ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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女戦士の襲撃

 結局その日の調査は進展なし。

 ベルとは別の所でティオネとティオナも【カーリー・ファミリア】と争ったらしい。

 

「それでティオネが荒れてんのか」

「ええ。何か元気づける方法しりません? 女ったらしでしょうベルは」

「最低限俺に好意を抱いてないと無理だ。俺は中身はともかく容姿は女受けが良い。が、アマゾネスは強い奴好きだから見た目じゃ寄ってこないし中身を知れば言わずもがな。強さに関しては既にフィン達を知ってるアイツが俺に酔うとは思えない」

 

 つまり打つ手無し。元気づけるなど不可能だ。ある意味では元気だし。

 ティオナみたいにより強い雄を知っていて尚ベルに好意的になる方が珍しい。

 

「そう、ですか………」

「強くなっても出来ないことは多い。特に心に関しちゃ俺は専門外だ」

 

 喜ばせる話術は知っていても元気づける方法は知らない。これが主人公(ベル・クラネル)なら違うのかもしれないが所詮は肉体だけ持った模造品。

 

「………………」

「何だ?」

「ベルってたまーに自分なんか死んじまえって顔しますよね」

「─────」

 

 レフィーヤが何気なく呟いた言葉に固まるベル。レフィーヤは無意識だったのだろう、はっと口を押さえて慌てる。

 

「ご、ごめんなさい! その、会ったばかりのフィルヴィスさんの目に似ていて!」

「謝らなくて良いさ。事実だからな」

「………その、理由をお聞きしても良いですか?」

「理由、か……」

 

 理由なら簡単だが、言ったところで頭がおかしくなったと思われるか騙そうとしていると思われるのが関の山だ。さて、どうアレンジして伝えるか………と、顎に手を当てるベル。そして徐に口を開く。

 

「俺には兄がいてな」

「お兄さん、ですか?」

「ああ。生きてればきっと俺より沢山の人を救って、笑顔にして、神を騙すなんて方法も取らずにリリも助けられた。そんな人だ……」

「生きてれば、って……まさか」

「死んだよ。理由は言えないけどな………んで、アイズ達には話したが友人と森に入って熊に襲われた。俺はその日以来力があればって思うようになったが、同時に死ぬのが兄じゃなくて俺だったならって思うんだ」

 

 もしキチンと『原作の主人公』(ベル・クラネル)が生まれていたらどうなるだろうか?

 名前しか知らない。行った偉業も友人から聞いたおおざっぱなもの。でもあの時の友の赤い血を思い出すと思わずに入られない。

 もっと上手くできてたハズだ。

 もっと救う事ができたハズだ。

 もっと笑わせられたハズだ。

 きっと、もっと、そんな風に考え自己嫌悪に浸る。

 

──それしかできない──

 

 数日ぶりに聞こえてきた幻聴にベルはしかし表情を変えない。

 ミノタウロス戦以来の幻聴は責めるように、嘲笑うように呟く。

 

──あの無様な戦いは何だい? 最強を超えるなんて言っておきながら、彼女達の中には彼女より強いのが最低でも2人いた──

 

 圧倒できなかった。相手はLv.5(格上)だろうが頂点(オッタル)に比べれば有象無象。味わったからこそ解る。Lv.が上がっても未だ彼の足下にすら届いていない。

 ミノタウロスに使ったフルチャージの【アダマント】なら通じるだろう。元々【アダマント】は【ケラウノス】が弾かれたから思考し生み出した放たず刀身に纏わせた【ケラウノス】。言ってしまえばオッタルを相手するために編み出した技だ。

 その威力は【ケラウノス】には劣るがそれでも並の一級冒険者なら跡形もなく吹き飛ばせる。もっとも、チャージがたまりきる前にやられるだろうが。

 原作の主人公(本物)なら、どうだったのだろうか?

 強くなっても依然弱いままのベルは常に虚像の英雄(ベル・クラネル)と己を比べる。魔法が階位昇華(レベル・ブースト)で、名前も見ればそう思っていることは一目瞭然だ。

 

「………でも、私ベルのお兄さん知りませんよ?」

「あ?」

「私が知ってるのは、私を食人花から助けてくれて、リヴィラの街で私も負けてられないって思わせたのも、ミノタウロスとの激闘で私達を魅せてくれたのも、貴方であって貴方のお兄さんじゃない」

「………………」

「あ、ちなみにお兄さんだったらもっとっていうのは無しです。だって貴方もそうなったかは知らないんでしょう?」

「あ、ああ………まあ」

 

 それは事実だ。詳しく彼の偉業を知るわけではない。

 

「なら、比べないでください。私が見た物を、負けたくないと思った光景を、魅せられた戦いを否定しないでください。解りましたか? ………あれ、何ですその顔?」

 

 レフィーヤが覚えの悪い子供に説教するように人差し指を立て目を閉じ延々と言葉を紡ぎ、目を開けると困惑するような表情をしたベルが居た。

 

「顔?」

「あ、戻った」

 

 何時も通り兎を連想させる無っぷり。頬をペタペタ触る仕草は傷跡が気になるが可愛らしいと称せる見た目と相まってやはり可愛い。年上にさぞ受けるだろう。因みにレフィーヤも年上だ。

 

「と、とにかく! これからは自分にちょっとぐらい自信持ってください! じゃなきゃ貴方に負けたくないと思ってる私は何なんですか」

「わ、悪い……?」

「こういう言い方は、良くないと思いますけど……もう居ない人を真似るのは遺志を継ぐこととは違うと思います。この人ならこうした、だから自分もこうする。それは正しいと思います。けど、行き過ぎれば呪いと同じだとも思いますから……」

「………呪い、か………言い得て妙だな」

 

 長年共にあった幻聴は、幻想は消えない。ミノタウロス戦の後は、暫く鳴り止んでいたがずっと近くに気配を感じていた。ただこの日は、何時より声が遠く感じた。

 

 

 

 

 翌日の早朝の鍛錬。ベルは避けることのみを優先するように言った。

 

「でもそれじゃあ何時もと変わらないんじゃ」

「まずは速度に目を慣らせ。そもそも耐久も力も劣る今、防御技術は不要だ。防御は力と耐久が増えてからな。今は回避の合間に生まれる隙を探せ」

 

 そういうとベルは早速木刀を振るってくる。速さだけなら第一級に匹敵するベルはもちろん手加減をしている。レフィーヤも今更その事で文句を言うほど自惚れては居ない。それでも速いことに変わりはないが。

 ベルは動きを予測しろと言うが、どうしろと?

 ベル曰く回復能力を持たなかった入団前は戦場、そこで血を流し続けるような傷を負えば死ぬのと同義だと思い必死に避け続けるウチに習得できたとか。

 ベテランの冒険者の前衛は大概行えているらしい。リヴェリアも同様だとか。

 

「攻撃の気配を探れ。次に相手の間合いを探れ。そうすりゃ大抵の攻撃は避けられる」

「難しいことを平然と……ミノタウロス戦でもそうやって避けてたんですか?」

「攻撃の気配は確かに感じていたが彼奴は速すぎる。速度で勝っていたとしても目が見えない状況で避けきれるかよ。だから、あの時は裏技使った。魔法(エルトール)を使っていた副次効果とも言えるが」

「副次? 雷の?」

「ああ……────ッ」

 

 と、そこでベルは言葉を止め振り返る。黒髪の褐色肌の少女。一瞬アマゾネスかと思ったレフィーヤだが恩恵を持つ者、眷属特有の気配がないことにホッと息を吐く。

 

「あ、あの……ごめんなさい! えっと、音がして何かなぁって」

 

 どうやら近隣住民に迷惑をかけてしまったらしい。レフィーヤが謝罪し切り上げようとした瞬間───

 

「その気持ち悪い演技はなんだカーリー?」

 

 ベルが少女を睨みつけ尋ねる。え? と少女を見ればポカンとした後歯を剥き出しに笑い鬘を脱ぎ捨てる。

 

「気づいておったか。神の気配、神威は消したはずだが」

「ああ、だからなんか少なく感じたのか」

「ほう? もしやお主、妾以上に神威を隠すのが上手い神に知り合いがおるのか?」

「あ? あー………ヘルメス? いや、お前の方が上手いな」

「ふむ。ではあれだな、妾が魅力的すぎて──」

「それはない」

 

 ベルの即答にカーリーはケラケラ笑う。良くも悪くも娯楽に飢えた神らしく、新鮮な対応を楽しんでいるように見える。

 

「ならば体質か。神威を感じやすいとか………まあ()いわ。その娘を貸せ」

「あ?」

 

 と、ベルが呟き、瞬間振り返りレフィーヤに向かって蹴りを放つ。

 

「へ?」

 

 が、それはレフィーヤの顔の直ぐ横を通り過ぎ背後から手刀を繰り出そうとしていたアマゾネス、バーチェの手首に当たる。

 

「────ッ!?」

 

 耐久と速度が極めて高い特異なステイタスをしているベルだがバーチェの一撃は想像以上に重くミシリと足首が軋む。

 

『───やるな。レイシーを打ち倒しただけはある』

「レフィーヤ、逃げろ」

 

 ギリギリと押し合うベルの足とバーチェの手首。脳内マップを展開する余裕はない。他にアマゾネスがいるかもしれないが、この場に残せば足手纏いだ。

 

「──ッ!」

 

 それが解ったのかレフィーヤは駆け出す。カーリーはふむ、とレフィーヤの背を見送る。

 

「離して良いのか?」

「守りながら闘えるほど、俺は強くねーんだよ」

「カカ。悔しそうじゃな……テルスキュラの種共は皆バーチェを前にその様な目はできん。諦めきった目になる。やはりおもしろいな」

 

 と、目を細めるベルは地面に付いていた足を浮かせ押していたバーチェの力を利用し大きく後ろに飛ぶ。背は見せない。まだ向こうのステイタスがしれない。ひょっとすれば速度がベルより上かもしれない。

 

「【呪われろ呪われろ偽りの英雄。救えもしない無力な力で試練に抗い煉獄へ堕ちろ】」

 

 紡ぎ出される呪詛の言葉はベルに早く最強へと至れと催促するようにその力を引き上げる。階位昇華(レベル・ブースト)という珍しい魔法に目を見開くカーリー。あの魔法を目覚めさせたのは素質か、それとも力を求め続けた意志か。恐らく後者なのだろう。テルスキュラにも居ない、力を求める貪欲さ。

 

「バーチェ、先程のエルフは放っておけ。他の誰かが捕まえる。今は、そいつを倒せ」

「クソが……」

 

 やはり他にアマゾネスが潜んでいた。先に確認しておかなかった自分の不徳を呪いながらベルは目の前の女と相対した。




ベルのLv.3の時の最終ステイタス
『Lv.3
 力:SSS1564
 耐久:SSS2804
 器用:SSS1320
 敏捷:SSS2584
 魔力:SSS1902
耐異常:D
精神安定:B
技能習得:A
鍛冶:E
精癒:H
幸運:H
思考加速:H
狩人:H
火傷無効:I
《魔法》
【虚像の英雄】(ベル・クラネル)
階位昇華(レベル・ブースト)
・発動対象は術者限定
・発動後、半日の要間隔(インターバル)
・詠唱式【呪われろ呪われろ偽りの英雄。救えもしない無力な力で試練に抗い煉獄へ堕ちろ】
【エルトール】
付与魔法(エンチャント)
・雷属性
・速攻魔法
【アンチ・カース】
・解呪魔法
・呪詛、結界魔法の破壊
・詠唱式【砕け散れ邪法の理】
《スキル》
【向上一途】(リアリス・フレーゼ)
・早熟する。
・向上心の続く限り効果持続
・力を欲する理由を感じるほど効果向上
【英雄義務】(アルゴノゥト)
・敵対時に於けるチャージ実行権
【操作画面】(メニュー)
・自己ステイタスの閲覧可能
・討伐モンスター図鑑自動作成
・マップ表示
・索敵
・アイテム収納空間作成
【不屈の闘志】(ベルセルク)
・肉体の修復
・体力、魔力を消費する 
【精神保護】(マインドブロック)
・精神への干渉を拒絶する
・術者との実力差によって変動
・受ける、受けない選択可能   』 

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