ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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贈り物

「ベル君が僕に黙って出て行った!」

「………何時もの事だと思うのだが」

 

 ヘスティアの叫びにリヴェリアは首を傾げる。

 

「そうだけど………そうだけど! でもベル君ってば歓楽街に行ってたらしいじゃないか! ひょっとしたらそこで出会った女の子が忘れられず………」

「それは、ないと思うが………」

「いいやあるね! きっとベル君は女に弱くなっているんだ!」

 

 ヘスティアはそう言うとベルの情報を集めるために飛び出していった。

 

 

「ベルさんっすか? 最近ダンジョンに潜ってるっすよ」

「ダンジョン?」

 

 前回のベル発見者であるラウルに尋ねるとそんな情報を手に入れた。

 ダンジョン……ベルは発展アビリティの幸運のおかげでダンジョンに潜れば良くドロップアイテムを手に入れる。つまり儲かる。

 

「………やっぱり、女か!?」

「やーベルさんもベートさんも一々歓楽街行く必要無さそうっすけどね」

 

 【ロキ・ファミリア】と【ヘスティア・ファミリア】の非童貞であるベルとベートは前に一度ラウル達数人の男性団員が歓楽街に誘っても興味ないの一言だった。そんな片割れが身を隠すためならともかく平時に歓楽街に向かうとは思えない。

 

「………ベート君と言えば、彼なんだかんだでベル君と仲良いよね」

「っすね……」

 

 ヘスティアがふと思い出すのはベートとベルの鍛錬。速すぎて見えないが2人が止まるとベートが罵倒しベルが立ち上がりベートは笑いベルに再び攻撃する。

 

「……仲、良いよね……あれ?」

「ベートさんが鍛錬に付き合う時点で仲良いっすよ。あの2人、何となく似てるっすから。俺達陰じゃ顰めっ面兄弟って呼んでんのバレてこの前ボコられましたもん」

 

 ベルは傭兵時代モンスターの奇襲に遭い多くの仲間を失った過去を持っているらしい。ベートも似たような過去を持っている。

 それ故かどちらも強さへの執着心が強い。まあベートは弱者を罵倒するがベルはしないし敵対者への容赦のなさならベルが上だが………。

 

「あ、そういえばこの前ベートさんがベルさんに鍛錬の後『最近てめぇ女の匂いがすんぞ、雌にうつつ抜かしてるんじゃねーだろうなぁ?』とか言ってたの聞いたっす!」

「何だって!? こうしちゃ居られない、行くよラウル君!」

「え、何で自分が!?」

「君の影の薄さなら尾行にもってこいのはず! 才能だよ!」

「うれしくないっす!」

 

 

 

 

 ヘスティアに無理矢理つれてこられたラウル。そもそもベルの居場所が解らず街中を探し回ることから始めた。

 

(どうせ勘違いだと思うんすけどねぇ……)

 

 ラウルは面倒くさいが神様だしなぁ、と適当に探すふりをして街を見渡す。

 

「…………居た」

「どこだい!?」

 

 ラウルの呟きにギュルン! と首を回転させるヘスティア。そこには確かにベルが居た。

 「豊饒の女主人」の店員、リュー・リオンと共に。

 

「ベルく───もがが!」

「待つっす! 暫く様子を見ましょう!」

 

 直ぐに飛び出そうとしたヘスティアを慌てて押さえるラウル。

 何せ相手はあのリュー・リオンだ。誘われた回数数知れず、断った回数同じ数。セクハラしようものなら実力でねじ伏せる「豊饒の女主人」の店員の中でも特に苛烈な彼女が男と歩いている。これは観察しなくては!

 実際、ラウルと同じ様なことを考えているのか多くの男性冒険者や神々の姿を確認できた。

 

「おのれ! この前はレフィーヤたんに歓楽街から連れ戻されるという羨ましい体験しておきながら今度はリューたんと………!」

「この前はエイナちゃんにめっ! って叱られてたのを目撃した」「噂では物心つく頃から母親がいないからリヴェリア様が唯一ママと呼ばれて怒らない相手だとか」「おのれ【妖精落とし】(エルフキラー)!」「まさかフィルヴィスたんとも仲良かったり!?」「…………」「おい、まさか……」「……この前、一緒に女物のアクセサリー屋に入るのを見た」

「「「ちくしょおおおおお! 神の怒りを教えてくれるわぁ!」」」

「「「おい馬鹿殲滅されるぞ」」」

 

 神々が叫び別の神々が叫ぶ。こんなことは良くある光景だ。周りが気にしないのが良い証拠。

 

「彼奴何時か女の子型モンスターも落とすんじゃねー?」「モンスター娘……ありだな」

 

 と、そんな会話している中2人は昼食なのか飲食店に入る。

 

「行くんだラウル君! 君なら気づかれないはず!」

「そんなわけないじゃないっすか!」

 

 

 

 

 

「………………」

 

 気付かれなかった。

 真後ろの席に座ってるのに一向に触れてこないし視線すら向けてこない。

 

「今日も助かった。ありがとなリュー」

「いえ、アーニャ達の独り言が助けになったなら何よりです」

 

 どうやらお礼を言われるようなことをリューは何かしたらしい。で、結局何をしたのだろう? とても気になる。

 

「ここの料理はおいしいですね」

「ミア母さんの次にお気に入りの店だ。気に入ってくれて嬉しいよ」

「ええ。とても……」

 

 微笑を浮かべるリュー。老若男女関係なく店員も客も見とれる中スタスタとその席に近付く影があった。

 

「やあベル君! 奇遇だね!」

(ヘスティア様ぁぁぁぁぁ!?)

 

 満面の笑みを浮かべてドカリと無遠慮に席に座るヘスティア。そのツインテールがユラユラ揺れる。

 

「奇遇も何もさっきからずっとラウルと付けてきてたろ」

「気づいてたんっすか!?」

「………見事な隠形ですね。流石【ロキ・ファミリア】………それに気づいたベルさんも流石です」

「えぇ………」

「ところでベル君はな・ん・で! 女の子と一緒に食事をしてるのかなぁ!?」

 

 と、叫ぶヘスティア。ストーキングしていた神々が「しゅ・ら・ば!しゅ・ら・ば!」とコールを響かせる。

 

「ああ、これだ……」

 

 ベルはそう言って収納していた木箱を取り出す。その中には二つの髪飾り。青い花弁を彷彿させる飾り付けのリボンに、小さな銀色の鐘が付いている。

 

「プレゼントだ。選ぶのはリューに手伝ってもらった」

「クラネルさんは貰う側で上げたことはないと聞いたので」

「割と最低な発言してるっすね……」

「ベル君、これ………僕のために?」

 

 と、ヘスティアが感動したように言う。余計なことを言うのは野暮だろう。とラウルが一人去ろうとすると……

 

「ラウルにはこれ」

「へ? 本?」

 

 と、包みにくるまれた本を渡してきた。

 

「……前回、迷惑かけたからな。【ロキ・ファミリア】とヘスティア、後何時も世話になってる奴らに日頃の礼を贈ろうと思ってな」

「ああ、そういう………」

 

 

 

 

「わっはー! ソーマやぁ、それも非売品の!ベルっち愛してるでー!」「おお樽一つ分の火樽酒。ベルめ、解っておる」「やあリヴェリア、君は何を貰ったんだい?」「フィンか……ブレスレットさ、私の髪の色と同じな。お前は?」「万年筆を」「見てみてティオネ! ベルから髪飾り貰った!」「はいはい私も色違い貰ったわ」「似合ってるねそれ」「兎ちゃんが買ってくれたんだー。獣人の女の子には耳飾りや尻尾飾りが主らしいよ」「あら、素敵ですわね」「そっちもね。エルフやヒューマンにはネックレスとかブレスレットが多いみたい」「………」「あ、アイズさんのブレスレット綺麗ですね。金色に金色の宝石……花が入ってます」「うん。琥珀、っていうんだって……レフィーヤも新しい髪飾り似合ってる」「えへへ、ウィリディス・センペル(常盤色)っていうらしいです。フィルヴィスさんと一緒に選んでくれたみたいですよ」

「……………」

 

 ムッスーと不機嫌そうにむくれるヘスティアにロキがニヤニヤしながら近付いてくる。

 

「なんやードチビ。まさか自分だけ貰えると思うたんか?」

「うるさいなぁ。ふん、だいたいなんだいお酒って、色気もヘったくれもないね!」

「ああん!? 【ソーマ・ファミリア】は今モンスター密輸しようとした団長が死んで財政難やぞ! それなのに本物、どんだけ金使って貰ったと思っとんねん!」

「値段が愛の重さじゃないやい!」

「けっ。たかが贈り物ごときで何騒いでんだか……」

 

 と、ベートがくだらねぇ、と吐き捨てる。その首には狼の牙を模したネックレスがかかっていた。

 

 

 

「春姫、これあんたのお得意様の兎君が……最近来ないね。奥さんに絞られてるのかね? あ、搾られてるのかも」

「ベル様から? まあ、美味しそうなお菓子……故郷の物と同じです。アイシャさん、よろしければご一緒に」

 

 

 

「お? ヴェル吉、新しい手拭いか? 似合ってるぞ」

「ベルがくれたんだよ。汗吸ってくれるから作業が捗る」

 

 

「あれ、エイナどうしたのそのネックレス」

「ベル君がくれたんだ」

「指輪じゃなくて残念だったね」

「残念なんかじゃないよ。ベル君がくれたんだもん」

「ま、まぶしい!」

 

 

「ミャーが一番高そうにゃ!」「いやこっちの方が」「「少なくともルノアよりは!」」

「ぶっ殺してー。てか、値段で言うなら母さんの包丁鍋フライパンセットじゃない?」

「私のシルバーアクセも結構高そうだよ?」

「あんたは交じんないのかい?」

 

 ミアは騒ぐ馬鹿娘達を見ながらテキパキと作業をこなすリューを見る。

 

「私は、彼と共に贈り物を選ぶ時間が楽しかったので」

 

 だから何もいらないと、貰い物は断った。ミアは苦笑し頭をかくと懐から小さな包みを取り出す。

 

「向こうはそれじゃ納得行かないらしくてね。貰ってやんな。男の顔を立てるのも女の役目だよ」

 

 

 

 店が開けば店員と料理目当てに多くの冒険者や神々が訪れる。

 店員の1人の髪には、リューココリーネを模した髪飾りが光を反射し輝いていた。




ラウルが貰った本の題名は「地味から抜け出す百の方法」
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