ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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港町メレン

「兎ちゃーん、イカ焼き2つ」

「ヘスティア様、塩焼きそば大盛り二つ……」

「ヘスティア様~、こっちにたこ焼き3つ~」

「ベルっち、ウチは焼きトウモロコシな」

 

 何で自分はこんなことをしているのだろう。燦々と照りつける太陽を見ながらベルはふとそんな事を思う。

 始まりはそう、ロキが休暇だ旅行だなどと言い出して、荷物持ちとして呼ばれ、メレンと言う港町にやってきた。

 そしてロキは知り合いのニョルズという神に穴場を教えてもらい水着を配り泳ぎ始めた。ショックを受けたくないのかヘスティアには何も渡さず。

 ベルは『潜水』という発展アビリティが欲しくて暫く水中を泳ぎ回っていたが飽きてきたので持ってきた食材で料理を始めたら匂いに団員達が集まってきた。

 そしてベルは料理をしてヘスティアが忙しく運んでいる。

 

「ティオネとティオナは水中調査に向かったけど、俺等はのんびり食事か……」

 

 元々今回の旅行は、正確には調査らしい。

 ダイダロス広場の崩落でダンジョンには入り口が他に存在することが明らかになった。他にないか調査するため、水生のモンスターが嘗てダンジョンの外に溢れ出したこのメレンに来たというわけだ。

 ちなみにそのダンジョンに繋がる穴は『海の覇王』(リヴァイアサン)と呼ばれる強力な魔物のドロップアイテムである骨を蓋にしている。

 強大なモンスターの骨はそれだけで他のモンスターを寄せ付けない虫除けとなったのだ。

 

「つか、調査なら俺の【操作画面】(メニュー)使えば良かったんじゃねーの?」

「あ………えっと、ほら……あれや。異変は起きてるけどモンスターはおらん、その可能性もあるやろ?」

 

 今確かに「あ」と聞こえたが確かにモンスターの反応は見れても例えば横穴などは近づかないと表示されないこともある。それに、蓋は本来の地形とは異なる後付けの物。故にマップに正しく表示されないので穴などは確認できない。

 

「ちなみにティオネとティオナは今どの辺におるんや?」

「ん? …………あ」

「どないした?」

「赤マーク。モンスター」

『───!』

 

 ベルの言葉に一斉に戦闘態勢になる【ロキ・ファミリア】。振り向き、ここロログ湖に入ってきたばかりのガレオン船に黄緑色(おうりょくしょく)の触手が絡みついており、それは怪物祭(モンスター・フィリア)やリヴィラの街で見たのと同じ食人花の一部だった。

 直ぐに救助に向かおうとするベルとアイズ。が、食人花の首が蹴り飛ばされた。上級冒険者でも多少手こずる相手が、だ。

 

 

 

 

 彼女達は【カーリー・ファミリア】。アマゾネスの国テルスキュラという国そのものが【ファミリア】の戦士達。

 

「でも、すっごく強いね。外にはダンジョンも無いのにどうやったんだろ?」

「あん? んなもん、殺してきたんだろうよ。同朋を………同じ恩恵持ちなら良い経験値になるだろうからな」

 

 アイズの疑問にベルが返すとアイズは目を見開きアマゾネス達を見る。ベルも同様に彼女達を観察する。おそらく姉妹だと思われるアマゾネス二人は、かなり強い。スペックで言えばベルが戦ったミノタウロスと同等。

 特殊武器は持ってなさそうだがスキルや魔法はあるかもしれない。同じLv.6でも成り立てのティオネ、ティオナ、アイズよりは強そうだ。

 何よりまず間違いなく、ベルと同じく人間を相手にすることに慣れている。

 

「喧嘩するなら首元と目、肩や足に気をつけろ。俺と違って治らないからな」

「えっと………うん」

 

 アイズは取り敢えずコクリと頷いておいた。

 

「ふむ。しかしロキとヘスティアが共に居るとはな………そうか、この世界もとうとう崩れるか」

「なんやいきなり。ウチとドチビが一緒に居ったらあかんのか?」

「うむ! ぶっちゃけ妾の目が可笑しくなったか聞こえてくる噂が嘘だったか疑いたくなる」

 

 【ロキ・ファミリア】はまあ、当然有名だ。ロキ自身も天界で大暴れしていた時代がある。結果彼女と犬猿の仲が居るというのもまあ広がりやすい噂の訳だが目の前の褐色幼女はカラカラと笑いながらからかってくる。初対面なのに。

 

「むかつくわこのドチビ二号」

「おい、僕をこんな変な仮面と一緒にしないでくれよ!」

 

 【カーリー・ファミリア】の主神であるカーリーは鮮血のような赤い髪をした褐色肌の幼げな見た目の女神だ。その瞳に宿る光には見覚えがあるベルは何処にでも居るんだな、と肩を竦める。

 

「ふむ……」

「ん?」

 

 と、不意にカーリーの視線がベルに注がれていることに気付く。ベルと目が合うとにっ、と笑う。

 

「お主この中では一番人を殺した経験があるな。何人だ?」

「さあな。戦場ばっか巡ってて、詳しい数は知らん」

「ほう………テルスキュラにこんか? 強い奴は歓迎じゃぞ」

「あ? 種馬にされるなんざごめんだな」

「残念……まあ見た目弱そうじゃし子供たちも反応しなさそうじゃな」

 

 ピクリとベルの眉根が動いたが、無視することにした。一々食ってかかっても仕方ない。

 

「しかし良い目をしておる。残念じゃなぁ。強さを追い求める者よ、妾は何時でも歓迎するぞ。殺戮と闘争の末に生まれる『最強の戦士』をみたいからな。そのためにはまず強くあろうとする意志が無くては」

「でも俺は、そういう思想を色濃く持った子を産むための種だろ?」

「不服か? 自分で言うのもなんじゃが妾の子達は皆美人じゃぞ?」

「そこに関しちゃ不服はねーがな」

 

 そうか、と呟き踵を返すカーリー。ロキは『ホンマにモテモテやなぁ……』と呟き厄介なことが起きないことを祈った。

 

 

 

 早朝、レフィーヤがベルに向かって杖を振り下ろす。が、かわされ足をかけられる。

 これは別に何時もの如くレフィーヤがベルに襲いかかったというわけではない。鍛錬の一環だ。メレンの空き地で行う鍛錬。

 

「レフィーヤ、お前は魔導師なんだから近接戦の訓練なんて必要ないと思うが?」

「いえ。実は新しいスキルに目ざめまして……」

「スキル?」

「隙があれば試しますのでもう少し付き合ってください!」

「ちなみに俺を相手に選んだ理由は?」

「先にLv.4になったアナタなら、負けてられないってやる気がでるんです!」

 

 と、再び杖を振るうレフィーヤ。元々後衛、しかもベルは基本的にステイタスカンストしてからのランクアップを繰り返し今やレフィーヤよりLv.は上。

 

「……………」

 

 敢えて大きく引き距離をとる。と、レフィーヤが片手を突き出す。

 

「解放! 【アルクス・レイ】」

「!?」

 

 レフィーヤの手の先から飛び出した光に目を剥くベル。魔力の流れは感じなかった。詠唱もしていない。

 詠唱破棄のスキル? それにしたって魔力の流れを感じないというのは。が、何度も言うがベルはレフィーヤよりLv.が上。掌を突き出し地面に押しつけた。地面が爆ぜあたりが土煙に包まれた。

 

「あ! ご、ごめんなさい! つい癖で【アルクス・レイ】を! 今回復しますから──!」

「必要ない」

 

 少し熱かったが火傷無効のお陰で火傷自体は負っていない。ただ、火傷がないだけでジクジクと刺すような痛みはある。それもどうも火属性の魔法を無効化する訳ではなく、単純に火傷しないだけのようだ。

 

「今のは詠唱破棄か何かか? 確かにこれなら前衛に食い込み至近距離で魔法を放つなんて事も出来るが」

「あ、いえ。魔法をストック出来るだけです。最大値は16ですね」

 

 魔導師の弱点としては近接戦に持ち込まれると危険ということだろう。リヴェリアなど護身術を覚えてる者はいるし魔法剣士と呼ばれる戦い方もある。

 

「これなら超短文型の魔法を主に扱う魔法剣士の真似事は出来るだろうな。因みに動きのイメージは誰だ?」

「友人のエルフです」

「そうか………取り敢えずレフィーヤ」

「は、はい……!」

「お前に近接戦の才能はない。ここまでないと逆に凄い」

「んなぁ!?」

 

 と、ベルの余りの物言いに叫ぶレフィーヤ。

 

「まず攻撃に関してだが、見てから対応しようとしてるがそれだと遅い。回避に関してリヴィラの街で見た時よりは上がってるな。多分、暫く防御も攻撃も捨てた訓練をしてたんだろ」

「はい」

「近接戦も行えるようになるってのは攻撃、防御どちらも出来るようにならなきゃいけない。格下ならともかく同格ならずっと避け続けるなんて無理だからな。時には防御も回避も完全に捨てなきゃ追い付けない事もある」

 

 それがベルがミノタウロスとの戦いで見せた死闘。急所にせまる攻撃のみ回避し後は無視。それで漸く互角。速度で上をいくのに、だ。

 あの決着だってミノタウロスが後少し魔力を持って小さな傷も治せる余裕があれば、耐久が高くナイフが突き刺さらなければ全く別の形になっていただろう。【英雄義務】(アルゴノゥト)が無ければベルの肉体もあの一撃で消滅してただろうし。

 

「やってやります! ベルさん、お願いします!」

「ベルで良い。年上だろ、お前」

「じゃあ私はレフィーヤさん──」

「断る」

「何で!?」

「俺は基本的に関わりたくない奴にしか敬称はつけない。潜入する時とかは演技でやるが」

「潜入?」

「カジノとかだよ。娯楽都市(サントリオ・ベガ)に行ったときに調査を依頼されてな。いや、流石金にモノを言わせ集めた護衛たち。強いこと強いこと。ちなみにこれがその時の傷」

 

 と、鼻に刻まれた横一文字の傷跡を撫でるベル。本当に世界中を回ったのだなぁ、と感心する。

 あそこならステイタス持ちがいてもおかしくないが、ベルが相対したのは上に隠れてこそこそやっている連中。足が着かぬようフリーばかり集めてステイタス持ちは居なかったらしい。

 

「それでも当時何歳ですか?」

「10」

「はぁ………そりゃ、近接戦も強くなりますよ」

「諦めるか?」

「まさか!」

 

 ベルの言葉にレフィーヤは勢いよく飛び出した。

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