ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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雄牛

「やったぞベル君! 入団希望者だ! 【ロキ・ファミリア】じゃなく【ヘスティア・ファミリア】(僕  の  フ  ァ  ミ  リ  ア)に!」

 

 ダンジョンから戻るとヘスティアが満面の笑みで出迎えてきた。ベルは入団希望? と首を傾げる。

 あれだけの大虐殺を──行った本人が言うのはどう思うが──見て入団したいと思ったならかなりの変態だ。まあ【アポロン・ファミリア】を潰したという噂だけで来た可能性も否定できないが。

 

「カサンドラです。あの、不束者ですがよろしくお願いします………」

「久しぶりだな。前にいた友人はどうした?」

「ダフネちゃんは【ミアハ・ファミリア】に………あの、役に立てるか解りませんが頑張ります!」

「ああ。まあLv.2だろ? 期待してる。それと、何か面白い予知夢をみたら教えてくれ」

「はい! はい!」

 

 ベルの言葉にカサンドラは嬉しそうに笑みを浮かべ両手を掴んでくる。それを見たヘスティアが目を見開き───

 

「何をしてるんだいベル君!」

「何をしてるんですかベル!」

 

 共にダンジョンに潜り共に黄昏の館に戻ってきたレフィーヤが同時に叫んだ。

 

「………すまん。俺はこれから街の奉仕活動だ。リヴェリアに怒られる前に行ってくる」

「あ、ベル居た……」

「丁度良い、行くぞ」

 

 ベルとアイズは前回カジノで騒ぎを起こした罰として街中での奉仕活動を義務づけられていた。ヘスティアとレフィーヤが面倒なのでそれを理由にその場から逃げた。

 

「そういえば、そろそろ潜るんだってな」

「ダイダロス通りの地下のこと?」

 

 崩落し、発見された地下空間。そしてダンジョンに繋がると思われるオリハルコンの扉。近々そこ以外にダンジョンへ通じる扉がないか探りに行くのだ。

 

「頑張ろうね、ベル」

「ああ」

 

 

 

「ふうん、白兎ね………」

 

 すっかり疲れきったヘルメスがシクシク泣きながら横たわるベッドの近くのソファーで全裸で煙管を吸う女の名はイシュタル。オラリオ最強の冒険者【猛者】(おうじゃ)オッタルを使役するフレイヤと同じく『美の神』である。

 ヘルメスから強制的にフレイヤの弱味を聞き出し紫煙を吐き出す。

 どうやら一人の男にご執心らしい。その男は近々彼女が支援してやっている地下に建築されていく迷宮に向かうという噂がある。

 

「ふん。丁度良いじゃないか……」

「うう、すまないベル君………」

「そのベルって奴に関して知ってる情報全部言いな。それとも、また愛して欲しいか?」

「まま待った! 解った、言うから! ええっと……確かこの歓楽街の狐人(ルナール)の女の子の所に暫く泊まってた……って聞いたような」

「ふぅん、春姫に………彼奴何時の間に処女捨てたんだ?」

 

 

 

 

 ダンジョンの奥深くで斧と大剣がぶつかり合う。

 片方は黒い猛牛。ここまでなら良い。かのミノタウロスが斧を振るう姿に誰が違和感を持とうか。問題は、相手だ。

 都市最強の冒険者オッタル。それが、ミノタウロスと()()の勝負を繰り広げていたのだ。

 

「ぬぅん!」

「ブウゥ!」

 

 斧と大剣がぶつかり合いその衝撃波はこの階層丸ごとを吹き飛ばしかねない威力。事実、縄張りで暴れられブレスを吐いたヴァルガング・ドラゴンが衝撃波に押し戻されたブレスに焼かれ衝撃波によりバラバラに消し飛んだ。

 天変地異と見紛う決戦はしかしミノタウロスが斧の穂先を地面に刺すことで終わりを告げる。

 

「…………?」

 

 訝しむオッタルにミノタウロスは敵意を消し、そして……()()()()()

 

「強き人よ、ここらで手を打たないか」

「───!?」

 

 モンスターが口を利いたことに驚きを隠せず目を見開くオッタル。ミノタウロスはそんな反応も予想していたのか特に何も言わない。

 

「このまま行けば貴方が勝つだろう。自分は、貴方より弱い」

「だが、俺を更なる高みへと昇華させる経験値になる」

 

 最強(オッタル)は認める。目の前の雄牛の強さを。

 最初は武器の能力が厄介な程度だった。重さを増し威力を底上げする能力と()()()()()()能力。が、この二つに警戒していれば問題なかった。

 しかし戦っている内にダンダンと強くなっていた。体の動かし方を、駆け引きを、技を少しずつ昇華させていた。

 倒せばどれだけの経験値になるか………。

 

「だが自分も全力で応戦する。その場合、貴方は一人で帰れるか?」

「…………む」

 

 それには同意する。この雄牛の強さを認めるからこそ、決着が付いた時の自分がどのような状態なのか想像に容易い。

 

「それも………そうだな。俺はフレイヤ様の剣。勝手に折れるわけには行かない。感謝しようミノタウロスよ、俺は失態を犯すところだった」

 

 俺もまた冒険者だったというわけか、と肩を竦めるオッタル。

 

「しかし、自分はここに人が来るのを初めて見た。それほどの力がありながらなお力を求めるのか?」

「触発されたのだ。いずれ後輩となる冒険者に、追い抜かれるわけには行かぬと」

 

 あの方を誰よりも守れる。それが自分の誇りなのだから。

 

「一つ聞きたい。お前は、何者だ?」

「それは我々も解らない。ただ、周囲のモンスターに襲われる存在であるのは確かだ」

「我々だと?」

「そう。我々だ……」

 

 そう言って己の斧の柄を撫でるミノタウロス。

 

「その斧に意思があるとでも?」

「言うさ。この斧は、嘗て己を砕いた力に憧れその力を真似る程度には意思がある」

「…………そうか。黒い雷………あの男の」

 

 ある男神がフレイヤの機嫌を取るために持ってきた映像を映すマジックアイテムに映されたとある戦闘と、自身の片腕に傷を付けた一撃を思い返す。

 だが一つ疑問が残る。

 

「貴様があのミノタウロスだとするなら、貴様は既に滅んだハズだ」

「む? あの戦いに居たのか? ならばその通りと答えよう。そして、自分はその後相棒と共に再び目覚めた。こうして、言葉を話せる理知とともにな」

「……貴様は何を望む。復讐か?」

「別にそのようなモノは望まない。お互い全力を出し切ったのだ。次は、こうして言葉を覚えたのだ、話してみたい」

「…………そうか。ならば良い」

 

 オッタルはそう言うと大剣をしまい、歩き出した。

 

 

 後日【猛者】(おうじゃ)が世界唯一のLv.8になったというニュースがオラリオ、そして世界に駆けめぐった。

 

 

 

「くそ! Lv.8だと!? どうしてあの女の所が、忌々しい!」

 

 名声を欲しいままにする『美の女神』に苛立ちを覚えるもう一人の『美の女神』。いや、此方には準備ができているのだ。最強を引きずり下ろす準備が………しかし、Lv.8はまさしく未知の領域。

 

「…………おい、『天の牡牛』を運ばせろ。どこか適当な店の空き部屋の壁を壊して繋いでおけ」

「し、しかしそう簡単に貸してくれるかどうか……」

「金にモノを言わせればいい。奴等は、度々金をせびってくるな。ふん、あんな穴蔵を作って何がしたいんだか」




というわけでオッタルさん強化。
ついでに皆さんが待ち望んでるヒロイン(?)も登場
感想お待ちしておりまーす
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