ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「────っ」
何だ、暖かい?
温もりを感じてベルは目を覚ます。記憶を探る。
確か天の牡牛と戦って、オッタルに黒雷を与え討たせるのを見た……こうして生きてるのだから間違いないだろう。
「んみゅう………ベルく~ん……」
「……………」
温もりの正体はヘスティアだった。豊満な胸に腕を挟みにやけながら眠っている。
「……………」
「……うべ!?」
起き上がろうとするとヘスティアがベッドから落ちた。
「ベル君! 起きたのかい!?」
床に落ちてぐおおお、と頭を押さえてうずくまっていたヘスティアが飛びついてくる。力が入らず押し倒されるベルの胸に飛び込み頬擦りしてくる。
「良かったよー! またあの猪がボロボロのベル君連れてきたって言うし、片腕も無くしてたし僕は、僕は~!」
「片腕?」
見るともう治っていた。魔力も満ち足りている。
「心配かけたなヘスティア」
頭を撫でてやるとかぁ、と赤くなっていくヘスティア。が、離れることはしない。そのまま数秒固まっていると不意にヘスティアは思い出したように叫ぶ。
「そ、そういえばロキ達が呼んでたよ! 起きたら来てくれって!」
「やあ、来たね………」
ロキの部屋に集まったのはロキ本人にフィンにガレス、リヴェリア。そしてアイズだ……。古参を除き、幹部はアイズしかいない。その事に疑問を覚えるベル。
「まず一つ確認だ。4日前、女性型の上半身を持ったモンスターと戦ったというのは本当かい?」
「4日? そうか、そんなに寝てたのか………ああ、戦っていた。話は通じないが言葉は通じる知能を持っていたな」
「そうか………」
その言葉にフィンはトントンと組んでいた手の人差し指を動かす。
「……君が戦ったのは恐らく僕等が59階層で戦ったモノに近いモンスターだと思う」
「59階層?」
それは箝口令が敷かれたはずの情報。いや、ここで話すということは実際に関わりがあるのだろう。
「あれは『精霊』……いや、嘗てそうだったものと言うべきかな──その精霊の産み落とした分身だよ」
「『精霊』?」
それは嘗て古代、神が降りる以前の時代神の武器として人々に恩恵を与えた存在。今でも残っており長い寿命を持つエルフ以上に魔法に優れた種族だ。繁殖能力は持たない。
「そして精霊は、同じく精霊を狙う。自分と同じモノに堕とそうとね………アイズも狙われた」
──貴方モ一緒ニナリマショウ?──
「─────」
不意に思い出す彼女の言葉。あれは同じ存在まで堕ちてくれという意味か? しかし、一つ疑問が残る。
「精霊? 俺とアイズがか………?」
もちろん精霊の血を引く者は存在する。ベルの専属鍛冶師であるヴェルフが一つの例だ。両親が解らない以上ベルもその可能性があるしアイズとて同じだが。
まあ狙われたという事はそうなのだろう。
「アイズは精霊アリアの子だ」
「……本気で言ってるのか? 確かに俺はアリアに子が居ると言ったがそれは爺ちゃんの残した本の中の話だし、アリアの娘ってのは少なくとも古代の人間のはずだろ?」
「本当。ベル、信じて……」
「………………」
アイズの言葉にアイズを観察するベル。しかし何時か言ったように所詮は観察眼の嘘発見機。ヘスティアを見る。
その意味が分からないヘスティアではなく、肯定するように頷いた。つまりアイズは精霊アリアの子。故にあれと同種の存在にも狙われており、ベルが狙われた理由も同じ可能性がある。
「そうなると俺も精霊の血を引いてる訳か………父母のどっちから?」
「あー。その事なんやけど、多分祖父が関わっとる」
「爺ちゃん父母どっちの血縁だっけ……」
「そうじゃないよベル君。君のお祖父さんは
ヘスティアの言葉にベルは数秒固まり、そうか………とだけ呟く。
考えてみればあの老体で度を超えた身体能力を持つしあの村に彼の血縁や血縁を知る者すら居なかった。ある日ふらりとやってきたらしいがそれ以前は一切不明。そういった可能性も否定できない。
「神としての名はゼウス。昔、ウチとフレイヤで潰した【ファミリア】の主神や…………」
「それで、爺ちゃんと俺が精霊の力を持つことに何の関係が?」
「え? あれ、それだけ? ウチベルっちの爺ちゃんの【ファミリア】潰したんやで?」
「そのおかげで爺ちゃんと俺は出会えた。感謝する」
「え~………うぅ、何ややりにくいなぁ。罵倒される覚悟しとったのに……」
「だから言ったろうロキ? ベル君はとても良い子だって!」
戸惑うロキとふふんと胸を張るヘスティア。確かにゼウスが【ゼウス・ファミリア】の面々と共にオラリオに残っていたら恐らく拾い子であろうベルとは出会っていなかったろう。いや、元【ゼウス・ファミリア】の誰かの子の可能性もあるから一概には言えないが………。
「ま、まあ取り敢えずや………実はな、ここにいる皆にはもう話したんやけど、ベルっちには外部から干渉する何かがおんのや」
「……………」
心当たりはある。最初はリヴィラの街。次はリリを脱退させる時、明らかに外から干渉する何かの声を聞いた。
「それを防ぐ手段がベルっちの魂の、此方側への影響を強くするって事や。ランクアップとかでな……せやけどベルっちが住んどった場所にダンジョンはない」
「だから自分の力を分け与えたって訳か。その結果、俺は精霊みたいな存在になった」
「うん。精霊っていうのは神の分身だからね。魂に神の力の一部を受けるベル君は精霊みたいなものだよ……」
「そうか………それにしても、ゼウス………この力は爺ちゃんから授かっていたのか」
バチリと軽く放電するベル。どこか喜んでいるようなベルの顔に一同は微笑む。
「さて……それじゃあ今後の方針について話そう」
「今後?」
「あの地下迷宮………クノッソス攻略に関してだよ。鍵は手に入れた………ただ、暫く潜らない」
「なぜだ?」
「鍵はベートが持っていたが向こうは知らない。そして、【イシュタル・ファミリア】がクノッソスに居たということは彼女達は持っていた。それを探すふりをする……」
何せクノッソス内部の地の利は向こうにある。幾分か削っておきたいのだろう。
「よく見られなかったな」
「ベル、あの時ベートを蹴り飛ばしたろ? その時にベートに幸運が付与されたんだと思うよ」
実際匂いも追えず適当に探しに行ったベートは迷うことなく全員を見つけたらしい。
「…………あの時か。後で謝っとかねーと」
「はは。ベートは蹴られたことより庇われた自分に怒ってたけどね」
「せやで~、面白いスキルも増えとったしな」
と、ロキは一枚の羊皮紙を渡してくる。他の部分は塗りつぶされているが一つだけ読めた。
『
・晩成する
・意地を通す限り効果継続
・意地が強いほど効果向上 』
晩成スキル。なる程確かに珍しい。
「本人には秘密やで?」
「わかった」
「それじゃあ、ベル君もステイタス更新しようか」
「ああ………」
『Lv.4→5
力:SSS1207→I0
耐久:SSS2352→I0
器用:SSS1944→I0
敏捷:SSS2748→I0
魔力:SSS2204→I0
耐異常:C
精神安定:A→S
技能習得:S
鍛冶:E
精癒:G→F
幸運:G→F
思考加速:G→F
狩人:G→F
火傷無効:H→G
格上特攻:I
《魔法》
・
・発動対象は術者限定
・発動後、半日の
・詠唱式【呪われろ呪われろ偽りの英雄。救えもしない無力な力で試練に抗い煉獄へ堕ちろ】
【エルトール】
・
・雷属性
・速攻魔法
【アンチ・カース】
・解呪魔法
・呪詛、結界魔法の破壊
・詠唱式【砕け散れ邪法の理】
《スキル》
(
・早熟する。
・向上心の続く限り効果持続
・力を欲する理由を感じるほど効果向上)
・敵対時に於けるチャージ実行権
・自己ステイタスの閲覧可能
・討伐モンスター図鑑自動作成
・マップ表示
・索敵
・アイテム収納空間作成
・肉体の修復
・体力、魔力を消費する
・精神への干渉を拒絶する
・術者との実力差によって変動
・受ける、受けない選択可能 』
「まあた見事にカンストしとるなぁ………」
「まあ、あの赤毛の女と戦って、そちらは負けたとはいえ更に歓楽街を瓦礫の山に変えるような存在と戦って勝利したんだ。このぐらいは……うん、きっと当然だろう」
「ふぅん………」
フレイヤは機嫌が良かった。
あの男に乗せられたという事には最初から気づいていたし不機嫌だったがそこでアレほどの戦いが見れたのだから。
「オッタルも素敵だったわ。惚れ直しちゃった………もちろんあの子も」
「もったいなきお言葉」
「それにしても、ふふ………」
オッタルの新たに芽生えたスキルを見て再び笑うフレイヤ。そのスキルは
『
・晩成する
・頂点に立ち続ける限り効果継続
・追い付こうとする者を意識するほど効果向上 』
「貴方も男の子なのね。あの子に触発されちゃった?」
「恥ずかしながら、上を目指すということを思い出してしまいました」
「可愛いわね。良いわ………私があの子を特別扱いするように、貴方も私の
「はっ!」
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