ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「おいどう言うことだよ、ディックスが抜けたって……まさか」
「ヒヒ。ああそうだぜ、出て行く時あっさり暴露してやがったしなぁ」
「何でディックスが化け物共を逃がすんだよ!?」
「俺が知るかよ~。ディックスが入った【ヘスティア・ファミリア】の連中なら知ってんじゃね~か~ ?」
自身の眷属の言葉にヘラヘラと返す主神。その言葉に大男は憎々しげに顔を歪め、その言葉を紡ぐ。
「【ヘスティア・ファミリア】───ッ!!」
「ベルは来ていないか?」
「ええ、ここ数日見ていません」
「………そうか」
「豊饒の女主人」で、リヴェリアがリューに尋ねるとリューは申し訳無さそうに首を振る。
ベル・クラネルが姿を消した。その日から、彼の行きそうな場所をずっと探しているそうだ。
「リヴェリア様、その………少しお休みになられては?」
「………心配をかけるな」
体調を気遣うリューに苦笑を浮かべリヴェリアは店から出ていった。
リヴェリアは責任を感じていた。罪悪感を覚えていた。軽率に、尋ねてしまった。それが彼にとって何を意味するのかも解らず。
「私のせいだ………」
古参の三人と神2柱の部屋でリヴェリアが頭を押さえ懺悔を吐き出す。
「あまりに軽率だった。彼奴を、泣かせてしまった……!」
「………いや、異世界なんて、確かに荒唐無稽な話さ。自分自身半信半疑になるのは仕方ないよ」
そうフィンは言うが、やはりそれでもリヴェリアの表情は晴れない。
「それにしても、何時気づいたんだいリヴェリア君」
「せやなー。それらしい話なんてあったか?」
「…………気付いたのは……いや、仮説を立てたのはアマゾネス達が襲われた時だ。ベルの持つ解呪の規格外な威力は大神の、ゼウスの加護だとロキは言ったな?」
「言うたな」
「それならば、それを以てして解けない呪縛を施したのは何者で、何故それほどの力をベルにしか向けていないのか気になった。逆説的にベルにしか干渉できないのではないかと考えた………」
その理由が、ベルもベルに干渉する者も本来はこの世界の存在じゃないからでは、と思ったのだ。
そしてそれはロキが肯定した。
「以前な、ベルっちに干渉してる何かを捕まえようとしたことあるんよ。物理的にやないけど………ほんで、ウチが触れようとした瞬間離れた。あれ、今思うとウチに触れると向こうも弾かれたからなんかもな………そんでな、追いかけてみたんよ。明らかにこの世界ではありえない光景を………ベルっちもそいつも多分そっから来た。ベルっちは無理やり送られてきたのかもしれんけどな」
本来住んでいた世界と異なる価値観、歴史、種族に染まったこの世界を、ベルはどう思っていたのだろうか?
疎外感を感じていたのかもしれない。だからこそ、己の価値を見いだそうと彼処まで躍起に強さを求め英雄になろうとしていたのかもしれない。
最近丸くなったのは、特定の集団と長く触れ合い、疎外感が薄れていったからだろうか?
「それを………私の一言で壊してしまった」
一人違う世界から来た
責められると思ったのだろうか?
罵倒されると思ったのだろうか?
拒絶されると思ったのだろうか?
否定されると思ったのだろうか?
ただ、怯えていた。それだけは解る。
「………探さなくては、あの子は……きっと悲しんでいる」
「……ま、大切な仲間だしね。他の団員達にも探すよう言わなくちゃね。ベートとかは率先して動くだろうけど」
それから五日。まだ見つからない。
レフィーヤは不機嫌そうに町中を見回す。
「全くこんなに心配かけて、何処に行ったんですか!」
そう、心配なのだ。彼は強いが、弱い。レフィーヤはそれに気付いていた。
話に聞く兄が関係しているのか、自分なんて死んでしまえと思っている。メレンでの会話以降減ってきたが、それでも時折見かけてしまう。
自分の声は響いていたはずだ。揺れていたのを確かに見た。それでも、届いていなかったのだろうか? それは、とても寂しい。
彼は時折、
いや、或いは絵画の外に、本物の世界に焦がれる絵の中の住人のように、の方がしっくりくるか。とにかく、一人きりにするとそのまま消えていってしまいそうで、怖いし悲しい。
「…………………」
だから、青銀の髪を持つ見目麗しい少女と仲睦まじく歩く姿を見て普通にキレた。
「そうか、ここには居ねーか………本当だろうな?」
「なんじゃ疑うのか?」
「てめえはベルをいたく気に入ってるからなぁ。独り占めしようとしてんじゃねーかと思ってんだよ」
だいぶ復旧してきた歓楽街。ベートの鼻を邪魔する香が彼方此方で焚かれ混沌とした臭いを放つ街の中央に聳える新たな屋敷の最奥でソファーに寝転んだカーリーはケラケラ笑う。
「確かに、聞けば子兎のように弱々しくなったとか………それはそれで愛でてみたいの。だが、知らぬモノは知らぬよ。バーチェやレイシーも探し回っているが手掛かりなしだ」
ティオネやレナの普段の言動から考えベルに惚れ込んでいるアマゾネスが見つけられないとなると、なる程少なくとも匂いでは追えない。ベートはチッ、と舌打ちをして踵を返す。
「おう、見たぜ」
「本当?」
リヴィラの街でアイズが目撃証言を集めているとボールスがベルを見たという。
「鬼気迫る表情でモンスターぶっ殺しててな。ありゃ一人で下層まで行っちまうんじゃねーかと心配してたんだがめっちゃ可愛い女のガキ連れて戻ってきたんだよ」
「女の子?」
「おう、綺麗な青っぽい銀髪でよ、肌も
来る時は一人ということは、19階層以降で出会ったのだろうか?
「ありゃ他の男と話させたくなかったんだろうなぁ………兎め、よっぽど独占欲が強いらしい」
「話させたくなかった? どうして?」
「そりゃお前、これだよこれ」
「…………?」
小指をたててコレコレ言うボールスに首を傾げるアイズを見てあー、と声を漏らすボールス。
「女だ、恋人……」
「ベルに?」
そんなモノいたのだろうか?
あ、昔の知り合いとか? しかし19階層以降に居たということはLv.2……単身だったなら3か4はありそうだが、そんな冒険者聞いたことがない。
「今は多分地上のどっかにいるよ。頑張って探すんだな」
「………私、お金持っていません。どうして協力してくれるんですか?」
「ああん? そりゃお前、俺らはミノタウロスの一件以来、あの兎のファンだからな。何かあるってんなら協力するさ」
ビクリと怯えたような顔をするベルを見た少女はレフィーヤとベルの間に入り両手を広げる。まるで守るように……。
「………なっ」
そんな態度をとられる覚えのないレフィーヤは思わず固まる。
「ちかづかないで……」
「………誰、ですか貴方は………」
「わたし? わたしは、ウィーネ………」
「ベルとはどういった関係なんですか?」
「え、っと…おとうさんの……娘?」
「…………はい?」
「ロキ、ベルが見つかったのか!?」
「どうわ!? お、落ち着けママ! 脳が揺れるるるる!」
「す、すまん………」
ベルが黄昏の館に現れたという情報を聞きロキをガクガク揺さぶるリヴェリア。慌てて話しロキがホッと息を吐く。
「帰ってこなかった理由は自分を父と呼ぶ女が現れたから、暫く様子を見る、やと……」
「何だと? それは本当か?」
「嘘は言っとらんかったで……まあ、ベルっちの過去考えれば不思議やあらへんけど………ホンマか解らん」
「? どういうことだ、嘘はなかったんだろう?」
「その女の子がベルっちの本当の娘かは解らんし、ベルっちは一度神を騙しとる。ようは嘘さえ吐かなければええんやからな………例えば『白髪赤目の男が父であると母から聞いた』という台詞をベルっちが言わせるだけで、そう言われたっちゅう言葉に嘘はなくなる。ウチ等から追っ手を引かせるために女の子に自分を父と呼ばせたのかもしれへん」
「それほど、私達に会いたくないということか………」
と、ロキの言葉に俯くリヴェリア。
ロキはベルに尋ねた。出て行った原因にリヴェリアは関係あるのか? と。帰ってきた言葉は『関係ない』だったが、それは嘘だ。神であるロキが見抜くと解った上で吐かれた嘘。
これは言わない方が良いだろう。
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