ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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遠征組との合流

「う、ぐ………」

 

 18階層に降りると今は『昼』だったのか明るい。その光に反応してヴェルフが起きる。

 

「ここは………そうだ俺は………ベル、リリ助、すまん!」

 

 と、目が覚め混乱していた記憶の整理がついたのかベルの背から飛び降り頭を下げた。

 

「判断を誤った。あれがなけりゃ今頃───!」

「ダンジョンに絶対なんてない。それに、あのままならヘルハウンドの火に焼かれそうになり結局制御をミスってた」

 

 そう返すベルは元気がない。ヴェルフはもう一度すまん、と呟きベルの背から降りて肩を貸す。と、そこへ足音が聞こえてきた。

 

「………ベル? リリ?」

「よぉ……アイズ」

 

 やってきたのは美しい金の瞳と金の髪を持った少女。アイズ・ヴァレンシュタイン。

 

 

「……っぷはぁ!」

 

 マジック・ポーションを浴びるように飲み魔力と体力の消費を抑えるため治癒を見送っていた細かい傷などを完全に治したベル。疲労も取れた。そんなふざけた体質(スキル持ち)のベルにフィンは苦笑する。

 

「便利なスキルだ、相変わらず」

「ちなみに最近気づいたがその気になれば便意もなくなる。腹痛くて戦えないとか笑い話にもならないからだろうな」

「……本当に便利だね」

 

 一通り笑った後、フィンは尋ねる。何故ここに来たのかと。ベルは余すことなく話すことにした。

 

 

 

 

「成る程。同盟相手の【ヘファイストス・ファミリア】の子とパーティーを組んだのか。しかし予期せぬトラブルで18階層に……ひとまずお疲れ様というべきかな?」

 

 ついでに復活したゴライアスを疲弊した状態で瞬殺することに何を言えばいいのやら。しかし、一つ気になる事がある。

 

「Lv.があがったというのは本当かい?」

「…………ああ」

「おい拗ねるな。私達は賞賛したいんだぞ」

「あの野郎に手傷負わせて、それで良くできましたってLv.上がって納得なんざ出来るか…」

 

 納得は出来ないがキチンとLv.を上げておく辺り、強くなることに余念がないのは見て取れる。リヴェリアは表情を曇らせた。同じような顔をしていた少女は無茶をして死にかけた。しかし大分丸くなった。

 だがベルはその時の少女より実力がある分………あってしまう分、何時か救助が間に合わないほど深くに潜り無茶をしてしまうのではないかと心配になった。

 

 

 

 その晩は宴が行われた。

 ベルの横にはリリが座り反対にはアイズが座る。

 

「………ベル、頑張ったんだね」

「……………Lv.の事ならよせ」

「あ、ごめん………えっと、じゃあ……今度は自分たちの力でここまでこれたんだよね。偉い」

「……………」

 

 頭を撫でてくるアイズに居心地悪そうに眉根を寄せるもしかし振り払わないベル。そんなベルを羨ましそうに睨むレフィーヤと男の団員達。しかし聞けば相手はLv.1の時点でゴライアスをぶっ飛ばすような化け物だ。故に誰もなにもいわない。ベートがいたら顔色うかがう雑魚は睨むことすら烏滸がましいと叫んでいたことだろう。

 

「あ、後ね……ベルのおかげで、今回は何とかなった」

「俺の?」

「うん。59階層にすっごく強いモンスターが現れたんだけど……フィンがね、ベルが頑張ってた時の話をしたの。そしたら、ベートさんもティオナもティオネもレフィーヤも、みんなすっごくやる気になって……あ、勿論私も。それで勝てたの」

「【ロキ・ファミリア】の主戦力が揃って辛勝? なんだそりゃ、どんな化け物が出た」

「ごめん。言っちゃ駄目って………」

 

 と、申し訳なそうな顔をするアイズ。そこへティオナ達もやってきた。

 

「何々何の話?」

「59階層に出たって言うモンスターの事だよ。詳しくは聞いちゃ駄目みたいだが」

「あ、それで思い出した。ねえねえベル、『アリア』って知ってる?」

 

 と、ティオナが尋ねるとベルは首を傾げる。

 

「『アリア』って、英雄譚好きなお前なら普通に知ってるだろ?」

「それはそうだけどさー」

 

 アリア。それは迷宮神聖譚(ダンジョン・オラトリア)に登場する風の精霊の名前。ティオナなら知らぬはずがないと思うが。

 

「でもアリアっていやぁ……爺ちゃんがおかしな事言ってたな」

「おかしな事?」

「精霊ってのは神々と同じで子を残せないはずだろ? なのに、アリアには人との間に娘が居るとか言ってたんだ」

「────っ」

 

 と、アイズが僅かに震える。ベルに視線を集めていた者達は気づかなかったがベルだけはその変化に気づいた。が、矢継ぎ早に質問される。

 

「それっていわゆる精霊の『血』を引いてるって事?」

「ベルのお爺さんってどんな人?」

「流石にあり得ませんよ。だって、精霊と人ですよ?」

 

 レフィーヤの言葉にだよな、と返すベルを見てアイズは何とも言えない顔になっていた。と、その時―――

 

「いやぁ、ゴライアスの死体ってでかかったね~。しかし誰が放置したんだろうね? おかげで儲かったけど」

 

 と、そんな声が聞こえてきた。

 

「おや? その白い髪に赤い目。もしや君が噂の【殺戮兎】(ヴォーパル・バニー)かな?」

 

 現れたのは帽子をかぶった優男と青い髪の女性、極東の服装をした男女に覆面のエルフだった。優男と青い髪の女以外には見覚えがある。確か、モンスターを押し付けようとしてきた一団だ。あれは切っ掛けにはなったものの彼等を追っていた群自体はベルが瓦礫の下に埋めたし特に思うことはない。

 青い髪の眼鏡をかけた女性はアイズと知り合いなのか視線で会話をしており、優男は………なかなか腹黒そうだ。関わらないのが一番と最後の覆面のエルフに視線を向ける。

 

「リュー……心配してくれたのか?」

「………友人ですので」

 

 と、ベルから視線を逸らすように横を見る覆面のエルフ、リュー・リオン。ベルの近くに座っていたティオナがムッと顔をしかめる。何処かで見たような、何処だっけ? 基本お馬鹿なティオナでは思い出せない。

 

「おいおい俺を無視しないでくれ」

「ああ、すまん。余り関わりたくないオーラを放っていたんでな」

「ズケズケ言うね………俺はヘルメス。君の救助を願い出た神様さ」

「本音を言え。嘘を見抜けるのが神だけの特権だと思うな」

「ふぅん…………ま、君の祖父の遣いさ。訳有ってあの人は今表舞台に出ないからね」

「爺ちゃんの? そうか、元気にしてるか? まああの爺がくたばる姿なんて想像できないが」

「それは同意するよ。ところで、【ロキ・ファミリア】の団長は何処かな? 取り敢えず話を通しておきたいんだけど」

 

 

 

「見つかった?」

 

 神ヘルメスからもたらされた情報にフィンは目を剥く。

 

「ああ。ダイダロス通りが数日前謎の崩落を起こしてね。その際、ダンジョンに繋がっているとされる扉が見つかったんだ。何か術式が設けられていて、開けることは出来ないけどね」

 

 付け足すなら扉を取り返そうとするかのように何度か襲撃があったらしい。理由は不明だが【フレイヤ・ファミリア】が対処し襲撃回数も減ったが。

 

「その襲撃者達も尋問するしない以前に捕まれば自らの命を絶つ。結局解らずじまいさ………強いて言うなら何人かは左目をくり抜かれているらしい」

 

 ダンジョンへと繋がる道。おそらく地下水道に放たれ怪物祭(モンスター・フィリア)に現れた食人花はそこから運ばれてきたのだろう。

 地下は迷宮となっており未だ全貌が掴めないようだが門の近くは大爆発でもあったかのように吹き飛び野晒しになっていたとか。

 

「【フレイヤ・ファミリア】か……ベルがダイダロス通りで襲われたそうだけど、その件と何か関係があるのか?」

 

 もっともあのファミリアが相手では深く探ろうとしても何も見つけられないだろう。よしんば見つけられたとしても美の女神に魅せられ何も出来なくなるのがオチだ。

 

「案外ダイダロス通りの崩落は【猛者】(おうじゃ)【殺戮兎】(ヴォーパル・バニー)の戦闘の余波だったりしてね」

「まさか。その地下迷宮はアダマンタイトの壁だったんだろう? その時ベルはLv.2だ。オッタルと戦っただけでそこまでの被害が出るものか」

 

 

 

 

「………………」

「どうしましたクラネルさん」

 

 いまいち信用できそうにないヘルメスの動向を探ろうとリューと散歩と称しながらテントの周りを気配を察知されないギリギリ音が聞こえる距離で歩いていると聞こえてきた会話に不機嫌そうな顔になるベル。

 またあの男の話だ。取り敢えず、ベルはあの男が嫌いになりそうだ。というか嫌いになった。彼処までボコボコにされて好きになる方が変だが。

 

「Lv.7、か………いや、彼奴の強さは単純なステイタスだけじゃねーか」

 

 それは解る。あれはれっきとした武だ。フィンやベート、アイズ達同様にステイタスを十全に使いこなす術を知る者の動き。恐らく恩恵を失った状態でもLv.2か3の中層には食い込める。

 

「クラネルさん?」

「………や、強くなりてーなって………」

「………なれますよ。その思いがあるなら、きっとなれる」

 

 リューはそう言って微笑んだ。

 

 

 

 リヴィラの街のとある酒場で、酒を飲み騒いでいる冒険者達は不意に止まる。なかなかの美人が入って来たからだ。が、男連れだと解るとチッ、と舌打ちする。

 顔のいい男だ。きっとさぞかしモテるのだろう。そんないけ好かない男が口を開いた。

 

「今この階層に、生意気にも世界記録(ワールドレコード)を塗り替えたルーキー【殺戮兎】(ヴォーパル・バニー)が来ている」

 

 ざわ、と反応する一同に満足そうにうんうんと頷く。

 

「付け足すなら、そんな彼は彼の有名な【剣姫】と仲良さげに話し【大切断】(アマゾン)にも抱きつかれていた。ついでに非童貞らしい」

 

 眼鏡の女性が呆れる反面男達の顔は憤怒に染まっていく。そして、男は()()の兜を取り出し机に並べる。

 

「悔しいだろう未だ独り身の男共よ。これはサービスだ、受け取るが良い!」




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