ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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主神と担当の説教

情け無いなぁ、そんなんで救えるの?

 

──黙れ──

 

黙らせてみろよ。これは君の勝手な妄想だ

 

──解ってる。けど、うるせぇ──

 

 知っている。解っている。聞かされただけのベル・クラネルという人物は、少なくともこんなことを言う人物ではないと想像できる。これは勝手な罪悪感。

 勝手に想像した理想に押しつぶされそうになっているだけ。

 瓜二つの少年が向き合う。首筋を隠すほど伸びた白い髪、睨み付ける赤い瞳と柔らかく笑う赤い瞳。

 そして片方の顔には傷一つない。それが彼の理想だから。何者にも傷つけることが叶わぬ英雄の姿だから。

 

──早く強くなりなよ?──

 

 虚像の英雄(ベル・クラネル)が嘲る。

 

解っている

 

 英雄を羨望する者(ベル・クラネル)が睨み付ける。

 夢は夢。やがて二人の影が佇む空間は闇に飲まれる。

 

 

 

「…………知らない天井だ」

 

 まさか自分がこんなテンプレを味わうなんてと思いながら上体を起こす。そして気付く。腕が治っていた。左肩は脱臼なので治癒してなかったが無理やりゴギャリとはめ込みグルグル動かす。少し違和感と痛みがあるが問題はない。

 

「あ、ベル君起きたの!?」

「…………エレナ」

「…………エイナね。全く、何時覚えてくれるのよ」

「必要があればな。換金はエイナ相手である必要もないし」

「それでも私はベル君の担当なの!解った?」

「………善処する」

 

 それ解ってない人が言う台詞だよね、と呆れるエイナ。ベルは無言で目を逸らした。ここはどうやらギルドらしいと理解したベルは立ち上がろうとしたがエイナがニッコリと黒いオーラを放ちながら此方を見ているのに気付いた。

 

「そ・れ・よ・り……聞いたよ?ミノタウロスと戦ったんだって?何でそんな無茶をするの!」

「英雄になるためだ」

 

 それだけ返す。エイナはムッと眉根を寄せた。

 

「良い、ベル君?冒険者は冒険をしてはならない。これは鉄則」

「冒険しなくちゃ強くなれない。だからそれは断る」

「断らない!命あっての物種だよ!」

「命なんて惜しくない」

 

 どうせ偽りの命だ。本物が為した救いを、一つでも行えるならこんな命惜しくはない。

 

「そんな事言って、本当に死んだらどうするの?」

「誰も悲しまないさ」

「私は悲しいよ」

「会ったばかりの一冒険者が死ぬのがか?」

「もう、ベル君はどうして自分の中の価値基準が低いかなー……」

 

 話してみて解った。彼は自分の命を本当に何とも思っていない。そしてそれは周りも同様だと考えている。

 

「少しはお姉さんの言うこと聞きなさい」

「は、お姉さん………?エルフって長命って聞いたからてっきりババ──」

 

 殴った自分は悪くない。決してだ。

 

 

 ベルは散々説教された後漸く解放された。いくらエルフが長命だからといって成長まで緩やかと決めつけるのは早計だったし、女性に年齢について触れるのはタブーだったかと反省した。そこだけは。

 ダンジョンに関しては反省する気はない。これからも潜り続けるつもりだ。

 ベルは立ち止まり脳内に操作画面(メニュー)を移す。ゲームのメニューのように浮かんだ画面からアイテム、武器を選択しマントの中に数本の投擲用のナイフと近接用のナイフを顕現させる。

 急に立ち止まったベルに周囲の視線が集まるが気にせず歩き出した。何時かアイテムの顕現を戦闘中に行えるようにしなくては。そうでなくてはまた今回のようなことになる。

 ひとまずの鍛錬目標を決めたベルは本拠である教会の扉を開ける。

 

「ベルくーん!」

「……………」

 

 ヒョイとかわすとすっころんだヘスティアは地面をズザー!と滑った。

 

「何で避けるのさ!?」

「疲れてるからな。もう寝たい。余計な体力を使いたくない」

「僕を抱き止めるのが余計だって!?」

 

 ガーッ!とほえるヘスティアにベルははぁ、とため息を吐く。

 

「抱きしめて欲しいならベッドの上で抱いてやる。だから寝かせろ」

「ふぇ!?べ、ベッドってそんな………って、寝るんかい!」

「そっちの意味で抱いてほしいのか?」

「ち、違わい!」

「なら寝るぞ」

 

 その後ヘスティアは思った。本当に寝やがったよ此奴、と。しかしまあ、初めての眷属に抱き締められて眠るのは悪い気はしなかった。次の日、早速ステイタスを更新することにした。

 

 

 

 

「はあー!?」

 

 ヘスティアは書かれたステイタスを見て叫ぶ。現状のステイタスは

 

 

『Lv.1

 力:H102→D502(+400)

 耐久:G207→S912(+705)

 器用:H152→D561(+409)

 敏捷:F362→A872(+510)

 魔力:F305→S905(+600)

対異常:F

精神安定:D

技能習得:C

鍛冶:E

《魔法》

【虚像の英雄】(ベル・クラネル)

階位昇華(レベル・ブースト)

・発動対象は術者限定

・発動後、半日の要間隔(インターバル)

・詠唱式【呪われろ呪われろ偽りの英雄。救えもしない無力な力で試練に抗い煉獄へ堕ちろ】

【エルトール】

付与魔法(エンチャント)

・雷属性

・速攻魔法

《スキル》

【羨望一途】(リアリス・フレーゼ)

・早熟する。

・羨望の続く限り効果持続

・無力感を感じるほど効果向上

【英雄義務】(アルゴノゥト)

・敵対時に於けるチャージ実行権

【嫉妬の龍】(レヴィアタン)

・敵対時に於ける相手のステイタス一時簒奪

【操作画面】(メニュー)

・自己ステイタスの閲覧可能

・討伐モンスター図鑑自動作成

・マップ表示

・索敵

・アイテム収納空間作成

【不屈の闘志】(ベルセルク)

・肉体の修復

・体力、魔力を消費する』

 

 通算ステイタス2624アップ。オマケに新たなスキルまで。これも【羨望一途】(リアリス・フレーゼ)の影響だとでも言うのだろうか?

 ていうか何だこのスキル、どんな体験したら目覚める。

 

「………ベル君、今回なんか大怪我した?」

「ええっと………ミノタウロスに左肩外されて右腕折られた。流石にまずかったな……次からは効果の高い回復薬持ってかねーと」

 

 成る程。戦えない状態になって、それでも諦めない意志が新たなスキルを……なら納得………

 

「するか!何だよミノタウロスって、戦ったの!?」

「ああ」

「何で!?そんなに深く潜ったの!?」

「いや、七階層に上がってきた」

 

 だから俺は悪くないというベルになら逃げろと叱るヘスティア。君が死んだら悲しいよと言うとベルはぐっと言葉に詰まった。

 

「…………気をつける」

「そうしてくれ……はい、これが君のステイタス」

 

 【羨望一途】(リアリス・フレーゼ)の部分だけ消しベルにステイタスを渡すヘスティア。

 他のスキルもだが、このスキルは特に娯楽に飢えた神々の目につくだろう。と言うかLv.1の時点で発展アビリティがあるのもおかしい。

 いや、今までのベルの人生を考えれば神の恩恵(ファルナ)を刻むこと自体がランクアップと見なされたと判断すればギリギリ………。

 

「ま、兎に角ベル君。暫くダンジョンは五階層以下に潜るの禁止。破ったら一年は更新してあげないからね」

「………解った」

「神に嘘は通じないよ」

「……………………解った」

「よろしい」

 

 流石にステイタスが上がらなくなるのは困るので、素直に従うことにした。

 

 

 

 仕方ない、今は金集めに専念しよう。

 昨日の件で解ったが、下に向かえば向かうほど堅い武器が必要になる。鍛冶師擬きの自分が作る剣ではやがて限界がくるだろう。

 と、ダンジョンに向かいながら思考するベル。そんなベルに声をかける者がいた。

 

「あの、これ落とされましたよ?」

「………………」

「え、あれ……ちょっと!?」

 

 振り返った先に居たのは銀髪の女性。彼女が持っていたのがナイフなら立ち止まったが持っていたのは魔石。全て異空間にしまってあるそれを落とすはずがないので怪しいから無視する事にした。

 

「ま、待ってください!騙そうとしたのは謝るので話聞いてぇ!貴方、ルーキーですよね?」

「………………」

 

 ベルは面倒くさそうに足を止め振り返った。

 

「コホン………えっとですね、実は私飲食店に勤めてまして、知り合った冒険者の方をお得意様にしたいなぁ、と………」

「飲食店?」

「はい!結構人気なんですよ?」

「あざとい店員目当てか?それとも料理がキチンと美味いのか?」

「あざと──!?ま、まあどっちも……ですかね。店員は可愛い子多いし、ミア母さんの料理も美味しいですよ?」

「そうか、今夜よらせてもらおう」

 

 ベルはそう言うと歩きだそうとして………

 

「落とし物どうも」

 

 と、魔石を受け取った。

 

「あ!狡い、騙されてないくせに!」

 

 

 

 オラリオの中央に聳える巨大な塔、バベル。その最上階で下界を見下ろす美しい女性がいた。男も女も、老いも若いも関係なく見惚れそうな美女はほぅ、と悩ましげなため息を吐いた。

 目に映るのは不気味で、しかし美しい魂。純粋な器を内側から染め上げるような黒い炎。そう形容する他ない。

 白い輝きも、その中の黒い炎も、どちらもより一層濃くしたい。そして、この手で愛でたい。

 

 

 

 

 ダンジョンで一匹のミノタウロスが壁に頭を叩きつけられ絶命した。そんな離れ業を行えるのは高い力補正のある中堅以上の冒険者か、同じ怪物。今回は後者であった。

 同胞を殺したミノタウロスは片手で何とか同胞の死体から魔石を取り出すと口に含む。

 湧き上がる全能感。直ぐにでも目的を達したくなるが、堪える。

 知性、と呼ぶには未だ未熟な、本能とは別の何かを持ったミノタウロスは同族を探して歩く。その左目からグチグチと生々しい音が聞こえ、深く刺さっていたナイフが落ちる。

 

「…………ブルル」

 

 そのナイフを踏みつけミノタウロスは歩く。怒りとは違う、憎悪とは違う。しかし自分の片目と片腕を奪った白髪の少年を思い浮かべ歩き出す。

 天上と地下で、二つの存在が一人の少年を求めていた。




Lv.1の時点での発展アビリティ。これが唯一の転生特典だったりする
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