ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「さてと、これは売っぱらって………こっちはどうするか」
「これはまだ使えそうだよ。残しとくべき」
「このフランベルジェは?」
「何か解らないけど折っときたい」
元【アポロン・ファミリア】の石像とか壺とかを売っぱらいベルが殺した団員や【ファミリア】共同の剣や鎧で使える物があったら【ロキ・ファミリア】で使うことにしたベル。
「私も手伝う!」と、ダンジョンに潜るの禁止な日だったアイズもやってきた。頭を撫でてやるとムフーと喜んでいた。
「………これ売って贈り物にすれば良かったんじゃ」
「侘びもかねてたしな。キチンと自分で稼いだ金で買っときたかった」
「ベルは偉いね」
「手伝ってくれるアイズもな」
「頭撫でたくなる?」
「……………」
「………♪」
撫でてやると目を細めた。何故かアイズはベルにとても懐いている。具体的にはミノタウロス戦の後から誰かに重ねて見るようになってきた。
「このっ………いい加減にっ……!」
「い~や~っ!」
「「ん?」」
と、不意に
元【アポロン・ファミリア】のカサンドラとダフネが居た。
「えっと……何してるの?」
「あら
「どうし────いやぁぁぁぁ!?」
アイズが声をかけると振り向いた2人だがベルの姿を見ると顔を青くして後ずさる。
「ちょ、ちょっとカサンドラ! 逃げるわよ……!」
「こ、ここ……腰が抜けて………」
ダフネが叫ぶもカサンドラは涙目で地面を這う。
「……ベル、何したの?」
むぅ、と責めるように見てくるアイズ。心当たりは、まあある。ダフネは首を絞めたしカサンドラは予知夢とやらで虐殺を予知していたらしいし。
あの時はベルもエイナを傷つけられそうになり、また分かり易い悪に暫く抑えられていた幻聴が騒ぎ出した。今は落ち着いている。
「ほら立って! 早く逃げるの!」
「うう~、枕~………」
「枕?」
「ゆ、
ダフネがまたそんな事を言って! ほら、早く逃げるの! と本人を前に失礼なことを言うダフネ。ベルは夢、ねぇと呟く。
「ちょっと待ってろ。探してくる……」
「ほへ?」
「ちょ、信じるの!? や、夢なのよ?」
「その夢で俺の強さを知ったんだろ? なら信じてやるよ」
「………………」
「見つけてきたぞ。何で柱の隙間にあったんだこれ」
「はぁぁぁぁ♡」
ベルが持ってきた枕を抱きしめ頬擦りするカサンドラ。ダフネは本当にあった、と驚いている。
「あのっ、本当にありがとうございました! 私を信じてくれて、本当に、本当に……!」
「あ、ああ………」
やたらと感謝してくるカサンドラに若干引きながらお礼を受け取るベル。
2人はそのまま食事を「豊饒の女主人」で取ることにした。夜は混むがこの時間帯は空いている。
「おお少年! 見るにゃこの耳飾り!」
「ミャーは尻尾の輪っか!」
「おう、似合ってるぞ」
「「とーぜん!」」
アーニャとクロエが胸を張る。
「お二人が申し訳ありませんクラネルさん」
「いや、気を使うな。喜んでもらえて俺も嬉しいしな。リューもつけてくれたんだな」
「………私には、このような女らしいもの似合わないと思うのですが……」
「リューココリーネの花言葉は「温かい心」や「信じる心」。「慎重な恋」に「貴婦人」だ。似合ってると思うがな」
「…………口説いてますか?」
「誉めるのは最早癖だが、本心だ」
その言葉にリューは顔を赤くして髪飾りを弄る。周りから殺気が飛ぶ。と、その時──
「──じゃあ何かい、アンナを売ったって言うのかい!?」
「売ったんじゃねぇ……取られたんだ」
2人掛けの卓で向き合うヒューマンの男女が叫んでいた。アイズは何事かと振り返る。
「同じことじゃないか! このっ、駄目男! だから賭博なんて止めろって何時も言ってたのに……! 実の娘を質に入れる親が、何処にいるのさぁ!」
女の言葉にうなだれた男はしかし周りの視線に気づき叫びだしたがあっと言う間に追い出され気絶した。チラチラアイズが気にしているので仕方ないと男を回収する。
「実の娘を担保に、賭博ねぇ……」
女性はカレン、男はヒューイ。ヒューイには賭博癖があり、一人娘のアンナを脅されて質にかけてしまったようだ。
「……アンナ……そんな名前の娘をロキが話してたな。花屋の娘で、男神にもよく求婚されているとか」
「ああ、ついでにロキ様にもたまにセクハラされてる」
「迷惑をかける。一つ聞くが、相手は冒険者か? それも所属がバラバラの」
「あ、ああ……」
「だとしたら最初っから娘を狙っての犯行の可能性が高いな。こういう言い方はアレだが、もうとっくに売り払われているだろうよ」
ベルの言葉に顔を青くする両親。アイズがきゅっと拳を握りしめリューが眉根をしかめるのを見てベルはコキリと首を傾げた。
夜遅く、リューが夜道を歩いていると美しい金色に出会した。
「………あ」
「アイズ・ヴァレンシュタイン?」
金色の正体はアイズその人。アイズは首を傾げている。まさか気付いていないのだろうか、覆面をしているとは言え結構バレバレだと思っているし、そもそも以前この姿で会っているはずだが。
「………えっと………その……」
「誤魔化さずとも。私もまたアンナ・クレーズを探す者。多少問題が起きてもいいように顔を隠すことをお勧めします」
「あ、うん……」
と、アイズは顔を隠す気はあったのか取り出した仮面を被る。そして、ヒューイから聞いていた店に入る。
「………お?」
「「───!?」」
そこにいたのは槍を持った男。ゴーグルからうっすら透けた左目は同じく透けた右目に比べるとヤケに薄い。そして、床に横たわる無数の冒険者達。皆生きてはいるが気絶している。血は出ていない。
「何者だ……」
「答えて」
「おいおいいきなり物騒だな。俺を見ろよ、傷つけないように気絶させた優しいお兄さんだぜ?」
そう言って槍で肩をとんとん叩く男は粗暴な笑みを浮かべる。とても悪人以外には見えず2人は警戒心を解かない。男ははぁ、とため息を吐き槍を構える。と、その時………
「何を遊んでやがるディックス」
後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「おお旦那。お早いお戻りで……んで、「交易所」で情報は集まったか?」
「ああ」
振り返るとそこにいたのはベルその人。2人が驚く中ベルが席に座るとディックスと呼ばれた男がカウンターから勝手に酒を取り四本並べる。
「ほら、あんた等も座れよ」
「………クラネルさん、此方は?」
「ディックス・ペルディクス。恩人である俺に隠し事をする極悪人だ」
「おいおい俺は旦那が尋ねりゃ何だって答えるぜ? 聞かれたらだけどな。つーわけで紹介にあったディックスだ。旦那にゃ『呪縛』を破壊してくれた恩義があるんでね。こうして遣いッパシリをやってるわけだ」
飲まねーの? と酒を差すディックス。リューはコップを三つ取ってくるとラッパ飲みしているディックス以外の席に置いた。
「流石エルフ。お上品だねぇ……」
「……………」
リューも座ったのでアイズも席に座ることにした。覆面を取ったリューを見て漸くあ、と気付いた。
「結論から言うとアンナ・クレーズはまだオラリオに居た。場所は
「へぇ」
「……………」
「……?」
ディックスはまあその辺かと当たりを付けていたのか驚かずリューは目を細めアイズは首を傾げている。
「えっ、と………ならそのカジノに乗り込んでやっつければ良いの?」
「ぶは! やっつける!? おいおい
ディックスはゲラゲラ笑う。
治外法権にして別の国の所有物である場所。故に問題を起こせば外交問題に発展し、そのためにギルドに要請し【ガネーシャ・ファミリア】に守らせている。
「リューも取り敢えず忍び込めば、なんて考えるな。たとえ忍び込めたとしてもその後お前は絶対我慢できない」
「どういうことですか?」
「アンナの買い手はテリー・セルバンティス。
ベルもその辺を理解していたのだろう。そして、言う。
「だから二日後ここに来い。ディックスは強制だがリューとアイズは参加自由。向こうが非合法な手段を用いるなら此方は合法的に潰す」
「
「んなわけねーだろ。レフィーヤにも心配かけたし、もう二度と『正義』にゃ飲まれない」
「……………」
ベルの言葉にリューは僅かに目を伏せた。
「さて、行くか」
「………あの、ベ……チャイムさん、これは?」
「
「これ、何に使うの?」
「査察官が潜入する時使う。昔護衛やってた査察官の伝手でな」
「………よくこんなに早く用意出来ましたね」
「そもそもテリーは知り合いだ。んで、こんな事をする奴じゃ無かった。そもそも彼奴は男しょ………気分悪くなってきた。まあ、とりあえず悪い奴じゃなかった。それは向こうも知ってることだ。つか、んなのをオラリオに送ったらどうなるか解らんしな」
下手をすれば世界最高戦力と事を構えることになるかもしれないのだ。そんな所に優秀なだけの問題を起こす馬鹿を送るほど
「大本からの許可も下りた。徹底的に潰すぞ」
「おう!」
「おー……」
「………はい」
馬車に乗り込むベル・クラネル改めてチャイム・シールズ。その後に続くのはアイズ・ヴァレンシュタイン改め彼の妻シルフィ・エアリアルとリュー・リオン改め彼の妾リヨネ・エイル。そして護衛のディックス改めゼクス・ベテルギウス。
「所でこの人間関係の設定は?」
「向こうが用意したものだ。俺に文句を言うな……まあ、好色漢なら同じように女を侍らす奴に警戒心を緩めるのは確かなんだよ。少なくとも査察官とは思われにくい」