ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「いいですか? どんな美人でもついて行っちゃ駄目ですよ? 絶対ですからね~!」
宿屋から出て地下迷宮に向かおうとするベルに、カサンドラが見えなくなるまでずっとそんな事を叫ぶ。周りの視線がゴミを見る目だ。が、気にせず歩く。
「集まったね」
崩落したダイダロス通り。そこに集まったのはLv.3の下位団員とLv.4の二軍、そして幹部達。
リヴェリアは地上に残り指揮を担当。ここ以外に、隠された通路を探すのが目的だ。
そして何故か【ロキ・ファミリア】ではない黒髪のエルフもその場に居た。
「ベル・クラネル、久し振りだな」
「フィルヴィス、プレゼント選びの時はありがとな」
「いや、買ったのはお前だろ? 色を選んだのもお前。私は少しデザインを選んだだけだ」
「俺はそのデザインの良し悪しも解らないからな」
以前レフィーヤ以外に素っ気ない態度を取っていたことを知っている団員達は目を丸くして見ていた。
「まあ、レフィーヤが喜んでくれたのはお前からのプレゼントというのもあるだろう」
「レフィーヤから俺の話を聞いてるのか? 意外だな、俺みたいなタイプは潔癖なエルフにとっては不快かと思ったが」
「お前の過去も聞いている。確かに受け入れがたいが、私とて死を振りまく汚れた身だ」
「俺は自分の意志で死を振りまいていたけどな」
どこか達観したような雰囲気のフィルヴィスと無表情だが自嘲するようなベル。レフィーヤは姉弟みたいと眺める。
だから仲が良いのだろうか?
暗い通路を進む一同。ベルは百メートル歩くごとに羊皮紙に地図を描き足していく。脳内マップに今の所赤いカーソル、敵は居ない。Lv.4になりスキルも進化したのか細かい色分けが出来るようになっていた。
「ベル、この点線はなんだい?」
「隠し扉………いや、つり天井か? その通路は開け閉め出来るみたいだ」
「成る程ね………つまり扉を起動させれば僕達を閉じこめられるわけか……」
天井に向かって槍を投げつけるフィン。天井に亀裂が走る。が、それだけ………。
「扉は
「同金属使ったレールガンならぶち壊せるだろうけど………」
「魔力消費が少ない技とはいえ、この数はね……一々破壊していたら何日かかるか」
「放置で良いのか?」
「………気は進まないけどね……」
暫く進み、ベルは足を止める。脳内マップに現れたカーソルの色は黄色。モンスターではないが、此方に敵意を向けている存在がいる。
「ベル、ベート……突っ込め」
この中で特に速度を誇る2人に突撃命令。ベートとベルは同時に床を蹴り飛び出す。視界が開け広間に出ると驚いた顔で固まっていた。
「「───死ね」」
放たれる凶狼と兎の牙。女は後ずさるが遅い……そう、
「──!? ベート!」
「が!?」
ベルはとっさにベートを蹴りつける。回復能力持ちの自分の方が盾になるべきと言う判断の下だ。
迫り来る禍々しい気配を放つ黒剣がベルの左腕を切り離す。焼けるような激痛をしかし強靱な精神力と精神安定で無視して雷撃を放つ。かわされる。
「………漸く会えたな、ベル」
「てめぇ………」
血が止まった左腕を押さえ、ベルはその女を睨みつける。アイズからその名を聞いた。
18階層、リヴィラの街で襲ってきて、ベルの両腕を切り落とした赤髪の女。聞けば人とモンスターの側面を持つ
「───レヴィス!」
「ああ。私の名だ……アリアから聞いたか?」
忌々しげに睨みつけるベル。異変を感じたのか【ロキ・ファミリア】の面々が走ってくる足音が聞こえた。
「………邪魔だな」
レヴィスが呟くと同時に水黽のようなモンスターが無数に現れる。いや、水黽だけではない、食人花の群まで居る。
それが【ロキ・ファミリア】へと殺到する。
「おいおいおい! なぁに兎と遊んでんだよ用心棒様よぉ!」
「黙れ。お前が
「おおこえぇ……」
と、女は肩を竦めてモンスターに囲まれている【ロキ・ファミリア】の下に向かう。
「よおぉフィ~~~ン~~~~ッ! 会いたかったぜぇ、クソすかした勇者様ァ!」
「あぁ、やっぱり生きていたか………ヴァレッタ」
どうやらあの女はフィンが知る女らしい。名はヴァレッタ。と、レヴィスに意識の殆どを向けながらも情報収集をするベル。レヴィスの表情が歪む。
「どこを見ているベル………お前が相手しているのは私だ」
「チッ………足を吹き飛ばされたのがそんなに気に食わねーか」
「
「そういやお前、俺に死んだこともないとか言ってたな……それが死因か? それとも、それで仲間を失ったか?」
挑発する。此方に引きつける。
雷速移動を使えばオラリオ最速は自分だ。相手が自分に執着するというなら、囮となって引き離す。
「………こんな状況でも、仲間の心配か?」
「────ッ!」
レヴィスの殺気が鋭くなる。息を飲みベルは口を開く。
「【砕け散れ邪法の理】【アンチ・カース】」
ガラスが砕けるような音が左腕から響き新しい腕が生えてくる。遠くでヴァレッタが目を見開いて叫ぶ。
「はぁ!? 不治の呪いを、消したぁ!? クソが、解呪師か!」
血は止まった。しかし傷は治らなかった。恐らくは不治の呪いと尽きぬ闘志をその身で証明するベルのスキルが拮抗していたのだろう。故にベルが持つ魔法、あらゆる呪い、結界を破壊する魔法で呪いを消し去った。
やはりカサンドラの
「……………」
左腕を回復することは予想していたのか驚かず、しかしベルがやはり自分の命を奪おうとする相手より仲間のことを考えるのが気に入らないのか表情を歪めるレヴィス。
「お前の相手は私だ………」
「………」
「余所見をするな、ベル!!」
思考加速を行う。雷を纏い全身の細胞を活性化させる。反射速度を大幅に上昇させる。それでも尚、捉えきれぬ速度。放たれる殺気を感じ経験と勘だけでかわすベルだがどんどん傷が刻まれていく。
竦み上がりそうになるほどの敵意を、憎悪を宿した瞳を前にベルは雷速移動を使い背後に移動する。すぐさま二度目の雷速移動。
落雷の如き突きがレヴィスに突き刺さるがレヴィスは怯まずナイフを突き刺す手首を掴む。
「ぐ───!?」
ミシミシと折れそうなほどの力で握られ、そのままぶん投げられる。床を何度もバウンドしながら転がり、扉が落ちる音が聞こえた。分断された。
「さあ私と2人っきりだ………他の奴の事など気にせず、私を……私だけを見ていろ、ベル」
「ちょっ! ベートさん、何時までぼーっとしてるんすか!」
ラウルが叫ぶ。ベートは蹴られた脇腹を撫でる。
「あの、野郎───!」
湧いてくるのは怒り。蹴り飛ばされたことに対する
「庇いやがった、この俺を!」
ふざけるな。お前は俺と同じだろう。俺より後ろを走っていた、スタートが遅れた俺だったろう。
それが何故俺を庇う! 何故庇われている!
ベルに庇われた。そんな情けない自分が許せない。
蔑まれ怒りを感じなければ雑魚は強くなろうとしない。強くならなければ死ぬことを理解しない。だからベートは他者を見下し蔑む。
だが何だこの様は。根性はある、過去の自分の映し身のような、
「あっていいわけねーだろそんな事!」
牙を振るえ。俺は強者だ。守られる弱者じゃない。守れない弱者じゃない。
敵を食らう強者だ。怒りが、意地が、ベートを満たす。
吼えろ、吠えろ、敵を殺せと騒ぎ立てる。
原作との相違点
Lv.3以下が居ない←重要
探知能力の優れたベルが居るためヴァレッタが逆に出撃される
フィンが呪いを食らわない←重要
レヴィスがアイズよりベルに執心←重要
ベート、庇われた自分に怒りを覚える