ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「ベル、気付いてるか?」
「俺は元々こういうのを本業にしてたからな。ティオナとレフィーヤはどうだ?」
「うん、気付いてるよー」
「誰かさんのおかげで殺気には敏感になりましたから」
ベートが耳をピクリと動かしベルに尋ねる。ベルもその言葉の前から纏っていたマントの中でヘスティア・ソードと牛若丸を構える。
ティオナもゴキリと指を鳴らしレフィーヤは修行を思い出しているのか少し疲れたような顔で。
「え、なになに? どうしたの?」
「レナ、下がりな」
首を傾げるレナに周囲を警戒しながら睨み付けるアイシャ。リーネも察したのか控えるように小さくなった。
その周囲を複数の影が囲んだ。
「あんだよ~。私の方は
「てめぇは……」
瓦礫の山の上に躍り出た女にベート達は見覚えがあった。
「ひひひ。よぉ兎ちゃん! あの怪物女が逃げられて寂しいそうだったぜぇ!」
「…………お前、確かヴァレッタか?」
あの時フィンから聞いた言葉に照らし合わせて名を尋ねるベル。
その女はクノッソスに於いて待ち伏せをしていて、ベルとベートに強襲され何も出来ずレヴィスに助けられていた女。
「つまり釣れたわけだ」
「…………あぁん?」
「【イシュタル・ファミリア】がクノッソスに入れるのは解っていたからな。俺達がクノッソスに入らず歓楽街跡地を疎らに彷徨けば釣れるってのがフィンの読みだ」
「─────っ」
フィンの名に、自分が誘い込まれたことに苛立ちを隠せないヴァレッタは忌々しげに睨みつける。
「レフィーヤ、リーネとレナ、アイシャを守れ」
「は、はい!」
と、結界を展開するレフィーヤ。三人は驚いて、アイシャやレナは戦うと言いだしたがこの際無視した。彼等の視線は二人に集まっている。ティオナにも僅かに。
「狙いはアマゾネスか……」
「ひひひっ。よぉく解ってんじゃねーか! 私とあんたは気が合うみてぇだなぁ、人殺しの兎ちゃんよぉ!」
「………俺の過去を調べやがったか………ストーカーにゃ間にあってんだよ」
「ひひひひひひっ。そんな目で見るんじゃねぇよぉ、興奮しちまうだろう!? そんな家畜見てるみてぇな目で見られるとつい抉り出して嘗め回したくなるだろ!」
「チッ、何時かのコレクターみたいなこと言いやがって………」
ヴァレッタに嫌悪感を露わにするベル。切りかかろうと構え殺気に反応した男達、動きからして暗殺者達に標的を変えるとその肩をベートが叩く。
「ベル、戦いに拘るな。勝利に拘るな。そうじゃねーだろ、お前の望む『牙』の形は………救いたいならお前がいる場所はここじゃねぇ。言ってる意味は分かるな?」
「……………ああ」
と、ベルが勢い良く飛び出す。ヴァレッタ達から背を向けて。
暗殺者が慌てて反応するもその首を、命を逆に刈り取り通り抜けた。
「あんだぁ? いきなり逃げやがって……」
「逃げた訳じゃねーよ。あの馬鹿は弱者を一々気にしちまう馬鹿だ。死ぬのは自己責任、そいつの弱さが
ベートの物言いにムッとその背を睨み付けるティオナとレフィーヤ。だがベートは嘲笑をやめない。
「彼奴は自分の身も守れねぇ雑魚を守れれば勝ちなんだよ。まあ? 今回はてめえ等に関して何の情報ももってないから雑魚共にも多少弁明の余地はあるしなぁ」
「………さっきから何が言いたいんだてめえ」
「てめぇの雇った他の雑魚共にキチンと死ぬところを確認しろって言ったかぁ? 言ってねーなら、てめぇの作戦は破綻してるって事だよ!」
道中時折現れる暗殺者達を切り裂きながらベルが一直線に目指したのは【ディアンケヒト・ファミリア】の
突然現れた
「【砕け散れ邪法の理──】」
片手を上げ現れる光。それが黒いオーラを放って地面に押しつけられ、肥大化する。
「【アンチ・カース】」
瞬間、周囲から響き渡る硝子が砕けるような甲高い音。
「お、おい何だお前は!」
「おとなしくしろ!」
と、周囲を冒険者が囲む中見知った顔がベルを見て安堵したような顔をする。
「ベル! 丁度良かった!」
「リヴェリア、説明頼む」
「ああ。こいつはベル・クラネル! 解呪に関してはオラリオで並ぶ者はいない、急患はまず此奴に診せろ!」
「は、はい!」
リヴェリアの言葉となれば従わない者など殆どいない。慌てて案内されるベルを見てリヴェリアはほっとため息を吐いた。
「フィンの予想が当たったな。皆、無事でいてくれ。呪いならベルが解く、傷ならアミッドが治してくれる……」
今、オラリオ中に待機している団員達が対処しているだろう。
アミッドはまず最初に思った言葉は、有り得ないだ。
運び込まれた急患全員を蝕む強力な
一瞬、治療を忘れてしまった。
「アミッド様! リヴェリア様から解呪師が!」
「…………貴方が、ベル・クラネルですか?」
「ああ。知っているのか?」
「これは貴方が?」
「ああ」
「………貴方は、一体………」
「それより治癒を頼む。俺は解呪しか出来ないからな」
淡々と返す人形のように無表情な少年。その瞳からは無力感が伝わってくるが、これだけのことをして何故無力感を感じえる。一体何処を目指している。
人形のような表情を驚愕に変えるアミッド。
「アミッド様、また!」
「───っ、診せてください」
と、傷つけられたアマゾネスを診るアミッド。
傷に呪いは、無い?
「さっきここら一帯の呪いは消しといた」
「一帯、って……」
いや、今は良い。
「
「は、は?」
「迅速に」
「「「はっ!」」」
リヴェリアは解呪されていくアマゾネス達を見る。
あのアミッドですら手こずる呪いを超短文詠唱で解呪していく。しかもここに現れた時は
「……大神の加護、か………」
それがあの異常なまでの威力を誇る解呪魔法の正体だとロキは推理した。
魂を縛る何者かの呪縛が解けるように願いながら魂に刻まれた力。それが発現したのがあの魔法ではないかというのがロキの推理だ。
成る程神の、それも彼のゼウスの想いから生まれたなら人間の
「………それでも、お前はまだ縛られているのか?」
ロキはそう言った。
まだ離れていないと。Lv.が上がり少しずつ離れているがまだ残っていると。
それはベルの魂にしか干渉できず、此方で積んだ経験を刻む、つまりランクアップすれば離れると聞いた。
Lv.5になり、大神の加護を付け足しても解けない呪縛。一体何者なのだろうか。ロキが手も出せないという事は未だ神界にいる神か?
「………いや、待て」
それより、一つ重大なことを見落としていた。
此方側に近づけるとあの時のロキは言った。神の分身たる精霊になっても同じ事なら、相手は人でも神でもない………ならば此方側とは、何だ?
ロキ達神すら干渉できないというなら、外部からと言うのは、まさか
それに此方側に近づける………なら、ベルは何処から来た?
「………ベル、お前は一体何者なんだ?」
その呟きは雨の音に飲まれ消えていった。
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