ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

24 / 114
救出隊

「づ───」

 

 リリとヴェルフを抱えながら歩くベルは近付いてくる気配に鉛を核にした光線を放ち舌打ちする。

 直接雷を放つより魔力消費は抑えられるし、威力も高い。更には精癒を持つベルは魔力も自動回復する。

 が、こうも立て続けだと少しずつ削られていく。

 マップを持つベルなら階層移動は可能だ。出口を探して、そこに向かえばいい。それが出来ないのは爆炎を突き破り襲ってきたモンスターの群れのせいでバランスを崩し磁気が乱れ落下してしまい、その際に片足を折り頭を打ち気絶したヴェルフと、同じように頭を打ったリリを抱えているからだ。ポーションは怪我を治しても脳震盪による気絶までは癒さなかったらしい。

 虚像の英雄(理想のベル・クラネル)が囁く。頑張れと、救えと。

 生存本能が囁く。見捨てろ、生き残れと。

 

「どっちもうるせぇ……」

 

 ヴェルフもリリも自分の友人だ。原作でベル・クラネルがどう関わっていたかなんて知らない。ひょっとしたら自分は原作のベル・クラネルの真似事を知らぬ内にしているのかもしれない。だが、これは自分が選んだ選択。

 幻聴は黙っていろ。

 忌々しげなベルの言葉に幻聴は引いていく。ベルは歩みを止めず歩き出した。

 

 

 

「ベル君が帰ってこない!」

「落ち着けアホンダラ。ベルっちの恩恵は消えとらんやろ。リリちゃんもや……今動ける子で捜索隊は………だせんな。今残っとる子で中層を長時間探索できる子はおらん」

 

 と、悔しそうに歯軋りするロキ。ヘスティアは顔を青くしてどうするんだよー、と叫ぶ。

 ここで下手にギルドに依頼すれば【ロキ・ファミリア】の名に傷が付きベルを守る後ろ盾としての機能を損なうかもしれない。ゆえに冒険者依頼(ク エ ス ト)は最後の手段。

 

「同様の理由でウチは他のファミリアを頼れん。一応、フリーの冒険者を知っとるからその子に頼んでみる。ヘスティアも知り合いの神に頼んでみてくれ」

「わかった!」

 

 あくまで傘下のヘスティアが勝手に頼っているという体を取れば、【ロキ・ファミリア】の威光は消えない。消すわけにはいかない。ベルのステイタスは勿論、ロキが未だヘスティアに隠しているあの世界についても知られるわけにはいかないのだから。

 

 

 

 ベル達の捜索に集まったのは【タケミカヅチ・ファミリア】の面々だった。報酬はいらないそうだ。その理由はタケミカヅチとヘスティアが友神だから………ではなくベル達が帰れない発端であろう怪物進呈(パス・パレード)を行ってしまったのが彼の眷属だからだ。

 

「で、何でお前までおるんやヘルメス」

「外でも有名な【殺戮兎】(ヴォーパル・バニー)が恩恵を得てどの程度強くなったか知りたくてね。聞いた話じゃゴライアス倒したんだって?しかもLv.1の時に」

「お前まさかダンジョンに潜る気やないやろうな?」

「ロキ、その事で──」

「却下や。ダンジョンに入って()()()()どないする。お前だけやなくて、ダンジョンにいる全員が危険やぞ」

 

 ギロリと細い目で睨まれ言葉に詰まるヘスティア。が、隣に立つヘルメスを見る。

 

「ひ、一人か二人なら別に……」

「あほか。最悪ヘルメスは見捨てればいい。けど、お前は見捨てられん。ベルっちは自分が全部救えないと思っているからこそ見捨てるという事も知っとるが、出来る限り助けようとするし身内に至っては命を懸けて守る」

「あれー、俺見捨てられちゃうの?」

 

 と、おかしそうに笑うヘルメス。最終的には見捨てるだろう。ベルは身内には優しいが他人、特に悪人には容赦しない。ヘルメスは神がダンジョンに潜れば神本人だけでなく冒険者も危険と知りながら気になる冒険者を見たいと言うだけで潜ったのだから見捨てるときは見捨てる。

 

「わ、解ったよ………それで、ロキの呼んだ助っ人は?」

「私です」

 

 と、不意に後ろから声がかかる。振り向けば覆面で顔の下半分を隠したエルフが居た。

 

「おお、まさかこの子が出て来るとはね」

「クラネルさんは私の友の将来の伴侶ですし………それに、私を友と呼んでくれた」

「ちゅーわけでよろしく。腕は信用できるで」

 

 

 

 

「う、ん……」

「起きたか、リリ」

「ベル……?──!?」

 

 薄目を開け、すぐにバッと体を起こすリリ。

 

「……どのくらい寝てました?」

「二時間ほど」

 

 そう言ったベルには疲労が見える。よく見れば自分達とベルの体のあちこちに灰が付着していた。この状況で魔石を取ろうと出来るほどの余裕がありそうにも見えないし、魔石ごと破壊するような戦闘をしていたという事だろう。

 

「下ろしてください。戦えます」

「そうか」

「ここは?」

「17階層」

「────」

 

 その言葉で理解する。ベルは縦穴を通り、18階層へ、安全地帯へと向かっていたのだろう。下に行くほど強くなるモンスター達を一人で相手しながら。

 

「もうしわけありません、ベル」

 

 目は覚めた。体は動く。武器はある。だから───

 

「ぶぉおぉぉぉぉ!」

 

 と、飛び出してきた五匹のミノタウロスの群れの先頭にハルバードを投げつける。一瞬目を見開いたミノタウロス達だったが敵が得物を放した事に気づき、その得物を取ろうと手を伸ばす。が、その武器を掴んだのは大きく無骨な手ではなく小さな手。

 

「はぁぁぁ!」

 

 一瞬で距離を詰めたリリはハルバードに刺さったミノタウロスごと振るい、纏めて壁に叩きつける。壁に押しつけられた個体とその前の個体、2体が圧死し残りが押しのけようと仲間の死体を押す。が……

 

「ああああぁぁぁぁ!!」

「おおおおお!?」

 

 ミシミシと押される。この小さな体の何処にそんな力があるのか、やがて残りの二匹も押し潰され圧死した。

 

「はぁ───はぁ……」

 

 スキルにものを言わせた強引な戦闘スタイル。余計な体力を使ってしまったが、これは証明だ。戦えるという。

 

「──だから、ここから先はリリが守ります」

「ああ……」

 

 

 

 リリが戦闘を受け持ち魔力を回復して、そちらを【不屈の闘志】(ベルセルク)による身体維持に回したため疲労もだいぶとれてきた。が、不意にリリが違和感に気づく。

 

「静かすぎる」

 

 17階層の奥にいくほどモンスターとの接触が減っていった。今は気配こそするものの全く襲われない。

 やがて大広間に出た頃、その理由に気づいた。

 バキリ、と広間の壁が割れる。リリとベルはその光景に見覚えがある。ゴライアスが生まれようとしているのだ。

 

【穿て】(エルトール)

「オア!?」

 

 が、壁から生まれ出る前にオレンジの光線がゴライアスの胸に当たり押し戻す。背後でギチギチと音が聞こえ振り向くと片手を挙げたベルが居た。

 

「ッチ、この程度じゃ足らないか」

 

 そういって取り出したのはアダマンタイトの欠片。纏っていた黒紫のオーラがアダマンタイトの欠片を持つ手に集まり、黒い光線が放たれる。

 

「──ッ!」

「オア────!?」

 

 ドン! と大槌でも叩いたかのような衝撃波が周囲の大気を揺らし、ゴライアスの頭部が吹っ飛び『嘆きの大壁』の片側に巨大な亀裂が走った。

 頭部を失った巨人の体は壁により掛かるように倒れた。

 

「っ──まだ【英雄義務】(アルゴノゥト)を使うのは早かったか………行くぞ、リリ」

「は、はい……!」

 

 唖然とするリリの横を通り過ぎたベルを慌てて追う。その目を横目で見て思う。あれで、満足できないのか。どれだけ強くなりたいのだろう、この人は、と。

 Lv.が上がって、近づけた気でいた。実際はそんなこと無かった。

 

「でも………すぐに追いついてみせます」

 

 だって自分は、貴方の隣にいたくて冒険するのだから。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。