ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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神の思惑

「さて、そろそろ地下迷宮に潜るわけだけど、何か意見がある者は居るかい?」

 

 というフィンの言葉にベルが手を挙げる。

 余所の【ファミリア】とはいえ傘下【ファミリア】にしてLv.4。そして団長。故に幹部候補のラウルより上、幹部未満の地位で話し合いに参加している。

 

「Lv.3以下は置いていった方がいい」

「同感だな。雑魚が居たって邪魔なだけだ」

 

 場所は崩落し通路が剥き出しになっている場所。多くの【ロキ・ファミリア】の下位団員が集まる中足手まといを置いていくと進言するベルに同意するベート。ムッとする視線が飛ぶ。

 

「サポーター擬きなら俺の力で何とかなるし、マッピングも同様。それに、人が増えると手が回らなくなる」

「手が? 指示のことではないよね」

「解呪だよ。俺にはその魔法がある。けど、人数が増えれば追い付かなくなる」

 

 と、相手が呪いを使う前提に話を進めるベルに首を傾げる一同。

 

「カサンドラの『予知夢』(ゆ  め)だよ。信憑性は高いと思う。彼奴、俺が【アポロン・ファミリア】で殺気を放つ前から異様なまでに俺に怯えてたしな」

 

 そんな彼女が見た夢は、赤毛の女に勇者が襲われ道化師達は水黽の群に襲われる。そして治癒を使う道化師を筆頭に数名が蜘蛛の巣に捕らわれ毒をその身に受け死に絶える。というものだった。

 団員達は所詮夢だろ? と呆れるがフィンはチラリとロキを見る。

 

「んお? ああ、ベルっちの言葉に嘘はないで」

「それに、俺はあの女………レヴィスって言うんだっけ? そいつの話もしていない」

「その上で赤毛の女、か………確かに無視できる言葉じゃ無さそうだ」

 

 フィンの言葉はそのまま決定と受け取っても良いだろう。

 

「………レフィーヤ、この前ランクアップしたんだってね?」

「は、はい!」

 

 レフィーヤは既にランクアップを果たした。最低がDで魔力に至っては999という形で。

 

「馴らしているかい?」

「問題ありません」

 

 フィンの言葉に力強く頷くレフィーヤ。そうか、と呟きため息を吐く。これは不満が多そうだ。

 

「Lv.3以下の団員はここで待機。出て来ようとする者がいたら捕らえてくれ」

「団長! 我々も行けます!」

「そうですよ、それに……結局夢でしょう?」

「……………」

 

 カサンドラはその言葉に身を小さくし、フィンはベルを見てコインを渡してくる。

 

「彼の発展アビリティには幸運がある。それは触れた相手に最大賭博場(グラン・カジノ)を絞り取るほどの豪運を与えるほどだ。裏が出たら不運として、連れて行かない」

「………フィン、やらせるなら取り敢えず十人ほどが良いんじゃないか」

 

 結果、十人が十人とも裏を出した。

 

「………さて、一度持ち物と編成の見直しだ。戻るよ………」

 

 

 

 

「……………」

 

 遠征に参加するのは名誉なことだ。それがダンジョンの外であっても、未知ならば。

 故にその機会を奪ったベルはカサンドラと共に安い宿屋に泊まることにした。ようするに、気を使ったのだ。

 

「あの、ごめんなさい………」

「何がだ?」

「私が余計なこと言ったせいで、雰囲気が悪く……」

「お前が言ったことを俺が信じた結果だ。気にするな」

「し、信じて………えへへ~」

 

 ほんのり頬を赤くしながら左右の五指を合わせモジモジと照れる。このまま暫く二人っきりで外に泊まるのも良いかな~などと思い始めた時だった───

 

「ベル殿ぉ!」

 

 バーンと扉が開き命が入ってくる。その手には引きずられているヘルメスが。

 

「春姫殿と寝たというのは本当ですか!?」

「ね───!?」

「春姫?」

 

 寝たという言葉にカサンドラは顔を真っ赤にし、ベルは以前世話になった処女の娼婦の名に首を傾げた。

 

 

 

「お前ら知り合いだったのか。同じ極東とはいえ世間は狭いな」

 

 どうやら命と春姫は既知らしい。ヘルメスが友神のタケミカヅチに歓楽街で見つけた可愛い娼婦の話をする中偶々ベルが狐人(ルナール)の春姫という名の娼婦の下にベルが入り浸っているのを聞いたそうだ。

 

「偶々、ねぇ………」

 

 やはり信用ならない。取り敢えず何もなかったことを伝え帰って貰った。が、ヘルメスには残って貰う。

 

「それで、お前が俺をあの女と巡り合わせた理由は何だ?」

「………俺はイシュタルに依頼されてあるものを運んだんだ。そして知ってしまった」

「……………」

「春姫ちゃんは、もうすぐ死ぬ……イシュタルの手によってね」

「…………つまり俺に助けろと? お前でやっておいて、何を──」

「でも英雄らしいだろう?」

「──────」

 

 ピタリとベルの時が止まる。ゆらりと影が迫った。

 

──救い助けろ。可哀想じゃないか……それを助けるのが英雄(ボク)の役目だろ?──

 

──それを奪ったのは誰だ?──

 

──奪ったのは君だ──

 

──だから救え。その命に代えても──

 

 耳を塞ごうと意味はない。故にその幻聴を聞き続ける。

 吼えるな、五月蠅い。

 ではどうしろと? 【イシュタル・ファミリア】については暫く滞在してたんだ、調べてある。

 ギルドは昔失態を犯して強く出れない。Lv.5も一人いる。そして、仮にも【フレイヤ・ファミリア】を相手にしようと構えているのだ。何があるか───

 

「…………ん?」

 

 そこで引っ掛かりを覚える。

 そもそもヘルメスの目的は何だ? 此奴が個人を救おうとするとは思えない。リヴィラの時のようにベルの実力を見たいなんて腹なら相手が大掛かりすぎる。

 

──夢を見せてもらうつもりだったけど、今夜は止めておくわ。だって今のベルは『貴方に恋をする女』(わ     た     し)と一緒はいやでしょう?──

 

 ふと美の女神の囁きを思い出す。あの愛の囁きを………。

 

「お前、俺を餌に【フレイヤ・ファミリア】を【イシュタル・ファミリア】が動く前にぶつける気か?」

「そうだよ。イシュタルは用心深く馬鹿じゃない。倒せると思うぐらいの準備はしてたはずだ。だけど、オッタルのランクアップに加えフレイヤへの嫌がらせのために君を攫った事による突然の襲撃があればほぼ確実に潰れる」

「俺がイシュタルに食われそうになればフレイヤが必ず動くって言うのか?」

「言うさ。彼女は君にぞっこんだからね………でもねベル君、これは世界のためだ、イシュタルは確実に良くない者と手を組んでいる。そいつ等の望みが叶うのはオラリオが滅びる時だ………そうなれば、世界は再びモンスターがあふれかえる」

「……………」

「ベル君、俺は世界の平和を願っているよ。子供達が泣き叫び死んでいくなんて、俺の望む世界じゃない。ベル君だってそうだろう? だから、俺が嫌いなのは解る。でも、手を貸してくれ」

 

 ベルは無言でヘルメスの顔面を殴りつけた。鼻血を出し壁に頭を打ち気絶したヘルメス。チラリと虚空をみる。

 

「出てこい」

「………気づいてましたか」

 

 現れたのはアスフィ。突然現れたように見えるアスフィにカサンドラが驚く中アスフィはヘルメスを担ぐ。

 

「クラネルさん。ヘルメス様は確かに信用できませんし胡散臭い……ですが、世界のことを思ってくれていることだけは本当です」

「知ってるよ。だからまだ生かした」

「………恨んでくれてかまいません。今回の件も、無視して貰っても」

「俺が無視してもイシュタル共が俺を無視しない。それに───」

 

 ふと思い出すのは歓楽街に身を隠していた3日間の記憶。

 

──ベル様はどうして英雄になりたいのですか?──

 

──それが義務だと思ってるからだ──

 

──空っぽなのですね。ですが、わたくしは何となくですが……貴方自身英雄に憧れていると思っていますよ──

 

「───あの女狐を助けてやりたいとも思う。向こうから来るんだろ? なら、それを理由に動くさ」

 

 

 

 

 カサンドラは燃え盛る街を見回す。

 ああ、これは夢なのだろう。傷を負った兎が街中を走る。あれは、ベルだろうか?

 燃え盛る街でベルが何かから逃げている。

 次に現れたのは醜いヒキガエル。そして美しい女。どうやらヒキガエルから逃げているようで、美しい女が嗜虐に満ちた顔で兎を捕らえヒキガエルを追い払う。

 このままでは(ベル)が酷い目に遭わされてしまう! そう思ったカサンドラはグシャリと何かが踏み潰される音を聞いた。

 振り返るとそこには一頭の牛がいた。ヒキガエルを踏み潰し、美女に捕まった兎目掛けて突っ込んだ。




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