ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
『神の宴』にやってきたアイズとベル。元から有名なLv.6の【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインに
神々は興味を、冒険者はアイズに羨望を、ベルに嫉妬を向けてくる。
「やあベルく───ぶね!?」
「………チッ。すまんヘルメス様、手が滑った」
「今おもっきり舌打ちしたよね!?」
「手が出たのは反射的だがお前と解った時点で止める気はなかった」
「俺君に嫌われるようなことしたかなー?」
「してないと思っているのか?」
ベルの言葉に考え込むヘルメスはアスフィにひっぱたかれる。
「考えるまでもなくしています。申し訳ありません」
ぺこりと頭を下げるアスフィ。まあギルドと【ロキ・ファミリア】に同時に喧嘩を売ったと言っても過言ではないヘルメスがこうして表から姿を消さないという事は何らかの裏のやりとりがあったのだろう。ならばベルから言うことは特にない。あるが上同士が決めたなら我慢する。反射的に手は出そうになるが………。
『──諸君。今日は良く足を運んでくれた! 多くの同族、そして愛する子供達の顔を見れて、私自身喜ばしい限りだ。今宵は新しき出会いに恵まれる、そんな予感すらする』
と、その時一柱の神が声を上げる。彼がアポロンだろう。ゾワリと背筋に悪寒が走った。が、それよりベルの視線はある一角で止まる。
瞬間雷でも落ちたかのような轟音が鳴り響いた。
「────チッ」
「ほう。この短期間で高みへ三つ───いや、二つ近づいたか」
轟音の発生源はバチバチと紫電を纏うベルとそのベルの足を片手で受け止めているオッタル。ステイタスカンストと言う、本来のLv.では計れぬ実力を持つはずのベルのLv.を見事に言い当てたオッタルを忌々しげに睨むベル。
「だがここは神々が集まる神聖な場。先の件で俺に非があるのは認める。このような行為は控えろ。これで互いに水に流そうではないか」
「…………解ったよ」
正論に感情論をぶつける気はない。オッタルがベルを闇討ちしたようにベルもまたオッタルに不意打ちをした。ならば今後互いに突然襲撃などしないように話を付け足を下ろす。ベルはそのままオッタルの横に立つ女神、フレイヤに目を向ける。
目を奪われた。それほど美しい女性だった。精神安定、
「いやだわそんなじっと見つめて、私の顔に何か付いてるかしら?」
「いえ、あまりに美しい方だと思ったので」
ベルに見つめられ
「素敵な瞳。真っ直ぐ前を見ているはずなのに、深い闇の底を見ているようにも見える………貴方の目には、何時か何かを映すのかしら?」
「さあ、そればかりは」
「ふふ。ならせめて今日は、私だけ映してくれないかしら?」
「一晩だけと多くの女性を映してきた私の瞳で良ければ喜んで……」
「………………」
ベルの言葉にフレイヤは一度だけ目を見開き、しかし直ぐに多くの男を魅了するような笑みを浮かべる。
「そう。貴方は恋する女にそんな態度をとってきたのね。でもね、ベル……本当に貴方が好きな女はそんな事気にしないの。あまり、恋する女を甘く見ては駄目よ? いつか痛い目を見ちゃう」
そう言ってフレイヤはベルから離れる。
「夢を見せてもらうつもりだったけど、今夜は止めておくわ。だって今のベルは
「…………………」
なる程これが美の神か。
此方の心情を見抜いた上で、何れ必ず手にしてみせると目で語る。
──美の女神は何時だって破滅をもたらす──
ああ、解っている。だから関わりなんて持ちたくない。
珍しく幻聴と意見があったベルはそのままフレイヤから離れることにした。
「……………」
暫くすると音楽が奏でられ男女が神、眷属関わりなく踊る。ベルは自分の瞳のように赤いワインを飲みその光景を眺める。と、不意にアイズが隣にやってくる。
「ベルは踊らないの?」
「相手が居ない」
「そう……」
「お前こそ踊らないのか? 彼の有名な【剣姫】だ、相手など選び放題だろうに」
「子供の頃は少し憧れてたけど………踊ったこと無い」
「そうか」
「うん」
そのまま無言の時が過ぎる。ベルは不意に壁から背を離し、アイズの前に立ち恭しく頭を垂れながら手を差し伸べる。
「私と一曲踊って頂けますか、
「あ、えっと……う、うん………よろ、こんで?」
困惑しながらベルの手を取るアイズ。手を重ねたまま中央に歩いていく。
華麗な踊りと言うには些か男任せな踊り。ベルが
「ベル、踊るの上手いね……」
「そりゃ、貴族の子女の相手も………いや、いい」
あの女神を思いだし言葉に詰まるベル。アイズは「?」と疑問符を浮かべ首を傾げていた。
『オッタル、ここにゴライアスの群を連れてこれないかしら?』
『不可能です、フレイヤ様……』
そんな会話やヘスティアの叫び声が聞こえてきたが無視。ロキの下世話な視線も無視。演奏が終わるまで、アイズとベルは踊り続けた。
「───諸君、宴は楽しんでいるかな?」
と、そこへ今回の宴の主催者であるアポロンが現れる。彼の策略の可能性を事前に聞いていたアイズとベルは警戒するように彼を見る。
案の定というか、早速ヘスティアに絡み出した。何でもベルが眷属を傷つけたから責任を取れと。
「おいイロボケカスゴミ変態男。さっきから黙って聞いてりゃ好き勝手言いおって、それはつまり【ヘスティア・ファミリア】の元締めであるウチにも喧嘩売っとるって事でええんやな?」
と、ロキが睨みつける。オラリオ最大派閥の一つ【ロキ・ファミリア】の主神に睨まれしかしアポロンは表情を崩さない。
「ロキ、確かに【ヘスティア・ファミリア】は君の傘下だが些か贔屓が過ぎるんじゃないかい?」
「別に贔屓しとらんよ。ウチはどの子にもおんなじように接してるつもりや」
「ほう? 【ファミリア】から離れた宿で、同じ部屋で一晩過ごす仲なのにかい?」
「…………なんやと?」
ロキは細い目を開きアポロンを見る。
「良いのかい? 大手ファミリアの君が、男1人のために犬猿の仲であるヘスティアと仲良くするなんてね……」
「ヘルメスといい、ウチを脅す気か?」
「さあ、何のことかな?」
「…………………」
ロキは無言を貫き此方を観察しているフレイヤに目を向ける。その目に若干の敵意を感じた。
どんだけ嫉妬深いんだあの女は………と内心悪態を吐く。
「さて、ロキはもう良いね。それでヘスティア、君は謝罪する気はないと?」
「くどい!」
ヘスティアの言葉にアポロンは醜悪な笑みを浮かべる。
「ならば仕方ない。ヘスティア、君に
「ウォー? ああ、アレか………構わな──」
「断る! ベル君、行くぞ!」
と、ヘスティアはベルの手を掴み歩き出す。
「………良いのか?」
「今
翌日。【アポロン・ファミリア】の最大Lv.を考えるなら平気だろうが気配を感じたら直ぐギルドか黄昏の館に向かうように言い含められオラリオの街を歩くベル。本を買いに行くだけだというのにティオナが護衛に付くと言いだした時はやりにくかった。
「あれ、ベル君?」
「ん? ああ、エイナか……」
ベルは本を買い帰ろうとすると私服のエイナと出くわした。
「本屋によってたの?」
「ああ……」
「なんか、昨日は大変だったみたいだね」
などと会話しながら共に歩く。ギルドの方でも噂になっているのだろう。面白がった神々が逃げ場をなくすために噂を広げているのかもしれない。
「私に出来ることがあったら言ってね」
「ああ……────!」
曲がり角を曲がった時、ベルが見たのは魔剣を構えた集団。街中で、だ。
目を見開くベル。エイナが首を傾げ振り返ろうとすると同時に魔剣から魔法が放たれた。