ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
『すいませんでした!』
と、数十人の冒険者が頭を下げベルに膝枕をしていたアイズが困惑する。と、覆面のエルフが説明してくれる。
「彼等は
エルフが指さした先には痣だらけになったヘルメス。先程ボコボコにされた男を引きずってきたエルフが更にボコボコにしていた。何でも冒険者達に姿が見えなくなる兜を渡したのだとか。
「何でそんなことを?」
「クラネルさんの実力を見たかったのだとか。とりあえず元凶なので痛めつけておきました」
「………そう。あのミノタウロスも?」
「彼が呼んだのはゴライアスでしょう。ミノタウロスはクラネルさんに執着していましたから」
確かに。と、アイズは気絶しているベルの髪を撫でる。
ついさっきまで戦っていたとは思えない穏やかな寝息だ。どこか満足したようにも見える。と、ゴライアスが落ちてきた衝撃で塞がれていた17階層への入り口が突如吹っ飛んだ。
「たくよぉ、何で道がふさがれてやがんだぁ?」
不機嫌そうに呟く声の主はベート・ローガ。封鎖された洞窟を蹴破りあん? と様変わりした18階層を見て首を傾げる。が、ベルを見て目を見開く。
「何で兎がここに居やがる!?」
「ベートさん静かに。あの、マジック・ポーションかエリクサーを下さい」
「あ、ああ………って、何でおめーが膝枕して頭撫でてんだ!」
「だ、駄目ですか?」
と、眉根を寄せるアイズにベートはぐっと言葉に詰まりその膝にいるベルを睨む。そして気付いた。片腕がなくなっており右腕も殆ど炭化している。
「………何があった?」
「
「はぁ?」
ざっくりしすぎていて訳が分からん。後でフィン辺りにでも聞いておこう。
「………アイズ・ヴァレンシュタイン………その、彼の髪は?」
「モフモフ。心地良い」
少し癖のあるベルの髪を撫でむふー、とどこか得意げなアイズ。覆面のエルフはそっと手を伸ばす。
「これは、なかなか………」
「気持ちいい?」
「あ、はい………」
「ほんとー? あたしも!」
と、ティオナも交じる。未だ眠るベルに複数の殺気が飛ぶ。その殺気に反応して突然目を開けたベルがナイフを投擲しようとして慌てて逃げ惑う男達。ベルはくぁ、と欠伸をする。
「………ベート、来てたのか」
「よお兎」
ベルは睨んでくるベートを一瞥した後、気絶しているヘルメスを見て無言で近づき───ナイフを刺そうとしてアスフィに止められた。
「い、いきなり何を!?」
「何って……殺すんだよ。理由は知らんが俺を襲撃してきた奴らに手を貸してたみたいだしあのゴライアス呼ぶ原因になった神の気配って此奴だろ?」
「そ、そうですが………躊躇いなく神を……」
「躊躇えば後々後悔する。此奴が今回の件を帳消しに出来るレベルで俺に報いるってんなら俺は何もしねーよ。被害者のリューと他の冒険者達に判断を任せる」
「私は既に制裁を加えました。他の冒険者達も、結果的に良いもんみれた、と……」
つまり後はベルを納得させる何かを用意するだけ。と、アスフィが口を開く。
「ヘルメス様は、アナタのご友人の足を治せる薬を用意すると────ヒッ!?」
申し訳無さそうにアスフィが言った瞬間、竦み上がる程の殺気を浴び顔を青ざめさせる。
「────まあ、考えてみれば爺ちゃんの知人だもんな。調べるまでもなく教えてもらえるか」
殺気が消え、漸く呼吸を行えるようになったアスフィは涙目になりながら必死に息を吸う。殺されるかと思った。
そもそも彼はダンジョンの無い、外で『英雄』と讃えられていた者だ。強いモンスターの討伐も、深層に向かったという実績も行えない外で讃えられる偉業はようするに、
「………もうやだぁ、この人についてくの」
何でこんな人物に自分の用意した英雄譚を歩ませられると思ったのだろうか。掌で踊らせようとしても、その掌を食い尽くされる未来しか見えない。
どこぞの女神のように道筋ではなく試練を用意するだけで満足できないのだろうか? 出来ないだろうなぁ。
荷物やテントを全て収納するベル。混雑を防ぐため幾つかの班に分かれて帰ることになった。
ベルは【タケミカヅチ・ファミリア】、ヴェルフ、リリ、アイズ、ヒリュテ姉妹、フィン、リヴェリア、ベート、ラウル、リュー、レフィーヤ、ヘルメス、アスフィの面々と帰る。
と、不意にベルが立ち止まる。ベルのマップを知るフィンが周囲に警戒しようとするとベルが突如壁を蹴り飛ばした。
「おい何やって………んだこりゃ」
突然の奇行に訝しむベートは崩れた壁の向こうから現れた穴を見て眉根を寄せる。
「未開拓領域? ベルのマップで把握したのか」
「───ッ! この匂いはぁぁぁぁ!!」
と、突然【タケミカヅチ・ファミリア】の
「……温泉か」
ベルはポツリと呟いた。