ベル君に憑依して英雄を目指すのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
モンスター
ちなみに本体を倒すと紅石は必ず砕け散るというのもまあ、理由の一つだろうがそれを抜いても戦闘能力は非常に高い。
ゆえに警戒するべき、なのだが………。
「………その子、さっきまで喋ってたよね?」
「ベルを守ろうともしてました……」
ティオナは馬鹿だった。本当に単純なほど、罵詈雑言を吐くベートですら悲しい顔を浮かべるであろう超のつく馬鹿。ゆえに『憎悪』や『嫌悪』といった先入観無くただ怪物が喋るという珍しい光景に驚いていた。
レフィーヤは怒りを覚えていたが、それはベルに対するもの。自分達からは逃げたくせに、怪物に縋っているベルに怒りを覚えた。そんなに信用してくれないのかと。それと同時にベルを守ろうとする怪物に戸惑いと羨望を覚えた。
「ねえレフィーヤ、モンスターって喋るっけ?」
「そんなまさか………あれ?」
と、色々複雑な乙女の心境に悩まされていたレフィーヤも漸く異常に気づく。同時に、孤児院での出来事を思い出した。
「ベルがここに来ませんでしたか?」
「…………ここに来たということは、少なくともここのことを話されているのですね」
そう言ったのはマリアという年配の女性。
「それがベルさんか、シルさん、あるいはディックスさんなのかは解りませんが、その三人のうち誰かが教えるということは彼等を受け入れるかもしれないということなんでしょう」
「彼等?」
「あるいは、ベルさんが信用しているから信用するのか……そのどちらかは解りません。どちらにしろ、此処では明言できません」
「は、はぁ………」
良く解らないが、その三人は何か共通する秘密を持っているらしい。いや、この孤児院も、だろうか?
と、そんな風に首を傾げていると誰かがレフィーヤの服の裾を掴む。振り返ればそこには幼い
「お姉ちゃんあのね、ウィーネお姉ちゃんは悪い子じゃないよ」
「お、おいフィナ!」
「だって!」
「ボクもフィナと同じ。苛めないであげて」
「ウィーネ姉ちゃんね、ご飯おいしいおいしいって残さず食べるんだよ!」
「笑うとかわいいの!」
「ごろつきからね、守ってくれたこともあるの!」
「え、え? えっと……」
「皆、困ってますよ………レフィーヤさん。ウィーネちゃんに会ったら、どうか先入観を持たずに接してください」
あのやりとりはこういう意味か。
子供達の反応からしても、本当に懐かれていたようだ。それも、正体を曝した上で。
先入観を持たずに彼女を見れば、ベルを父と慕い、懸命に守ろうとしている女の子。子供達の懐き方からして暫く共にあり一度も暴れなかったのだろう。
「…………説明してください。話はそれからです」
「うんうん。私も気になる~」
「……………は?」
二人の言葉にポカンと固まるベル。
「いや………いやいや、待てお前等! 何でそんなに簡単に受け入れてる!? モンスターだぞ? 喋るんだぞ? 可笑しいだろ、そんな簡単に受け入れられるわけ───!」
「え? ベルは普通に受け入れてるじゃん」
「おとうさん、おかしいの?」
狼狽するベルにティオナが何を今更と呆れウィーネは首を傾げた。
いや、だから……と尻すぼみになっていくベルを見て、レフィーヤが口を開いた。
「それが貴方ですか?」
「………は?」
「貴方にも、何か人と違う部分があるんですね? 髪の色とか、過去とか……そういうレベルじゃない、ウィーネちゃんみたいな常識では考えられない何かが。リヴェリア様がその一端を知ってしまったから、逃げたんですか?」
「………………」
ベルは応えない。しかしこれは当たっていると確信できた。
「無理矢理は聞きません。ベルも、怖いんでしょう? 知られるのが。でも、何時か私達が信用できたら話してくださいね?」
「…………あ、ああ………」
「………………」
少し、暗い雰囲気が消えた………気がする。
レフィーヤは満足そうに頷いた。
「あ、そうだ! レフィーヤ、ベルは
「
と、ウィーネを見るレフィーヤ。
姿を消していたはずのベルに、それも理知を持つモンスターと共にいるタイミングで? 幾ら何でも出来すぎている。
「ギルドは彼女……いえ、彼女
「え、何? どういうこと?」
取り敢えずティオナは放っておいて思考を続ける。
まずは本物かどうか。ベルから封筒と地図を受け取る。謎の人物から渡されたらしい。
本物の19階層の地図。ギルド印も本物。やはりギルドは彼女のような存在について知っているとみていいだろう。下っ端まで知っているのかは解らないが。
「…………これは、やはり………」
「………来る気か?」
「内容が内容です。監視されているでしょうね」
「だろうな………」
時折感じる視線には気付いていたが、監視だろうと無視していた。レフィーヤ達の接触にも向かってこなかったのには驚いたが様子を見ていたのかもしれない。
「……………レフィーヤ、ティオナ」
「はい?」
「ん?」
「お前等は、もし俺が…………いや、何でもない。付いてきてくれ。向こうにしても、その方が仕事も増えず都合が良いはずだ」
「お? ついてって良いの? やった!」
「…………意気地なし…………ええ、解りました。ここまできて、ただ引き返すのではベルも不安でしょうし」
ボソリと呟き仕方ないという風に頷く。
喋るモンスターと共にいた事を見られ、大人しく帰られるのも気が気ではないだろう。それに、このレフィーヤとティオナの二人だけならベルはいざとなれば黙らせられる。レフィーヤを人質にティオナを捕らえるなど朝飯前だろう。
「……………」
自分で想像したがあまりいい気はしない。
まあ、取り敢えず慌てなかったので信じてくれたとみて良いのだろう。
「ふふ。ふふふふ………」
「フレイヤ様?」
ベル・クラネルが姿を消したという報告に、真っ先に彼の居場所を突き止め弱々しくなった可愛らしい兎を視姦していたフレイヤは唐突に笑い出す。
「ああ、ごめんなさいオッタル。少しおかしくて………」
「……モンスターの事ですか?」
「ベルの事よ。あんなにトゲトゲしかったのに、いざ本性を探られてみれば知られるのを恐れてあんなにも臆病になるなんてね……そのくせ、誰かを信用したくて縋りそうになって、でも自分にそんな資格がないと思ってる……可愛いわ。今すぐ抱いて身も心も慰めてあげたい」
「……………」
フレイヤの言葉にオッタルが動く。連れてくるつもりだろう。
主を思っての行動を、しかしその主が止める。
「良いのよオッタル。暫く様子を見ましょう? それに、今の弱々しいベルは私は兎も角貴方は嫌でしょ?」
「…………否定はしません」
「ベルったら、思っていたよりチョロいのよ? 貴方に取られるなんて嫌よ、私」
「チョロ……?」
「自分を受け入れてくれるかもしれない相手に案外簡単に揺れちゃうの……きっと、自分自身誰よりも己を否定してるくせに誰かに愛されたいと思っているからでしょうね。だからこそ苦手なのよ、
「…………」
「そんな顔しないで。別に、ベルを馬鹿にしてるわけじゃないのよ? ……ふふ。そんなベルだからこそ、きっともっと強くなるわよ」
と、フレイヤがはぁ、と頬を紅潮させる。
「何時の時代、何時の世も……ああいう弱い人間からなる英雄の方が輝くんだもの……」
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