ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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頂に立つ者

「ちゅーわけでベルっちとリリちゃんの二つ名決定を祝して、かんぱーい!」

「かんぱーい! じゃないよロキ! 何だよ、【暴殺者】(ストロング)【殺戮兎】(ヴォーパル・バニー)って!」

 

 リリの方はまだ良い。だって【ロキ・ファミリア】だし。けどベルは自分の大切な眷属(家族)なのだ。なんでこんな惨いことに、と涙を流す女神。しかしその涙は力無く床で弾ける。

 神々のセンスを理解できない者達は首を傾げていたが。

 

「つーか主役のベルっちは何処行ったんや?」

「そ、それが……昼頃ダンジョンに向かって帰ってきてないんです」

 

 ロキの言葉に最後の目撃者であるリリがおずおずと手を挙げる。

 

「ダンジョンに!? 大丈夫なのかい!」

 

 Lv.が上がって、強くなった力を過信して深く潜り命を落とすというのは良く聞く話だ。それを思い出したヘスティアはリリを掴みガクガク揺する。

 

「わ、わわ!?」

「落ち着けヘスティア、ベルっちも馬鹿じゃあらへん。逃げる時は逃げる」

「でも、ベル様一人で階層主に挑みましたよね」

「う、それ言われると……」

 

 と、ロキが口ごもった時ギィ、と音を立て酒場に新たな客が入ってくる。その客の持つ()を見てシルが目を見開いた。

 

「ベ、ベルさん!?」

「「「!?」」」

 

 シルの言葉にロキ、ヘスティア、リリ、店員達が振り返る。そしてやってきた客に気付き目を剥く。

 

【猛者】(おうじゃ)……オッタル」

「ベルさん、しっかり!」

「にゃー! 少年の形の良い尻は形を保ってるのにゃ!?」

「黙りなさい! それより、誰かエリクサーを」

「ベル君! どうしたんだいその傷!」

「ちょ、ベル君をこんなに……一体どんなモンスターが……」

「俺だ」

 

 ヘスティアの言葉にズン、と響くような声が返され、店に響きシン、と静まりかえる。ロキが薄目を開きヘスティアがオッタルを睨む。他にも何か叫ぼうとしていた者達は二人から放たれる神威に圧され口を開くことが出来ない。普通そうだ。が、目の前の男は普通ではない。

 

「最短でLv.2になった男に興味を持った。だから試した」

「ほう……フレイヤの指示かいな」

「いや。あの方は俺に物を渡すように頼んだだけ。これは個人的な興味だ、見事と言えよう。俺に手傷を負わせたのだから」

「首のそれか?」

「これを手傷と呼んではベル・クラネルへの侮辱に当たる。此方だ」

 

 そう言ってオッタルが籠手をはずすとそこには痛々しい蚯蚓腫れがあった。その手も微かに震えている。

 オッタルが最後ベルを蹴ったのは、単純に今の腕では大した力が出せなかったからだ。

 

「さすがにこれでは剣も振るえん。大したものだ」

「それだけかい? ベル君をここまで傷つけて………」

「ああ。目が覚めたらこれを渡しておいてくれ」

 

 そう言って取り出したのは一冊の本。ロキはそれが何か見抜き、忌々しげに舌打ちした。

 

魔導書(グリモア)か……なめとんのか、それで手を打てと?」

「先も言ったようにこれは届け物だ。どう使うかはその少年に任せるし、これで許せとも言わん」

 

 それだけ言うと踵を返す。Lv.7のオッタルを前に誰も何も言えない………と思えば声をかける者が居た。

 

「おい」

「何だ?」

「あの女はまだ懲りずに男漁りをしてんのかい?」

 

 ミアの言葉にオッタルは振り返る。

 

「素質のある物を見つけ育てる。それがあの方の生き甲斐だ」

「そいつはそんな事望んじゃいないよ」

「どうかな。この少年の目は、力を求める者の目だ。感謝するかもしれんぞ」

 

 今度こそ店から出ようとするオッタルだが、再び声をかける者が現れた。

 

「………おい」

「もう起きたか」

「何時、か……勝つ………」

 

 その言葉にオッタルはフッと笑う。

 

「面白い。上り詰めて見せろベル・クラネル」

 

 

 

 

「あ、あの………ベルさんは………」

「ん? ああ、平気や。もう治って来とる」

 

 オッタルが去り、シルが恐る恐る尋ねると入口を睨んでいたロキがあっさり返す。こんなに酷い怪我なのに? と見れば火傷の殆どは治ってきていた。

 

「精癒のおかげやな。ベルっちは魔力か体力さえあればどんな傷でも治せるんや」

「そういえば片方の足、丸出しだね………まさか切り落とされたとか?」

「おお、美少年の足……ふへへ」

 

 と、クロエが涎を垂らしていると店の扉が勢い良く開く。

 

「神ロキ! 神ヘスティア! ベル君はいま………すね………良かったぁ」

 

 やってきたのはエイナだ。火傷も殆ど治ったベルを見てホッとする。が、ボロボロの服を見て慌てて近づき足に触る。

 

「良かった………ちゃんとある」

「なんやエイナちゃん。ベルっちの足でも見つけたんか?」

「あ、はい。実はダイダロス通りで仮面の集団が暴れているという報告があって、その後崩落したんです」

「崩落?」

「はい。どうやら地下空間があったらしく、原因不明の大爆発で………幸い仮面の集団からの避難で怪我人は居ませんでしたがダンジョンの隠し入り口らしきモノが見つかったり大騒ぎで…………あ! それで……その、ベル君と似たズボンに膝当ての足が見つかりまして」

 

 それは間違いなくベルの足だろう。が、言うと大変そうなので黙っておくことにした。

 

 

 

 

「はあぁぁぁぁぁ!?」

「なんやねんドチビ! うっさいわ!」

 

 殆どの面々が遠征に行ったためロキが直接文句を言いに行くとヘスティアはパクパク口を開けベルの背中を指さす。訝しみながらも覗いたロキは、固まる。

 

『Lv.2

 力:SSS1154

 耐久:SSS2204

 器用:SSS1508

 敏捷:SSS2312

 魔力:SSS1904

耐異常:E

精神安定:C

技能習得:B

鍛冶:E

精癒:I

幸運:I

思考加速:I

狩人:I

《魔法》

【虚像の英雄】(ベル・クラネル)

階位昇華(レベル・ブースト)

・発動対象は術者限定

・発動後、半日の要間隔(インターバル)

・詠唱式【呪われろ呪われろ偽りの英雄。救えもしない無力な力で試練に抗い煉獄へ堕ちろ】

【エルトール】

付与魔法(エンチャント)

・雷属性

・速攻魔法

【アンチ・カース】

・解呪魔法

・呪詛、結界魔法の破壊

・詠唱式【砕け散れ邪法の理】

《スキル》

【羨望一途】(リアリス・フレーゼ)

・早熟する。

・羨望の続く限り効果持続

・無力感を感じるほど効果向上

【英雄義務】(アルゴノゥト)

・敵対時に於けるチャージ実行権

【嫉妬の龍】(レヴィアタン)

・敵対時に於ける相手のステイタス一時簒奪

【操作画面】(メニュー)

・自己ステイタスの閲覧可能

・討伐モンスター図鑑自動作成

・マップ表示

・索敵

・アイテム収納空間作成

【不屈の闘志】(ベルセルク)

・肉体の修復

・体力、魔力を消費する 

【精神保護】(マインドブロック)

・精神への干渉を拒絶する

・術者との実力差によって変動

・受ける、受けない選択可能   』 

 

「またカンストしとる!?」

 

 いや、確かに早熟スキルを持ってはいるし暫く更新していなかったけど、数日だぞ!? いや、Lv.7のオッタルと戦い、なおかつ【羨望一途】(リアリス・フレーゼ)と合わさったと考えれば。

 それにLv.7とLv.2の戦闘なんて間違いなく特別な経験値(エクセリア)が手に入る、とそこまで考えロキはヘスティアを見る。ロキの言わんとしていることが解ったのかコクリと頷く。

 

「ランクアップできる………」

 

 

 

 

 ダンジョンの中で、ベルは荒れていた。

 僅か数日で次のランクアップ。偉業を通り越して異常な成長速度。

 普通なら喜ぶべきだろう。が───

 

──面白い。上り詰めて見せろベル・クラネル──

 

 それがまるでオッタルの慈悲で与えられたようで、一方的に打ちのめされておきながらその相手に良く頑張ったなと言われているようで酷く腹立たしい。一応ランクアップはしたが………

 

「………戻るか」

 

 そういえば赤毛の女に壊され胸当てと手甲は失ったけど膝当ては残っているからと使っていたのだが昨日片方失った。エイナが回収してくれた方の足のは無事だがオッタルから逃げ回っていた時付けてた方は完全に破損している。

 

「………新しいの買うか」

 

 そのためにも取り敢えず地上に戻るか、とベルは歩き出した。

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