ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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歓楽街探索

「ベルさんランクアップおめでとうございます」

「ああ、ありがとなシル」

 

 トクトクと新しく注がれる酒をすぐに飲み料理に手を伸ばす。【カーリー・ファミリア】も幹部を残して一旦帰った。

 

「ふむ。ここは良い店じゃのお。飯は美味いし酒もある」

 

 ベルが食おうとした肉をパクリと奪ったベルの膝に座ったカーリー。

 

「やいカーリー! 何で僕のベル君の膝に座っているんだ!」

「妾の特等席じゃ!」

「いいや僕の特等席だね!」

 

 ふふん、と胸を張るカーリーに負けじと噛みつくヘスティア。ロリが膝の上を取り合うせいで飯が食いにくいベルはシルに料理を口まで運んで貰っていた。

 

「ふふ、美味しいですかベルさん」

「ああ」

「ベルさん、肉ばかりでは栄養が偏ってしまう。野菜もどうぞ」

「ああ」

 

 そんな光景を見て血の涙を流す恋人の居ない男性団員達。

 

「俺、今ならベルさんぶっ殺せる呪詛(カース)覚えられる気がするっす」

「奇遇だな、俺もだ」

「憎しみで人が殺せたら………!」

 

 その殺気は流石のベルも悪寒を感じるレベルだったという。

 

「ええい! 仕方ないから膝半分は譲ってやるって言ってるのに独り占めとはどういう了見だ!」

「ふん。ここは全て妾の場所じゃ!」

「何だと、この貧乳ロリめ!」

「胸の大きさを競うつもりか? 浅はかな、時代は褐色ロリババアじゃ!」

「…………たまに神ってマニアックな話するよな」

 

 膝の上で暴れる迷惑な二柱を見下ろすベル。そろそろ退いてくれねーかなと思っていると別の影が2人を放り投げ代わりに座る。

 

「えへへ~、ベルしゃま飲んれますか!」

「お前もずいぶん飲んだみたいだな」

 

 リリだった。犬人(シアンスロープ)に化け尻尾をパタパタ振っている。

 

「知ってみゃすよリリは。ベルは毎日路地裏で犬猫にえしゃあげて撫でたりしてりゅのを………リリも好きにゃだけ撫ででくだしゃい~」

「あ、ああ………」

「こらー! リリ君そこをどけー!」

「この小娘が!」

「あっはは! 神風情が力と俊敏にほしぇいを持つリリに勝てりゅと思ってるんれすかー!」

 

 取っ組み合いを始めて膝から離れていく少女三人を見送ると目の前に新たな料理が置かれる。

 

「好かれてるねぇあんたも。今回は貸し切りだから見逃すけど普段はこんなドタバタ大騒ぎすんじゃないよ」

「ああ」

「………はぁ、淡白だねぇ。こんな綺麗どころに囲まれて、好かれて、ちっとは照れたり慌てたりしないのかい?」

「返し方が解んねーんだよ。ずっと、容姿と名声ばかり見てくる奴相手に体売るだけで……愛だの何だのの返し方がわからん」

「難儀だねぇ、愛されるのが初めてで、キチンと返せるか怖いってかい? ま、それだけじゃ無さそうだけどね。大事な女でも死なせたかい? あんた、誰かを愛する資格なんてないって思ってるだろ」

「………大事な女なんて、作ったこともない。別の理由だよ」

 

 と、ベルの前に新しい酒が置かれる。

 

「ヤなことはとにかく飲んで忘れな」

「そうだな………」

 

 せっかくの勧めなので飲むことにする。アルコールが喉を焼く感覚はやはり心地良い。と、貸し切りのはずの「豊饒の女主人」の扉が開いた。

 視線が一度そちらに集まれば空気が固まる。何名かのアマゾネスは強い雄の気配に頬を赤くしてその者を見つめた。

 

「………目が覚めたようだな」

「………オッタルか」

 

 やってきたのは都市最強の男、オッタル。一目で強者と解る鍛え抜かれた肉体に、二つ名の通り【猛者】(王者)の如き威圧感。

 

「フレイヤ様も心配しておられた。無事、回復したようで何よりだ」

 

 ベートなどを筆頭に何名かに睨まれるが気にせず言葉を続けるオッタル。

 

「あの時のモンスターに勝てたのはお前の協力あってこそ。感謝する」

「良いさ、おかげで俺も強くなれたしな」

「そうか……お前がフレイヤ様の……我等の下に来るのが楽しみだ」

「だから行かねえって」

 

 と、ベルが返すと喧嘩を終えたカーリーがベルの背に抱きつき肩越しにオッタルを見る。

 

「ほお、此奴が噂の猪人(ボアズ)か? 確か、最強なのだろう?」

「そうだ」

「ほっ。躊躇いもなく言いよったな………だが覚えておくとよい。今は最強であろうといずれベルが抜く。ベルがそう決めたからな」

「おいこら! 何でさもベル君を自分のモノみたいに言っているんだ!」

「抜かれるなどあり得ん」

「ほう?」

「俺がその分強くなるだけだ」

 

 堂々と言い切ったオッタルにカーリーが面白いもの見たと言うように笑う。オッタルはそのまま踵を返した。

 

「アレを越えるのは骨が折れるぞ?」

「それでも越えるさ」

「………ふふ」

「けっ……」

 

 同じように堂々言い切るベルにカーリーは微笑みベートが舌打ちする。

 

「しもうた! アイズたんが酒を飲んだぞー!」

 

 と、突然ロキが叫ぶと【ロキ・ファミリア】の面子がギョッとする。【カーリー・ファミリア】はなんだなんだと赤くなってフラフラするアイズを見る。

 

「…………ベル」

「ん?」

「ベル……」

 

 と、アイズがベルに抱き付く。

 

「………おいアイズ? 食いにくいんだが」

「じゃあ私がまた食べさせて上げます♪」

「や!」

 

 べし、とシルを追い払うアイズ。

 

「食うの邪魔するなら離れろ」

「や~~!」

「ガキかお前は………」

 

 ギュウと力を込めるアイズに呆れたように言うベル。

 

「ベルは私のだもん。私と一緒なんだもん……」

 

 結局酔いつぶれて眠るまで離れなかった。

 

 

 

 翌日。

 

「こりゃまた派手に壊されたねー」

「………すまん」

「ベルが謝る事じゃないですよ」

 

 ティオナが完全に壊滅した歓楽街を見て呟く。

 ベルが思わず謝るとレフィーヤが慌てて慰めた。

 歓楽街は最早瓦礫の山だ。地面もひび割れギルドの職員達が忙しなく動いていた。

 

「復旧に時間がかかりそうだな」

「あー、それがね。結構多くの神様が利用してたみたいだから、ギルドの監査が終わったら多くのファミリアが復旧活動に移るんだってさ」

「…………そうか」

「【イシュタル・ファミリア】の殆どの団員はそのまま【カーリー・ファミリア】に取り込まれたのでこの地の支配権もカーリー様に移りました」

「歓楽街としての機能は残るのか?」

「…………利用する気ですか?」

 

 ベルの言葉にレフィーヤがジトっと睨んできた。

 

「いや、歓楽街ってのは治安維持にも役立つからな……昨日のラウル達を思い出せば解ると思うが」

「「ああ………」」

 

 納得するレフィーヤとティオナ。確かにアレが増えると乱闘が増えそうだ。

 

「歓楽街としても利用続けるみたいだよ。カーリーその辺あんま気にしないし………」

「まあアマゾネスの国の王だしな」

 

 男攫って種馬にする国の女王がその辺に厳しかったら笑い話にもならない。

 

「ところで私達って何するんだっけ?」

「探してるフリ。俺等が『鍵』を探していると思わせるんだよ」

「そっかそっか!」

 

 と、納得したように頷くティオナ。

 歓楽街の次の支配者であるカーリーの権限で何名か【ロキ・ファミリア】を派遣しているが、今の所何の反応もない。

 

「………あ、あれベートじゃない?」

 

 と、不意にティオナが見知った後ろ姿を見つける。確かにベートだ。リーネを連れて歩いている。女子への配慮全くなしのベートに早足でついて行くリーネを見てティオナがムッとする。

 

「全く彼奴は、少しはリーネの気持ちを考えなさいっての」

「……………」

 

 リーネは嬉しそうに笑っているが、どうするかと止めるか止めないか迷っている間にティオナがズンズン近寄り、立ち止まる。

 アマゾネスの少女が突如ベートの腕に抱きついたのだ。

 

「え、何々? 知り合い? ベートったら歓楽街利用してたの?」

「………あ」

「……殴られたな」

 

 ティオナが混乱する中ベル達の眼前でアマゾネスの身体が吹っ飛んできた。レフィーヤがアワアワと受け止めようとするが、前に出たベルが足で受け止める。

 

「へぶん!?」

 

 地面に落ち腰を押さえごろごろ転がる少女。

 

「何やってるんですかベル! あの、大丈夫ですか?」

「ふっ……ふへっ、ふへへへへへぇ……! お腹にいいのもらっちゃったよぉ………! これで二回目ぇ……! これ、絶対妊娠しちゃう……! ベート・ローガの子供孕んじゃう……」

「…………………」

 

 やだこの人怖い………。

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