルを見る。以前はあの光景にティオナも居たか。
追い付きたかった。共に戦いたかった。サポーターとして付いていくだけの自分に冒険者の才能があると言ってくれたあの二人に。
リリはギュッと手に力を込めた。
それなりに深く。12階層まで降りたベルはまず周辺のモンスターを破壊し新たに生まれぬよう地面を爆薬で破壊する。こうすることでダンジョンは修復を優先し暫くその周辺でモンスターを生まないのだとか。
「さて、んじゃ今日も………」
と、そこでベルは言葉を止め地面に耳を近づける。
「やっぱ少し待て。どうやら他の冒険者がでけーのに追われながら来る」
ベルが立ち上がり一方向を睨む。数人の冒険者が走ってきて、現れたのは体高150セルチ、全長4メドルを越す小竜。実質的な上層の階層主とされるモンスター、インファント・ドラゴン。ベルはすぐさま短剣を逆手に構え───横を通り過ぎた影に僅かに目を見開く。
「リリ?」
「ああああ!!」
ハルバードを構えたリリがかける。Lv.1が単身で挑むべきではない相手に、リリは逃げてくる冒険者達の流れに逆らうように挑む。
「オオオオオォォォ!」
「がぁ!」
吼える。吠える。
リリが振り下ろしたハルバードがインファント・ドラゴンの爪とぶつかり、一瞬だけ耐えリリの小さな身体が吹き飛ばされる。武器は、無事だ。
流石【ロキ・ファミリア】の武器庫。
「リリ、下がってい──」
「下がっていてくださいベル様!」
「何?」
リリの言葉にベルの足が止まる。リリに睨まれ、ベルが明らかに気圧された。
ねぇ、ベル様……貴方には解りますか。ゴライアスに単身で挑みに行った貴方を、見ているだけしか出来なかったリリの気持ちが。
頼られる可能性もない悔しさが。
頼られることなく安心してしまった不甲斐なさが。
目の前の敵は、ベルとゴライアス程の差はない。あの時のベルなら瞬殺は出来ずとも確実に勝っていたであろう相手。
だけど、相対するのは自分。これは、自分の冒険だ。
「グオオオオオ!」
「──ッ!」
吹き飛んだリリに脚が振り下ろされる。ハルバードの鉤爪を地面に刺し込み自分の軽い体重を生かして引き寄せるように引き、その場から移動する。
勢いそのまま突き刺さった鉤爪を起点に棒高跳びのように跳び、空中でクルリと回転すると地に足を着けハルバードを引き抜く。
「ガアアァ!」
「あああ!」
再び棒高跳びの要領で跳びインファント・ドラゴンの眼前に現れるリリ。一瞬驚愕したように仰け反るインファント・ドラゴンはしかしすぐさま大口を開け迫るがリリが力の限り振るったハルバードが頬に当たり仰け反る。
「オオォアアァァァ!!」
「あう!」
リリから逃げるように振り返ったインファント・ドラゴンは、逃げるでもなく尾を振るう。吹き飛ばされ地面を転がるリリはハルバードの先端を地面に突き刺しガリガリ削りながら止まる。
不意に思い出すのは【ロキ・ファミリア】の団長の顔。わざわざ条件に強くなることを付け足してきたいけ好かない相手。
(条件にするほど、リリは弱く見えますか!?)
いや、弱いだろう。自覚している。だが、弱いままで居るつもりはない。才能があると言ってくれた太陽のような少女のために、救ってくれた月のような少年のために。
目の前に居るモンスターは確かに壁だ。だが、越えるべき壁だ。
「リリの、前に………立ち、塞がるな!」
勢いよく地面を蹴り駆け出すリリ。振り下ろされる爪を、ハルバードで横に弾き逸らすとハルバードを短く構え回転する。インファント・ドラゴンの鱗が砕け幾つもの裂傷が刻まれた。
「───────!?」
悲鳴を上げ、前脚を持ち上げるインファント・ドラゴン。次の瞬間、地面を強く叩く。
「うっ!」
暴風と飛んでくる礫から顔を守るとその隙に近づいてくるインファント・ドラゴン。ハルバードを足に叩きつけるがそれほどの効果は見込めない。改めてウルガの異常性を思い返す。
「だから、どうしたぁぁぁぁ!」
専用武器を手に入れるのは後で良い。自分はまだサポーター上がり。冒険者を名乗るのも烏滸がましい。少し丈夫なだけの武器が手元にあれば良い。
インファント・ドラゴンの腕を駆け上る。狙うは顎下。柔らかいそこを斧が貫く。
「アアァァァァァァ!?」
鉄が突き抜けた口を開き叫ぶインファント・ドラゴン。リリは無理矢理引き抜くと傷口に手を突っ込み逆上がりするかのように体を動かし目を潰す。
「ガ───!?」
首を振り回すインファント・ドラゴン。しかしリリは離れず目に脚を突き刺したまま顎下からハルバードの槍の部分を突き刺す。
「アアア─────!?」
「あああああ!!」
ズブリズブリと骨の邪魔を受けず肉に沈んでいく槍。インファント・ドラゴンが暴れ、振り落とそうとするがリリは眼孔から脚を抜き両足を首に絡みつける。
「オオオオ!」
「あぐ!?」
リリを地面に叩きつけるインファント・ドラゴン。その頭部からハルバードの先端が飛び出してくる。それっきり動かなくなった。
「ぷはぁ!」
そのインファント・ドラゴンの頭を持ち上げリリが出て来る。血だらけになり、今にも気絶しそうだが頭の上に上りハルバードを抜くと、ゴルフクラブのように振るいインファント・ドラゴンの死体をひっくり返し胸を斧の部分で叩く。パキリと音が鳴りインファント・ドラゴンの死体は灰になって消えた。
残ったのは砕けた魔石のみ。灰の山の上でリリはハルバードを担ぎ直し魔石を拾うとベルに向き直り笑みを浮かべる。
「やりました!」
リリルカ・アーデ。ステイタス
『Lv.1→Lv.2
力:D505→I0
耐久:S999→I0
器用:S908→I0
俊敏:A884→I0
魔力:C792→I0
耐異常:I
《魔法》
【シンダー・エラ】
・変身魔法
・変身像は詠唱時のイメージに依存。
具体性欠如の際は
・模倣推奨
・詠唱式【貴方の
・解呪式【響く十二時のお告げ】
《スキル》
・一定以上の装備加重時における補正
・能力補正は重量に比例
・俊敏に大幅補正
・憧れの強さで効果上昇
・力に大幅補正
・憧れの強さで効果上昇 』