ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「なんやー、折角のパーティーやのに主役がおらんのか?」
「ああ。団員達に気を使ったのだろう。数日は暇をもらう、だそうだ」
ロキの言葉にリヴェリアははぁ、と頭を押さえる。
ベルが見せた戦争とは名ばかりの虐殺劇は決して小さくない影響をもたらした。
人が人を殺す光景。
フィン達は経験がある。遊戯などではなく、実際の戦争を体験している。
もちろんラキアとの戦争もあるがあれはお遊びみたいなものだ。
ベートは気にせずティオネは少し眉をひそめティオナは無反応、アイズはよくわからなかった。この辺までならまあ良いだろう。
幹部候補のラウルは吐いた。
観戦していた食堂から出て行った数は1人や2人ではない。
「にしても三日も姿くらますとか何処におんねん」
「………実は、目撃情報があるんだ」
「ほう、信用できるんか?」
「ウチの団員だしな。ラウルが挙動不審なので問い詰めたら、歓楽街で見かけたと………」
「あの………本当にお相手せずよろしいのですか?」
「この店の雰囲気が気に入っただけだ。昔の爺ちゃん家を思い出す。どうせなら蝉の声でも聞きながら夕焼けでも眺めてみたいが」
「ああ、それは風情がありますね………ベル様は我々の故郷に訪れた事が?」
朱色の杯で透明な酒を飲むベル。酒が無くなると杯を掲げ、ベルの頭を膝に乗せる美しい
場所は歓楽街。多くの人が行き来する場所。暫く姿を隠すのに丁度良いと思った。
「………俺は弱くなったな」
ボソリ呟く。他人の視線なんて気にしていなかったはずだ。徹底的に殺して、黄昏の館で恐怖の視線に曝されるのは解っていたはずだ。
「まあ、まさかステイタスが無くなってしまったのですか? あ、そういえばアポロン様という神が天界に召されたと……」
「その下手人は俺だよ」
あの後カーリーが飛びついてきて他の神々も何やら賞賛して来た。下界の子が神を斬るなんて事が初めてで面白かったとか………どうせ死なないからこその対応だろう。冗談で天界に戻ったら働き詰めで死ぬから許して~などと笑う神も居たぐらいだし。
「まあ。ではベル様が噂の
「………………」
噂と言われても三日ほど籠もっているから知らん。
因みに太陽神であるアポロンの首を落としたことから神々が次の二つ名にしようとしている候補の一つだ。本来はハティという狼と兄弟の太陽を食う狼の名前。
もっとも、此方の神話に登場するのかは知らないが。
「だとしたら祝杯などをあげなくてよろしいのですか?」
「祝杯ねぇ………昔は上げてたが、今は気分じゃねぇ………」
「はぁ……」
コテリと首を傾げる
「どうした? 注げよ」
「あ、はい…!」
再び酒を飲むベル。
「………しかしあの野郎、どういうつもりだ?」
ふと思い出すのは信用ならない一柱の神。ベートの鼻も誤魔化せる香の匂いが充満し、女なら寄りつかず男もそこで見たと堂々言えないであろう歓楽街に身を隠すことに決めたベルだが、そこで偶々出会ったヘルメスに勧められ出会ったのがこの
抱く必要がないという宣言通りそもそも汗を拭こうと服を脱ぎかけ臍を見ただけで気絶するという初な女だ。
寝言からしてしている夢を見ているのだろうがしてないと教えてやると驚愕していた。
「まあ、もしもの時は殺せばいいか……」
「は、春姫は何も聞いていませんよ? ベル様が人を殺そうとしてるなんて春姫は関与しておりません」
耳をパタンと伏せ手で押さえる
「………あん?」
「? 何やら外が騒がしいでございますね……」
と、外から喧噪が聞こえてきた。男の取り合いか? と特に気にせず焼き鳥を食うベル。と、襖がスパン! と開かれる。
そこに立っていたのはジト目でベルを睨みつけてくるレフィーヤ。
「三日も行方をくらませていると思ったら、何してるんですかベル!」
「ひゃん!?」
突然の大声に耳が良い獣人の春姫がビクリと体を振るわせベルは顎に手を当てる。
「………膝枕?」
「帰りますよ!」
「───ッ!」
レフィーヤが手を伸ばしてくるとベルは反射的に飛び退く。が、レフィーヤにギロリと睨まれ身が竦み今度こそ手首を掴まれる。
「お騒がせしました」
「あ、はい………あ、あの……お代を………ベル様は結局一度も私を抱きませんでしたし、宿代わりのお代だけで残りはお返しします」
「………………本当ですか?」
「──────!」
レフィーヤの言葉に慌ててコクコク頷く春姫。レフィーヤははぁ、とため息を吐いた。
「ベル、帰りましょう……」
「いや、少し間を空けた方が………」
「か・え・り・ま・す」
「あ、ああ………すまん………」
歓楽街を抜け無言で歩き続ける2人。レフィーヤは相変わらず手を離さず、すれ違う冒険者達はギョッと見て距離を置く者、特に気にしない者と、思ったより様々だ。
「………どうして突然居なくなったんですか?」
「気を使ったつもりだったんだがな……」
「怒りますよ?」
「…………レフィーヤ、お前は怖くないのか? 俺が」
「怖くない訳じゃ、ありません………でも、知ってたことですから。ベルが言っていた事じゃないですか」
確かにベルは多くの人間を殺したと言っていた。傭兵時代を隠すことなく、聞かれれば答えてきた。
だが目にするのと聞くのでは違う。それが故の【ロキ・ファミリア】団員達の反応なのだ。
「それに、怖いのはベルが消えてしまうことです」
「はっ! 俺なんて、消えた方がいいだろ? 少なくとも、殆どの団員はそう思っているはずだ」
「そうやってみんなを気にしてあげられるベルが、私達に剣を向けるなんて思ってません」
「……………離せ」
「嫌です。逃がしません」
「俺の手は血にまみれている。お前まで汚してしまう」
「気にしません」
「………レフィーヤ、はな───」
「貴方は!」
と、不意にレフィーヤが振り返り叫ぶ。
「………ベルは、優しいですよ」
「───っ。何だ、いきなり……」
「皆きっと解ってくれます。だから、勝手に距離をとろうとしないでください……」
「何を根拠に俺が優しいなんて──」
「優しいから、血に染まった手を皆に近づけたくないんですよね? 怖がらせたくないから、怖がられたくないから離れたんですよね?」
「………………」
「血に染まっているから、なんて言って離れるのは………貴方が優しいからです。悪いことをしてると思って、だから自分は汚いって思って……距離を置いてしまう」
レフィーヤの言葉にベルは固まる。悪いことをしてると思って? 自分が? 散々殺しておきながら、何を……。
「………俺は、弱くなったな。昔は、そんなこと考えなかった……」
「優しさは弱さなんかじゃありませんよ。貴方は、強くなってます」
「昔は、こんな気持ち感じなかった……」
「感じる余裕ができたんですよ。すり減った心が、戻っているんです」
「どうしてそう言いきれる? お前に、俺の何が解る!」
全部解っているというようなレフィーヤの言葉に思わず叫んでしまうベル。が、レフィーヤはニッコリと笑って返す。
「解りません」
「………は?」
「まー。確かに、本質は人を殺してもどうでも良くて、友人ができたから人の気持ちが少し分かったから罪悪感を感じるようになった……っていう可能性もありますね。どちらにしろ優しいとは思いますけど」
「おい、いきなり何を………」
「まだ会ったばかりです。だから、私はこれからもっと沢山貴方を知っていく。貴方が自分は汚れていると言うなら、私はその倍の貴方の良いところを見つけてみせます」
「……どうして、そこまでする」
「だ、だって……私達仲間以前に、友達じゃないですか………友達が、友達の事を悪く言ってるのはやです……」
──なら、俺の友人を悪く言わないでくれ
「………クッ」
それは何時だったが自分が別のエルフの友人に贈った言葉とそっくりだった。それを思い出す、喉をクククと鳴らし笑う。レフィーヤの顔が耳までカァ、と赤くなった。
「も、もう! 笑わないでください!」
「わ、悪い………無理だ」
プルプルと笑いを堪えるベルにレフィーヤはポカポカ殴りかかる。こんなに笑ったのは何時以来か……随分と久し振りな気がする。
「…………?」
と、不意にこの三日間少しずつ近付いてきているような気がした気配が遠ざかる。
「? どうしました?」
「いや。何でも───」
「うう、ベル君! あんな子と仲良く──!」
「ちょ、押さないでくださいヘスティア様!」
「ドチビとリリちゃんも静かにせぇ! 見つかるやろ!」
「やれやれ。覗き見とは趣味が悪い」
「そういうお主も覗いておったろうが………」
「…………あん?」
声の方向に振り向くと、ぬわ! と倒れるヘスティアとヘスティアに押しつぶされたリリ。
そしてゾロゾロ現れる【ロキ・ファミリア】のメンバー。
「いやー、すまんすまん。ベルっちが歓楽街に居るの知ったレフィーヤがどんな反応するか気になって」
「ベル君! 心配かけといてなんだいいちゃいちゃと!」「レフィーヤ、ファイトよ!」「すいませんベルさん! 自分、誤解してたっす!」「ベルきゅんかわいい!」「でも女の子に叫んだのはいただけないかな?」
「…………………」
バチリとベルの体から雷が弾ける。
「
バチバチ高まっていく雷はやがて一本の鑓を作る。黒雷ほどではないが十分な威力を持った鑓を………。
「ちょ!? レフィーヤ、止めるッス!」
「………最近、ベルと一緒に思いついた技なんですけど、ストックした魔法を合わせると威力があがるみたいなんですよね」
と、レフィーヤの周りに
「撤退やー!」
「「「おおおー!」」」
ロキの号令に一目散に逃げる団員+神達。その光景を見送りベルは槍を霧散させレフィーヤも
「……どうですか? 彼等に振り回される毎日は、弱くなったに入ります?」
「…………さあな」
「ふふ」
「………帰るぞ」
「はい!」
「………………」
「リュー、どうしたの? 何か楽しそう」
「昨晩、少し面白いモノを見て」
「面白いモノ?」
「はい。楽しそうで良かった……」