ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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年上の女達

 リリルカ・アーデははぁ、とため息を吐いた。

 ああ、またか。

 目の前の顔を赤くして自分に告白して来た小人族(パルゥム)。もう何人目だったか………。

 元サポーターだがその凡庸なスキルを利用し重量のある武器を叩き付けるという戦い方でLv.2になったリリは勇者や四兄弟程ではないが小人族(パルゥム)の間ではそこそこ有名になり、こういう事も増えた。

 

「申し訳ありませんが、リリはそこまで憧れるような存在じゃありませんよ。第一級の装備をもらえなければ、きっと今もサポーターをしていました」

 

 人に、環境に、場所に恵まれただけ。

 リリは決してあれが偉業などとは思わない。頑張ってないと言われれば怒りも覚えるが、それでもやはり努力だけではないと思っている。

 

「ですので、貴方の想いには応えられません」

 

 

 

 

 恋愛は苦手だ。

 そんな余裕今まで無かったし、そもそも他人をあんまり信用できないし、この前団長に求婚されてアマゾネスに殺されるかと思ったし……。

 こうして考えると恋愛事に嫉妬が絡むと面倒だ。今気になっている男も色んな女に好かれているし。

 

「あ……」

「……ん?」

 

 と、タイミング良く本人に出会った。昼餉なのかサンドイッチを食べている。

 

「………ベル」

「よお」

 

 

 

 

 ベンチに座りサンドイッチを食べるベル。

 リリも幾つか分けて貰った。因みにベルの持ってるバスケットは二つで片方には炭化した何かが入っていた。あれは料理とは呼ばない。もう一つのサンドイッチも店のから手作りに変わって、味は察してほしい。

 

「また告白されました」

「そうか」

 

 淡々と返してくる。恋愛事には興味ないのだろう。

 

「ベルはモテますけど、誰かと付き合おうとは思わないんですか?」

「男女の関係は遊びで十分だ。恋して、愛して、ともにいれば俺はきっと幸せになる」

「なればいいじゃありませんか……」

「そう簡単に、許されて良いと思ってないんだよ」

「…………?」

 

 一体何に罪悪感を感じているというのか。殺人? いや、彼は一方的に殺しはしない。相手に咎がある悪人か、戦争でどちらかに与するだけ。そこに罪悪感を感じるのは悪人の被害者や敵の兵に失礼だろう。彼もその辺は解っているはずだ。

 まあ深く踏み込むのはやめておこう。誰にだって、知られたくない過去はあるのだ。

 

「………ん?」

「あ……」

 

 と、二人してぼーっと街中を眺めていると挙動不審に周囲を警戒するエイナを見つけた。何かにおびえているような……。

 

「つけられてるな」

「………二人?」

「四人だ。内二人は付けてる二人を観察してるが……」

 

 知らぬ仲でもあるまい。二人はエイナに向かって歩き出した。

 

 

 

 

「ストーカー?」

「まあエイナは美人だし珍しくもないんじゃ………」

「美……や、その……ストーカーとは限らないし」

 

 エイナの話を纏めると、最近誰かに付けられているのだとか。ベルはそう言ったことに経験が多いので視線に嫉妬や殺気が自分にだけ含まれているのに気付いた。

 

「仕方ない。ちょっと待ってろ」

「へ?」

 

 

 そして転がる二人の冒険者。ドルムルとルヴィス。

 そして転がる二柱の神。彼等の主神。

 今回の件を簡単に説明すると、まず神がローブをかぶりエイナに態と見つかる。噂を聞きつけエイナを心配した二人に同じ格好をさせ陰から見守らせる。その後どうなるか見ていた。ようするに神の娯楽だ。

 

「まあ不幸だったな、三人とも」

「私はあなた方の娯楽に巻き込まれたんですか」

「「ふひひ。サーセン………あ、ちゃんと謝る! すいません、だから天界送還だけはマジご勘弁!!」」

 

 反省の色を見せない神々もベルが剣を抜けば土下座して謝った。それで、とベルはエイナに声をかける。

 

「どうする? この二人、やり方はともかくあんたに好意を持って守ろうとしたわけだが」

「そ、そうだ! その気持ちは嘘でねえ! エイナちゃんを愛しているだ! お嫁さんになってくれ!」

「な、貴様卑怯だぞ! エイナさんッ、私は貴方が好きです! 伴侶の契りを交わしてほしい!」

「え……えええええっ!?」

 

 突然の求婚に顔真っ赤にするエイナ。告白されたことはある、だが求婚となれば話は別だ。しかも相手に確認せずとも真剣だと解るレベルの。

 チラリとベルを見る。視線が問いかけてくる、どうする? と。それにひどくムカついた。ムカついたので、巻き込むことにした。

 

「わ、私はベル君と付き合っているので無理です!」

「んな!?」

 

 と、リリが反応した。が、この場合は仕方ないと判断したのか大人しく食い下がる。視線でごめんなさい、と告げ固まっている二人を見た。 

 

「そ、そそそんな! おい、本当なのかてめぇ!」

「ただの出任せでは!?」

「そんなことありません! ね、ベル君?」

「ああ、愛しているぞ」

 

 と、躊躇いもない返しにエイナの顔が赤く染まった。

 

 

 

「恋人のふりなんて良くしてたからな」

「そういえばベル君ってそうだったね………私年上なのに、からかわれてる?」

 

 未だ赤い頬を押さえながらうー、と唸るエイナはふと不機嫌そうなリリをみる。

 

「あ、ごめんね。ベル君とデートとかだった?」

「いえ、デートではありませんので……」

 

 ふい、と目をそらすリリ。怒らせちゃったかな、と苦笑するエイナを見て不意に悪戯を覚えた子供のような笑みを一瞬浮かべる。

 

「怒ってませんよ。ベルだって気にしてませんし……()はベルより()()()()なんですから」

 

 目を細め人差し指を唇の前に持って行き、大人びていてどこか艶めかしく囁くリリ。

 

「!?」

 

 見た目の幼さとのギャップに同性のエイナすら思わずゾクリとする妖しい魅力。満足そうにクスリと笑うと歩き出した。

 

 

 

 

 ダイダロス通りの地下。大きな影が動いていた。

 フゥフゥと粗い息を吐き、何かに怯えるように時折周囲を見回す。その身体の彼方此方に乾いた血の後がある。

 その巨大な体躯は決して人間が持てるものではない。かといって、動物でもない。彼はモンスター。

 深層モンスター『バーバリアン』。推定Lv.は3から4。地下とはいえダンジョンの外にいて良い存在ではない。

 しかし様子がおかしい。理性無き暴力の剣士であるはずのモンスターのその目には、どことなく理性が見て取れた。

 

「………帰り、たい………」

 

 そして口を開く。発せられたのは人の言葉。

 

「皆、何処へいった……無事なのか? 里に、帰りたい………」




さぁて、ゼノス編のフラグとして殺されたバーバルちゃんとの邂逅も近いぜぇ!
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